藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

メディアのこと。スマホのこと。(1)

*[ウェブ進化論]まだ恐竜のメディア。

FTより。
サウジ皇太子とamazonのCEOとの間でハッキング疑惑があったという記事。
感じた恐ろしいことは二つ。
「メディアの力」と「スマホという結節点」。
 
一つめは「メディアの力」。
twitteryoutubeが急速に台頭し、"放送やメディアは滅ぶ"と声高に言う人は多いが。
それでもまだまだネットvsメディアの力は互角ではない。
いろんなビジネス集団が「放送局」とか「新聞社」とか「球団」とか「出版社」を買収したがるのはちゃんと"それだけの理由"があるからなのだ。 
それほどメディアの力というのは強力で、普段大衆には「優しい顔」をしているが、つくづく「喰えない存在」だということを意識しておかねばならないと思う。
"真実を伝える"とか"権力を監視する"というのはあくまで表の顔に過ぎない。
(つづく)
 
[FT]サウジのハッキング疑惑はゴシップでは済まない(社説)
 

Financial Times

「ばかげている」――ムハンマドサウジアラビア皇太子の「ワッツアップ」のアカウントがアマゾン・ドット・コム創業者であるジェフ・ベゾス氏の携帯電話のハッキングに関わっていたとする報告書に対する同国のコメントだ。だが、信頼の置けるフォレンジック(鑑識)の専門家が「中程度から高程度の自信」をもつという報告の内容は極めて重大だ。事実であれば、少なくとも事実上の国家指導者である皇太子の取り巻きが世界的な実業家に対する違法な監視行為に関わっていたことになる。サウジ政府が自ら述べたように、徹底した調査が求められる。

 
サウジ皇太子(右)のワッツアップアカウントを使ってベゾス氏の個人情報がハッキングされたとの報告をサウジ政府は否定している=ロイター(日経コラージュ)
残念ながら、ベゾス氏の携帯に仕込まれたスパイウエアが自己破壊的なものであったとみられ、真実の究明は永遠に不可能である可能性がある。
 
今のところ、本紙フィナンシャル・タイムズが確認した分析の状況証拠は強力だ。筆頭著者のアンソニー・J・フェランテ氏は元米連邦捜査局(FBI)高官で、ホワイトハウスで米国家安全保障会議NSC)のメンバーも務めた人物だ。報告書によれば、ベゾス氏とムハンマド皇太子は2018年4月4日に携帯電話の番号を交換した。5月1日、ベゾス氏は対話アプリのワッツアップの皇太子のアカウントから予想外の動画ファイルを受け取った。それから数時間のうちに、ベゾス氏の「iPhone(アイフォーン)X(テン)」からの数カ月に及ぶデータ「大量無断流出」が始まった。携帯から送信されるデータ量はピーク時に、以前の水準の数百倍に達した。皇太子のワッツアップアカウントからベゾス氏に送られた2つのメッセージは、当時は未公表だった不倫関係を含め、ベゾス氏の会話と人間関係についての内部情報を示しているように見えた。
 
ベゾス氏の携帯が同じ頃に、今のところ検出されていない出所の異なるマルウエア(悪意のあるプログラム)に感染した可能性はある。皇太子のアカウントが無断で使われた可能性は排除できない。しかし、幹部側近以外の人物が皇太子のアカウントにアクセスできるという事態は現実的ではない。国連の人権専門家2人が22日に指摘したように、もしこれがサウジの仕業だったとすれば、敵対者と戦略的に重要な人物を監視するというサウジ当局の憂慮すべきパターンが浮かび上がる。
 
ワシントン・ポスト紙に寄稿していたサウジ人記者ジャマル・カショギ氏が2018年に殺害された身の毛もよだつような事件以降、サウジ政府とポスト紙オーナーのベゾス氏の関係は非常に敵対的なものだった。ベゾス氏のセキュリティーアドバイザーなどは、同氏に対する入念なソーシャルメディア攻撃と不倫情報のリークはサウジの仕業だと主張していた。カショギ氏の殺害がサウジ政府の指示だったことを示す説得力のある証拠をポスト紙が報じた後のことだった。
 

カショギ氏殺害の5カ月前から携帯監視

興味深いことに、ベゾス氏の携帯の監視はどうやら、カショギ氏殺害の5カ月前に始まっていたようだ。ハッキングに関する報告書によれば、カショギ氏が2017年秋にポスト紙の仕事を始めて以降、サウジ側は同氏のコラムに不満を抱くようになった。今にして思えば、サウジは外国の投資家を熱心に誘致する一方で、情報や影響力の確保を期待して一人のビジネスマンの電話をハッキングしていた可能性があるようにみえる。
 
一連の疑惑を受け、サウジの高官に会ったないし、会う計画がある銀行関係者や企業経営者は慎重に考え直すようになり、緒についたばかりの経済改革を深化させようとするサウジ政府の取り組みを難しくするだろう。同国のイメージは甚だしく傷ついており、その再構築は困難で長い時間を要する。サウジとしては、カショギ氏殺害を指揮した首謀者に責任を取らせるという自らの約束を果たすことが先決だ。事件に関与したサウジ人8人に先月下された有罪判決は、典型的なインチキ裁判の特徴を備えていた。
 
ベゾス氏の携帯に仕込まれたスパイウエアが具体的に何だったのかは特定されていない。米フェイスブックは、ワッツアップに見つかった脆弱性は解消したとしている。だが、今回の件は、サイバースパイツールの取引の危険性を改めて浮き彫りにした。その規制と輸出管理について多国間の枠組みを作ることが喫緊の課題だ。規則の採用・執行を拒む国には懲罰的な措置を盛り込む必要がある。
 
(2020年1月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
 
 

あはれと感謝。

*[次の世代に]それでも人は書く。
ほぼ日より。糸井さんのまるで詩のようなテキストをぜひ読んでもらいたい。
(毎日のブログについて)最低限、じぶんが読みながら書いていることで、
文を書いていることに絶望せずにいられるのだろうか。

そして

(読んでくれる)そのことへの感謝は忘れないようにしようと思うからだ。
何かを書く人は、なぜ書くのだろう。
最低限の自分以外の目には触れないかもしれない文章を、なぜ書くのか。
誰も読まない文章は絶望的だ。
けれどそれでいいとも思う。
 
何を書こうが叫ぼうが。
炎上しようが。
結局は自分に還る。
文章を書き残すというのは自分で自分を見る、というだけのことかもしれない。
 

12月24日の「今日のダーリン」

 
・この、ぼくの書いた短文は、
あなたが読むことによってここにあらわれる。
書かれるだけで、だれにも読まれなかった場合には、
なんにもはじまらないし、あらわれることもない。

読まれないことを覚悟して書くことも、なくはない。
しかし、まったくだれにも読まれないとは思っていない。
少しでも読まれることを期待して書くものだ。
最低限、じぶんが読みながら書いていることで、
文を書いていることに絶望せずにいられるのだろうか。
あるいは、たったひとりでも読んでくれる人がいると、
信じていることで、書くことは続けていられる。
書いたものが読まれるというのは、
実に、たいへんに幸福なことである。

ぼくは、毎日、こういった文を書き終えた後で、
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
と書くことにしている。
来てくれる、読んでくれることがあって、
はじめてコミュニケーションがはじまるわけで、
そのことへの感謝は忘れないようにしようと思うからだ。
受け手があっての、コンテンツ(出し物)なのである。

ぼくは、かつて熱帯雨林のなかでゆっくりと
飛びながら命をなくしていく蝶の映像を見たことがある。
羽搏きのひらりひらりが次第にゆっくりになって、
着地するというより、落ちて死んでいった美しい蝶。
これをカメラが撮らなければどうだったのだろうか。
そのカメラが撮った映像を、ぼくは見たけれど、
熱帯雨林のほとんどの蝶は、だれの目にも映らずに、
死んでいっているはずだったのだ。
そこになんの問題もあるわけではない。
しかし、だれかが見ること、知ること、感じることが、
あの蝶の美しい死を世界にあらわしたということに、
ぼくはなんだか気が遠くなっていた。
蝶という生きものの死を哀れんでいるのでもないし、
慈しんでいるというわけでもない。
あの儚くて美しいあのことは、
だれの目にも触れなければ、無いことだった‥‥。
いや、ただ、それだけのことなのだけれどね。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
読んでもらえるという贈りもの、ありがとうございます。
Measure
Measure
 

やってみるしか

*[次の世代に]先に考えられるか。
自分はアホなので「やってみるまで」そのことが分からない。
この傾向は多分幼少時から変わっていないと思う。
親や先生がいくら「ストーブには近づいてはいけません」といっても近づき、自分のズボンが焦げるまで試してみたり。
「やってはいけない」と聞くと妙にやってみたくなる人は結構いるのじゃないだろうか。
 
そして月日は流れ。
やけどするまでストーブに近づくことはなくなったが、性格は相変わらずだ。
買ってみる。
仕入れて売ってみる。
投資してみる。
入会してみる。
そんなことをしてからでないと「失敗」に気づけない。
 
もう少し「耳学問」とバランスが取れればと思うが、不思議なものでこれまで数多く読んできた書籍が実務に役立ったということはあまりない。(なんで読むのか)
「バカほど歴史に学ばない」と言われるが自分を振り返ると、やはり「経験しかない」と思える。
この歳にして「理論を種にして何かできないものか」ということを考えている。
また何か分かればご報告いたします。

成功も通過点。

*[次の世代に]勝ち負けではなく。
日経、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏の記事より。
研究者として重要な条件を問われ、こう答えた。
「頭が軟らかくないといけない」「最後まであきらめない」。 
むむ。よく聞くフレーズだ。
成功したり、実績を出した人は皆同じようなことをおっしゃる。
むむむ。
なんでだろうか。
これまでかなりの数の成功した人の伝記とか、事業のコツ、みたいな本を読んできた。どれもそれほど突飛ではない。曲芸のようなマネをして、あるいは超人的な能力でブレイクスルーした、というような話はむしろ皆無だ。
そしてほとんどは「少しの運」と「ねばり」に尽きているように思う。
つまり成功とは「そういうもの」らしい。
この歳にして気づく。
自分の置かれた「環境から、なんとか工夫」して「ずっと諦めず」にねばる。
成功するための必要条件なのだ。
そして十分条件ではない。(きゃー)
だから「そう」していても成功は保証はされない。(ぐぇ)
けれど成功した人はまあ例外なく「そう」してきた人たちなのだ。
すなわち成功したければ「そう」する以外にない。
「それ」を続けたものの中の一握りに成功は訪れる。
つまり「一握り以外の人」は山のようにいるのが現実だ。
で重要なのは成功した人たちは、受賞とか、そういう「一過性のイベント」を全然ゴールにしていないことだ。素直に喜べど、どちらかというと騒いでいるのは周囲の人たちである。
ご本人はまたその先に向かっている。
つまりハナから成功、なんて追いかけてはいない。
 
ただ没頭しているのみなのだ。
 
 
 
門外漢、創意工夫で革新
 
2019年10月10日 2:00
 
2019年のノーベル化学賞の受賞を決めた旭化成の吉野彰名誉フェローは電池の専門家だったわけではない。門外漢の研究者が創意工夫を重ね、革新を成し遂げた。
 
吉野氏が研究を始めたのは1981年。当初は新型電池を開発しようとしたわけではなく、白川英樹氏が開発し、後にノーベル賞を受賞する導電性高分子ポリアセチレン(PA)を応用して新事業に生かすことが目的だった。
 
研究するうちに「電池の負極材料に使えそうだ」と手応えを得た。これと組み合わせる正極材料を探していた82年末、海外の文献に共同受賞が決まった米テキサス大のグッドイナフ教授らが開発したコバルト酸リチウムの成果が記されていた。
 
ただ、すんなりとはいかない。PAコバルト酸リチウムの組み合わせでは電池の小型化が難しかった。そこで方針を変え、炭素系の材料を負極に使うことを決めた。
 
運良く社内によい材料があり、試してみると「すこぶるよかった」。正極、負極を含むリチウムイオン電池の原型を確立し、特許を出願した。
 
「頭が軟らかくないといけない」「最後まであきらめない」。受賞決定の会見で吉野氏は研究者として重要な条件を問われ、こう答えた。1つの手法にとらわれない柔軟性と、開発成功への執念。この2つの力を基にイノベーションを生んだ。門外漢だからこそ、先入観にとらわれない強みがあった。
 
グッドイナフ氏による正極材料の開発には、当時、同氏のもとで研究していた東芝のエグゼクティブフェローである水島公一氏が果たした役割も大きかった。
 
さらにソニーの元業務執行役員・西美緒氏らは世界に先駆けて実用化にこぎ着けた。大きな成果は日本人研究者の貢献抜きには語れない。

資本主義の再定義

*[ウェブ進化論]価値観こそを変えよう。
以前も書きましたが、山口周氏の日経インタビューより。
科学のレベルを上げてもメリットの拡大は期待できない。むしろ文化的な価値の方が受け入れられる。

そんな時代の大波が、結構きている気がするのは自分だけではないだろう。

今の世の中の手間仕事(いずれは洗濯物を畳むのも)はどんどん消えてゆく。
すでに「情報の価値」は薄まり、「集合的なもの」は急速に受け入れられなくなっている。
SNSの使い方も変わってくるだろう。
『産業のファッション化』がカギだ。その人らしい人生を表現し、演出する商品やサービスをどこまで提供できるか。人の感性に訴えるから好き嫌いが増え、市場の規模は小さくなるが、刺さった時の市場は深い。そのうち顧客が100人いれば100通りのビジネスが成立する時代が来る。
 
著者の言う「問題解決の時代」から「問題設定・意味づけ」への大変化だ。
身にまとう「ファッションのような仕事」はすなわち「楽しくて気分が上がる仕事」のことだ。
ようやく「楽しいことばかり」の時代がくるだろう。

「役立つ」より「意味がある」 「ニュータイプの時代」著者 山口周氏

――新著の題名でもある「ニュータイプの時代」とはどういう時代ですか。

 
やまぐち・しゅう 電通、コーン・フェリー・ジャパンなどを経て独立。著書に「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」など。49歳。
「これまで望ましいとされてきた考え方、行動様式が急速に時代遅れなものになりつつある。企業でいえば、優秀だと考えられた社員とは従順で勤勉な人たちだったが、そういう人ばかりでは社会の閉塞感をぬぐい切れないことがわかった。ある種、正反対の考え方、行動様式を持った人が新しい価値を生み出すような社会にアップデートしていかないとだめなのではないか。それが私の問題意識だ」
 
――具体的にどういう人たちが「ニュー」でしょう。
 
「20世紀は解決すべき問題が多く、解決策が希少な世界だった。だから問題解決のために自動車や家電が次々と発明され、大量生産された。それには従順で勤勉な人が大量に必要だった。教育現場ではおのずとそういう人々の大量供給、すなわち正解を導き出す能力で偏差値の高い人を多産することに力が注がれた」
 
「だが、解決されるべき問題はだいぶ減少し、希少になってきたのが足元の世界だ。重要なのは問題解決能力より問題発掘能力に変わり『役に立つ』より『意味がある』事業を考える方が価値を生む時代になった。ニュータイプとはそれができる世代だ」
 
――意味がある、とは。
 
「音楽が好きな人が今、一番聴いているものは何か。LPレコードだ。同様に、エアコンよりまきストーブ、新車より戦前の中古車を選ぶ人も増えている」
 
「歴史的転換点を迎えた可能性がある。ルネサンス以降をみると、どの時代も便利なモノほど高く売れた時代だった。だが、我々が今みているのは不便なモノが高くなる世界。地理学者ジャレド・ダイヤモンド氏のいう『人間の知性、科学の力で不安、不便、不満を消すこと』を意味する文明化が飽和し、科学のレベルを上げてもメリットの拡大は期待できない。むしろ文化的な価値の方が受け入れられる。機能価値ではなく、感性価値の時代だ」
 
――資本主義が行き着くところまで行ったということですか。
 
「終わったということではないが、低成長の原因が問題解決型産業への依存にある以上、産業構造の転換が必要だ。新しい経済は新しい価値が生まれるところに生まれる」
 
「競争の激しいアパレル産業にもセレクトショップのように成長のペースが大きい分野もある。意味という点でいえば『産業のファッション化』がカギだ。その人らしい人生を表現し、演出する商品やサービスをどこまで提供できるか。人の感性に訴えるから好き嫌いが増え、市場の規模は小さくなるが、刺さった時の市場は深い。そのうち顧客が100人いれば100通りのビジネスが成立する時代が来る。10万人以上従業員がいる会社はまだ多いが、そういう時代は終わる気がする」
 
――「脱構築」という考え方を主張しています。
 
「仏思想家のジャック・デリダが唱えた考え方だ。ドイツでは資本家が悪、労働者が善という二項対立の流れでマルクス主義が生まれたが、フランスは資本主義を否定しなかった。残したままで内部にある定義に見直しを加え、資本主義がもたらす豊かさを回復させる、との考え方だ」
 
「例えば、アウトドア商品のパタゴニアという会社がある。似た商品との機能差はわかりにくいが、とにかく高い値段で売れる。環境保護に昔から力を入れ、サステナブル(持続可能)な企業イメージがあるからファンが多い」
 
「株主第一などとはいわない。会社が語るパーパス(存在意義)に共感した人を『同じ価値観を持って自分を表現したい』という気持ちにさせるだけだ。時に反資本主義とも受けとれる厳しい主張もするが、共感した人はお金を払う。『優れたパーパスを掲げているところにはお金が集まる』という資本主義の特性を利用しつつ、資本主義を再活性化しているということだ。だから脱構築だ」
 
「やり方は色々あるし、もちろん、日本の企業も活力を取り戻せる。カギを握るのがニュータイプな発想と構想力だと思う」
 
 

多数精鋭。

 
*[経営]プチ・イノベーションを起こせるか。
日経クロストレンドより。
人事制度ほど流行り廃りが激しく、それでいて未だ定まった制度がない分野も珍しい。とは言っても周囲の時代とともに変わるものだから致し方ないのだろう。
ニトリの人事制度が「入社から70歳までのキャリア設計図(エンプロイージャーニーマップ)」を導入して退職者ゼロを実現しているという。
その効果はまた現場にもプチ・イノベーションを起こすという。
当初は希望していない部署でも、優秀な人材を配置すると、トラックの積み下ろしや品出しなど、大きな変化が期待されていなかった単純作業こそがどんどん進化していきます。
人にとっては「先が見えていること」がいかに大事なのか、と改めて痛感する。
 
これは技術的にそれほど複雑な制度だとは思えないが、ただし「人を大事にしている」仕組みであることが分かる。
会社の理念、と働く人の希望、と仕事のベクトルを丁寧に合わせていく作業だと思うが、どうしてこれがなかなか実現しないのです。
教育の世界は実に奥深いものだと思う。
(以下長いですが引いておきます)
 
ニトリ、新人退社をゼロにした「マーケ視点」の人事
 
2019年10月10日 2:00

 
永島 寛之(ながしま ひろゆき)氏
ニトリホールディングス組織開発室室長、人材教育部マネジャー
1998年東レ入社。2007年にソニー入社。ソニーラテンアメリカ(米国フロリダ)赴任。米国出店を果たしたニトリに興味を持ち13年ニトリホールディングスに入社。店長、採用教育部マネジャーを務めた後、19年から現職。従業員の成長を起点としたタレントマネジメントをテクノロジーで構築することに全力投入中。教育のテーマは「越境好奇心」。

日経クロストレンド

商品開発から店舗運営、ECまで隙のない強さを発揮するニトリホールディングスは、増収増益を32期連続で維持している。この成長に重要な役割を果たしている部署が組織開発室だ。一般的な企業で言えば人事部にあたるが、ここに「マーケティング視点」の導入を進めているのが室長の永島寛之氏。創業者で会長を務める似鳥昭雄氏が作り上げた社風を生かしつつ、「多数精鋭」を実現する「エンプロイー・ジャーニーマップ」とはいったいどのようなものなのか。

 
ニトリホールディングスの売上高推移

 
ニトリホールディングスの営業利益推移

エンプロイー・ジャーニーマップとは?

――組織開発室で導入を進めているエンプロイー・ジャーニーマップについて教えてください。
 
永島寛之氏(以下、永島) ニトリでは70歳から逆算し、10年ごとにどの部署でどんな仕事を担当したいかという人生設計を年に2回、すべての社員に自分で書き出してもらっています。これが「エンプロイー・ジャーニーマップ」です。
 
考え方のベースとなっているのは、商品・サービスの認知から購入、そして他人への推奨までの流れを示す「カスタマー・ジャーニーマップ」です。私はマーケティング畑を歩いてきた人間で、そのとき意識していたのが「商品に満足した人は、たとえ購入しなくても次の顧客を呼んでくる」という考え方です。カスタマー・ジャーニーマップは、その満足を得るための筋道をデザインします。
 
エンプロイー・ジャーニーマップも同じように、キャリアを構築するうえで、多くの社員が満足する筋道をデザインし、マップとして視覚化したものです。簡単に言えば、自分で描くキャリアの設計図ですね。

 
エンプロイー・ジャーニーマップの考え方。採用から入社、70歳の退職まで「配置転換」「ロマンとビジョンの見直し」「ライフチェンジ」を繰り返しながら「ロマンとビジョンの達成」を目指す。「人事が採用からロマン達成まで、本人の状態を見ながら個別に教育や配転の機会を提供しています」(永島氏)。また、ニトリ大学と呼ばれる教育体系に基づいて研修とeラーニングを用意し、理論の習得に役立てている(ニトリホールディングスの監修の下、日経クロストレンド編集部が制作)
――エンプロイー・ジャーニーマップの導入時期は。
 
永島 20年以上前から、自分が将来行きたい部署を入社から5年刻みで会社に申告する制度があり、その情報に基づいて配置転換を行ってきました。社会課題の解決を最終ゴールとして、そのためにどのような経験や学習をしたいかという申告に変えたのが、3年前のことです。これがエンプロイー・ジャーニーマップに徐々に進化しました。
 
――エンプロイー・ジャーニーマップのメリットは。
 
永島 本部間の異動が活発となり、派閥がないことです。ポストよりも経験を求めるようになり、お客様のニーズの解決に集中する社員が多くなりました。ニトリは今後、2022年に1兆円、32年に3兆円の売り上げを目指しています。これは「暮らしの豊かさを世界中に展開していく」というニトリのロマンを数値化したものです。しかし、今の成長率を続けても実現できません。つまり、新規事業などで成長率を非連続的に上げることが不可欠で、それには多種多様な人材を雇用する必要があります。
 
人材の多様化は、ニトリに限った話だけではなくて、今の日本に一般的な傾向としてあるようです。ニトリの場合は海外からの人材を毎年50人くらい採用していることもあって、近年は加速度的に人材が多様化しています。「暮らしの豊かさを世界に広める」という目標は同じでも、そこへアプローチする人材が多様になっています。
 
当たり前ですが人材が多様化すれば、社員一人ひとりが満足するキャリア構築の筋道も多様化します。ところが人事の業務は、新卒で採用した人たちに定期的に研修を行い、優秀な人を管理職や経営層へと引き上げ……という十把一からげの場合が多い。これでは通用しない時代が来ているのです。マーケティング的に言えば、ワントゥワンマーケティングが必要で、そのために社員一人ひとりの個別のキャリア構築の道筋をエンプロイー・ジャーニーマップとして視覚化するわけです。
 
ニトリではエンプロイー・ジャーニーマップの管理にクラウドベースの業務アプリケーションを導入しました。このアプリケーションのおかげで、エンプロイー・ジャーニーマップをすぐに作成・参照・修正するといったことが可能になりました。こうしたテクノロジーの進化もエンプロイー・ジャーニーマップの導入を後押ししました。

 
ニトリが導入したクラウド型の財務・人事向け業務アプリケーション「Workday」。上の画面は「タレント&パフォーマンス ダッシュボード」と呼ぶ画面で、社員が自らのキャリアを構築する起点として、自分の強みや今後習得する職務、メンターなど第三者からのフィードバックなどを一覧表示する

社内で「プチイノベーション」が頻発

――エンプロイー・ジャーニーマップの起点が入社前なのはなぜですか。
 
永島 学生から入社までの期間は「プレボーディング」と呼ばれています。今は採用難の会社が多く、学生にいいことばかりを言いがちです。でもそんなことをすると、学生の期待と実際のキャリア構築で齟齬(そご)が発生してしまう。後で絶対にエンプロイー・ジャーニーマップの中でつまずきます。
 
ニトリは、プレボーディングの時期に会社からの期待をすべて提示し、入社前から退職後までのエンプロイー・ジャーニーマップを一緒に描いていく。すると、たとえ一時的に希望とは違う部署に配属されたとしても、それは次の段階の準備期間と理解してもらえる。
 
極端な例え話ですが、有名大学を卒業して商品開発の仕事をしたい人にトラックの荷物の積み下ろしをなんの説明もなくお願いしたとしますよね? 荷物の積み下ろしがキャリアにどうつながるのかが本人に提示されていなければ、我慢なんてできません。
 
プレボーディング時期の取り組みは、実際に結果も出ています。毎年店舗に配属されて最初の3カ月くらいで「こんなハズじゃなかった」と、平均して5人くらいの退職者が出るのですが、19年は8月の時点で1人も辞めていません。

 
小川優稀氏(2019年4月入社)のエンプロイー・ジャーニーマップ。ニトリホールディングスの社員は入社時点でここまで考えている
――自分のキャリア構築に必要な道筋だと理解してくれたわけですね。
 
永島 そうですね。そして退職者数が減るだけでなく、興味深い効果も出ています。当初は希望していない部署でも、優秀な人材を配置すると、トラックの積み下ろしや品出しなど、大きな変化が期待されていなかった単純作業こそがどんどん進化していきます。
 
本当に優秀な人たちは「決められた通りにだけ行動すること」を良しとせず、効率化に向けた改善点を自分から探します。私たちは現場からの「観察・分析・判断」と呼ぶ週次のリポートに目を通していますが、社内のあちこちでプチイノベーションとも言うべき改革が起こっています。このプチイノベーションこそが、ニトリの発展の原動力です。
 

「多数精鋭主義」を実践

――ニトリが掲げる多数精鋭主義とはどのようなものですか。
 
永島 旧来の日本企業の人事は、新卒一括採用、年功序列や期別研修なので、あるところまで社員全員が同じ道をたどり、そこから先は(管理職になる経営層になるなど)一部の人だけが違う道をたどる、そんな筋道しか想定していません。つまり優秀な人だけを選抜していく方式で、少数精鋭主義と言い換えることができると思います。
 
私は少数精鋭は効率が悪いと考えています。というのも、近年は人材の流動化も進んでおり、少数精鋭で育成した一部の優秀な人が辞めてしまうと組織全体が弱体化するからです。これまで日本の人事を支えてきた、「人的資源管理」の考え方の限界が見えてきているように感じます。
 
弊社の会長は「多数精鋭」というキーワードを好んで使います。社員全員にチャンスと経験を常に与えれば、自分の特性に合った部署で実力を発揮できるはずです。少数精鋭で限られた人材から適任の人間を配置していくのではなく、広く全体から適任者を抜てきする多数精鋭を実現すれば組織全体が強くなる。そのためにも社員一人ひとりのエンプロイー・ジャーニーマップを最適化できるようにわれわれ組織開発室がきめ細かく見ていく必要があります。
 
――エンプロイー・ジャーニーマップは年2回更新する。
 
永島 履歴は残りますが、年2回更新します。どのようにエンプロイー・ジャーニーマップが変わってきたのか、逆になぜ変わらないのかを人事がしっかり把握します。あまりに変わりすぎても、まったく変化がなくても、そこには問題があります。変化が大きいときは本人か環境にカウンセリングが必要かもしれませんし、変化がなさすぎるときは的確なマップが描けていない可能性があるわけです。
 
ちなみにエンプロイー・ジャーニーマップは、米国の発祥です。「フォーチュン500」(米誌フォーチュンが選ぶ売上高が多い米企業500社)の上位にランクされる企業の多くが採用しています。少し考えれば分かることですが、エンプロイー・ジャーニーマップを採用するということは、退職までなるべく我が社にいてほしいという企業姿勢の発露です。
 
一方、日本では大企業が終身雇用の終焉(しゅうえん)など、まったく逆のことを言い始めています。米国の企業は日本企業のいいところを採り入れるのが上手ですが、実はエンプロイー・ジャーニーマップもその一つと言えるでしょう。
 
――クラウドベースの業務アプリケーションはうまく浸透しましたか。
 
永島 大きな問題は起こりませんでした。ただ、他社では同じ業務アプリケーションを導入しても失敗が多いと聞いています。そうした企業では人事部が人事権を持っていないケースが大半のようです。せっかく理想のエンプロイー・ジャーニーマップを描いても、それを実現する権限が人事に与えられていないわけです。
 
私がいる組織開発室には人事権があります。ニトリでは各部署に原則として人事権を持たせていません。組織開発室はすべての部署のパートナーとして、現場の声を拾いつつ、エンプロイー・ジャーニーマップを基準にして人事の再配置を行います。部署のニーズと社員のニーズをマッチングします。全従業員と密接につながっている部署と言えますね。
(写真/中村宏、写真提供/ニトリホールディングス)
(文 稲垣宗彦)
 

56歳の自分へ。

*[次の世代に]66歳の自分より。

鴻上尚史さんの言うように、10年後の自分からアドバイスを、と想像してみるがからきし思いつかない。

AIの波に乗り遅れるなよ、でもない。

今から一大事業を興せ、でもない。

かといって「あるがままで暮らせ」ということでもないんですが。

 

翻って10年前の自分に何か言うことはあるか。

 これはあるにはあるが内容は「後出しじゃんけん」みたいなことでどうにも詮無いことばかり思いつく。

しかしもしもあと3-40年も生きるとしたら大変だ。

昨年は高齢者施設を訪ねることが多く、自分の老後についてはリアルに考えることになった。

そうすると66歳の自分からは「健康と学問に注目しておけよ」というくらいかと思う

あと、お酒もも少し控えめに。

動機を超えるもの

*[経営]自制心優先説。
日経産業より。
モチベーションよりも自制心、というコラム。
自分は「自発性」こそがもっとも重要だと思っていたので珍しく思った。
そこから結果を出すところまで持って行くのはモチベーションではない。自制心だけだ。(中略)
モチベーションだけでは乗り越えられない状況では、自制心がその代わりとなる。
何度も読み返してみたが、まだしっくりとはこない。
けれど思い当たるような気もする。
さらに。
一人ひとりの自制心というのは、自分で自らに課すものなのだ。周囲が何かをさせても、それは無理強いにすぎない。
遊びを自制せよ、とかいうことではなさそうだ。
おそらくは「それまでの成功体験」とか「自身のプライド」とか「リスクへの恐れ」とか「保身」とか。そんなものを自制せよ、という話ではないかと思う。
 
まあ「常に素直であれ」とはよく聞く心構えだ。
自分は何を自制しなければならないか、を一度考えてみることにする。
 
経営者に大切な自制心

SmartTimes レランサ社長 スティーブン・ブライスタイン

経営者に「どうすれば社員のモチベーションを上げて変化をもたらすことができるだろうか」と聞かれることがある。しかし、それは焦点を当てる場所を間違った質問だ。

 
米国ボストン市生まれ。戦略コンサルティング会社、レランサ(東京・千代田)の社長。国際経営学修士(MBA)とコンピューターサイエンス博士号を取得。
モチベーションで誰かに行動を起こさせることは可能だが、そこから結果を出すところまで持って行くのはモチベーションではない。自制心だけだ。
 
自制心とは目前にペナルティーが見えていたり、すぐに見返りがあるか不確かだったりするような状況でも、より良い将来を築くための態度を貫く個人の強い意志を指す。営業チームが新しいビジネスモデルに移行する場合でも自制心は必要だ。これまで長く取引している取引先に同じ方法で営業を続ける方が、ずっと楽で結果も予想しやすいに決まっている。
 
私は以前、クライアントの企業で数人のマネージャーのコーチングを依頼されたことがある。彼らが「心地良い」と感じている以上のことをしてもらおうというときに必要となったのは、意欲ではなかった。
 
私のサポートを受け入れて成長し続けてくれたのは、自制心を持った方々だけだったのだ。
 
モチベーションしか持ち合わせていなかった方々は、私がサポートしようとしてもためらい、行き詰まってしまった。モチベーションだけでは乗り越えられない状況では、自制心がその代わりとなる。
 
モチベーションそのものは、いつか消えてしまう。モチベーションに関するスピーチを聞いただけで後々まで続く成果を出すことができることなどめったにないのは、そのせいだ。
 
一方、自制心というのは筋肉のようなもので、個人個人が通常から使うことで強化される。それをサポートして成功に導いてあげるためのツールを提供してあげられるのは、リーダーであるあなただけだ。
 
しかし、あなたが社員や他人の代わりに自制心のトレーニングをしてあげることはできない。
 
一人ひとりの自制心というのは、自分で自らに課すものなのだ。周囲が何かをさせても、それは無理強いにすぎない。リーダーとしてあなたにできる最良のことは、彼らが自制心を鍛えられる自由を与えてあげることだ。
 
だからモチベーションの高い社員に改革に取り組み、結果を出すところまで行ってほしいのであれば、自制心を鍛える自由を与え、またそれを責任を持って行うことをあなたの企業文化に取り入れてほしい。
 
単なる「モチベーション」を追加するのではなく、社員が成功するためのサポートを供給し、そして邪魔をしないということだ。
 
本当に役に立つのは社員のモチベーションをあげることではない。自分でモチベーションを上げられる人材を育て、それができるだけの自制心を持たない社員は解雇することだ。
 
日経産業新聞2019年10月7日付]

自動コンサル。

*[ウェブ進化論]プロセスマイニング。
データ分析サービスの独セロニス社が日本に本格参入するという。シーメンスではすでに1000億円のコスト削減ができたらしい。
何をするのかというと、「プロセスマイニング」というもので、社内システムのログを集めてデータの関係を分析し、迂回作業や重複部分を洗い出すという。何のことはない。いわゆる「コンサルタント」がやる業務分析(オペレーション系)である。
昔なら、大会議室の壁に「伝票や帳票を貼って」人手で順番を変えたり、項目を調べたりしていた作業が自動化されたわけだ。
今ほどに、ほぼすべての仕事がデジタル化されているから効果が出ようことは想像できる。
 
それにしてももう「作業レベル」「営業レベル」の仕事からは近いうちに「俗人らしさ」が締め出され、長らくビジネス界に存在した「伝説の営業マン」とか「プレゼンの達人」みたいな人はいなくなってしまうのではないだろうか。
個人の能力が最適になるようアドバイスされるのはいいことだが、どうも「改善を考える」という行為が遠のいてしまうような気がする。
「ロボが何も言わないからこれでいいや」というのは重大な思考の縮退ではないだろうか。
でも流れには抗えないことも分かっています。
 
データから無駄な業務を即座に発見 独社が日本で

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

データ分析サービスの独セロニスが日本市場に本格参入した。日本法人を設立し、国内システム開発会社と販売協業契約を結んだ。セロニスは業務の工程ごとにデータを分析して、無駄な工程を洗い出す「プロセスマイニング」サービスで成長してきた。日本でもこのサービスを広めることで、日本企業の業務効率化を後押しする考えだ。

 
日本企業の業務効率化を後押しする(独セロニスのアレキサンダー・リンケ共同最高経営責任者)
日本法人としてセロニス(東京・千代田、小林裕亨社長)を設立した。「IBC」と呼ぶプロセスマイニングツールをクラウドで提供する。
 
使い方はこうだ。利用企業の統合基幹業務システム(ERP)やデータウエアハウス(DWH)、顧客情報管理(CRM)などの各種業務システムから、業務処理の記録情報(ログ)を収集する。
 
次に集まった大量のログを分析する。どのシステムとシステムが連係して業務処理しているかを判別する。その後、業務の流れ(プロセス)を見て迂回している工程や、重複している工程を洗い出す。これにより業務プロセスの抜本的な改革につなげられるという。
 
独セロニスは2011年の設立で、ユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の成長企業)とされている。同社のプロセスマイニングツールは、米ウーバーテクノロジーズや独シーメンスなどで使われている。シーメンスは導入後、販売管理などで手作業していた工程を減らし、コストを約10億ドル削減したそうだ。
 
また、必要に応じて「機械学習などを使って適切な改善のアドバイスを提供する」と、独セロニス共同最高経営責任者アレキサンダー・リンケ氏はいう。
 

日本では今年から試験導入してきたが、日本企業にとって有望な業務効率化ツールとして本格販売に踏み切る。主にパートナー企業を経由して提供する。ERP大手のSAPジャパン、コンサルティングアクセンチュアアビームコンサルティングシステム開発伊藤忠テクノソリューションズなど12社と今回契約した。
 
IBCはクラウドベースなので「規模にもよるが、3~4カ月くらいで導入できる」(小林社長)という。システム価格は1千万~2千万円を想定している。「シーメンスのように会社全体で導入すれば億単位になる」(同)。初年度2億~3億円、3年後に年約15億円の売り上げを目指している。
 
プロセスマイニングは自動化やデジタル化の効果をより高められる技術として、世界で関心が高まっている。米マーケッツ&マーケッツによると、プロセスマイニングの世界市場は17年の1億2560万ドルから23年には14億2170万ドルに成長するという。
 
(企業報道部 北郷達郎)
 

毎日が診断日。

*[ウェブ進化論]内臓パシャ。
日経産業より。
資生堂が始めた"肌パシャ"という肌の測定サービスが人気だという。
「肌のうるおい度をズバリ判定」と女心を掴んでいる。
毎日状態を測定して、必要な手入れのアドバイスなどもするという。
花王もLINEで同様のサービスを始めたというから、女性の美容に対する熱量は高い。
 
さしずめ、男(おっさん)なら居酒屋定番の話題である「メタボパシャ」はどうだろう。50を超えたら「内臓パシャ」も欲しいところだ。
体脂肪が何%だ、γ-GPTが幾つだ、やれ尿酸値だとあれほど健康の話題で盛り上がるなら、毎日健康測定ができれば受けると思う。
これからの高齢化社会で重要なのは「介護にならない習慣」がもっとも重要だと言われている。
ぜひ健康測定アプリの登場を待ちたい。
 
 
資生堂、肌のうるおい度をスマホカメラでズバリ判定

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

資生堂は百貨店などで美容部員が行うような肌状態の測定サービスを、スマートフォンアプリで始めた。従来の肌測定アプリの機能を強化。消費者が自宅や職場で使えるほか、専用機器がない小売店でも情報端末の「iPad」などを使って接客ができるようにした。併せて自社の複数の美容サイトとアプリを連動させ、ネット通販や店頭販売の強化につなげる。

 
過去のデータと現在の肌状態を比較できる(アプリ「肌パシャ」のスマホ操作画面イメージ、写真右)

肌のシミやハリなどチェック

資生堂は肌測定ができるアプリ「肌パシャ」の機能を拡充した。従来の基本メニューに加え、9月13日からはシミやハリ、シワなど6項目を追加した。百貨店やドラッグストアで美容部員が測定する項目を加えた。
 
測定後は従来と同様に、どのような手入れが必要かなどが分かる仕組みを取り入れた。男性用の機能も加えた。一連のデータは蓄積できる。
 
測定には解像度の高いスマホ外側のカメラを使う。顔をスマホから遠ざけながら連写し、最もピントの合った写真を使って分析する。アプリは無料でダウンロードできる。
 

「肌情報の記録が楽しい」

資生堂は2017年から肌パシャを配信している。利用者や年齢が若く、美容感度の高い人が多いという。「肌情報を記録するのが楽しい」という声が寄せられている。
 
自社の化粧品ブランドとの連携も強化する。まず男性肌ケア「ウーノ」の情報サイトとアプリを連動させ、サイト上で商品をPRしつつ、肌状態の確認ができる肌パシャを紹介していく。今後は他のブランドとも連携させて肌パシャの認知や商品の売り上げの拡大につなげる。
 
肌パシャを自宅などで継続的に使っている人はまだ限られるが「体重計がどの家庭にもあるように、肌測定アプリも消費者の日常に組み込みたい」(同社担当者)という。
 
資生堂は他にもネットを活用した販促に力を入れている。自社サイトの「ワタシプラス」で6月から、顔写真を入力すると、拡張現実(AR)を使って画面上で化粧を試せる仕組みを用意した。アプリは不要で、ブラウザー(閲覧ソフト)から体験できる。
 
商品が気に入ればそのまま購入が可能だ。今夏の新作メークを試せるようにしたところ、2カ月で100万ページビューを獲得し、約56万人が利用したという。今秋も季節感を出した新しい商品を試せるようにしている。
 
他社もネット訴求に懸命だ。花王は対話アプリの「LINE」を使い、自分で肌の状態を確認できるサービスを始めた。LINEで「友達」に登録するとサービスを受けられる。セルフ化粧品ブランド「ソフィーナiP」に関する問い合わせ対応や美容情報の配信も手がける。商品購入後のサービスを充実させ、継続利用につなげる狙いだ。
 
(企業報道部 矢崎日子)
 
日経産業新聞2019年10月2日付]

魚ベルト。

*[気候]いつも異常。
大衆魚の代表、サンマが過去最悪の不漁だという。
そういえば、昨年居酒屋の亭主がサンマの塩焼きを「泣きながら出してます」と言っていた。
さらに温暖化の影響で、日本中の漁場が北上しているという。カツオの漁場が北海道近くに上がってきているといった具合だ。
 
それはともかくサンマがこれほど「謎の魚」だとは知らなかった。
・世界に仲間は4種類。
・養殖なし。
・いつどこで生まれて日本近海に来るかわかっていない。
・寿命は2年未満らしい。
・サンマ漁はたった300年前に始まった。
・世界で一番サンマを食しているのは日本人だった(13年まで)。
世の中は知らないことだらけ。
いずれサンマも養殖される時代が来るだろうか。
 
サンマ1匹600円、史上最悪の不漁 遅すぎた資源管理
秋を代表する魚、サンマが史上最悪の不漁で、高騰している。全国の漁獲量は前年の2割以下。店頭では痩せた魚が1匹300~600円と高く、売れ行きは悪い。今年はサンマにとって重要な出来事があった。水産庁は漁を通年できるよう省令を改正。中国などとの国際的な漁獲制限も一歩前進した。ただこれも「もう、遅すぎたかもしれない」と疲弊した産地ではため息が漏れる。
 

1キロ700円、前年の3倍超

9月21日、サンマの水揚げ量日本一の花咲港がある北海道根室市で、毎年恒例の「根室さんま祭り」が開催された。来場者のお目当ては、サンマ塩焼きの食べ放題。1皿100円のトレーを購入すれば、焼きたてを何匹でも食べることができる。祭りの運営委員会は、1皿200円へ値上げすることも検討したが、"根室のプライド"と現状維持を決断。ただ、これまで魚は水産関係者から無料提供してもらっていたが「今年はいくらかお支払いしようと話し合っている」(根室市)。国内最大の産地、根室の卸売市場でもサンマは1キロ700円と、前年同時期の150~200円から大幅に上昇している。

 
今年のサンマは痩せていて値段も高め
さらに、今年は「小さく、脂がなく痩せた魚ばかり」(根室の卸業者)。刺し身や塩焼き用として出荷するには最低でも1匹110グラム以上は必要だ。それ未満の魚はマグロやブリなど養殖魚の飼料に向けられる。「競りで買い付けても出荷できるのは半分ほどしかない」
 
魚は空輸で国内最大の魚市場、豊洲市場(東京・江東)などに運ばれる。脂の少ない今年の魚に対する仲卸業者の目は厳しく、卸値は1キロ1000~1400円ほど。前年同時期の2倍以上の高値だが、輸送費などを含めると出荷する側の利益はない。「産地のために、本当はもっと高く売ってあげたいが、サンマは大衆魚だから価格にも限界がある」(卸大手)。安い魚ゆえ、クロマグロのように養殖もされていない。
 
そもそも、サンマは謎の多い魚だ。世界には4種類のサンマの仲間が確認されているが、いつ、どこで生まれ、どうやって日本の近海にやってくるのかよくわかっていない。寿命は1年数カ月から2年未満ということがわかってきた。日本の近海からアメリカの沖合まで、北太平洋をエサを求めて泳いでいる。しかし、メスがいつごろから卵を産むのか、稚魚がどのように育つかなど、その一生は謎に包まれている。ただ一つ言えることは、これまでの日本の海、漁業のやり方ではサンマは今ほど心配することなく、安定的にとれてきたということだ。
 
全国さんま棒受網漁業協同組合(東京・港)によると、日本でサンマ漁が始まったのは約300年前。熊野灘で始まり、紀州沿岸の主要漁業として発展した。江戸時代後期には伊豆半島沖にも広がった。大正、昭和と時代を重ねるごとに漁船は大きく、漁獲効率も向上。漁獲量は20万~30万トンで安定し、日本の秋を代表する大衆魚になっていった。ちなみにロシアが3万~10万トン、韓国が2万~4万トン程で、日本が世界で一番サンマを食べていた。
 

資源管理、「ちょっと遅すぎたかも」

しかし、2000年以降、状況は変わった。台湾が漁獲を伸ばし、13年には日本を上回った。12年からは中国もサンマ漁に参入した。9月中旬、台湾台北市を歩くと1匹300円ほどで塩焼きが売られていた。「和食人気もあり、刺し身や塩焼きが秋の味覚として好まれている」(台北市の日本料理「小馬」の江鎮佑料理長)。中国の水産加工場では、ロシア向けのサンマ缶が製造されている。東日本大震災後、ロシアが日本からの水産物の輸入を一時停止した際、中国がサンマの漁獲を増やし、ロシア向けの商圏を握った。一方、日本の漁獲量は反比例するように減っている。15年以降は4年連続で10万トン台が続く。17年には7万7千トンと半世紀ぶりの不漁となり、今年はそれをさらに下回る。
 
水産庁は3月、これまで8~12月に制限していた北太平洋のサンマ漁を通年できるよう省令を改正した。安定供給を目指したい考えだ。
 
7月には、日本や台湾、中国など8カ国・地域がサンマの資源管理について話し合い、漁獲量の上限を設けることで合意した。ただ、その上限は各国の漁獲実績を上回る枠となった。「水産庁が頑張っているのはわかるが、これだけ魚がいないのは異常。ちょっと遅すぎたかもしれないね」(根室市の加工大手)
 
100%天然物に頼るサンマ。脂がたっぷり乗り、皿からはみ出すほど大きなサンマが100円未満で買えた秋が懐かしい。
 
(商品部 佐々木たくみ)

シェア介護。

*[ウェブ進化論]シェアの先。
FTより。
誰もがシェアビジネスを考えるようになり、また法規制もあってウーバーが苦戦しているという。先行したら一人勝ちかと思っていたらそうでもないらしい。
シェアするシステムを作ることはできても、労働者や顧客や規制に適合するように運用するのはやはり大変そうである。
 
ウーバー社はこの度「ウーバーワークス」で仕事のシェアを提供するということだが、日本でもすでにいくつかのネットワークがあったりで、あまり目新しさはない。ウーバーCEOは「ライドシェアや電動アシスト付き自転車、スクーター、ヘリコプター、料理宅配などのポータル化を目指す」というが、その先には肉体労働や配送だけでなく、掃除も調理もシェアで頼める時代がすぐに来るだろう。
そしてさらに先には、これからの日本でもっとも深刻な「介護」とか「育児」だって入ってくるに違いない。
案外救済策は"ここ"にしかないのではないだろうか。
 
[FT]ウーバー、派遣労働者と企業の仲介アプリを開始
 
2019年10月4日 13:18
 

Financial Times

米ウーバーテクノロジーズは4日、利用者がシフト制の仕事を探せ、企業が従業員不足を埋められる新しいアプリのサービスをシカゴで始める。3人の関係者が明らかにした。

 
ウーバーテクノロジーズは主力のライドシェアで逆風にさらされている=ロイター
新サービスの名称は「ウーバーワークス」。まずロサンゼルス、続いてシカゴで試験運用した後、1年間シカゴで非公式に運営していた。今回シカゴで公式にサービスを始めるが、関係者によれば今後広い地域に展開していく。
 
新サービスは販売員や調理師など肉体労働者の利用を想定して設計。利用者は新しい仕事を探すたびに職歴を入力し直す手間が省ける。いつどこにシフトが入っているかを一覧できる技術も導入した。
 
関係者によるとウーバーは、米国最大の人材会社の一つトゥルーブルーなどと提携する方針である。
 

ギグエコノミーの1形態

アプリはオンデマンドで仕事を請け負うギグエコノミーの一種だが、ウーバーに登録する労働者は外注業者ではなく自社従業員や契約社員に相当する 「W2労働者」、あるいは一定の収益を確保できる労働者として扱われる。雇用者の立場である人材会社にも給与税が課されるという。
 
ウーバーは自社のブログに「仕事探しのボトルネックを解消」したいと投稿。利用者は雇用契約を結ぶ前に給与や必要とされる技術、ドレスコードを確認できる。企業側も「季節による繁閑や予想外の需要による人手不足といった頭痛の種を解消できる」(同社)としている。
 
ウーバーがギグエコノミー労働者向けサービスにかじを切っている背景には、本業のライドシェア事業がお膝元で脅威にさらされていることがある。カリフォルニア州では先月、ライドシェア業者がドライバーを従業員ではなく、個人事業主に分類するのを難しくする法案が可決した。
 
ウーバーのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は先週、「自社アプリがウーバーが提供できるサービス全てのワンクリックでの玄関口になるようにしたい」と述べた。ライドシェアや電動アシスト付き自転車、スクーター、ヘリコプター、料理宅配などだ。
 
ウーバーが開拓しようとする機会は広大だ。米国の年間個人所得の合計はおよそ18兆ドル(約1900兆円)で、雇用形態は非伝統的なものになっている。
 
米会計大手デロイトによると、米国で契約社員や外注、フリーランス、ギグワーカーなど非伝統的な労働者の数は来年に4200万人と、2017年の3倍に達する見込み。デロイトのミレニアル調査最新版によると、3分の2近くが収入を増やすため「副業」に就きたいと考えている。
 
ウーバーワークスはウォノロといった先行業者と競合しそうだ。同社はベイン・キャピタル・ベンチャーズやセコイアからの投資を受け、5年前からオンデマンド人材サービスを手掛けている。
 
By Hannah Murphy and Patrick McGee
 
(2019年10月3日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/
 
 

そういえば。

*[ビジネス]企画のこと。
ほぼ日より「企画を出そう。」というお題を見てふと考える。
普段からよくキカクキカク、と口にしている気がするけれど。
しかし机の前に座って「では企画を出すぞ」ということってあまりない。
いや全くない。
思えば今までやってきたことってブレストとか会議とかの中で「ふと誰かが思い付いだアイデア」が種になって、誰かが「それ受けるんじゃない?」とか言いながら形になってきた気がする。イケる!と盛り上がって後から調べたら「もうみんなやってるよ…」なんていうのはしょっちゅうだ。
で何の話か。
「企画を出そう」ということを目的にするのはどうか。

 「あえて」企画を。

一見「企画」というのは"何かのアイデアの実現"のためにあるから、そのアイデアなしに「企画を出せ」というのはおかしいような気もする。
そうか。
企画はアイデアと番(つが)いだ。
だから「企画を出そう」てのは「アイデアとその実現方法」をセットで考えよう、ということなのだ。

 介護に悩む人を助けられないか、とか

転職したいと思っている人の相談に乗れないか、とか
病院の待合室で長時間待っている人を楽しませたい、とか何でもいい。
糸井さんはそれを「動詞」で表現していたのだ。
企画を出そう。
 

12月20日の「今日のダーリン」

 ・企画を出そう。
いい考えを出そう。
おもしろいことをやろう。
みんなをよろこばせることをしよう。
いろんなことに関心をもとう。
つまり、
感心しよう。
ほめよう。
よろこぼう。
紳士淑女になってみよう。
愛されよう。
愛そう。
痩せ我慢しよう。
踊ろう。
驚こう。
励まそう。
手伝おう。
慰めよう。
ご馳走しよう。
笑わせよう。
笑顔を探そう。
想像しよう。
夢をみよう。
遊ぼう。
歌おう。
ことばをいい声で出してみよう。
絵を描こう。
人を呼ぼう。
つまり、そのひとつひとつが、
企画を出すことだ。
いい考えを生み出すことだ。
みんなをゴキゲンにしよう。 
上に記したような短いことばを、
一行分でもやろうとしたら、きっとできる。
そのひとつができると、ちょっとなにかが変化する。
インチキくさいことを言ってるみたいだよね。
そうかもしれないけど、ほんとのことだ。
うんうん苦しんでいるよりも、感心しよう。
ほめよう。よろこぼう。紳士淑女になってみよう。
愛されよう。愛そう。痩せ我慢しよう。踊ろう…

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ことばになる前のことばを、こころのなかで踊らせよう。
Measure
Measure
 

介護の家族を支援する。

*[福祉]支える人を支える。

SMBC日興が介護離職防止に新制度を始めるという。
週休4日で基本給は六割程度にし、のちに復帰できるところが新しい。
新しい。
新しいのだけれど。
多分、これでは問題はあまり解決しない、と思う。
 
介護は家族でやり始めると、「まんま1日」費やすことが多い。
特に認知症の場合は日中や夜中にも目が離せないことも珍しくない。
これからは「グループホームの時代(つまり認知症者激増)」になるので、そうしたことを睨みつつ、介護は戦略的、計画的にやる必要があるのです。
 
自分は一昨年から、企業の「介護離職防止」への取り組みを支援するサービスを提供しているのだが、現場を見ていてつくづく介護の労力の重さと、先の見えない不安の大変さを実感する。
ぜひ、相談できるパートナーを見つけることから始めていただきたいと思う。
 

介護離職防止で週休4日導入へ SMBC日興、副業も解禁

 

12/17(火) 0:00配信

 SMBC日興証券が社員の介護離職防止や能力開発のため、週休4日や週休3日の制度を来春に導入することが16日、分かった。多様な働き方を認めることで優秀な人材をつなぎとめる狙いがあり、副業も解禁する。清水喜彦社長(64)は「社員固有の事情を酌み、働きやすい環境にしていく」としている。

週休4日の導入は、大手企業では異例。対象は40歳以上の正社員とし、40~50代の利用目的は介護に限定する。週休3日は30歳以上で、30代は育児と介護に限る。基本給はそれぞれ通常勤務時の60%、80%に引き下げるが、復帰することも可能だ。派遣社員や管理職は対象に含めない。

最終更新:12/17(火) 8:52
共同通信

Measure
Measure
 

自分の尺度。

*[次の世代に]夢中探検。
日経よりDeNA南波さんのインタビュー。
長いけどぜひ若い人に読んで欲しいので終わりに引用しておきます。
中高大と偏差値という尺度の中で自分の手が届く一番いいところを選んできたと思うけれど、それはすべて他人の尺度。

 これで一撃。

さすが元コンサルタント。自分の軌跡を実に端的に捉えている。
学校の勉強はすべてムダ、ではないけれどこれです。
暗記して得点して上級校にいくレースは意味がない、ということに気づけない時代があったわけです。
そのまま定年まで走ってしまう世代が。
けれど今はもう違う。
かと言って「これからの生き方」を指南してくれるような場所もない。
少しでも「正解に近そうなところ」を探っていてはいけない。
正解は自分で決める、と。
正解が1つというような日本の教育を受けていると、夢中になる能力がどんどん失われてしまうんです。
「夢中になる能力」。
夢中になるものを探す。それに夢中になってみる。
そしてまた探す。
インタビュアーの学生さんはいいことを言っている。
自分の人生に対しては誰もが起業家であるといえます。

トップ女性起業家の後悔 自分の尺度で生きるの遅れたDeNA 南場智子会長

 

「私は自分の人生を生き始めるのがすごく遅れた人間」。ディー・エヌ・エーDeNA)創業者で会長の南場智子さん(57)は、女性起業家の先頭ランナーとして知られる。しかし、意外な後悔を口にした。米ハーバード大MBA経営学修士)を取得し、マッキンゼー・アンド・カンパニーコンサルタントとして経験を積んでから起業した南場さんの人生のどこが「遅れた」のか。キーワードは「自分の尺度で生きているか」だ。U22記者と早稲田大学法学部4年の林美沙さんがインタビューした。
――(林)DeNAを起業したころのことを教えてください。なぜ決断できたのでしょうか。迷いはありませんでしたか。
1999年、DeNAを起業しました。あのときの情熱は、まるで熱病にかかったようでした。
当時、私はマッキンゼーコンサルタントで、同社のパートナーになっていました。普及が進んでいた携帯電話でオークションサイトをやったら面白いんじゃないかというアイデアを思いついて、コンサルタントとして他社の知り合いに熱心に勧めたのです。するとその人から「君がやればいいじゃない」と言われた。私は他人にアドバイスするのが仕事でしたから、自分がやるという発想がありませんでした。一瞬、「え?」って思ったけれど、次の瞬間から「わーっ」と情熱がわいてきたのです。
主人以外のすべての人に反対されたのに、迷いはありませんでした。なぜ迷わなかったのか。もうこれは論理的には説明できません。情熱がわきおこってしまい、とにかくやりたくてたまらなくなってしまったとしか言えないのです。

情熱に突き動かされて起業した
このとき、私は初めて自分の人生を生き始めたと思っています。それまでの人生、私はいつも自分以外の誰かの尺度で決めていました。高校も大学も、就職先もです。もうちょっと早く、20歳くらいで自分の人生は自分の尺度で生き始めればよかった。本当に遅れたなあと思うのです。

ずっと父の言うとおりに生きてきた

――(U22)「誰かの尺度」というのは、厳しかったお父様でしょうか。
大学生まではずっと父の言うとおりに生きてきました。新潟の地元では有名な怖い父でした。子どもの頃、友達の家に泊まりに行ったことさえなかった。父が許してくれなかったからです。上京はもちろん大学進学だって反対。女子大ならいいと父がぎりぎり認めてくれた津田塾大に進学しましたが、東京にいても父が見張っているんじゃないかとひやひやしていました。
ページ: 2
父から少しでも離れたくて、大学4年で米国に留学しました。父が留学費用を出してくれるわけがありませんから、必死で勉強して大学から奨学金をもらいました。父は留学にも反対しましたが、最後には折れてくれた。それで、留学中は毎日のように文通したんです。この時になってようやく、父を一人の人間として見ることができるようになりました。父の筆跡をみて、文章を読んで、意外とユーモアのある人なんだなって初めて気づいた。亡くなるまで怖くて仕方なかった父でしたが、この文通のおかげで「怖いだけの人じゃない」と、乗り越えられたように思います。
――(U22)大学卒業後にマッキンゼーに就職したのは自分で決めましたか。
就職は父に決められたわけではないのですが、自分の尺度で決めたわけでもありませんでした。マッキンゼーは当時ものすごく人気があって、みんなこぞって受けているから自分も受けてみようかなという程度。コンサルタントって何なのかもまったくわからないまま、就職を決めてしまいました。入社してからコンサルタントの仕事の厳しさを知りました。あんまりつらくて、逃げるようにハーバードに留学したほどでした。
DeNAを起業してから初めて、私は自分が事業が大好きなんだということに気づいたんです。当時、もし本当に自分の尺度でちゃんと決めていたら、コンサルタントという道は選ばなかったでしょう。

「若いときから事業に関わらせてもらえる会社に身を置くのがいい」
――(林)事業を自分でしてみたいなら、コンサルタントでは勉強になりませんか。
コンサルタントがダメと言っているんじゃないんです。でも、会社の経営や事業に興味があるなら、若いときから事業に関わらせてもらえる会社、小さくてもいいから事業の起承転結に自分でちゃんと携われるような会社に身を置くのがいいと思っています。あるいは、事業の神様みたいな経営者の横でカバン持ちをするような経験は、学びが多いでしょうね。
私の場合、起業してから、コンサルタントとしての経験が足を引っ張ったことも多くありました。そもそもコンサルタントはパートナーになるまで稼がなくていいから、収益の感覚が育ちません。人にアドバイスする立場だから話し方も理路整然と偉そうになって、かわいがられないキャラクターが身についてしまうんです。これらはすべて、経営者としてはマイナス要因でしかない。私は10年もコンサルタントをしましたから、えらい論理的な人になっちゃって、ヤバかったですよ、本当に。
■起業できたのは仲間の力があったから
――(U22)コンサルタントから経営者に転身して、どんな苦労がありましたか。
自分を事業の世界で求められる姿にシフトさせるのに、時間がかかりました。コンサルタントは選択肢を複数提示するのが当たり前ですが、経営者は「これ!」と決める力が求められる。簡単な話でいえば、例えば会社のロゴの色をどうしましょう?というような決断を求められたときに、「最近のトレンドだとこっちだが、あの色はこういう効果があって……」などと理論を述べることは、経営者には求められていない。むしろ「私はこの色が好きだからこれにしよう」っていう決断力が必要なのです。
 
それなのに、私は会議で選択肢A、B、Cを提示したりしていた。AとBは僅差だよねなんて話を経営者がしてしまうと、チームに迷いが出ます。迷いが出ると成功の確率は間違いなく下がります。選択肢を示すより、とにかく決断が早いほうがいいこともありますよね。私がいつも言っている「正しい選択をしようとするより、その選択は正しかったと思えるようにしよう」というのは、まさにこのことなのです。
――(林)DeNAを起業すると決めたとき、真っ先に何をしましたか。
仲間をつくりました。起業に迷いは無かったけれど、やはり1人では心細いですよね。この仲間がよかった。最初に声をかけたのはマッキンゼーにいた川田尚吾氏。起業の経験もあったので、相棒として彼を選んだのは大正解でした。このほかにも、リクルートとかIBMにいた人たちが来てくれました。彼らが「南場さん、社長ならこういうふうに決断してほしい」などと教えてくれたんです。コンサルタント的な発想の私を、仲間が経営者的な発想に引っ張ってくれたと思います。

「親が喜ぶ」という尺度で就職を決めないで

――(U22)自分の尺度で生き始めるのが遅れたと感じている南場さんから、今の20歳前後の世代に贈るアドバイスはありますか。
20歳前後というのは、世の中のすねかじりから社会の一員に変わっていくタイミングです。就活は、初めて偏差値がない、大きな意思決定ですよ。中高大と偏差値という尺度の中で自分の手が届く一番いいところを選んできたと思うけれど、それはすべて他人の尺度。他人の尺度で選択している限り、あなたはあなたの人生を生きているとはいえません。職業選択は初めて、他人の尺度から解放されるチャンスです。絶対に「親が喜ぶ」とか「友達にドヤ顔できる」という尺度で就職を決めないでほしい。
自分が夢中になれるものは何か、自分の心に聞いてみてください。正解が1つというような日本の教育を受けていると、夢中になる能力がどんどん失われてしまうんですけれど、20歳くらいになったら、できるだけ意識的に、自分の夢中になるものを自分で見つけて、自分で選んでいってほしいなと思います。
■インタビューを終えて 早稲田大学法学部4年 林美沙さん

インタビューした早稲田大学法学部4年の林美沙さん。大学院に進む予定
南場さんとお話をして、起業家に必要なのは、自分の「夢中」を見つける力、そしてそれを好きな仲間に伝える力だと分かりました。何が正解なのかを迷わずに自分の「好き」に忠実でいること。情報があふれている社会に生まれた私たちには圧倒的にそれが足りないです。正解が何なのかずっとわからないまま、ちょっとでも正しそうなものを選ぼうと頭がパンクしそうになっている。自分の人生に対しては誰もが起業家であるといえます。「どの道が正解かを悩む時間があるのなら、自分の選んだ道を正解にするところに時間をかけよう」という言葉を胸に、私も行動しようと思います。