藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

歴史の英知。

EUはちょうど二十年を迎えるという。

必要なのはもっと踏み込んだ同盟にするための改革だ。リスクは民間の国際金融市場で負担しなければならない。それ故、銀行同盟や資本市場同盟が重要な意味を持つ。マクロ経済の不均衡を是正する上で、特定の国にばかり責任を押しつけるのではなく、互いに歩み寄ることが肝要だ。

アメリカも、いろいろあるけれど「合衆国」という。
日本では大前研一さんの提唱した「道州制」が遅々として進まないけれど、実は「そういう取り組み」こそが必要なのではないだろうか。
日本が国内で「共和国化」できれば、アジアでも(中国はいるけれど)、そんな機運が生まれるかもしれないと思う。
EUの二十年は「部外者」にとってみれば愚かしく、醜い部分が取り沙汰されてきたけれど、実は「とても難しゼロからの挑戦」だったのではないだろうか。
その辺りは、さすが欧州だ、ではないだろうか。

いろんな利害や歴史を踏まえつつ、なおかつ先を模索する。
ちょっと他の地域にはない英知ではないだろうか。

つまりEUは壮大な「調和への挑戦」とも見える。
これからの「国の統治」「大陸圏の統治」の先達だとみれば、日本やアジアにも参考になる先輩なのではないだろうか。

ユーロ20歳「成長」は続くか
2019年1月20日 17:00

この1月1日に20歳を迎えた欧州の単一通貨ユーロは難しい「思春期」を過ごした。大人にはなれないのではと思われたこともあった。ここまで成長できたのは成功だろう。ただ、困難に直面する中で当然、疑問も持ち上がった。誕生20年を機に4点を検証したい。
▼導入は合理的だったか 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は昨年12月、ユーロ誕生20年の記念講演で、単一通貨なしには単一市場の維持は不可能だっただろうと述べた。
しかし、ユーロが深刻なリスクをはらんでいたことも明白だ。金融政策を一本化すれば、高インフレ国では実質金利が下がって経済が過熱し、低インフレ国では逆になる。経済の制度や政策がまるで違う国をまとめようとすれば、共通政策がない場合は特に、統合ではなく分裂を招く可能性がある。


ユーロは導入20年を迎えたが、ユーロ圏改革は道半ばだ(前列右から2人目はECBのドラギ総裁)=AP
▼功績は とにかく持ちこたえたことだ。これはユーロ圏解体や加盟国離脱の代償があまりに大きいと思えたからであり、債務危機に際して政策担当者らが手を尽くしたことにもよる。欧州安定メカニズム(ESM)などの安全網の構築や、2012年7月のドラギ氏の「ユーロを守るためにあらゆる手段をとる」という発言、非伝統的政策もいとわなかったECBの姿勢を思い出してほしい。
もっとも、大事なのはどう持ちこたえたかだ。経済学者のアショカ・モディ氏によれば、南欧など危機に見舞われた国々は経済的にも社会的にも政治的にも大きなトラウマを負った。加盟国の経済不均衡が拡大した。
▼ユーロ圏はどうなるか 存続し続ける公算が大きい。欧州委員会の昨年の世論調査では、ユーロを支持するという回答が4分の3に上った。加盟国は増えており、確実に信認を得ているといえる。
だが、この楽観はユーロ消滅の影響を考えた上でのことに違いない。ユーロ圏の解体は金融や経済への打撃が極めて大きく、欧州連合EU)の存立自体をも脅かす。単一市場は崩壊し、国家間協調も崩れるだろう。
▼深化の可能性は 欧州政策研究センターのダニエル・グロス所長はユーロの実績として、特に「欧州大陸の労働市場が構造的に改善し、労働参加率が債務危機の間ですら毎年上昇した」ことを挙げる。今や労働力に数えられる成年人口の割合は米国より高い。債務危機の打撃が非常に大きかった国も含め、失業率は低下している。
にもかかわらず、ユーロ圏は「最適な通貨同盟」とはいえず、そうなる可能性も低い。ユーロ圏を連邦制に近づける取り組みは検討されていないようで、根本的な政治問題は確実に残る。つまりユーロ圏全体で決めた政策に責任を持ちながら、国民への説明責任を果たす役割は各国政府が担うという状態が続くことになる。
必要なのはもっと踏み込んだ同盟にするための改革だ。リスクは民間の国際金融市場で負担しなければならない。それ故、銀行同盟や資本市場同盟が重要な意味を持つ。マクロ経済の不均衡を是正する上で、特定の国にばかり責任を押しつけるのではなく、互いに歩み寄ることが肝要だ。
結局、ユーロ圏は成功するようにできているが、現状に甘んじれば存続すら危うくなるかもしれない。健康で長寿を全うするには、腰を据えてユーロ圏改革に取り組まなければならない。
By Martin Wolf
(2019年1月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/