藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

実は人は作れるのではないか

結局AIという名称の「コンピューター人称」が登場してからは表現が便利になったと思う。
それってまるで「人間に対して"知性とは何か?"を問うている。
今の論調は「人vsAI」と言った視点が主流だが、これはそのまま「人対知性とは何か」という話に置き換わる。

  1. 過去に起こったことがない事象に対しては、「学習」していないので「判断」できない
  2. 過去と未来の相関が低く、「再現性」が低い事象に対しては「未来予測」できない

こうした特徴が果たして「AIが人を凌駕しない理由」になるだろうか。

自分はプログラミングのリソースが無限に提供できれば、人とAIの差はなくなるだろうと思っている。

そして

人が「人であること」は情緒に集約されるのではないか。
でも、その不安定に見える情緒でさえ、ある仮定の元に「ロジックでの置き換え」は可能にも違いない。

自分たち「生き物」は、何か「特殊な命の動機」で作られている、と思いたいのじゃないだろうか。
けれど、「生命の成り立ち」はともかく、感情や行動としての自分たちは「十分想定内の生き物」だろう。

一見、荒唐無稽に見える振る舞いでも、後から検証すれば説明がつくのは歴史の解釈が証明してくれている。
さて、人が「人でなければ成しえないこと」をこれから自分たちは真剣に考えないといけない。
本当にそういうことってあるだろうか。

「AI」だけでは未来は創れないといえる理由
技術が進歩しても敵わない人間だけの能力
人間にできてAI(artificial intelligence:人工知能)にできないこととは何でしょうか(写真:metamorworks / PIXTA

AIは万能ではない――この考え方を筆者は大前提としている。

AIについて書く前に、簡単に筆者の紹介させてほしい。私は今から17年前に新卒で米国投資銀行に入社し、トレーダーという仕事でキャリアをスタートさせた。

2000年代初頭の当時は、業界全体でトレーダーの仕事を自動化するためのシステム開発に乗り出していた時期であったが、当時のシステムは、まだまだAIと呼べるレベルの代物ではなかった。実際、自動売買システムは、トレーダーのアシスタント的存在で、重要な取引は「人間の」トレーダーが行っていた。

その後、システムに本格的にAIが組み込まれ始め、パフォーマンス的にも人間を凌駕するようになっていった。実際、2008年時点では、多くの自動売買システムにAIが組み込まれていたと考えられる。

にもかかわらず、多くの証券会社が2008年9月に端を発したリーマンショックで巨額損失を出した。それはなぜか? そこにAIの弱点を理解する鍵があると筆者は考えている。

AIの最大の弱点は何か?

AIの定義によっては一部例外があるにせよ、基本的にAIは「過去のデータ」を基に分析を行い、学習をすることで、判断や未来予測を行うことに大きな特徴がある。

しかし、この「過去のデータを基に学習していること」がAIの最大の弱点である。

すなわち、

1.過去に起こったことがない事象に対しては、「学習」していないので「判断」できない
2.過去と未来の相関が低く、「再現性」が低い事象に対しては「未来予測」できない

ということである。

特に、リーマンショックでは1.の弱点が露呈した。過去にリーマンショック以上の金融ショックがなく、AIは対処法を学習しておらず、どうして良いか判断できなかったためだ。

また2.についても、AIと金融市場は元々の性質上、それほど相性が良くないという点がある。たとえば、アマゾンで買い物をした場合、AIがあなたの好みを次々に学習して、商品をレコメンドしてくれる。個人の「好み」は急に変化しないので、過去に好きだったものと、未来に好きなものの「特徴量」の相関が高く、「再現性」が高いためAIが機能しやすい。

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株式市場のように市場参加者の「相場観」が世界中のニュースの影響を受けやすいものについては、ニュースにより「相場観」が一変することが多い。そのため、過去と未来の「値動き」の相関は極めて低く、「再現性」を担保しづらい。

AIは、リーマンショックのような過去と未来の「再現性」を断絶する出来事には、極めて脆弱である。

以上から、現状のAIは主に「過去のデータを学習でき、再現性の高い領域」という特定の領域を代替するのに適している。これらは「特化型AI」と呼ばれ、いわゆる「作業」を自動化するには十分な能力である。

一方で、世の中の人々が「AI」と聞いて想像するAIは「汎用型AI」と呼ばれ、特定のタスクに限定せず人間と同様の、あるいは人間以上の汎化能力を持つとされる。知性をも機械化し、独自進化を遂げ、人間を遥かに超越する存在となると言われるが、実用化までの道のりを考えるとまだまだ「夢物語」と言えよう。これらは「シンギュラリティ」と呼ばれ、世界中の専門家の間でその可否が議論されている。

未来を創るのは誰か?

テクノロジーが日々進歩し、未来への再現性が低くなっている今、誰が未来を創るのか。

テクノロジーの進歩に対して人間だけができることとはなにか(写真:iStock/scyther5)

未来を創る原点は、「発明」や「破壊的イノベーション」と呼ばれる革新にある。これらは「はじめて」の発見や事象なので、当然AIで創り出すのは難しい。これらを創れるのは、歴史上を振り返っても私たち人間だけだ。

では、なぜ「人間だけ」がこれらの革新を生み出せるのか。

それは、そもそも私たちの考える「より良い未来」自体が、私たち人間の「欲求を満たす体験」の集合体であり、そこでは「人間の欲求を満たすサービス」が良いサービスと定義されるため、結局は「欲求」を持っている人間にしかデザインできない、というシンプルなロジックだ。

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もう少し身近な例で説明すると、

人間は生まれつき「時間を無駄にしたくない欲求」を持っている。その欲求を持っている人が駅の改札に行った時に、「いちいち切符を買いたくない」というニーズが発生する。

自動改札とSuicaは瞬く間に普及しました(写真:iStock/emiekayama)

そこに「カードにお金をチャージでき、改札口でタッチするだけで支払える」という技術が組み合わさって初めて「Suica」というサービスが生まれ、また1つ人々の欲求を満たす「より良い未来」が創られたことになる。
世界は、このような小さな革新の積み上げで出来上がっているといえる。

ここでのポイントは、すべての革新の始まりが「人間の欲求」である点だ。
日々のさまざまな生活シーンの中で、人はさまざまな「潜在的な困りごと」に遭遇する。

ここでの「困りごと」とは、「欲求が満たされない状態」の総称である。さらに、あえて「潜在的な」と表現しているのは、多くの場合、それは欲求が満たされていないにもかかわらず、解決することを諦めていて、当の本人は「困りごと」として言語化すらできないことが多いからである。

先ほどの例で言うと、何十年間にもわたって「駅で切符を買う」という体験を繰り返していると、それが「あたりまえ」となり、「時間を無駄にしたくない欲求」が阻害されているということすら気づかない。

欲求を持つ人間だからこそ可能なこと

重要なのは、もう一度「人間の欲求」だけにフォーカスし、ゼロベースで新しい体験をデザインすることである。これは、現在と過去の行動データしか分析できず、「欲求」を持たないAIには不可能である。

これに関しては、欲求をデータ化して学習すれば可能になるのではと考える人もいるだろう。だが、上述の通り、重要な革新の多くは本人も認識していない潜在的欲求に由来するので、いくら自然言語等の解析技術が進んでも相変わらずAIには困難なはずである。

そう考えると、人間にしかできない、「人間らしい」こととは何だろうか? そこで、求められるのは”共感力”だと筆者は考えている。

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「デザイン思考」という言葉を聞いたことのある読者の方々はどれくらいいるだろうか?

デザイン思考の起点は「共感」にある(イラスト:筆者作成)

デザイン思考とは、イノベーションを起こすような創造的なアイデアを生み出す思考法であり、GoogleAppleといった世界の革新的企業が採用していることでも有名な問題解決のアプローチだ。

重要なのは「ユーザーへの共感」から始まる点

その思考プロセスで重要なのは、「ユーザーへの共感」から始まる点である。簡単に言うと、「解決すべき課題」を定義するためには、まずはユーザーの本源的欲求に共感し、ユーザーの気持ちを理解しよう、という話だ。

なぜ「共感」が重要なのか?

上でも述べたように、AIは欲求を持たないので、「(人間的な深い)共感」も当然できない。ところが、この「共感」こそが、世界を変革する原動力なのである。

すなわち、「共感力」が強いほど課題を明確に理解でき、良質なアイデアを生み出すことができるだけでなく、課題を解く情熱やモチベーションも上がり、問題解決の実行力も高まる。また、チームワークを考える上でも「共感力」は欠かせない。「共感させる力」は人の心を動かし、「リーダーシップ」や「巻き込み力」となって世の中を動かし、結果として「一人では成し遂げられなかった偉業」を実現させることになる。

このように、「共感」はすべての「革新の原点」であり、「人間だけが持つ価値」だ。「AIが人の仕事を奪う」と言われる時代に、AIと共存し生き抜くためには、実はこの「共感力」を鍛えることこそが一番重要なのである。

「英語」や「プログラミング」を習得することもとても大切だが、これらはいずれAIによって自動化される時代がやってくる。そんな時代にも価値を持ち続ける「共感力」という「人間らしさ」に、もう一度目を向けてみるのはどうだろうか。