藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

教育の中身。


ここ十年、国際的に大学のランキングが話題になる。
日本は総じて低めである。
それで、しばしば同時に「良い大学とは何か」というようなことも話題に上るが、なかなか統一的、抜本的な議論には発展していかない。
政権も変わったことだし、そろそろ考えてみてはどうだろうか。

良い大学とは

ノーベル賞フィールズ賞受賞の卒業生の数などを重視する

という考えもあるらしい。
一見もっともである。
けどそういう新しいものへの「クリエイティビティ」だけでもないだろう、とも思う。

論文の被引用数や情報発信は英語が前提。

なのが現在の大学ランキング指標でもあるという。
もっと議論を深めて、「卒業後の何」がランキングを決めるのか、ということから固めないと、どうも空論に終わりそうだ。


「良い教育」とは、もちろん世界に先駆けた創造的な発見や理論を作ることには、異論がないだろう。
だけど、それ以外に「その学び舎での教えのおかげで」よい社会人となり、よき伴侶と家族を持ってとても平凡に暮した、というようなことは「地味だが非常に意義深い教育」だと思う。

いつも思うのだが、いわゆる世の「親たち」が、まず自分の人生をきちんと定義し、反省して、それから次世代への思いを託す、という手順を踏まない限り、結局教育論というのは常に上滑りしてしまうのである。


自分が屈折して「幸せでない」とか「納得できない」日常を過ごしている親に、「素直に生きろ」とか「打算的に考えろ」と言われても、若者だって納得できないだろう。
我われはいつも、「自ら確固とした自信を示す」というのは不得手だが、他人が何か「欺瞞を持って話している」ということを見抜く目は本能的に備えている。


ようやく日本でも「大学とは何か」「教育に必要なことは何か」そして「職業観をもっと考えるべきではないか」という気運が出てきたのではないかと思う。
この問題は、まだ先進国のどこも確固とした理屈を打ち立てていない。
GDPの成長とか、雇用とか、まだまだ経済主体の考えが中心の先進国において、「次の時代の価値観」を編み出せるのはどの国だろうか。
是非とも考えてみたいテーマである。


我が校、世界で何位? 距離置く 乗る 戦略二分
「世界の大学ランキング」への視線が熱い。
英語圏の大学が有利になる傾向に反発して一定の距離を置く大学があれば、あえて流れに乗って躍進を目指す大学も。
一方で世界ランキングを発表する英国の教育専門誌が今年、大学データの収集を担当する提携先と指標を変えたため、秋の順位発表にどう影響するか関係者の注目が集まる。
どう向き合えばいいのか。


6月21日、東京国際フォーラムで開かれた「世界大学ランキングシンポ」の広い会場は、大学関係者らで満席状態だった。
主催は、学術情報リサーチ会社トムソン・ロイター
ランキングを発表する教育情報誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)の新たな提携先だ。


THEは、英国の教育情報会社QSと提携。論文の被引用数や情報発信などの指標で主に研究の質を評価し、04年からランキングを発表してきた。
ノーベル賞フィールズ賞受賞の卒業生の数などを重視する中国・上海交通大学のランキングと並んで有名で、世界中の研究者が大学選びの参考にしている。


トムソン・ロイターとの提携で、評価の指標をこれまでの6から13に増やし、研究の質や大学の組織力、国際性、経済活動などを評価するという。
THEのフィル・ベイティ副編集長が新しい指標をスクリーンで示し、「これまでは英国とオーストラリアの大学が有利になるような偏重があった。
もっと学者や研究者の声を反映したものにしたい」と話すと、参加者からは質問が相次いだ。


ベイティ氏は言う。
「日本の大学は今後、グローバルな思考と、英語での発信が求められている。公的な発信力がなければ研究の面でも損をする。研究を国際化するため、他国との共同研究に取り組むことも求められる」


■とらえ方はそれぞれ

こうした動きに対して冷静なのが早稲田大学だ。
THEの09年ランキングで148位だった。世界ランキングが、研究中心の大学に有利なのに比べ、どちらかといえば人文社会科学系の総合大学は不利といわれる。
同大経営企画課は09年、「世界大学ランキングの意義とその可能性」という資料をまとめ、「ランキングは、ある指標からみた場合の順位であり、単純に大学の総合力をはかるものではないと考える」という基本方針を示した。


とはいえ、全否定はしていない。
(1)ある指標を用いた場合の強み、弱みがある程度、客観的にわかる
(2)各指標のレベルアップを行うことは、教育研究の質の向上につながるとし、「結果を正しく分析し、課題を認識し、その対策を講ずることが重要である」とまとめた。
さらに、グローバル戦略の打ち出し方なども示す。


一方で、97位の東北大学は、かなり積極的だ。
井上明久総長は07年に「井上プラン」を発表し、世界のトップ30の大学に入ることを目標に態勢を固める。


今年1月には「研究中心大学としての世界リーディング・ユニバーシティモデル」という報告をまとめた。
このほか、「ランキング向上への提案」という資料もつくり、トップ10、トップ11〜20、トップ21〜30の大学の特徴を分析。
国際広報の充実による知名度の上昇、論文などの被引用度の高い分野・研究者をリクルート、質の高い外国人教員の獲得が必要とした。


大学幹部は「戦略的に経営をするためにもブランド力を高めたい」と話す。


■「日本発」の待望論も

海外発ではなく、日本発の世界ランキングへの待望論もある。
2007年末、東京・本郷の東京大学本部の一室に、有馬朗人・元東大総長や、小宮山宏総長(当時)らの大学学長や文部科学省幹部ら数人が集まった。


現在の世界ランキングの指標となっている論文の被引用数や情報発信は英語が前提。
英語圏の大学ほど有利になる。
それなら日本の大学の長所を知らせる日本発の世界大学ランキングをつくり一石を投じようという相談だった。


しかし、実現には、世界中のトップを目指す大学を調査する常勤のスタッフが必要だ。
コストもかかる。
予算を左右できる政府とは離れた立場の機関でなければ、信頼されない。
会合は2回ほどで終わり、日本発のランキングは幻に終わったという。


有馬氏はいまのランキングについて「どんな指標で評価しているか、冷静に見ればいい。アジアや途上国が弱いのは大学の歴史が欧米と比較にならないほど浅いのも背景にある。英語もまだ弱い。客観的に、参考として見てほしい」と話す。


編集委員・山上浩二郎)

    ◇

関心呼ぶきっかけに有効


世界の大学ランキングに詳しい米澤彰純・東北大准教授(教育学)の話 世界大学ランキングはまだ発展途上。
どのような指標をどの程度重視して作られているか確認するのが大切だ。
現行の傾向は、理系中心の研究活動や国際性などに特化しており、英語圏の情報重視だ。
とはいえ、順位は国際社会の一定の見方を反映していることも事実で、優秀な研究者らが大学選択で参考にしている。


国内外の多くの大学が順位を上げようと様々な努力をしている以上、各大学は過小評価を避ける意味で積極的に情報を公開し、ランキングのあり方に意見を述べることも必要だ。
大学が行う教育・研究その他の活動は、点数化できない複雑さがある。
同時に社会からは大学の価値や意義が見えにくい。
ランキングは、大学に関心をもってもらう最初の窓口としてはきわめて有効で、それを前提に各大学は国際社会への情報発信に努めるべきだ。