藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

就職戦線異状あり。

もう二十年も前、「間違いだらけの会社選び」という演目で東京近郊の大学、専門学校をまわり、講演していたころが懐かしい。
そんな話を、昨今の大学生の"就活事情"でありありと思い出す。

刹那の就活ありき

昨年6月に留年を決めてからは、就活で武器になるよう英語能力テスト(TOEIC)を730点(海外部門で働けるレベル)にまで引き上げ、準備を進めてきた。

という話や。
また

「面接で話すネタは何がいいのか…」。去年はサークル立ち上げの話をしたが内定を取得できなかった。何をどう話せば自分をアピールできるかいまだに決まらない。

今はまだ一二年の大学生たち。
もうすぐ「現実の就職試験」と向き合わねばならなくなる。
「就活で武器になるTOEICを取る」とか「面接で話すネタは…」というこの挙動は、果たして「これからの日本を担っていく人たち」に望まれる態度だろうか。

縮む就活生の基準

折角、戦後70年を迎えようとする日本だが、将来を担う若者の器量はどんどん縮んでいるようである。

これは、これまでのGDPの成長率、などと関係があるだろう。
もう「成長のみを追いかける」という経済モデルではなくなったゆえに、過渡期の今の若者も「どんどん矮小化した将来の選択肢」を見るようになってしまっているのだろうと思う。

日本の国の立場から。
これからの大学生や二十代の人たちには「折角の先進国として大きなスケール」で世界を見て欲しい、と誰もが思っているだろうに。

例えば。

これからの日本がどうなるか、とか
これからの北方領土はどうなるか、とか
これからのアジア各国の将来はどうか、とか
アジアと中東という密接なリージョンの関係はどうか、とか
未だ続く東西の対立のなかでの「日本」はどう変わりえるのか、とか
日本は資源問題と自国の経済をどうしてゆくのか、とか
畢竟、世界の南北問題である貧富の偏在はどのような方法で解消して行けるのだろうか、とか。

日本は先進国、と言われているのなら、それなりのレベルで世界に「自らの意思」を発信するべきであろう。
最後に。

早稲田大の加藤彩(仮名)さんは「せっかく(難関の)早稲田に入ったのだから、大企業で働きたい」と話す。「金融機関で女子が採用されやすい地域限定の総合職がプライドとして許せる限界」というのが本音だという。

この学生女子は「プライド」だけで金融機関を生き抜いてゆくのだろうか。
また、それが彼女にとって、一番満足のいく形だったのだろうか。

あえて、「大企業重視」の自らのステレオタイプを、一度真正面から疑ってみてもいいのではないだろうか。
プライドや、いたずらな夢や、虚飾を追いかけていても、結果何も「積み上がり」は期待しにくい。
就職などを"ゴール"に置くのではなく、その先の遠い遠い世の中のことを、ぜひ伝えたい。

これが終わりではなく、今が始まりなのだ。

有名企業狙い就職浪人、甘くない現実
2012/3/28日本経済新聞 電子版

初めての就職活動は分からないことだらけ。直接企業に質問しづらいことも多いし、口コミ情報がどこまで信用できるかも不安だ。そんな悩みを解決する「就活探偵団」。就活生の様々な疑問に答えるべく、あなたに代わって日経記者が企業に突撃取材します。
今回の疑問は「就職浪人、現役より不利?」

■失敗できないプレッシャー
厳しい就職戦線。今春も残念ながら企業との良縁が見つからず大学4年の終わりを迎えてしまった人は多い。悩んだ結果、選んでしまいがちなのが、留年してもう1度就職活動に挑戦する「就職浪人」。では、留年すれば本当に就職できるようになるのか。現役生に比べて不利なことはないのか。

まず、就職浪人した学生に留年を選んだ理由を聞いてみる。
明治大学の田中肇(仮名)くん。昨年、メガバンクや大手通信など約30社にエントリーシートを送ったが、内定はゼロ。全滅だった。「留年するしかなかった」。今シーズンは「大学5年生」として後輩と一緒に就職活動に取り組んでいる。「2年目だし納得できる企業に何とか入りたい」と意気込んでおり、今年は受験する会社を約10社にまで絞った。

昨年6月に留年を決めてからは、就活で武器になるよう英語能力テスト(TOEIC)を730点(海外部門で働けるレベル)にまで引き上げ、準備を進めてきた。

ただ、不安は消えない。「面接で話すネタは何がいいのか…」。去年はサークル立ち上げの話をしたが内定を取得できなかった。何をどう話せば自分をアピールできるかいまだに決まらない。今年はもう失敗できないという思いが強く、昨年とは違うプレッシャーと闘う日々だ。

■採用担当者ふり切って内々定辞退
全滅ではなくても留年を選ぶ人もいる。早稲田大学に通う仲田美紀(仮名)さんは去年大手コンビニエンスストアから内定をもらったものの辞退し、今年もリクルートスーツを着て企業訪問を続けている。「コンビニは海外出店を強化しているので、英語を使う仕事ができると思って応募しました。でも、友達に『コンビニの店長やるの?』って聞かれた時に、やりたい仕事と違うなと思った。正直、なえました」と振り返る。「アジアへ赴任できるチャンスがたくさんあるから」と採用担当者は引き留めたが、昨年7月に内々定を辞退し、留年を決めた。

□主な大学の卒業延期希望者数大学名希望者数(人)
青山学院214
関西学院149
立教 113
東海 110
専修 93
学習院 90
成蹊 83
国学院 52
甲南 52

■2月下旬から3月中旬に聞き取り
就職浪人のために留年する学生はどれぐらいいるのか。厚生労働省などが3月16日に発表した就職内定状況調査によると、就職先が決まっていない大学4年生は約8万人(2月1日時点)いる。ただ、留年する学生は「就職を希望していない」と見なされて、この調査から除外されてしまう。就職浪人のために留年する学生数は「調査したことがありません」(文科省)という。仕方がないので、主要大学に聞き取り調査を実施してみた。結果は右表。青山学院大学214人、立教大学113人など聞き取りした9大学だけで1000人弱が留年を選んでいることが分かった。日本には4年制大学が780ある。就活のために留年を選ぶ学生は全体で数万人規模になると言われている。

今回聞き取り調査をした大学は卒業に必要な単位がそろっていても卒業を延期できる制度がある。この制度を利用した青山学院大学の城谷由美(仮名)さんは「卒業してしまって、大学生でも会社員でもない『ただの人』になるのが怖かった。職業欄に何て書けばいいのか…」と振り返る。冒頭に登場した明治大学の田中君は卒業できないように単位数を調整し、わざと留年した。「『新卒ブランド』は絶対あります。留年しないで卒業してしまうと門戸は狭い」という。

卒業延期制度などは、もともと内定取り消しなどの「まさか」のために備える安全網だった。しかし、今では学生の選択肢の1つに定着しつつある。
大学4年生を対象にした合同説明会に集まる学生ら(東京・港)
では、企業は留年してまで臨む就職浪人をどうみているのか。

■「何度受けても結果は同じ」
採用担当者に聞くと表向きは「人物本位ですので浪人していても関係ありません」という答えが大半を占める。
だが、本音を探ると少し違う。大手食品メーカーの採用担当者は「最終面接で落ちた学生に『来年も受けます』と言われることがある。社風に合うかなど様々な角度でみているので、何度受けて頂いても結果は同じです」と困惑する。携帯電話向けの広告代理店の採用担当者は「留年は同じ成長を遂げるのに長い期間が必要だったということ。中にはすごい方もいるのでしょうが、(成長に時間がかからなかった)現役生から探した方が効率的。就職浪人した受験者は書類選考で落とします」と厳しい。就職支援のジョブウェブ社長の佐藤孝治さんも「やはり留年は不利」と断言する。

就職は大学受験とは違う。単なる学力だけでなく、性格や考え方などが自社の欲しい人物像と合致しているか、自社の風土に溶け込めるか、などを幅広く見ている。1年では大きく変わらない部分も多い。繰り返し受験が必ずしも良い結果を招くとは限らない。

もちろん就職浪人をして、内定を勝ち取る人もいる。
早稲田大学を今春卒業する藤井翔太(仮名)くんは1年間の就職浪人の末、中小の機械メーカーから内定をもらった。4年生の就活は金融機関ばかり受験していた。メガバンクが落ちてしまい「このレベルなら大丈夫かな」と思った信用金庫も不合格で全滅した。今年内定をもらった中小メーカーは眼中にもなかったという。

■「プライドとして許せる限界」
追いつめられた今年は金融機関以外にも化学や造船なども受験した。「金融機関に限定せず、去年も柔軟に志望先を広げて受けておけば良かったなと後悔しています。やっぱり説明会で後輩に会うのはつらかった」と振り返る。「もし昨年の自分にアドバイスできるなら?」と聞くと、「『視野を広く持て』と言いたい」と答えた。
企業社会の実態を十分に知ることができない就活生にとって、視野を広く持つことはなかなか難しいものかもしれない。リクルートワークス研究所によると、従業員数300人未満の中小企業の求人倍率は3.35と完全な売り手市場。これに対し、5000人以上の大企業は0.49と学生にとっては極端な狭き門になっている。誰もが知る大企業に志望が集中する様を映している。

早稲田大の加藤彩(仮名)さんは「せっかく(難関の)早稲田に入ったのだから、大企業で働きたい」と話す。「金融機関で女子が採用されやすい地域限定の総合職がプライドとして許せる限界」というのが本音だという。
 都内にある有名大学のキャリアセンター担当者は「採用意欲の高い中堅企業を集めたイベントを卒業ギリギリまで開催しています。だけど、学生は来ない。早い学生は6月に留年を決めてしまう」とこぼす。
就職浪人が現役に比べて不利だとしても、理想を追い求める――。熱意は大事だが、リスクが高まることは覚悟しておく必要がある。

■調査結果
就職浪人は不利な場合が多そう。視野を広げて、浪人を回避する選択肢もある。