藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

高齢者の知を生かす。

日経MJより。
*[次の世代に]場づくりこそが鍵
ようやく介護業界でも専門職以外の参加が検討されるようになった。
それはそうだ。
203年には30-80万人も介護人材が足りないなどと言われている。
こうなると「介護のための社会なのか」という感じもするが、ともかく事態は進行している。
介護は資格が必要ととらえられがちだが、資格を有していない人でもできる仕事はたくさんある。
例えば、介護施設のレクリエーションの仕事では、自分の特技を生かしてマジックを披露したり将棋の相手をしたりできる。
こうした介護未経験者や無資格者と施設をマッチングする。 
これはこれでいい。
さらに。
今度は「高齢者が役に立つ場の提供」だ。
例えば金融機関出身者に「お金と起業」について聞いてみる。
講演でも構わない。
タクシードライバーに仕事観を聞いてみる。
若い人にはためになるだろう。
アカデミックな世界にいた人に話を聞くのもいいだろう。
 
で。
もっといいのは「人生相談」だ。
精神年齢が実年齢より10歳は若いと言われる昨今、「なんでもない日常の悩み」を聞いてあげることの効用は計り知れない。
人の悩みは「共有すること」で驚くほど救われるものだ。
これから増える高齢者は「若者のメンター」よろしく、聞き役になったり、また時には真剣に対話したりすればいい。
 
今一般的になっている「カフェ」とか「地域のイベント」とかをアメーバ的に作るのがいいだろう。
 
悩める子供や青少年少女や、社会人や中年やら(老人も)が「集える場所作り」がこれからのテーマになるのではないだろうか。
そんな地域を作ってみたいと思う。
 
介護負担軽く、ベンチャー競う 排せつケアや人の仲介
2019年5月18日 19:30
人口の4分の1を高齢者が占める社会になり人手不足が各業界で進む中、介護業界における人材の不足が深刻な問題になっている。経済産業省の試算では2035年には79万人もの介護人材が不足するという数字もある。危機的な課題を解決するために様々なベンチャーが挑戦している。
スケッターは介護の仕事を短い時間でもマッチングする
例えば排せつ処理はヘルパーにも施設にも負担が大きく、介護される人にとってもストレスがたまる行為だ。人手不足の施設で業務効率を高めようとすると、排せつ介助の回数が少なくなりがち。するとおむつ交換が遅れ、便が漏れるリスクが高まる。介護される人が苦痛に感じるのはもちろん、シーツ交換や身体の洗浄など追加の業務が発生する。離職率が高まりさらに人手不足となる悪循環に陥りやすい。
そこでaba(アバ、千葉県船橋市)は排せつケアシステム「ヘルプパッド」をパラマウントベッドと共同で開発した。ヘルプパッドは身体に装着せずベッドに敷くだけで使える。臭いセンサーが便と尿を検知し、個人の経験と勘に頼っていた対応を施設全体で共有できるようになる。
また、介護は資格が必要ととらえられがちだが、資格を有していない人でもできる仕事はたくさんある。ボランティアとしてだけでなく報酬を支払う施設もたくさんある。プラスロボ(東京・港)が始めた「スケッター」は介護施設と働きたい人をマッチングするサービスだ。
例えば、介護施設のレクリエーションの仕事では、自分の特技を生かしてマジックを披露したり将棋の相手をしたりできる。こうした介護未経験者や無資格者と施設をマッチングする。
女性会社員(26)は絵手紙講師として参加者の作品を仕上げる1時間のイベントを手伝った。「サイトで事前に施設の人とやりとりができた。施設がイベントをデイサービス利用者に予告し、当日もスムーズに迎えてもらえた」と話す。
ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職
日々の業務に追われる職員がレクを企画するのは大変だが、介護される人には楽しみのひとつである。スケッターにより相互のメリットが実現できる。
プラスロボの鈴木亮平代表取締役は「介護業界が取り込めなかった層にアプローチでき、結果として介護業界に就職する人も増え、採用コストを10分の1にできる」と語る。単発でよいからと手伝っているうちに施設も体験でき、実際に働く人も増えるだろう。サービス開始2カ月で200人が登録しており、年内に1万人を目指している。
介護業界は重労働や低賃金のマイナスイメージが先行しがちだが、その分解決すべき課題の宝庫であり多くのイノベーションの可能性が残っている。政府は外国人労働者の受け入れを計画しており、どう働いてもらうかも課題となる。中国などこれから高齢化を迎える国にとっては日本は先行例になる。
介護は市場としてもますます巨大になる。工場のように無人化が進むだけでなく、アナログな労働とテクノロジーを共存させるのは日本企業が得意とするところ。ベンチャーにしろ大企業にしろ、優位性を築くチャンスがある世界と言えるのではないだろうか。
[日経MJ2019年5月17日付]
 

 

どちらかの破局。

*[世界経済]リセットに向かうのか
日経FTより。
リーマンショックを予想した人が再び警告を発しているという。
しかしその先は「インフレの炎かデフレの氷か」分からないらしい。
どっちもあり。
これだけの明晰な人たちが分からないのだから、自分たちがあまり一生懸命に予想を試みても意味はなさそうだ。
記事ではインフレとデフレ両方のシナリオと国の抱える債務について警告しているが、自分はこの一文が気になった。
「少なくともいつでも自由に増発できる通貨で借りられる幸運とそれを生かす知恵を持ち合わせた国の経済」ってどうなるのだろうか。
根強く日本でも「国民が銀行を通して国債を買っているので大丈夫」という説があるが本当だろうか。
『いつでも自由に増発できる通貨で借りられる幸運とそれを生かす知恵』とはつまり「モノ」と「金」はかけ離れたということだと解する。
多分金本位制をやめたからだ。
その後お金は狼のように駆け回っているけれど、いずれ「お金そのものの価値」が相応に低くなるだろうと思う。
それはまさに"インフレ"だ。
 
うまくお金の発行を抑制して、しかも通貨の移動に制限をかけて事態を収束できるかどうか。
ひょっとして米国がやろうとしていることは、そんな「抑制政策」ではないのか。
それとも一度リセットするしかないと、破綻をむしろ進めているのか。
 
どちらにしても、自分たちは「実物寄り」にいた方が良さそうだ。
実生活はなくなりませんから。
 
 
過剰債務の破局 どう防ぐ
2019年5月23日 17:00
本稿は「世界が低インフレの訳」(10日付)の後編である。
「世界は火に包まれて終わるとある人は言い、氷に覆われて終わるとある人は言う」。これは、米国の詩人ロバート・フロストの美しい詩の一節だが、世界経済の展望にもののみごとに当てはまりそうだ。
イラスト James Ferguson/Financial Times
債務水準が極めて高くインフレ率が極めて低い現在の世界は、インフレの炎に包まれて終わると警告する人がいる。その一方で、デフレの氷に覆われて終わると懸念する人もいる。前編に登場したレイ・ダリオ氏のように楽観的で、経済は燃えもしなければ凍りもしないと言う人もいる。少なくともいつでも自由に増発できる通貨で借りられる幸運とそれを生かす知恵を持ち合わせた国の経済は、熱すぎず冷たすぎずの状態に導ける、と主張する。
国際決済銀行の元チーフエコノミスト、ウィリアム・ホワイト氏は2007~09年の金融危機を的確に予見した人物だが、そのホワイト氏が昨年、次の危機を予言した。彼が問題視するのは、高所得国の非金融部門、特に政府部門の債務と、高所得国および新興国の企業債務が膨張し続けている点だ。中でも危険なのは、債務の大半が外貨建ての新興国だという。バランスシート上で通貨のミスマッチが生じるからだ。この状況下で、金融政策はリスクテークを促し、金融規制はそれを阻もうとしている。これでは経済の不安定化を招くことは必定だ。
公的債務の金利は低いが、この状況は続くのか
10年物国債利回り(%)

低インフレでも需要急増すれば一気にインフレに

インフレの炎から始めよう。今起きている多くは、1970年代前半を想起させる。反道徳的な大統領(リチャード・ニクソン)が大統領再選を確実にしたいとの思惑から、連邦準備理事会(FRB)議長(アーサー・バーンズ)に景気を刺激するよう圧力をかけた。同時に、ドル安誘導と保護主義を介して貿易戦争を仕掛けた。かくして10年にわたり世界経済は混乱することになる。何やら聞き覚えのある話ではないか。
70年代のインフレを予想した人は、60年代後半にはほとんどいなかった。同様に今も、安定した低インフレが長く続いたため、失業率が低いにもかかわらず(米国の失業率は69年以来の低い水準にある)インフレ高進への懸念は薄らいでいる。中には、失業率が低くてもインフレ率が上がらない現状を踏まえ、フィリップス曲線は死んだと言う人もいるほどだ。恐らくインフレは休眠中なのだろう。今のところインフレ期待が上がる気配はないが、需要が急増すればインフレ率が一気に高まる可能性は大いにある。
インフレ率の上昇はある意味、経済にとって恵みだ。巨額の公的債務を目減りさせる効果があるからだ。70年代のインフレがまさにそうだった。それに中央銀行はインフレ高進への対処法をわきまえている。ただ、一段のインフレが見込まれる状況では長期名目金利の上昇にもつながるので、実質債務負担の前倒しが起きがちだ。
また80年代前半の例からすると、短期金利も上昇し、投資家心理の悪化度合いを示すリスクプレミアムも押し上げられるはずだ。割高となっていた株価は急落しかねず、労使関係も政治も対立が激化するだろう。
米国株は割高感が強い
株価収益率(景気循環調整済み)
こうした混乱は当然ながらすべての国に一様には起きないため、通貨相場も動揺するにちがいない。そうなれば、中央銀行をはじめ政府機関への信頼は大きく損なわれる。最終的には80年代のようにスタグフレーションが起き、それが深刻な景気後退に移行する危険性が高い。

デフレに対処する手段は今や限られる

次に、デフレの氷に移ろう。デフレは経済への何らかのショックから始まると考えられる。例えば貿易戦争の激化、中東での戦争勃発、民間部門または公的部門に端を発する金融危機中央銀行の政策自由度が低いユーロ圏が危ない)などだ。そうしたショックは深刻な景気後退、さらにはデフレを引き起こす可能性がある。そしてデフレが過剰債務にとって痛手であることは言うまでもない。
ここで重大な問題は、金利が既にこれほど低く、伝統的金融政策(短期金利の引き下げ)も、今ではすっかりおなじみになった非伝統的金融政策(資産購入)も不十分だと判明した状況で、どうデフレに対処するのか、ということだ。
他に政策がないわけではない。中央銀行によるマイナス金利の導入、中央銀行当座預金金利を下回る金利での市中銀行への貸し出し、外国通貨建て資産を含むより広範な資産の購入、国債マネタイゼーション(財政ファイナンス)、国民に直接お金を供給するヘリコプターマネーなどが考えられる。こうした政策のほとんどは技術的または政治的に問題が多いし、中央銀行と政府が緊密に連携する必要がある。だからといって政府が手をこまぬいていたり対応が遅すぎたりすれば、30年代の大恐慌のように、連鎖的な倒産と債務デフレを通じて不況を引き起こすことになりかねない。2008年の金融危機では経営不振に陥った企業(金融機関)は倒産させればいいなどと多くの愚か者が提案した。
日本の中央銀行は財政ファイナンスが可能性なことを示している
中央銀行の総資産(GDP比)

まず債務比率の高い経済の健全化が不可欠

とはいえインフレの炎にせよデフレの氷にせよ不可避なわけではない。むしろいずれも正しい選択をしなかったがゆえに招いてしまう悲劇と言うべきだろう。なぜならダリオ氏の言うように、両極端を避けることは可能だからだ。
そのためには、財政政策と金融政策を組み合わせてインフレなき成長を創出する必要がある。まず債務比率の高い経済を健全化させる方向にインセンティブを修正する。また今の借金頼みの資産バブルへの依存を減らすべく、個人消費を高められるような政策に転換する。さらに金融機関の抱える債務を家計のバランスシートに移転させる。
仮に実質金利が上昇しても、生産性は伸びているだろうから、インフレなき健全な成長が債務負担におよぼす影響は、まず間違いなく金利上昇の影響を打ち消しておつりが来るはずだ。こうしてかねて懸案である「長期停滞」を脱し、少しましな状態に移行できると考えられる。微妙なさじ加減が必要だが、炎や氷よりはるかにましだ。
米国の公的債務は第2次世界大戦後に急増
米国の公的債務残高(GDP比)
1930年代や70年代の失敗を繰り返す必要はない。だが私たちは既に十分失敗を犯してきたうえ、まさに今、全体としてはさらに失敗を重ねており、炎か氷、あるいはその両方を招きかねない。
世界の経済的、政治的秩序の崩壊は大いにあり得る。そのことがここまでの債務を抱えるに至った今の世界経済と、緊迫の度合いを深める国際政治に与える影響は全く予想がつかない。しかし、極めて深刻なものになり得る。予想外に早く事態が悪化しても、国家主義に傾きがちな政治指導者たちが互いに協調した行動を取ることはできまい。それが、現在の状況で最も心配なことである。
By Martin Wolf
(2019年5月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
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ジャイアンのいない街

*[次の世代に]中心のない世界。
「米単独行動主義 苦痛の叫び」というFTの記事より。
「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(米国を再び偉大な国に)」とトランプは言いつつも、衰退しながらも「落とし所」を探しているという指摘は的を射ている。
オバマのコメント「アメリカはもう世界の警察ではない」とも繋がっている。

けれど、もう少し穿ってみればこれは「時代の変わり目」ということではないだろうか。

今、ネットワークの爆発的な普及で、それこそ革命のように「既存のマンモス企業」が滅びつつある。
先進国では、大手小売や代理店業、通信業者などはさながら戦国時代の様相だ。
一方、途上国では実際にブロックチェーンの仕組みを使って「銀行を介さない送金システム」が普及し始めている。
 
「世界のメガバンクがいつまで安泰か?」と問われても答えを見つけるのは困難だ。
ネットの中では"中心にのない世界"になりつつあるが、リアルの外交もそれをなぞっているのではないだろうか。
アメリカ・ファースト!とかっこよく言いつつも、徐々に地域の国として縮んでいく。
アメリカがいち早くそれに着手しているとしたら、世界一クレバーな戦略だ。
国連を牛耳ったり、武器の開発で覇権を握ったりという「ジャイアンみたいなスタイル」はいよいよ流行らなくなるのではないだろうか。
 
 
米単独行動主義 苦痛の叫び
2019年5月14日 17:09
覇権国にとって自国の優位が揺らぐのを見ることほどつらいものはない。トランプ米大統領の怒りに満ちた単独行動主義は中国との貿易戦争であれキューバへの制裁であれ、強い米国を示そうとするものだ。ただ別の見方をすれば、同氏の攻撃的なツイッターへの投稿は今や伝説のごとく美化された過去を取り戻したいという苦痛の叫びにも聞こえる。
イラスト Ingram Pinn/Financial Times
第2次世界大戦末期、チャーチル英首相との会談を準備していたルーズベルト米大統領はステティニアス国務長官からこんな忠告を受けた。「英国人はあまりに長く世界の盟主の座にいたので、2番手の役割に慣れていない。だからチャーチル首相も新たな戦後の国際秩序を受け入れたがらないだろう」
ステティニアス氏は正しかった。英国は戦争で深刻な財政危機に陥ったが、米国は好景気に沸いた。戦争終結後、西側の盟主の座は正式に米国に移った。
英国はこの変化に心理的に適応するのに長く苦しい時間を要した。1956年のスエズ動乱で出兵し、国際世論におされて完全撤兵するという屈辱を経験した後でさえ、覇権国としての地位を失ったことを認めようとしなかった。きっと英国の政治家たちは自国が米国、ソ連と並んで「ビッグ3」の一角を占めていると思っていたに違いない。信じがたいことだが、欧州連合EU)からの離脱派のリーダーたちが描く「グローバルな英国」というスローガンにも、この苦悩に満ちた叫び声が感じられる。

好戦的な外交政策で力を誇示

今度は米国の番だ。トランプ氏は、好戦的な外交政策によって米国が思い通りにふるまえると世界に誇示しようとしている。米国ほどの力を持たない国は多くの国際ルールに従わざるをえないと感じるかもしれないが、米国は多国間のいざこざや第2次大戦後につくられたカネのかかる同盟関係にわずらわされず、独自に行動できるのだとでもいうように。
米国が覇権国としての地位を失いつつあるという点は英国と似ているが、違うところもある。米国は経済的、技術的、軍事的に傑出したグローバルパワーであり続けている。米ドルが基軸通貨として各国間の決済に用いられ、米国は経済的な強制力を行使できる特殊な立場にある。一方、ロシアは大国だが衰退しつつあり、ユーラシア大陸の支配を目指す中国の計画はその実現に数十年はかかる。
とはいうものの、米国の一極支配は冷戦終結後に突如現れたのと同じくらい短期間で終わった。米国は様々な挑戦を受け、相対的に見れば着実に衰退している。
フランス人が「ハイパーパワー」と呼ぶ超大国として、米国は少し前までは楽々と世界で優位に立っている将来を想像していた。だが、米国がかつて西部開拓による領土拡大を正当化した「マニフェスト・デスティニー(明白な使命)」を、中国が独自に解釈して世界で勢力拡大を図り、今やライバルとして立ちはだかる。米国の地位が侵食されるにつれ、米国に絶対的な忠誠を誓う国は減っている。プーチン大統領率いるロシアは確実に衰退しつつあるが、あからさまな反米姿勢を崩さない。

「米にとって良いことはGMにも良く、逆もまた真なり」

米国はまだ心理的な切り替えができていない。だがトランプ氏の行動に全く根拠がないわけではない。戦後数十年間、米国の国益は驚くほどルールに基づいた国際秩序と合致していた。自由主義的な世界秩序を基盤とする国際機関をつくり上げ、そうすることで自らの繁栄と安全保障を強化した。「米国にとって良いことはゼネラル・モーターズにも良く、逆もまた真なり」という格言は基本的に的を射ていた。米国が欧州や東アジア、中東で和平を推進したのも自国の利益のためだった。
トランプ氏が思いをはせるのはそんな時代だ。手がかりになるのは常とう句である「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(米国を再び偉大な国に)」の「アゲイン」だ。同氏は経済力を自動車販売台数で評価し、貿易と関税を同一視し、反抗的なイランには米中央情報局(CIA)がクーデターに関与した時代と同じ扱いをしている。
こうした考え方は欧州の社会学エドゥアルド・カンパネラとマルタ・ダッスーが近著「アングロ・ノスタルジア」の中でうまく説明している。まず過去の栄光を理想化し、各地の大衆迎合主義者がお気に召すよう恐怖心をかき立てればあら不思議、古き良き愛国主義、つまりトランプ氏の外交政策の出来上がり、というわけだ。

パワーシフトを正しく理解していたオバマ

オバマ前大統領が不運だったのは、こうした世界のパワーバランスの変化に伴い、米国の利益がどんな影響を受けるか、他の人たちよりも早い段階から理解していたことだった。米国がもはや単独で行動できないなら、同盟国を活用することが最も国益にかなう。もし世界のルールを変える必要があるなら、米国が様々な国に呼びかけて共に議論して新しい秩序を築いていく――。オバマ氏はそうした正しい解決策を導き出していたが、それが故に気の毒にも外交面では及び腰だ、弱腰だと酷評された。
これに対してトランプ氏は、もし国際秩序が米国の国益にならないなら解体してしまえという姿勢だ。その芝居がかった駆け引きからも強硬な対応ぶりが見て取れるが、問題はそれが機能していないことだ。
米国は環太平洋経済連携協定(TPP)など多国間貿易協定から離脱したことで損失を被った。メキシコは対米国境沿いの壁の建設費をまだ1ドルたりとも負担していないし、北朝鮮金正恩キム・ジョンウン)委員長は核保有国として事実上の承認を得た。
イランは米国の経済制裁で痛みを感じているかもしれないが、今後、同国内で反米保守の強硬派が勢いづく可能性は高い。プーチン氏は何のおとがめも受けずにシリアやベネズエラで影響力を強めている。トランプ氏が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱したことで、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は倫理的に優位に立った。こうした例を挙げれば切りがない。
米国は日本や韓国、北大西洋条約機構NATO)に加盟する欧州各国など同盟国からの信頼も損なっている。同盟国の政策に共通してみられるのは、トランプ大統領の任期が終わるのをただじっと待つのが得策という態度だ。だが、それはおそらく間違いだ。
トランプ氏以外にもこれまでの国際秩序に幻滅を感じている米国人は多い。しかし、同氏が米国の国益を声高に叫ぶほど、世界は聞く耳を持たなくなっている。
By Philip Stephens
 

 

考えて縮むために

*[高齢化]インフラとコミュニティから考える。
人間の高齢化も大問題だが、地方のインフラも限界が見え始めているようだ。
止めどない老朽化。地方自治体はこの現実を前に、住民とぎりぎりの調整を続けている。
いくら調整をしても、集落の限界値を超えてしまっては上下水道や公共施設を維持するのはどうにも難しい。
そもそもインフラの整備って世界各地で様々で、イタリアの田舎町などは未だにギシギシいう木の橋だったり、下水道の未整備なところも多い。
東南アジアの田舎なんて水道もなく、道路は未舗装でデコボコでも「そんなものでしょう」という感じだ。(中国の高速道路には所どころ穴が空いていて怖かった)
要するに全国で均質にインフラが整備されている日本がすごかった、という話。
これからはこういうインフラ劣化の問題がすごく増えてくるだろう。

政治や行政はそうした事態を予測して「コンパクト化」する街の計画を主導する必要があると思う。

「近距離の"中心地への移住"を計画しながら、積極的にコミュニティを再編成する」という試みが必要になるだろう。
空き家の活用とか、医療や介護の仕組みとか、法の整備とか、若手の呼び込み策とか、街の観光宣伝とか、いろんな活動が全部重要だ。
インフラや地域の維持のために、「あえてコンパクトな街づくりをみんなでしましょう!」という「地方コンパクト党」を結成してはどうだろうか。
そこが地方分権・地域創生の核になるのではないだろうか。
 
 
老朽インフラと闘う(2) 橋をなくす苦渋
2019年5月14日 17:00
「目と鼻の先にあった対岸のバス停からは病院までの直行便があった。橋がなくなった今、同じバスに乗るには車が行き交う国道を1キロ以上歩かなくてはいけない」。秋田県のほぼ中央の山あいにある上小阿仁(かみこあに)村。3月下旬、集落代表の武石悟(66)は昨年暮れからの撤去で一部を残すばかりとなった「上小阿仁橋」(全長120メートル)を前につぶやいた。
撤去が進む上小阿仁橋を前に話す集落代表の武石さん(秋田県上小阿仁村)
日中戦争が開戦した1937年に完成し、取り壊される日までの約80年間、村が管理する橋の中で最長を誇った「我々自慢の橋」。しかし2016年の点検で、主桁の鉄筋露出など著しい劣化が見つかった。
村の人口は県内自治体で最少の2300人。65歳以上の高齢化率は50%を超す。利用者の回復が見通せないなか、改修や架け替えの余力はない。村長だった小林悦次(64)は廃止を決断せざるを得なかった。「たとえ架け替え費用を捻出しても、維持管理費まで負担し続けられない。痛みを強いる結果になったが、迂回路が確保されている以上、少数のため、その他多数が負担する選択肢は取れない」
日本三大暴れ川と呼ばれる吉野川。その上流にかかる徳島県三好市のつり橋「大川橋」も存亡の危機に揺れる。点検で「緊急に措置を講ずべきだ」と判断され、18年9月に通行を禁止した。架け替えには7億円がかかる。市建設部管理課主幹の頭師幸隆(52)は「すぐ支出できる額ではない」と頭を抱える。
問題を複雑にするのは、大川橋に「文化財」の側面もあることだ。地元林業家が1930年代に独力で架け、後に寄贈。悲願だった鉄道駅の誘致にも一役買った。住民の愛着も深く「なんとか残してほしい」との声は根強い。一方で「消滅可能性都市」と名指しされたこともある同市にとって通行できない橋の維持費を背負い続けるほど財政に余裕はない。「廃橋も含めて5月からの説明会で住民に丁寧に理解を求めていく」
国土交通省によると、これまでに撤去・廃止を決めた道路橋は全国で137橋。人口減少が加速する中、費用と便益をてんびんにかけ、改修や架け替えを断念するケースが相次ぐ。上小阿仁村の武石はいう。「廃止の判断は仕方がない。ただ、我々自身も高齢となり、『不便』を乗り越えるだけの力は、そんなに残っていない」。止めどない老朽化。地方自治体はこの現実を前に、住民とぎりぎりの調整を続けている。
(敬称略)
 

 

やる気の低い日本人

*[次の世代に]細かくコミュニケート。
日経より。
まずだ。
「熱意あふれる社員」の割合は米国が32%だったのに対し、日本はわずか6%。
139カ国のうち132位と世界最低のレベルだった。
さらにだ。
さらに日本は「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合が24%。「やる気のない社員」も70%を超えた。改善すべき点は多い。
トト、やる気のない社員も70%を超えたってほんまかいな!
終わってませんか日本?
よくこれで今の経済規模を維持しているなぁとも思うが、それよりも「そんなマインドで仕事をする人」って気の毒だと思いませんか。
そんなんで毎日を過ごすなんて強制収容所にでも入っているようなものじゃない。
それはともかく。
 
生産管理の手法を応用して「ホワイトカラーの生産管理」が始まったのがもう30年ほど前のこと。
今ではセールスフォースなんかが有名どころだけど、「人事の生産管理」というのはまだ一般的ではない。
記事のように人工知能、何て使うまでもなく、働く人たちのマインドケアや人事評価の仕組みはまだ手付かずなところが多い。
"伝家の宝刀"スマホを使って、トップやリーダーがメッセージを発したり、また多くのスタッフの意見を細かく取り入れる動きはこれからが本番だろう。
「細かなネットワークがあるからこそやれること」はまだまだありそうだ。
世論調査だってもうメディアは要らなくなる時代になるだろう。
政治家や政党の役割も、もっとシビアに評価されるにちがいないと思う。
 
 
離職を防げ 社員のやる気に新興企業がAIで点火
2019年5月13日 19:30
ゴールデンウイークの10連休が終わり、多くの企業が通常モードに戻った。新入社員の「五月病」も心配になり始める時期だ。人手不足が深刻ななかで従業員の士気を高め、離職を防ぐことは経営者や中間管理職の重要な役割。それでも部下のやる気をアップするのは簡単なことではない。悩める上司たちをスタートアップ企業の「やる気テック」が救う。
「仕事で最近、達成感を得ていますか」「上司は誠実な態度で対応してくれていますか」。人事労務ソフトを手掛けるSmartHR(東京・港)の約100人の社員すべてのスマートフォンスマホ)には毎月1回、こんな質問が届く。そして社員は「4」「6」などのレベルで答える。

社員の「声なき声」を集める

これは求人サービスのアトラエが提供するソフト「wevox(ウィボックス)」のアンケートだ。社員は「とても思う」から「全く思わない」まで、7点満点の7段階で一問ずつ答える。
回答はすべて匿名で、否定的な評価をしても特定されることはない。スマホを使って3分程度で済むので、職場を離れた際などに上司の目を気にせずに本音を出せる。
質問には「仕事でほめられているか」を尋ねる内容もある。全員の回答結果を自動集計し、組織の状態を点数化する。
評価指標は職務への満足度や人間関係、社員の健康状態など9種類。それらを職場ごとにまとめ、仕事への意欲や組織への思い入れを示す「エンゲージメント」として100点満点で示す。
SmartHRは2017年にウィボックスを導入した。かつては経営トップが社員の不満や要望を聞いて回っていたが「40人を超えると直接のヒアリングは難しくなった」(同社)ためだ。
現在は社員に毎月1回、16項目の質問を送っている。各部門の管理職は結果を見ながら「うちは今月、忙しすぎたな」「人間関係に注意しないと」などと話し合う。

「問題や改善点を把握できる」

同社の人事責任者である薮田孝仁氏は「組織の状態の変化を時系列で把握できるので、システムの導入前には気付かなかった問題や改善点を見つけられる」と話す。
アンケート結果を踏まえて組織を見直した企業もある。17年に導入したスマホアプリ開発のand factory(アンドファクトリー)では「組織に問題が起きる前の『予防薬』になっている」(梅谷雄紀執行役員)という。人材の定着に悩むIT(情報技術)業界にあって、同社の離職率はわずか1.5%だ。
アンケートで判明した問題はチーム間での上司と部下の関係のバラツキだった。当時は役員が社員を個別に直接評価していた。中間管理層を新設し、社員の状態を細かく把握するようにした。
さらに分析結果に基づく問題の改善策は取締役会で議論し、全社に公開している。経営層と社員が問題意識を共有していることが離職防止につながっているようだ。

日本企業のやる気、世界で最低水準

日本企業の社員は世界的にみて「やる気」が低いという不名誉な調査結果がある。米ギャラップが社員の士気を世界各国で調べた17年時点の報告によれば「熱意あふれる社員」の割合は米国が32%だったのに対し、日本はわずか6%。139カ国のうち132位と世界最低のレベルだった。
さらに日本は「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合が24%。「やる気のない社員」も70%を超えた。改善すべき点は多い。
人事評価の過程を透明にすることも、やる気アップには欠かせない。中堅印刷の今野印刷(仙台市)は創業110年の老舗企業だが、システム開発などデジタル事業に力を入れて成長を続ける。同社の事業拡大に弾みがついたきっかけの一つが人事評価の見直しだ。

人事評価を透明化

かつては半年に1回の面談結果を表計算ソフトに入力し、社員約50人の人事評価をしていた。しかし5代目社長の橋浦隆一氏は「評価制度は形骸化していた」と明かす。
社員が「生産性を5%上げる」と宣言しても、いつまでに何を実行するか詰めていなかった。「達成基準が曖昧で、評価ルールも不統一だった」(橋浦社長)。そこで17年に導入したのが、あしたのチーム(東京・中央)の評価サービスだ。
同社のクラウドソフトは社員が書いた目標設定から「努力する」「……したい」などNGワードの頻度を測定する機能がある。これで曖昧な目標設定を排除する。社員の評価が上がると給与や賞与がどこまで増えるかシミュレーションすることも可能。会社側と社員が人事評価の基本情報を共有し、不満を減らす。
評価されるのは部下だけではない。「人事評価の書類提出が締め切りよりも平均3日以上、遅れている」「評価結果を書いた文字数の少ないものが40%以上ある」。人工知能(AI)が上司の態度もスコア化し、改善を促す。赤羽博行社長は「部下の適切な人事評価は上司にとって最大の仕事の一つ」と強調する。
今野印刷はシステム導入後、面談を年2回から4回に増やした。17年度の営業利益は4200万円強と、前年度の4倍だ。「導入から3カ月で、目に見えて社内コミュニケーションが増えた」(橋浦社長)。業務成果などでみた1人当たりの生産性も2割上昇した。
取材の過程では、社員の士気を下げる「悪い共通点」も見えた。従業員の目標設定が曖昧で、上司によって評価基準がバラバラ。しかも部下の成長を認めない。こんな会社で従業員がやる気を出すのは不可能だ。

大事なのは自助努力

スタートアップの技術は人事評価の仕組みや組織の状態を見えやすくするが、それを踏まえて改善できるかは経営者次第。人口減少が進む日本経済を成長軌道に乗せるには生産性の向上が欠かせない。「やる気テック」を生かした自助努力が求められる。
(企業報道部 駿河翼)
日経産業新聞5月8日付]

C世代のこれから。

*[次の世代に]変わるセイジ。
音楽でも映像でも情報でも「なんでも自分の好きにカスタマイズ」、それがC世代。
なるほど上手いことを言う。さすがFTの記者だ。
それにしてもそれが政治にも表れているとは驚きの分析である。
 
英国で人気のブレグジット党に象徴される、またトランプ氏のツイッターにも見られる「分かりやすさ」ばかりが先に立つのが特徴だという。
 
話を聞いていてなんだか「ふにゃふにゃしたもの」になりはしないか心配になった。
口当たりの良い、柔らかなものばかり口にしていると顎が弱くなりはしないだろうか。
大学の教授が「哲学とは人生と宇宙の意味を考えることだ」と言っていた。
さすがPh,D、言うことが違うと感心したものだが、そんな分かりにくいテーマは"C世代"にはまるっきり受けなさそうだ。
 
そうしたフワフワの状態のままで、スマホ国民投票とかに突っ走ったら、戦争や差別など恐ろしい方向に振れてしまうこともあるだろう。
C世代なりにも深く考えていくための政治制度は、確かに重要なテーマにちがいない。
同じテーマで「何度もなんども」意見を収斂していくような仕組みが必要ではないだろうか。
 
「C世代」参加型の政治とは
2019年5月19日 17:00
月に1度、「ネットフリックス・ナイト」と称して娘たちと一緒に動画とポップコーンを楽しむ。ところがインターネットやケーブルテレビのオンデマンド配信があまりに多く、どの番組の何話目を見るかでもめてしまう。
民主党のオカシオコルテス議員は従来の党の主張ではなく、独自の環境政策グリーン・ニューディール」をソーシャルメディアで訴えている=AP
娘たちは欧米の普通のミレニアル世代(20~30代)や10代とたがわず、好きな番組を好きなときに好きな方法で視聴するのは当然と考えて育った。彼女らを(筆者も含め)何でもカスタマイズする(自分好みにする)という意味で「C世代」と呼びたい。我々はお仕着せのものを消費するのでなく、好みのものを生活に取り入れるようになった。こうした変化は気付かないことが多いが、消費生活のほぼあらゆる場面で起きている。政治に関してもいえるだろう。
C世代はテレビ番組表や音楽アルバムに違和感を覚えるように、主義主張が固定化している政党には魅力を感じない。この世代は従来の党派にとらわれず、自分にとって大事な問題や有名人、考え方を巡って結集する。筆者が前に指摘した通り「よりどりみどりの政治」の台頭といえるかもしれない。
例えば英国では欧州議会選挙が迫る中、二大政党の保守党と労働党が支持率を著しく落としている。代わって急速に有権者をひき付けているのが欧州連合EU)離脱派の新党「ブレグジット党」とEU残留を訴える自由民主党だ。

各自が理想を投影

既存政党が支持を失っているのは何も英国だけではない。欧州大陸でも各地で反既存政治を訴える勢力が票をさらっている。
トランプ米大統領もそうだ。形の上では共和党の所属だが、政治的な立ち位置にこだわらず、よりどりみどりの政策を繰り出している。2016年の大統領選挙を制したのは顧みられることがなかった人々に光を当てた「米国を再び偉大に」という輝かしいスローガンを掲げた有名人だったからだ。
まさにこの点が、今や有権者の3分の1以上が「支持政党なし」という米国で受け入れられた。支持者はそれぞれ、様々な理想をトランプ氏に投影したのだ。
民主党左派のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員も似ている。民主党のお決まりの政策ではなく、独自の環境政策グリーン・ニューディール」を若い世代向けに打ち出し、ソーシャルメディアで拡散させている。
彼女はミレニアル世代の好みをとことん活用している。C世代にとって政治行動とは、もはや予定表に沿って投票所のような決まった場所で起こす行為ではない。彼らはツイッターやインスタグラムなどで気が向いたときに政治的な意見を発信することを好む。
ソーシャルメディアへの投稿は従来の政治の定義には当てはまらない。それでもネット上で展開される政治運動の爆発的な力には目を見張る。つまり、デジタル技術で生活のほぼ全ての場面が大きく変わったように、政治的な意見を持つという概念も変わりつつある。問題はそのスピードに既存の制度が追い付いていないことだ。
問われているのは政党政治が崩壊に向かっているかどうかだけではない。C世代が主役の今の時代に合った仕組みを我々が考えられるかだ。国民投票を増やすべきか。ネット投票は必要か。政党の枠組みをなくすべきか。これはもしかすると、テレビ番組の(もちろん、視聴者参加型の)新たなテーマになるかもしれない。
By Gillian Tett
(2019年5月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/
 

リスクを踏み越えて

*[ウェブ進化論]支配される側になる。
日経より。
ウェブカメラが子育てや見守りを劇的に助けているという。
なるほど今風な育児の方法だ。
一方いわゆる「データ活用とプライバシーの問題」も昨今話題になっている。
あらゆる情報はもうデジタルネットワークと無縁ではいられないから、どうやって匿名化するのか?という課題はこれからさらに白熱するだろう。
自分は結論的には「必ず便利がリスクを凌駕する」と思う。
それほど自分たちは"易きに流れる生き物"なのだ。
どれだけリスクがあったって、もうスマホなしには戻れない。
(それどころか、先日i-Phoneのバッテリー交換待ちの数時間は自己喪失感すら感じた。家族や会社の電話番号やメルアドすら覚えていないのに気づいたのだ)
 
反対に。それこそビッグデータがもたらしてくれるだろう恩恵は、今のかなりおバカなAIスピーカーどころではないだろう。
そのうちにものすごく賢くなって、ひょっとしたら一番の友達はAlexaになるかもしれない。
プライバシーの問題すらAIが落とし所を見つけてくれるのではないだろうか。
 
過去の時代を振り返っても、交通事故が起きるから車を廃止する、という方向に話は向かない。
環境が悪くなるからといっても発電所は無くならない。
ましてや個人のプライバシーなんて、軽く流されて自分たちはネットの支配下で便利に暮らすことになるだろう。
ワタシ個人としてはそれで結構だと思っていますけれど。
 
 
リスクと利便性の天秤
2019年5月19日 19:30
5月12日の母の日、皆さまはどのような一日を過ごしただろうか。我が家でも妻が母となったので、本稿執筆時点で私も例年と異なる気持ちでそれを迎えようとしている。
マネーフォワード取締役兼Fintech研究所長。野村証券で家計行動、年金制度などを研究。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年にマネーフォワードの設立に参画。
娘の誕生直後の昨年7月26日、本コラムで「瀧家は今、戦場である」という書き出しを用いた。それから10カ月、戦場という表現はやや遠のいたが、引き続き育児は兵たんと心理戦の組み合わせであると感じる。必要な物資や時間が確保されていれば良いのだが、多くの不測事態が睡眠や準備の不足を呼び、冷静な判断を困難にしていく。我が家の非常事態宣言は10連休の間も当然続いた。
だが、昨年から心理戦を有利な方向へと導いてくれているのは、米国から入手したクラウド型暗視カメラである。ベビーベッドの上に設置されたカメラは、動画を中継するのみならず、アルゴリズムを用いて入眠や起床のタイミング、さらには呼吸頻度をも自動検知し、スマートフォンにプッシュ通知を送れるサービスとなっている。
赤ちゃんの部屋まで忍び足で見に行く必要がなく、寝相も含めた危険を察知し、必要な時だけ注意をすることで、親は人間らしさを取り戻し、一杯の落ち着いたワインにたどり着くことができる。就寝中のダイジェスト動画がかわいいというのもある(むしろ、これが本命かもしれない)。このことで、我が家は大いに心の余裕を取り戻した。
このサービスでは、多数の赤ちゃんの動画がサービス提供者に提供されることで、分析の精度が高まるフィードバックループがある。一方でプライバシーの観点では、アップロードされた動画を、例えば広告配信や、第三者に提供されるなど、ユーザーが意図しない形で利用されることについては、強い懸念があるのも事実である。
4月末にフェイスブック社が開催した開発者向けカンファレンスF8でも、この話題は取り上げられた。同社が昨年から提供している通話端末のカメラは、カメラが人物の方向を向く機能を備えている。
その際、顔を認識する解析はクラウド上ではなく端末内で行われることで、クラウド上で不要な動画データを利用されずに済む設計となっている。F8では同社CTOがこの機能を提供するために数年間の研究開発が必要だったことを述べており、同社が決してプライバシーを軽視していない姿勢の表れとしてプレゼンしている。
何となしに思うのは、一つしか選べないとするならば、どちらが望ましい技術の形なのだろうか、という点だ。赤ちゃんの安全のためであれば、ある程度プライバシーが犠牲になっても、呼吸や事故のアラートは、機械学習してもらって、より精度高く受け取りたい。一方で、赤ちゃんや家庭内の動画が万が一にも悪用されるのには耐えられない。そのような、利便性とリスクの天秤(てんびん)に、データの利活用の軸はかけられている。
日本でも個人情報保護法の改定議論を機に、データの利用に関する議論は二分化する様相をみせている。データの保護を尽くしたあとの天秤の存在については、偏りがない議論がなされることがまた適切だと思う。
日経産業新聞2019年5月16日付]

衣類への挑戦。

*[ウェブ進化論]たたむソフトウェアを。
製造元のセブン・ドリーマーズが破産申請をしたという。
洗濯物自動折りたたみ機の「ランドロイド」が頓挫してしまった。とっても残念だ。
大手やクラウドファンドはもう少し応援できなかったのだろうかと思う。
 
この先「折りたたみ付き洗濯機」を開発するメーカーは果たして出てくるだろうか。
セブン社はソフトウェアの準備で失敗した、と記事にあるがこれまでのノウハウを生かして、ぜひとも「人と衣類」の歴史を変えてもらいたいと思う。
 
「あらゆる衣類を畳める機械」を開発すれば、人類は「衣類についての概念」を変えるかもしれない。
外出の装いとか、洗濯とかがもっと自由になる面白い試みである。
ぜひ途絶えることのない技術の継承をしてもらいたいと思う。
 
洗濯物自動折りたたみ機のセブン・ドリーマーズが破産
2019年5月13日 19:30
4月23日にセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(東京・港、以下セブン社)と、その関係会社であるセブン・ドリーマーズ・ランドロイドが東京地裁へ自己破産を申請した。この2社の社名を知る人は少ないかもしれないが、両社が行っていたのは世界初となる洗濯物自動折りたたみ機「ランドロイド」の開発だったと聞けば分かる人も多いだろう。大手企業との共同開発によって今までなかった商品を市場に投入し、事業の拡大を目指したスタートアップ企業の倒産を追う。

企業信用調査マンの目

信用調査会社、帝国データバンクで企業の経営破綻を専門にする第一線の調査マンが破綻の実例などをケーススタディーにし、中堅中小の「生き残る経営」を考察します。隔週火曜日に掲載
セブン社は、カーボン製品の開発、製造販売などを目的に2011年に個人創業され、14年7月に株式会社へ組織変更された。代表はもとともと、父親の経営する会社で代表を務めるなどして経営経験を積んできた経歴をもち、当社の設立当初は実父会社の技術やノウハウを生かした商品開発を行い、当社における一つの事業の柱となっていた。
倒産前、セブン社の事業は大きく(1)ヘルスケア事業、(2)ロボティクス事業に分かれていた。(1)のヘルスケア事業は、代表自身が睡眠時無呼吸症候群だったことから、その対策として開発された「nastent(ナステント)」という商品で、鼻に柔らかいチューブを挿すことで気道が確保できるのが特徴。この商品は14年7月の発売から約2年半で累計100万本を販売し、16年12月ごろには月間で7000万円を売り上げていたという。
また、(2)のロボティクス事業は、まさに当社が目指していた世界初の洗濯物自動折りたたみ機「ランドロイド」の開発事業にあたる。以前は、この二つの事業以外にカーボン製ゴルフシャフトの製造販売も手掛け、富裕層やプロゴルファー向けに直営店2店舗、ゴルフ用品ショップなど全国に代理店150店舗の販売網を持つなど大きな事業の柱になっていた。18年3月期の決算で、売上高は約7億4000万円をあげていたが、そのほとんどはヘルスケア事業とこのカーボン製シャフトによるもので、世界初のリリースを目指した「ランドロイド」は開発途上で、売り上げに貢献できていないのが実情だった。この開発費負担などから多額の累積損失を抱え、18年3月期末時点で約37億円に膨らんでいた。
洗濯物自動折りたたみ機「ランドロイド」
これほど多額の累積損失を抱えながらも、18年3月期末時点の自己資本比率は68%と高い水準にあった。というのは「ランドロイド」の事業価値を評価した企業やベンチャーキャピタルからの出資が得られていたことが背景にある。設立時160万円だった資本金は、その後幾度となく増資を繰り返し、18年8月には45億5757万円までになっていた。破産申請の直前には累損の解消を目的として減資を行い資本金は1億円になっているが、それまで資本政策で得た資金が当社の資金繰りの大きな支えになっていた。
「ランドロイド」は外観が大きな冷蔵庫のようで、人工知能(AI)による画像認識を行い、ロボットアームで衣類を畳むというもの。これが商品化されれば世界初の商品となり、古くは手洗いで洗濯をしていたものが、今では洗濯機がほとんどの家庭に普及しているように、大きな市場を獲得できる可能性を秘めていた。当初、1台あたり185万円以上の価格で年収2000万円以上の富裕層をターゲットに想定していたが、会社側が行った市場調査では世帯年収1000~1500万円、共働き世帯にも需要が見込まれる結果だったという。量産の軌道化で価格が少しずつでも下げることが出来れば、需要先は更に広がる可能性を秘めていたと言えるだろう。
しかし、開発は難航した。さまざまなメディアに取り上げられ話題性は十分高まっていたが、なかなか市場に投入するまでの開発レベルには達しなかった。例えば、畳むのに時間がかかりすぎる、すべりやすい生地の肌着やジーンズが畳めないなど、技術的課題を抱えていたようだ。そうした課題はあったもの、会社側ではまずは市場に投入することを優先し、量産化で価格を引き下げる戦略を描いていたようだが、その思い通りには進まなかった。
そこには共同開発に携わり、資金的な支援も行っていた大手家電メーカーの意向があったと聞かれる。長年、耐久消費財を扱ってきたこの大手メーカーからすると、まだ商品化できるレベルではないと、課題を持ったままでの市場投入に難色を示され、発売時期が延期されることになった。
この様に計画通りに開発が進まない状況のなかで、当社の売り上げの多くの部分を占めていたヘルスケア事業のナステントにもトラブルが発生してしまう。17年1月頃にユーザーによる誤飲が発生し、これによってナステントの販売には医師の処方箋が必要になり、この影響から月間の売り上げがピーク時の10分の1まで減少する事態に陥る。
丸山昌吾(まるやま・しょうご) 帝国データバンク東京支社情報部情報取材編集課長。警察官としての勤務を経て93年同社に入社。横浜支店調査部、同情報部でさまざまな業界の企業の信用調査や破綻企業の取材を行ってきた。13年4月から現職。神奈川県出身
その一方で、大きな期待を寄せていたランドロイドは、更なる研究開発が必要になり、手元の資金は減少の一途をたどるようになる。このため会社側は共同開発先に更に支援を求めたが思い通りに進まず、新たな資金調達先も模索し、中国の企業からの出資契約を受ける交渉を進めていたが、こちらについても契約締結に至らない状態が続いた。このためカーボン製品製造事業を譲渡するなど資金手当てに努めたが、18年3月期末時点で17億円強あった現預金は、破産申し立ての直前では4700万円にまで減少、すでに1億円以上の未払い金も抱え、ついに事業継続を断念し破産を申し立てることになった。
しかし、破産後も当社の事業に関心を寄せる企業があり、裁判所の許可のもと事業売却を前提にヘルスケア事業は継続し、ランドロイドについても出資交渉を続けてきた中国企業など数社との間で事業譲渡に向けた交渉を続けているという。
世にないものを作り出すというスタートアップ企業は数多い。そのなかで成功する企業もあれば、事業化に至らず市場から退出する企業もある。そうしたスタートアップで資金的課題を抱える企業は多い。ランド社では共同開発先の大手メーカーをはじめ、多くの企業やファンドから資金を得て洗濯物自動折りたたみ機の開発を続けてきたが、商品化レベルに達するまでのハードルが高く、開発期間が長引いてしまったことで、周囲からの支援もついに限界になってしまった。
 

 

抜け落ちた議論(4)

*[次の世代に]自分で最後を決める。
さてこれからの日本のこと。
未曾有の高齢かと少子化を迎えるのに、議論が全く足りていない。
特に「医療と介護」のことだ。
どこまでも「延命」「治療」を求めると、今の科学はどんどん進むから「どんどんお金がかかる」ことになる。
金持ちで、自分の延命に費やしたい人はそれでいい。
自分たち一般市民は「どれだけ税金に頼るか」を自分たちで決めるべきだ。これを人任せにしてはならない。
これから75歳になる団塊の世代始め、下は50代の自分たちが「治療」「延命」「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)つまり生活の質」について意思表示をしないと、医療と介護は永遠に迷走するに違いない。
例えば、自分は食事や排泄に介助が必要になったらそれまで、と思っている。
 
無限に進む医療と科学は素晴らしいが、それに甘えて「いくらでも頼みます」では若年世代の負担は増えるばかりだ。
少子化になった「今の時代の収拾は、我われ世代が率先してあたらねばならない」だろう。
子供達に「年金頼むよ」とは決して言いたくないと思う。
 

抜け落ちた議論(3)

*[次の世代に]分かっていても止まれぬ被害。
例えば交通事故のこと。
自分は法律の世界に入るまではあまり意識したことがなかったが、交通事故は多い時には年100万件を超していた。
今でも40万件以上がコンスタントに起きていて、年間3500人が死亡している。
誰がこの「車両」を街中で走らせることを決めたのか。
保険や免許制度や法律や信号機が整備されているから、いいものだろうか。
法律は年々厳しくなっているが、これからもまだまだ交通事故被害者は出続けることは間違いない。
大学では「それ(車の利用)をして得られるメリットが、(事故のような)デメリットを上回っていること」が経済合理性だと聞いた。
つまり「命の有無」よりは経済性が優先される、と聞いて驚いたことを思い出す。
(その後民放の「すべてお金で解決する」というのを聞いてさらに驚いたが)
 
みんなが「一定の人は事故の犠牲になるけれど、断然便利だから利用しようね」という話なのだ。
航空機だって船舶だって同じ理屈である。
さて、今の世間に愚痴を言いたいわけではなかった。
(つづく)

抜け落ちた議論(2)

*[次の世代に]大事な価値観のこと。
医療にいくら補助を出すのか。
自分はこういう話題を聞くたびに大学時代の教授の「経済合理性」という話を思い出す。
(大学の講義で面白かったのはこの経済合理性と「価格弾力性」の話だけだった。あとは記憶がまるでない)
例えば、全国の電車のホームから転落する事故を防ぐために、主要駅に「ホームドア」を設置するという動きが進んでいる。
一駅あたりに必要な経費は4億円以上で、これから東京都でも300駅で設置予定だという。
一方事故で犠牲になる人は全国で年間100件くらいだ。
さてドアの設置は何が目的なのだろうか。
それを言うなら街中のガードレールだって足りてないところかいくらでもある。
交通事故についてはもっと根が深い。
「いくらの医療費をどこまでかけるのか」という議論を無しに、今の医療制度はありえない。
無制限に医療や介護を進めるのは、結局国民全員にとって良くないことになるだろう。
(つづく)

 

抜け落ちた議論(1)

*[次の世代に]命の捉え方。
---科学が進めば進むほど、より問題は深くなる---
ガンや内臓疾患や認知症など。
これまでは救えなかった命が、お金をかければ救えるかもしれない、という課題だ。
明治時代には新生児の15%は死亡していたという。今は0.2%だ。
 
〜〜医療はどこまで命(延命)を追い求めるのか〜〜
という重い問いをあらかじめ自分たちは覚悟しておかねばならない。
この問題は「医療」をテーマとする医師や学者たちではなく、自分たち一般市民が意思表示をしなければならない問題になっている。
(つづく)
 
日本で画期的新薬が出なくなる日(日経ビジネス
2019年5月13日 19:30
日本でいくらの値がつくのか──。製薬業界がこう注視する新薬がある。スイスの製薬大手ノバルティスが開発した血液がん治療薬「キムリア」。米国で1回の投与で5000万円超の値がついた新薬の国内価格を、厚生労働相の諮問機関が2019年5月末にも決める。薬価は米国と同水準となる公算が大きいが、薬剤費を原則、公的医療保険で賄う日本では財政悪化懸念が深まる。このため、いずれ薬価は引き下げられる、との見方が製薬業界にはある。
画期的な新薬の製造原価は高くなる傾向に(写真:Comezora/Getty Images)
小野薬品工業が14年に販売したがん免疫薬「オプジーボ」がそうだった。当初は100mg約73万円という価格だったが、仮に1年使用すると3000万円以上かかると試算され、薬価は段階的に4分の1まで引き下げられた。
製薬業界が懸念するのは、オプジーボのような薬価引き下げが当たり前になることだ。日本では、有効性や安全性が認められて薬事承認された医薬品は、原則として公的医療保険で賄われる。薬の値段は類似品のない新薬なら原価を積み上げて算出するが、開発費が膨らめば薬価も高くなる。医療保険財政への影響を最小限にしようと、国も薬価引き下げに前向きだ。
欧米では最初から医療保険に縛られない道がある。新薬の効き目に応じて患者から支払いを受ける「成功報酬型」制度だ。ノバルティスはキムリアで米国の同制度を活用。効き目が認められないケースでは、ノバルティスは対価を得られないが、新薬を必要な患者にいち早く送り届けられる利点がある。欧米ではこうした成功報酬型を採用する製薬会社が増えている。武田薬品工業も欧州で販売予定の高額なバイオ医薬品での導入を検討し始めた。

中国に創薬拠点の狙い

日本でも入院期間を短縮するなど、医療費全体を節約する効果を加味して薬価を調整する「費用対効果評価制度」を19年4月から本格導入するなど、薬価の算定基準を見直す機運も出てきた。それでも公的医療保険での支払いが前提。成功報酬型を導入して財政負担を軽くしようという議論は進まない。
「このままでは新薬開発の投資先として日本よりも中国が優先されるようになる」。こう指摘するのは米イーライリリー日本法人のパトリック・ジョンソン社長だ。中国では医薬品需要が拡大。世界の医薬品市場に占める中国比率は05年の2.7%から20年に11%に高まる見通しだ。加えて新薬を積極的に取り入れる中国は規制改革を進めており「日本より新薬の業績見通しが立てやすい」(ジョンソン社長)。米メルクやスイスのロシュなど欧米大手が続々と中国に創薬拠点を設けている。
一方の日本。05年に11.1%の市場シェアで、世界3位の市場規模を誇ったが、20年には6%までシェアを落とす見込み。市場としての魅力が薄れ、薬価でも報われない日本に製薬会社はどこまで画期的な新薬を投入するか。
誰もが公平に薬を手に入れられる日本の公的医療保険は世界に誇れる制度だ。一方で、医薬品の世界で生まれたイノベーションの果実を得る仕組みも考える必要がある。誰もが納得する制度をどう作り上げるか。技術革新が突き付けた課題は重い。
日経ビジネス 古川湧)
 

 

地方の時代。

*[次の世代に]積極的に縮む。
日経より。
老朽インフラと闘う、という見出しだが、そんなものとは闘えないだろう、と。
負け戦だ。
「いかに負けるか」という闘いになるだろう。
少子高齢化」をまるで悪者のようにいう向きもあるが、自分は「高ら多産奨励政策をとるべき」という主張は早計だと思っている。
まずそれぞれの地域で「人口を増やすのがベストか」とか「適正な都市の集約を図って持続的な街を計画するか」とかいう議論が抜け落ちている。
これは我われ一般人が真剣に考えなければならないことだ。
 
大都市で暮らしていると、ふと地域の中心街に行って「利便性と自然の共存」に気付いたりすることがある。記事には
日本の水道が劣化した背景は人口減だ。水道事業は経費を料金収入で賄う独立採算が原則。水道の利用者が減って料金収入が目減りし、約3分の1の事業が実質的な赤字に陥った。耐用年数が過ぎた設備が増えても予算が足りないので、更新する配水管は毎年、全体の1%以下しかない。
とある。
田舎の集落のインフラを永遠に維持する、という戦略では闘えない。
限界集落にしがみつくのではなく、どのくらいの地域にとどまって「戦略的に縮むのか」という戦略がいよいよ必要な時代になってきた。
 
ネットの発達がますます進むこれからの時代。
若くても暮らしやすく、老後も快適な地方都市は、案外日本には生まれやすいのではないだろうか。
これからは地方の巻き返しの時代になるような気がしている。
 
老朽インフラと闘う(1) 蛇口から水が出ない
2019年5月13日 17:00
3月19日、北海道積丹半島にある人口約3千人の古平町の全域で水道が使えなくなった。川の取水口と浄水場を結ぶ管が故障したのが原因だ。復旧作業は雪に阻まれ、水道が元通りになるまで9日間もかかった。
1メートル超の積雪のなか、漏水した管を掘り返す作業は難航した(3月、北海道古平町)
「蛇口をひねっても何も出てこないんだもの、びっくりしちゃった」。同町に住む小林あさの(83)は振り返る。町外から駆けつけた給水車で飲み水は確保できたが、風呂は隣町の温泉に臨時バスで通い、洗い物も最低限しかできなかった。「とにかく不便だった」
影響は産業にも及んだ。漁協に隣接する水産加工場は、稼働時間を半日に短縮せざるを得なかった。地元の人に親しまれる温泉施設「しおかぜ」はシャワーなどの設備が使えず、営業停止を余儀なくされた。
古平町が今の水道網を整備したのは1970年代。水道設備の法定耐用年数である40年間を過ぎ、老朽化が進む。町は配水管の更新に年数千万円の予算を割いてきたが、断水の原因となった浄水場の設備更新は「億単位の費用がかかり、なかなか手を出せずにいた」(副町長の佐藤昌紀)。
□   □
水道の漏水・破損は全国で年間2万件に上る。何らかのトラブルが毎日50件以上も起きている計算だ。18年6月に発生した大阪北部地震でも老朽化した水道管が破損し、影響が広範に及んだ。だが水道を安定させる改革は一進一退の様相だ。
19年1月。浜松市長の鈴木康友(61)は上水道事業の運営を民間企業に委ねるコンセッション方式の導入を無期限で棚上げすることを表明した。民間企業の活用は、水道の処方箋の一つとして18年12月に成立した改正水道法に支援策が盛り込まれたばかりだった。
同市は18年4月に下水道施設の一部運営で全国初のコンセッション方式を導入した。上水道でも先駆けになると目されていた矢先の失速は、民間活用に水道の活路を探る全国の自治体に冷や水を浴びせた形になった。
誤算だったのは市民の反発だ。市の事前調査では水道料金の値上げ幅を抑えることができるという結果だったが、水質悪化や料金高騰に懸念を抱く市民団体が3万人を超す反対の署名を集めた。
「完全民営化だとの誤解が広まり、冷静に議論できる環境にない」。鈴木は苦渋の決断に至った理由をこう説明した。4月の市長選で4選を果たしたが、当選後の記者会見でも「民営化と言われなくなるまでは議論はできない」として慎重姿勢を崩さなかった。
日本の水道が劣化した背景は人口減だ。水道事業は経費を料金収入で賄う独立採算が原則。水道の利用者が減って料金収入が目減りし、約3分の1の事業が実質的な赤字に陥った。耐用年数が過ぎた設備が増えても予算が足りないので、更新する配水管は毎年、全体の1%以下しかない。
□   □
改革のもう一つの柱である広域化もすんなりとは進まない。厚生労働省によると行政事務や予算の区切りである4月に広域化したのは今年は2地域だけ。厚労省の検討会では「市町村合併と比較すると大変に難しい」(松江市上下水道局長の川原良一)との声が出た。
家庭用の水道料金は全国平均で月3244円だが、市町村の格差は住民税などの税率と比べてはるかに大きい。全国で最も安い兵庫県赤穂市の853円に対し、最も高い北海道夕張市は6841円と8倍の開きがある。事業の広域化で水道料金が上がる自治体が抵抗すれば話は進まない。
水道民営化が進んだフランス。料金は欧州平均より11%安く、人口の95%以上が高品質の水道水にアクセスできる。近年は料金への不満からパリ、グルノーブル、ニースなどが公営に戻したが、一方で新たに民営化する自治体も多い。効率的で質の良い水道を求める改革の努力が盛んだ。
人口減の日本では水道改革は時間との闘いだ。民間活用であれ広域化であれ、コスト削減も料金の引き上げも進まなければ水道事業そのものが破裂する。各地で悲鳴を上げる水道管は「水があるのは当たり前」という日本人の意識の変革を迫っている。
(敬称略)
水道、橋、トンネル……日本のインフラが老朽化できしむ。維持か廃棄か再生か。インフラと闘う最前線を追う。
 

 

停滞ムード

*[経済]ヘタにお金は使えない。
日本の大手企業の自社株買いが倍くらいに増えているという。
端的に「お金の使い道がない」のだ。
よくわからない見通しに対しては、自社の資本を手厚くしておこうという守りの戦略。

借金を負って返すのも大変だが、実は手元にあるお金を「きちんと使う」というのも難しいものなのだ。

特に上場して市場からお金を集めていれば、投資家の目線は厳しい。
損せずに、しかも投機的な運用でもなく、「将来の自分たちや株主のため」にお金を使うということに自信がなくなれば「自社株買い」になるわけだ。
経営者の大事な役割は「資本を集めること」もあるが、そのあと「集まった資本をきちんと使えること」でもある。
そんなこと、自分が独立した時にはちっとも知らなかったが、このくらいのことは義務教育でも教えておくべきだろう。
上場企業で多数の株主がいるなら、確実なリターンを毎年毎年求められる。
そのために無理な設備投資やM&Aをする、というのでは本末転倒なわけだ。
 
大手企業は設備投資よりは成長分野のM&Aの様子見、という感じだが「景気が停滞気味なオリンピック前」から景気はどう動くのか、とても注意が必要だと思っている。

自社株買い急増、9割増の3兆4000億円 19年度計画

日本株市場は欧米主要市場に比べ営業日数が少ない(東京・中央の東証アローズ)
上場企業の自社株買いが急増している。2019年度の自社株買い計画額は21日時点で、約3兆4千億円と前年同期比9割増だった。三菱地所など資本効率を改善するため、株主への還元策を見直す企業が相次いでいるためだ。ファナックなど減益でも自社株買いに踏み切る例も増えている。18年度の自社株買い額は日銀の上場投資信託ETF)の買い入れ額を上回り、日本株の重要な下支え役となっている。
日銀の金融緩和政策などを背景に、上場企業は潤沢な手元資金を抱える。ただ経営者は大規模な設備投資には依然として慎重だ。コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革の進展で「従来よりも資金の使い道を問う投資家の視線が厳しくなっている」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之シニアストラテジスト)。消去法的に自社株買いに資金を充てる企業が増えている。
自社株買いは、企業が発行した株式を自社で買い取り、市場に流通する株式を減らす行為を指す。株式需給が引き締まり株価を高める効果があるほか、1株当たりの利益も増える。少ない資本でどれだけ効率的に稼ぐかを示す指標、自己資本利益率ROE)を底上げする効果もある。
4月1日から5月21日までに発表した自社株買い計画額(取得枠)を集計したところ、合計額は約3兆4100億円と、前年同期(1兆7700億円)と比べて93%増となった。計画を発表した企業数も約230社と3割増えた。
目立つのが、資本政策を改め、新たに自社株買いに踏み切る企業だ。
三菱地所は今回、初めて1000億円分の取得計画を発表した。不動産市況に応じて負債と資本のバランスをコントロールする経営方針を新たに掲げる。現在のような不動産相場が高値圏で推移している局面では、資産売却と株主還元を増やすという。
京セラは、ROEの目標を初めて設定すると同時に、還元手法に自社株買いを加えた。取得計画は未発表だが、ROEを低下させる要因となる自己資本が膨らみすぎないよう自社株買いを機動的に使う。
マクセルホールディングスROE改善のため自己資本比率を21年3月期に約50%に下げる(前期は62%)。この計画を達成するため、稼いだ利益額以上を配当と自社株買いで株主に還元する方針だ。
自社株買いの規模も拡大傾向にある。ソニーは2月に引き続き、2000億円の自社株買いを実施する。KDDIは1株利益を5割増やす目標を掲げており、今月は1500億円を上限とする自社株買いを発表した。
減益でも自社株買いを増やす例も増えている。利益成長が鈍る分、還元で株主に報いる狙いがある。
今期の純利益を6割減と発表したファナックは3年ぶりに自社株買いを発表した。前期に13%減益だった旭化成は、17年ぶりに自社株買いを行う。19年12月期に2割の減益を見込むキヤノンは、2年ぶりに500億円の自社株買いを計画し、金庫株を通じてM&A(合併・買収)に備える。
日本の18年度の自社株買い額は6兆680億円に達し、日銀のETF買い入れ額(約5兆6500億円)を上回った。ただ米ゴールドマン・サックスによると、米国は主要上場企業500社だけで、年8000億ドル(約88兆円)と巨額の自社株買いを実施する。日本は米国に比べて大きく見劣りしており、市場では「日本企業はまだ拡大の余地がある」との声が多い。

革命前夜。

*[次の世代に]シングルイシューて
最近の世論調査では、支持率トップに「ブレグジット党」(Brexit Party)が躍り出た。
「保守」「労働」のように理念を表す党名ではない。
単一の政策争点だけを掲げるシングル・イシュー政党だ。
ポピュリズム、と一言で言ってしまえばそれまでですが。
それにしても「離脱党」とは子供のようなネームじゃないの。
英国紳士は子供になってしまったのだろうか。
欧州でも政党地図は激変している。共通するのは極右やポピュリズム大衆迎合主義)政党が伸長している事実だ。(中略)
経済も軍事も、戦後体制は鈍い音を立てて崩れつつある。(中略)
令和の改革は、本当の意味で日本型を一から考え、積み上げていくしかない。与党も野党も時代に合わせて変わり続ける。それが過度のポピュリズムを防ぐ唯一の道でもある。

過去何千年、全く同じ条件の時代なんてあるはずもなく、令和の政治も初めての「一回性」の連続なのに違いない。

「過度のポピュリズム」は悪いもののように言われているけれど、実は今の時代の「革命の兆候」なのではないだろうか。
今ほど行政も政治も政府も膨張して身動きが取れない時代」も過去初めてのことだと思う。実に重苦しい。
ポピュリズムはそうした既成事実のリセットのために盛り上がっているのだと自分は思う。
静かなる革命が起きるのはそう遠くないに違いない。
 
 

外国モデルなき令和の政治 ポピュリズム防ぐには 政治部長 丸谷浩史

令和の政治が始まった。不思議なもので、令和も平成も、元号が変わって最初の国政選挙は参院選のめぐり合わせとなる。平成元年の夏、自民党は初めて過半数を割る惨敗を喫し、社会党土井たか子委員長に「山が動いた」と言わしめた。
それから何度、自民党は「終わりの始まり」と言われただろう。30年たったいま、自民党は衆参ともに過半数を持ち、1強状態にある。動いたはずの山が、いつの間にか元に戻ったのだ。
自民党はなぜ強いのか。理由はいくつもあげられてきた。政権への執着が強い、地元との密着度が他の野党とは違う……。だがもっとも大きな理由は、自民党の正式名称「自由民主党」にあるのではないか。
自民党は初めて下野した平成5年(1993年)、橋本龍太郎政調会長が「野党の今こそ長期ビジョンをつくろう」と呼びかけ、新組織を立ち上げた。橋本氏が自ら委員長を務め、主軸となる委員長代理は石原慎太郎氏に任せた。
喪失感と無力感に覆われていた自民党にあって、ここでの議論はベテランから若手まで活気があった。「タカ派」の石原氏が主導する会合に「リベラル派」の代表格、加藤紘一氏は「保守もリベラルも、タカもハトもない」と毎回、欠かさず顔を出した。
自民党という名前が古くさい」と党名変更も話題になった。当時のはやりは「新」の字や、柔らかい印象を与えるひらがなだった。これを聞き及んだ梶山静六氏は「自由主義と民主主義、両方が入っている党名なんてそうはない。何でもできる」と笑った。事実、その後の野党の党名には「民主」や「自由」が多くみられる。
その後、非自民政権が内輪もめを起こし、政略の季節になると、ビジョン論議は急速に沙汰やみとなり、行動に移る。そして社会党委員長を首相に担ぐ奇策で政権に返り咲いた。当時、小渕恵三氏は「我々はハト派政権であります」と宣言してみせた。
名は体を表す。政治の世界で大義名分、建前は極めて重要になる。「自由民主党」はその名前の故に、あらゆる主張や政策をのみこめた。翻って安倍晋三政権はどうか。日本の政治を少しでも知る外国人が不思議に思うのは「安倍政権は本当に保守なのか」だという。米欧諸国で移民政策は国論を二分する大問題となっている。
安倍政権では首相と菅義偉官房長官が「移民ではない」と確認したうえで、外国人労働者の受け入れ拡大をあっさりと実現した。賃金も政府主導で引き上げている。これが外国からは「リベラルな中道政権」に映る。
主義や理念の定義はさまざまだろうが、いわゆる保守と中道・リベラルが違和感なく共存する空間が、首相官邸自民党にはある。平成の2度にわたる政権交代があわせて4年ほどで終わった理由のひとつも、ここにある。「非自民政権」とは、自民党でないことがアイデンティティーとなる。自民党は昭和30年以来の長きにわたって政権党の座にあり、その政治手法は日本社会そのものに組み込まれている部分もあった。
自由民主党」を全否定すると、政権運営のモデルは外国に求めざるを得ない。2009年の民主党政権は、それを英国に見いだし、政府と与党の一元化を一気に進めようとしたこともあって、つまずいた。政権奪還をはたした自民党は、民主党の失敗を教訓に、首相官邸主導や与党優位に働く小選挙区制の政治システムを、20年かけて完成形に導いたといえる。
制度は完成したと思った瞬間に綻びが生じる。強すぎる官邸がブラックボックス化し、政官関係にゆがみが生じるなどの指摘も出てきた。では、新たな改革モデルをどこに求めるのか。
幕藩体制から近代に脱却する時から、日本の政治はドイツや米国など外国の制度を参考にしてきた。平成の政治改革でモデルとなってきた英国の二大政党制は、ブレグジット欧州連合からの英国離脱)で機能不全をさらけ出した。最近の世論調査では、支持率トップに「ブレグジット党」(Brexit Party)が躍り出た。「保守」「労働」のように理念を表す党名ではない。単一の政策争点だけを掲げるシングル・イシュー政党だ。
欧州でも政党地図は激変している。共通するのは極右やポピュリズム大衆迎合主義)政党が伸長している事実だ。既存の政治勢力が改革を怠り、民意が離れれば、ポピュリズムが台頭してくるのは、戦前の日本も含めて歴史の教えるところでもある。
もうひとつの世界の特徴は、自国優先で民意をつなぎとめようと、力による政治と外交が横行することだ。米国のトランプ大統領は「経済も軍事も、今なら勝てる」とばかりに中国に攻勢をかけ、同盟国への要求も強める。経済も軍事も、戦後体制は鈍い音を立てて崩れつつある。
米欧諸国に比べれば、日本の政治は安定している。もはやモデルとすべき外国の政治システムは、存在しない。自民党の支持基盤も、中選挙区時代ほど強固ではない。野党からも「保守イコール自民党」でなく「我々も保守だ」の声があがってきた。令和の改革は、本当の意味で日本型を一から考え、積み上げていくしかない。与党も野党も時代に合わせて変わり続ける。それが過度のポピュリズムを防ぐ唯一の道でもある。
丸谷浩史(まるたに・ひろし)
1989年日本経済新聞社入社。政治部、経済部で自民党や旧大蔵省などを取材。米ワシントンにも駐在した。メディア戦略部長を経て、現在は編集局次長兼政治部長