藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

どちらも世界最大。(Airbnb)

もう一方の雄Airbnb
こちらも最大手の宿泊企業をはるかに凌ぎ、すでに190カ国で200万室を擁し、6000万人の利用実績があるという。
Uberがタクシー代わりに相乗りを誘うだけでなく、既存の物流網そのものの再編・効率化を志向しているところに先見の明があるように、エアビーもただの「空き部屋貸し」だけでは終わらない。
宿泊費が安いのはもちろんだが、世界各地の家庭や地元民の施設に住むことで、ホテルなどでは得られない「ローカル感」が味わえるという。
思えば旅行が好きで世界各地を回っても、特に観光地などでは"ネイティブとの触れ合い"というのはごく僅かで本当の地元を知る機会はなかなかないものである。

いわば「旅の醍醐味を味わう」というキラーサービスも備え、既存施設の空きをシェアするという究極の効率化を進めるのだから「大箱を作って従業員も設備も待機して」という従来のスタイルを脅かすのも頷けるというものだ。

リオ五輪の公式サプライヤーになったというから、観光立国を目指すという我が国は努々(ゆめゆめ)行政がしゃしゃり出て普及を妨げることのないようにすべきである。
すでに「エアビーを禁止する」というマンション管理組合などもあるようだが、スムーズな普及のために必要なルールとかマナーとかバックアップ体制などを積極的に考える方向で応援したいものである。

それにしても、「シェアして流れを作ること」ってまだまだ他のことでもできそうだ。
"効率化+楽しさ"で何か新しいものってできないだろうか。

中国、ウーバーが爆発的成長 会社員も副業で稼ぐ
2015/12/22 6:30
日本経済新聞 電子版

 シェアリングエコノミーが生んだ巨人は、ウーバーだけではない。







 オランダの首都、アムステルダム市の中心街から路面電車に乗ること30分。マンションが立ち並ぶ、閑静な住宅街。周りにはめぼしい観光地はおろかレストランもないが、ある一軒の家に、世界中から旅行者がひっきりなしに訪れている。
 といっても家のあるじは著名人でも何でもない。家主はアン・スタヴィノアさん(57歳)とピーター・スタヴィノアさん(52歳)という夫婦。2人は全くの一般人だが、旅行者である「ゲスト」を自宅に泊めてあげる「ホスト」として、忙しい毎日を送っている。
 夫妻と世界中のゲストを結び付けているのが、「Airbnb(エアビーアンドビー)」だ。エアビーを通じ、ゲストとしてホストの自宅に宿泊した人数は、2008年の創業以来、延べ6000万人以上。個人宅に宿泊する“民泊”関連サイトとしては世界一の規模を誇っている。

Airbnb(エアビーアンドビー)の使い方
 客側は、スマホのアプリをダウンロード。ホテルをインターネットで予約するのと同じように、日付や目的地などを入力。さらに、「一棟貸し」か「個室」かなどの条件を指定すると、「ホスト」の部屋の写真と宿泊料金が一覧で表示される。泊まりたい部屋を選択、予約リクエストを送信する。
 ホスト側は、自宅の空き部屋や、使っていない家などを登録。禁煙などのルールや飼い犬の有無などの情報を提示。予約してきたゲストの情報を見てホストが承認すれば、宿泊予約が完了する。料金は自動引き落とし。比較的料金が安い他、ホームステイのようにホストと交流できることも魅力。

■世界一のホテルグループしのぐ
 エアビーの掲載物件は世界190カ国、3万4000都市以上に広がり、物件数は200万件を超えた。2015年11月、米高級ホテルのマリオット・インターナショナルスターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ・ワールドワイドを買収、世界最大のホテルグループが誕生するというニュースが駆け巡った。買収後の総客室数は約110万件。これを大きく上回るエアビーは、宿泊関連の事業者としても世界最大と言える。
 金融市場では、米ウーバーと並ぶ、シェアリングエコノミーの双璧の一つとして高い評価を得ている。2015年6月には新たに15億ドル(約1845億円)をベンチャーキャピタルなどから資金調達しており、その際の株式評価額は、250億ドル(約3兆円)以上とされる。


 急成長は、スタヴィノア夫妻のようなホストの爆発的な増加が支えている。
 エアビーに夫妻が自宅を掲載し始めたのは、2013年の末。約12m2(平方メートル)ほどの空き部屋となっていた自宅の一室を、1泊当たり78ユーロ(1万円強)ほどで貸し出すことに決めた。場所が郊外のため単純比較はできないが、アムステルダム市街地のホテルでは、3つ星で150ユーロ(約2万円)ほどの料金がかかる場合もある。以来約2年で2人が迎え入れたゲストの数は100人を超え、夫妻の副収入は2万6500ユーロ(約350万円)程度となる。
 ただし、スタヴィノア夫妻がホストになったのは、金銭を得ようと思ったからではない。きっかけは、米カリフォルニアから友人の娘が1カ月間、自宅に遊びに来ていたこと。彼女が帰国した途端、家の中が以前より暗く静かになったように感じたのだという。
 心にぽっかり空いた隙間を何とかして埋められないか──。そこで思いついたのが、エアビーのホストとなり、空いている自宅の一室、つまり友人の娘が宿泊していた空き部屋を旅行者に貸し出すことだった。
 ゲストたちの出身地は、南アフリカシンガポール、英国に中国と世界中に広がっている。年代はティーンエイジャーから60代まで、職業も学生、弁護士、スタイリストと、実に多様だ。「色々な人から話を聞けるから、家にいながら、世界中を旅しているような気分が味わえるの」。アンさんはこう話す。
 一方、ゲストとして宿泊する旅行者も、金銭的な安さだけを求めてエアビーを利用しているわけではない。
 今年、スタヴィノア夫妻の部屋に4日間宿泊したチェン・シャオハンさん(18歳)は、中国に住む大学生。欧州旅行の最中に、夫妻の家を利用した。「旅行会社のツアーや写真ばかり撮る旅に飽きてしまった。地元の人に話を聞けて、それまでとは全く違う体験ができた」。そう、チェンさんは言う。
 一見、ホテルの代替手段を提供しているかに見えるエアビー。だが、個人と個人をつなぐことで、金銭的メリットのみならず、従来型産業では打ち出せなかった新たな「価値」を利用者に提供している。これが、エアビーが急成長している本当の理由だ。
 アムステルダム市は、市役所が協力的だったことも手伝い、エアビーが急速に広まっている。市内の登録物件数は1万3458件(2015年11月時点)と、1年間で4割も増えた。



■オリンピックの公式サプライヤー
 エアビーの拡大は欧米にとどまらない。エアビーが宿泊施設として、どれほど深く浸透しているか。それは、ブラジルを見れば明らかだ。同国が2016年に開催を控えているのが、リオデジャネイロ五輪。エアビーはこの大会で、観光客に対する宿泊施設の公式サプライヤーに選ばれた。
 五輪中は世界中から観光客が訪れるが、一時のイベントのために新しいホテルを建設するのは合理的ではない。一方でリオは、パリやニューヨーク、ロンドンなどに次いで6番目にエアビーの登録物件数が多い。この既存の資産を生かさない手はない──。そう、五輪の組織委員会は判断した。エアビーは五輪期間中、約2万件の宿泊施設を提供することを予定している。
 こうしたエアビー活用の動きは、世界各地で見られる。2015年9月、ローマ法王フィラデルフィアを訪問。ローマ法王に謁見するため、約2万人が街を訪れたが、既存の宿泊施設は1万1500室しかない。この需給ギャップを埋めたのは、エアビーだった。
 いったいエアビーはどこまで肥大化を続けるのか。バークレイズ証券は、1月に発行したリポートの中で、「今後2〜3年以内に、エアビーは、世界のホテル上位10社の合計客室数を上回る可能性がある」と予想する。
 「今はホテルの方が、部屋数が多いと言われているが、我々は、世界中のどんな会社より在庫を持つようになる」
 エアビーのブライアン・チェスキーCEOはこうぶち上げる。
日経ビジネス 井上理、中尚子、齊藤美保)
日経ビジネス 2015年12月21日号記事を再構成]