藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

日本と本場の温度差。

KDDIシリコンバレーに投資会社を設置して奮闘しているという記事。

ちょっと日本人の感覚でも「遅いな」と思うけれど、他の大手メーカーなどは「さらに遅い」という様子で、どうも日本人には純粋な投資とか、起業支援というのはドライすぎて馴染まないのかもしれない、と思う。

それにしても

スマートフォン向けのサービスを手がける会社を開拓するなかで、KDDIアメリカでは「エンターテインメント、ツール系アプリ、ゲーム、ヘルスケア、知育という5つのジャンルを注力した」(豊川氏)という。

という話を聞いて「何と浮薄な」と思う自分は、すでにITの先端感覚から置いて行かれているのだろうか。

KDDIシリコンバレー流の洗礼 日米スピード格差どう埋める
ジャーナリスト 石川 温2013/8/15 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版

KDDIが、ここ数年で米国シリコンバレーに複数のオフィスを開設している。世界のモバイルIT業界を動かす最前線で、ベンチャー企業や新技術を開拓するのが狙いだ。だが、現地で社員が実感しているのは、日本と米国との間にある圧倒的なスピード感の違いである。利益の計算よりも「共感して動く」ことを重視するシリコンバレー流の仕事の進め方を、日本に理解してもらえるよう日々苦心している。

米アップルが2007年に「iPhone」を発売して以来、米国のサンフランシスコやサンノゼといったシリコンバレーが世界におけるモバイルIT業界の中心になった。アップルや米グーグルといったプラットフォーム企業だけでなく、米フェイスブックや米ツイッターなどのソーシャル系サービス、それ以外の様々な先進的なアプリなどもシリコンバレーが発信源となっているものが圧倒的に多い。

そのような状況を見て、KDDIベンチャー企業を発掘したり、技術動向を取り入れたりするためのオフィスをシリコンバレーに複数設置している。

■年4〜5件のベンチャーに出資
サンフランシスコ市内にあるのが、KDDIアメリカのオフィスだ。KDDIでは、ベンチャー企業に出資する仕組みとして「KDDIオープン・イノベーション・ファンド」を運用している。このファンドのためのベンチャー発掘拠点として11年に設置した市内の小さなオフィスで働いているのが、KDDIアメリカの豊川栄二シニアマネージャーだ。

日本では通信キャリアとして知名度のあるKDDIだが、アメリカでは無名に近い。そんななか、有望なベンチャーを探すには「人脈」作りが大事だ。

日々、雨後のたけのこのように出てくるスタートアップ企業のなかから有望な企業を見つけるには、ベンチャーキャピタルと仲良くなる必要がある。ベンチャーキャピタルが抱えるスタートアップ企業のなかには日本展開を検討している会社もある。まずはそういった会社を紹介してもらうのが重要になる。

アメリカで人脈を築く上で欠かせないのが現地でのパーティーだ。KDDIアメリカでは、過去に2回、パーティーを開催している。1回目は田中孝司社長、2回目には高橋誠新規事業統括本部長が参加。70社近いベンチャー企業を呼び、人脈を広げていった。

スマートフォン向けのサービスを手がける会社を開拓するなかで、KDDIアメリカでは「エンターテインメント、ツール系アプリ、ゲーム、ヘルスケア、知育という5つのジャンルを注力した」(豊川氏)という。

たとえば、具体的な出資として実を結んだ会社として「Fuhu(フーフー)」がある。子ども向けタブレットを作っているメーカーだが、子ども向けのソフトウエアやプラットフォームでも定評があった。ロサンゼルスにもオフィスがあり、ハリウッドのスタジオやディスニーのコンテンツも調達しやすい。これが決め手となり、KDDIは出資を決断。日本向けサービスとして「こどもパーク」という知育サービスの展開につながった。

今後の目標として豊川氏は「年間4〜5件は出資をしていきたい」と語る。
KDDI研究所のシリコンバレーオフィスが入居する「プラグアンドプレイテックセンター」

■ユニーク技術を追う拠点も
 一方、シリコンバレーの技術動向を追っているのが、11年5月に開設したKDDI研究所のシリコンバレーオフィスだ。「投資」ではなく、より長期的な視点で企業を発掘するというスタイルになる。

オフィスがあるのは、サンノゼ近くのサニーベールにある「プラグアンドプレイテックセンター」という建物。ここにはベンチャー企業だけでなく、大手企業や投資会社が入居しており、建物内でベンチャー企業が活動するだけでなく、投資会社や企業に相談し、出資案件をスムーズにまとめることが可能だ。たとえば、KDDI以外に、韓国サムスン電子や中国ファーウェイ、スプリント、さらには自動車メーカーなども名を連ねる。

主な業務は、シリコンバレーで毎日のように開催されるカンファレンスやミートアップ(交流会)のなかから、興味のあるものに参加し、コンタクトを取って、日本に紹介していくというもの。

オフィスが開設された当初、注力していたのが「次のフェイスブックは何か」というテーマだった。そこで見つけ出したのが「ローカルマインド」というアプリである。「ロケーションベースのSNSで、共同開発を進め、日本国内向けに『auスマートパス』のなかに入れることができた」(KDDI研究所、森田恵美テクノロジー・デベロップメント・マネージャー)という。

現在は、次のアイテムを探しているところで、なかでも「ビッグデータユーザーインターフェース(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)、モバイルヘルス、EdTech(教育)の4つの分野をキーワードとして上げている」(森田氏)という。

同研究所の横山浩之テクノロジー・アンド・ビジネス・デベロップメント・シニアディレクターは「ビッグデータのプラットフォームでキャリアグレードのいいものはコストが高い。将来にわたって、安価で安定したシステムを作れる製品を探している」と語る。

■時間の流れがまったく違う
日本のキャリアがシリコンバレーに進出し、順風満帆にベンチャー企業を開拓できているかと言えば、決してそうではない。

KDDIのような大企業からすると、ベンチャーの「スピード感」に面食らってきた感がある。

米国にあるベンチャー企業の多くは3カ月程度の資金しか持ち合わせていない。仮に日本企業と関係を持っても、「遅い意思決定には付き合っていられないスタートアップがほとんど」(KDDI研究所、土生由希子シニアマネージャー)という。

KDDIだけでなく、シリコンバレーに進出している日本企業は多いが、どの企業も迅速な意思決定を行うという点での悩みは共通している。日本企業がどんなにシリコンバレーでがんばっても、企業体質や日本との時差によって、うまくいくものもいかなくなるのだ。
KDDI研究所の土生由希子シニアマネージャー

「メールや(インターネット電話の)スカイプで日本と情報交換しても薄まってしまう。重要なのは日米で行き来すること。社内で広報活動をして、シリコンバレーの拠点があることを知ってもらうことが大事」(土生氏)

シリコンバレーでスピード感を上げるには、まず、日本側の拠点に理解してもらうことが大切のようだ。

また、日本では、提供者の論理ばかりが優先され、ユーザーが本当に望んでいるサービスが提供されているとは限らないことが多いが、「こちらの企業は徹底的にユーザー志向。それを実践しているのがグーグルでありフェイスブック。そこが伝わらないのがもどかしい」(土生氏)という。

日本企業はどうしても利益が優先される。しかし、「こちらのベンチャーはユーザーがどう喜ぶかがすべて。面白いという感覚が共有できたら、それで突き進んでいかないと、こちらの企業の考え方やスピード感にはついていけなくなる」(土生氏)

モバイルIT業界において、シリコンバレーのスピード感に置いてけぼりを食らっている感のある日本企業。シリコンバレーの最前線に身を置くKDDIの社員たちは、その現実を身をもって感じているようだ。