60万室。世界第五位のホテル。

インターネットが「ある普及率」を超えたからこそ、台頭してきたサービスがある。
これらは、それ以前には存在し得なかったけれど、ある「閾値」を超えたことによって、むしろ自然発生的に出てきた感も強い。
今はやりの無料通話とか、クラウドなどのサービスである。
そしてそんな「閾値超え」のサービスがリアルな世界にも進出してきている。
それが「宿泊」という分野。
もともとシェアハウス、というのは割合古くからある概念だったが、情報網の整備されるまでは「マイナーな旅行者のチョイス」という域を出なかった。
Airbnb(アエビーアンドビー)社の管理物件は60万室を超えたという。
閾値超え」である。
つぎはそれを「安かろう悪かろうにしない」知恵である。

利用者の本人確認や、使用後の互いのレーティング。
さらには損害保険やコールセンターも準備する、とソフトウェアの充実にも余念がない。

サイトに掲載されている部屋の数は約3万4000都市の計60万室以上。大手ホテルチェーンの部屋数と比べるとインターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)やマリオットなどに次ぐ世界5位の規模だ。

ITのこれまでの役割は、納期の短縮とか、材料の手配、とか通信時間の短縮とか、情報の共有などにあった。
自宅の一室が余っていたり、自分の経営する飲食店に空きがあれば、それを埋めるのはITの最も得意とすることである。
結局は情報を使う側の「業務リテラシー」が整備されれば、まだまだリアル世界のIT利用はこれから進むに違いない。
これまでは無駄で隙だらけだった"宿泊施設"というキーワードに穴が空き始めた、ということに他ならない。
まだまだこれから広く浸透してゆくに違いない。

個人の空き部屋60万室仲介 米Airbnb、日本に的

2014/6/16 22:06
日本経済新聞 電子版
 米西海岸発の「宿泊革命」が世界に広がっている。仕掛け人は2008年創業の米ベンチャー、Airbnb(エアビーアンドビー)。世界各地に点在する個人の空き部屋をインターネットで仲介。利用地域は192カ国、宿泊者は1500万人を超え、既存のホテルビジネスを揺さぶる。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と旅行事業で提携するなど、業界の風雲児は次の照準を日本に定めた。

建築家のアスケネジーさんは空き部屋を貸している(サンフランシスコ市内)
建築家のアスケネジーさんは空き部屋を貸している(サンフランシスコ市内)

 「自宅にいながら世界中の人と交流できるのが魅力」。米サンフランシスコ市に住む建築家のケパ・アスケナジーさんは手入れの行き届いた中庭で楽しそうに話す。

 収入を補うため4年前に自宅兼事務所の空き部屋をAirbnbのサイトに登録した。初めての「ゲスト」は独ベルリンから来た19歳の技術者。以来、アスケナジーさんの宿泊客は1千人超。「最初はお金のためだったけど、いまは宝くじが当たっても続ける」とやりがいを感じている。

 サイトに掲載されている部屋の数は約3万4000都市の計60万室以上。大手ホテルチェーンの部屋数と比べるとインターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)やマリオットなどに次ぐ世界5位の規模だ。

 ネットを介して個人の余剰な「モノ」や「時間」を、それを必要とする人と共有する――。Airbnbは「シェアエコノミー」と呼ぶ新しい消費スタイルの波に乗り短期間で世界規模の宿泊ネットワークを築いた。

 大半は一軒家やアパートの空き部屋で、木の上に泊まる「ツリーハウス」や城などユニークな物件もある。大手ホテルのようなサービスは期待できないが料金は総じてホテルより安い。貸す側の「ホスト」から宿泊料金の3%、ゲストから同6〜12%受け取る手数料が収入源となっている。

 急成長の秘密は見知らぬ人を家に泊めるホストとゲスト双方の不安を和らげる仕組みにもある。全利用者に実名やメールアドレスなどによる本人確認を義務付ける。宿泊後にはお互いの態度などを評価しあう。サイト内で評価は蓄積され、評価が低いとホストもゲストも締め出されていく。

 もちろん、こうした仕組みも完璧ではない。数年前には部屋を貸した女性が室内を荒らされる事件が発生。騒音などを巡って近隣住民とトラブルになるケースも報告されている。Airbnbはその後、最高100万ドルの損害保険を用意し、24時間対応のコールセンターを設置。13年9月には米国などでブティックホテルの開発を数多く手掛けたチップ・コンリー氏を幹部に迎え、サービス向上のために教育プログラムも始めた。


 Airbnbの人気に低価格ホテル業者は危機感を抱く。ニューヨークなどではAirbnbの利用者がホテル税などを免れているのは不公平としてホテル業界団体が抗議。調査に乗り出した州側とAirbnbが法廷で争う事例も出てきた。

 ただAirbnbを活用する動きは世界に広がる。サッカーのワールドカップ(W杯)大会が開催中のブラジルでは観光省と試合のある12都市の自治体が、市民に対しAirbnbを通じて空き部屋の提供を求めた。大会期間中、計100カ国12万人のサッカーファンが利用する見通しだ。

 米オレゴン州ポートランド市は3月、「シェアード・シティ(共有型都市)」構想を掲げるAirbnbと提携した。同社のサービスにお墨付きを与える代わりに観光振興などで協力を得る。

 「観光客は増やしたいがホテルは簡単に増やせない。そんな悩みを持つ自治体には、すでにあるものを活用する我々のサービスは有力な解決策」。ブライアン・チェスキー最高経営責任者(CEO、32)は強調する。

 チェスキー氏は友人2人とAirbnbを立ち上げた。次のステップと位置付けるのが宿泊以外のサービスの提供だ。同氏によると一般的な旅行予算に占める宿泊費の割合は約3割。交通費や食費などに事業拡大のチャンスがある。同CEOは「今後は宿泊費以外も取りにいく」と意気込む。