研究者の仕事術、の活かし方。-その終わりに
戦略、について
やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論
- 作者: 島岡要
- 出版社/メーカー: 羊土社
- 発売日: 2009/08/01
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 125回
- この商品を含むブログ (69件) を見る
ストラテジー。
戦略。
戦略と戦術、などと言う。
一見軍事用語だが、こんな物騒な言葉がビジネス界で使われ始めたのは、おそらく二十年前くらいからではないか。
もちろん古くから使用歴はあったと思うが、コンピュータが普及しだして業務処理にいわゆる「レバレッジ」が利き始めて以来、使用頻度がとても高くなっていたように思う。
自分がシステム業界に入ってすぐ、「戦略情報システム」と言う言葉が大流行していて、「コンピュータと戦略ってなんのこと?」と戸惑っていたことを鮮明に記憶している。
それはともかく。
戦略、というのはどういうことだろうか。
そんなことを「断片」として考えるきっかけは先にしつこくメモっていた「やるべきことが見えてくる-研究者の仕事術 島岡 要 著」を読んでからである。
道なき道、を行かねばならない研究者、という特殊な分野(ビジネス界よりも殊にオリジナリティが求められるという意味で)において、何とか、方向を見失わず、もやる「霧」のような世界の中でも、自らの適性と、考える習慣、生活や行動の習慣などを工夫することにより、「海図」を作って進むのだ、という姿が印象的だった。
そして、当著の研究者の取るべきマインドや行動スタイルは、ビジネスマンにおいても何ら変わらず、むしろ進んで当てはまる、という感覚に驚く。
著者が行っていることは、「研究者としての人生戦略」という表現がぴったりくる。
・自分の仕事の報酬は、金ではなく「人間的成長」と定義する
・好きなこと、という軸を中心にせず、「強み」を志向する
・生産性を上げる
・自分の世界で一番になる
などなど
どれもが戦略と戦術の塊、と言ってよい。
これが逆に「好きなことから始める」
「周りの環境でやりやすいものから手をつける」
「常にメインストリームの派手なテーマを追いかける」
「英会話でネイティヴを目指す」
などとやっていたら、あっという間に研究者の人生は終了してしまう。
という厳しさも伝わってくる。
だから「戦略」とは何だろう、と思う。
戦略とは「消費の予定」である。
予め、自分のリソース(つまりは時間)を何に向けるか。
周りの環境で、今日は上司に頼まれた仕事を優先し、
明日の会議の予定に合わせて資料を作り、
夜は誘われたままに飲みにゆく。
というのは見るからに戦略に欠ける。
今日は○○さんと飲みに行って、この件を相談してみよう、というのは戦略である。
ビジネス戦略、というのはこれからのビジネスの予定。
よくビジネスのプラン書など作成していて「戦略がない」と怒られたものだ。
さて。
人生の戦略。
そんな暑苦しいものではなく。
自分の人生のストラテジーを考える。
優先すること、しないこと。
緊急度の高いこと。
案外、長期の視点に立てば戦略そのものすら、立っていないことに気づく。
だが「その」自分のこれから、についての戦略の立案、は実はなかなか「ワクワク感」のあるものではないか。
「研究者の仕事術」を読み終えての感想は、自分にとっての「戦略感」というものがガラッと変わったな、という感じ。
改めて、自分というものが「何」に共鳴する存在なのか、ということにも驚いた次第。
いやはや、客観的に「自分」て見えてないことに「強く」気づいた、というのが一番の収穫だったのかもしれない。
しばらく経ってから、再度この書評を眺めてみようと思っている。