藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

どこまでが機械か

会話では0.4秒以内に答えるように設定されており、実際に話してみると思いの外、違和感が無い。

人工知能の研究が進むにつれ、自分たち「人間の知能はどこまでか」という話に焦点が当たってくる。

将来的には就職先もAIが決める時代が来るかもしれない。米国では交流サイト(SNS)やブログなどインターネット上の膨大な情報を解析し、人事担当者が最適な人材をスカウトできるようにするサービスが登場している。

ホテルの受付業務とか銀行の問合せなどはすでに視野に入っているという。
思えば自分たちの日常会話はどの程度「それ」で代替可能だろうか。

ベテランの英会話講師に「日常会話なら習得はごく短時間でできる」と聞いたことがあるが、自分たちの日常の会話がどの程度の「知能」を必要としているのかと問われると、クリエイティブな部分とか、未知の部分というのは実は日常の一握りでしかないのかもしれない。
そうすると普段の会話のほとんどはスマホに任せておいても差し障りのないようなことなのが自分たちの日常なのではないか、という気もする。
定例の会議なんかもAIに任せておいた方がスムースに終わるのなら、自分たちの必然性はどこにあるのだろうかなどと思ってしまう。

「自分でなければ」というオリジナリティはいよいよこれから問われてくる時代になりそうである。

あなたのそばの人工知能、ここまで来た実用化  電話受付も介護も
2015/5/31 6:30日本経済新聞 電子版

人工知能(AI)が急速な広がりを見せている。電話応対の有能な助手として、笑顔をつくるロボットとして。自ら学び、ヒトの能力をも超え始めたAIは、より豊かな社会をもたらすのか。

横浜市の臨海部にあるみずほ銀行のコールセンター。ずらりとオペレーターが席を並べるフロアの一角に「WATSON受電中」との表示を掲げた机が10席ほど並んでいた。
「口座開設のお問い合わせですね」。オペレーターが顧客からの電話を受けると、会話の内容に応じて目の前のパソコンの画面が自動的に切り替わり、本人確認書類など口座開設に必要な手続きが画面に表示された。オペレーターと顧客の会話から米IBMの人工知能(AI)「ワトソン」が判断し、必要な情報を画面に表示したのだ。

■会話理解し、作業補助
現在、みずほ銀行のコールセンターでは、オペレーターが問い合わせ内容に応じて分厚い紙のマニュアルを調べる。このため熟練度で回答にかかる時間に差が生じてしまう。言葉を理解し、必要な回答を瞬時に探し出すワトソンを使えば、「一定以上で均質の回答が可能になる。お客様を待たせる時間も短縮できる」(横浜ダイレクトバンキングセンターの橘正純所長)というわけだ。

キーワードからデータを検索する技術は以前からある。一方、ワトソンの大きな特徴は、経験から学習することだ。オペレーターは会話が終わると、ワトソンの「働き」を評価する。この繰り返しでノウハウを積み重ねていく。今年2月から問い合わせでの利用が始まり、今年度中には金融商品の電話セールスに対象を広げる。外回り営業での活用も視野に入れる。会話のやりとりから最適な回答を導き出すAIが「人の能力に依存していた営業を変える可能性を持つ」。同行でAIの導入に携わる個人マーケティング部の岩本達也調査役はこう話す。
AIが活躍するのは企業の現場だけではない。神奈川県内のある高齢者福祉施設で人気を集めるのは富士ソフト証券コード 9749)が開発した身長40センチメートルほどの小さな二足歩行ロボット「パルロ」だ。音声認識と顔認識の技術を活用し、高齢者一人ひとりの顔と名前、趣味や誕生日といった個人情報を記憶。インターネットにもつながり、記憶した情報とネット上の情報を組み合わせて会話をする。歌やダンス、落語もこなし、誕生日の高齢者を見つけると、皆に知らせたうえでお祝いの歌まで歌ってくれる。「パルロと話すのが元気の源」。施設を利用する高齢者は笑顔でこう話す。

会話では0.4秒以内に答えるように設定されており、実際に話してみると思いの外、違和感が無い。富士ソフトの本田英二執行役員は「パルロのAIを動かすソフトウエアの技術が今後、様々なデバイスで欠かせないものになる」と見る。同社の本業は機器に組み込むソフトの開発。パルロ自体はまだ収益を生む段階にはないが、パルロで培ったAIのノウハウを本業に生かす狙いがある。

スマホが勉強法を指南
スマートフォンスマホ)でAIと人々をつなごうとしているのがソフトバンク(9984)だ。ソフトバンクモバイルの宮内謙社長はワトソンを活用したスマホ向けのサービスを年度内に始めると明言している。例えば症状をスマホに入力し、膨大な医療データから病名を推定する健康分野や、学習の進み具合や志望校の過去問を分析して、最短の合格法を提示する学習分野だ。

人気アニメとコラボした「黒執事」ロボット掃除機など「しゃべる家電」に積極的なシャープ(6753)。阪本実雄・インテリジェント家電推進センター所長は「インターネットがAIを使いやすくした」と指摘する。サーバーで処理した情報をネット経由で利用する方法なら、機器に搭載する情報処理能力は高くなくてもいい。ネット上の膨大な情報も活用して、「常に情報を発信する『おもろい』家電にできる」(阪本氏)。AIはもう未来ではなく、すぐそばにある存在だ。

■未来のAI、2021年には東大合格狙う
「20年以内に米国のすべての雇用の47%が無くなる可能性がある」。英オックスフォード大学の研究者が2013年、AIの進歩が与える影響を発表して世界に衝撃が走った。「無くなる仕事」として挙げられたのは、ホテルの受付係や会計事務員、保険の審査担当者などだ。今は専門家として活躍できても将来は職を失うこともあり得る。東京大学の松尾豊准教授は
「業務をシステム化しやすい分野では仕事は機械が担うようになるだろう」と指摘する。

すでにAIは人間の頭脳に近い仕組みを持ち始めている。米グーグルが今年2月に発表した技術成果では、「ブロック崩し」などのゲームの攻略法を自ら編み出し、人間以上の高得点を出せるようになった。「ディープラーニング(深層学習)」という技術を取り入れ、ヒトの脳の神経回路をまねた学習機能を持つ。事前に教えなくても繰り返しプレーしながら徐々にやり方を学び、経験を重ねてコツをつかむ。

「ロボットは東大に入れるか」。こんな研究に取り組むのは国立情報学研究所(東京・千代田)やNTT(9432)などの研究グループだ。2021年度までに東京大学入試に合格できるAIの開発を進めている。14年に大手予備校が作成した模擬試験に挑戦したところ、総合点の偏差値は47.3だった。既に全国の私立大学の約6割強の学部に合格できる水準だという。

将来的には就職先もAIが決める時代が来るかもしれない。米国では交流サイト(SNS)やブログなどインターネット上の膨大な情報を解析し、人事担当者が最適な人材をスカウトできるようにするサービスが登場している。AIはこれまで人間にしかできないと思われていた複雑な作業をこなせるようになってきている。

AIを巡っては宇宙論で知られるスティーブン・ホーキング博士が「完全なAIの開発が人類の終わりをもたらすかもしれない」と警告し、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏がこれに同調したと伝えられるなど、脅威論もある。いかに使いこなし、ヒトと役割分担をしていくかが問われそうだ。

ベンチャーが大型調達、新たな商機 マネー動く
人工知能(AI)の成長性を見越し、国内外のベンチャー企業にはマネーが流入している。スマートフォンスマホ)向けアプリ分析のメタップス(東京・新宿)は2月、米国のベンチャーキャピタル(VC)や国内の事業会社などに対して第三者割当増資を実施して合計43億円を調達した。直近の未上場のベンチャーの調達金額としてはまれな規模で、証券業界で注目を集めた。

タップスの佐藤航陽社長は「調達資金で事業を広げ、2016年までに現在の4倍の8億人分のデータ解析を目指す」と語る。現在の主力事業はゲームなどのスマホアプリの利用データを収集・分析して、利用者の関心に沿った広告を配信するサービスだ。調達資金を生かし、今後はウエアラブル端末や自動車などのデータを解析できるようにする。07年設立の同社はすでに世界8カ国・地域に拠点を持ち、100人強の従業員のうち半分は外国人だ。佐藤社長は「AIの領域ではいかに多くのデータを保有できるかが競争力を左右する。規模を拡大していち早くアジアで覇権を取りたい」と意気込む。

大手企業もベンチャーの持つAI技術に注目する。ソニー(6758)は自動運転技術開発のZMP(東京・文京)に出資し、画像センサー技術とZMPの技術を融合した車載カメラなどの共同開発に乗り出した。吉野家ホールディングス(9861)はAI搭載のモバイルアプリを開発するタメコ(東京・港)と提携し、4月から牛丼店で来店ポイントをためる独自アプリサービスの導入を始めている。博報堂DYホールディングス(2433)はメタップスと提携してテレビCMの広告効果を測定するシステムを共同開発する方針だ。

AIは株式市場でも投資テーマとして浮上している。テクノスジャパン(3666)が4月21日、子会社とZMPが資本提携し、ビッグデータ解析で連携すると発表すると翌日の株価は制限値幅の上限(ストップ高)まで上昇した。足元でも発表前の水準を8割上回っている。UBIC(2158)も1月、特許庁からデータ抽出にかかわる機能について特許査定を受けたと発表すると、翌日は一時13%高まで買われた。

エレクトロニクス業界に詳しい野村証券の和田木哲哉リサーチアナリストは「中長期的な投資テーマとしてAIは有望だ」と指摘する。AIは大量のデータの中から有意義な情報を見つけ出すために、有効な手段だ。自動車や電気機械、流通、社会インフラなどあらゆる分野で広がっているビッグデータ活用や、そのデータ収集の手段であるIoT(モノのインターネット)とは不可分な存在で、幅広い産業に新たなビジネスチャンスが生まれるとみられている。

AIを巡る企業の動きでは米国の大手IT(情報技術)企業が先行している。特に活発なのがグーグルで、13年から14年にかけて英ディープマインド・テクノロジーズなどAI関連企業を次々と買収。自動運転車などへの応用を視野に入れているとされる。業界動向に詳しいKDDI総研の小林雅一リサーチフェローは「AIは産業構造を大きく変える可能性がある。日本企業が生き残るために、技術や資金を振り向けていく必要がある」と訴える。

■「日本、研究の裾野広い」 松尾豊東京大学准教授はこう見る
まつお・ゆたか 日本を代表するAI研究者。米スタンフォード大学客員研究員などを経て2007年から現職。

 ──近年、人工知能(AI)の注目度が高まった背景には何がありますか。
 「『ディープラーニング(深層学習)』と呼ばれる手法が生まれ、活用の幅が広がった。AIでデータ分析をする際、これまではどのデータに注目すべきかなどの判断基準は人間が考えていたが、AI自らデータを選別して分析できるようになった。赤ん坊が成長過程で世界を学ぶように、機械が主体的に学ぶことが可能になった」

──今後どのように活用できますか。
「膨大なデータの中から『異物』を発見する場面で活用できる。例えば、監視カメラの映像から不審者の侵入を発見したり、レントゲン写真で影を見つけて病気の可能性を指摘したりできる。警備会社や物流・倉庫業、医療分野などで生かすことができる。こうした仕事の担い手はヒトから機械に置き換わっていくだろう」

──ヒトの仕事が機械に奪われていくのでしょうか。
「単純な作業や分析などはどんどん機械にシフトしていく。しかし共感や説得、励ましなどは機械にはできない。ヒトはこうした“人間らしい仕事”に専念できる時代になっていく」

──AIの活用を模索する日本企業が増えています。
「インターネットの世界では米企業にシェアを握られてしまったが、AIの競争では負けるわけにはいかない。この1〜2年で勝負をかけないと出遅れてしまう。グーグルやフェイスブックはインターネット上の膨大なデータを活用してチャンスをつかもうとしている。日本企業も自動車や店舗などでは豊富な情報を抱えており、どう生かすか考えていくべきだ。幸い、日本では1980年代に研究ブームが起こったため、AI研究の裾野は広い」

■「生産活動はAIにお任せ」 
山川宏ドワンゴ人工知能研究所所長はこう見る
やまかわ・ひろし 脳の構造をまねたAI構築を提唱。富士通研究所などを経て2014年から現職。

──プロ棋士と将棋ソフトが対戦する「電王戦」の主催や研究所設立など、ドワンゴがAIに力を入れています。
「(研究所の設立を決めた)川上量生会長はAIに事業としてというより、個人的な興味があるようだ。人間レベルのAIを作るには、どんなに短くても15年はかかる。長期的に人が集まる旗印になればよい」
「大きな背景にはインターネットが普及して20年近くたってデータが増えてきたことがある。かつてのAIブームでは知識を人間が作り込む必要があった。作るのが大変で、暗黙知も形にする必要があった。だが今は膨大なデータから知識を獲得すればよい」

──ドワンゴが目指すAIとはどのようなものですか。
「人間の脳に学んだ『汎用』のAIだ。ある用途に特化した専用のAIを作る方が性能が高い物を作ることができる。しかし、汎用は例外に対して強く、様々な用途が期待できる。将来は専用のAIと汎用のAIが共存し、AIがAIを使う社会になると考えている。脳に学ぶのは難しい。脳や神経の分野は大量の知見があるが、脳とITの両方を分かっている人材は少ない。日米で比較しても人材の数は大きな差がないと見ている」

──人間とAIのすみ分けはどのようになっていくのでしょう。
「生産活動など生きるために必要なものはAIにお任せするようになっていくだろう。人間が働いて生計を立てるという文化構造も変わるだろう。人間は物の評価や好み、人間関係のなかで能力を発揮していく。AIを持つ者と持たざる者で貧富の差が出てくるようになるかもしれない。人間がAIの上に立つ構図は変わらないだろうが、理想的な人格を持つAIに心を奪われるようなケースも出てくるのではないだろうか」
(菊池貴之、栗原健太
日経ヴェリタス2015年5月31日付]