藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自分たちのすぐ後ろ。


Manufacturers, Suppliers, Exporters & Importers from the world's largest online B2B marketplace-Alibaba.com
yomiuri onlineより。
中国のEC市場が本格化してきた、という記事。
十数年前は、クレジットカード保有者が少なく、しかも「後払いなら払わない」という消費者が圧倒的に多い、という理由で「中国での通販は無理」というのが事情通の相場だった。
今や中国の人も銀聯カード(クレジット)を持って、日本で爆買いをする、ということだから、中国のネット事情もどんどん成熟してきているということに違いない。

何か上から目線でそんなことを言っていても、日本だってついこの間までは楽天amazonのお店も玉石混交で、配送のシステムも使いにくいものも多かった。
みるみるうちに「スピードと質」が洗練され、今や日常品やスーパーの品物にまで物流は進化している。

記事は「中国のEC市場はこれから」と、ちょっと最近の日本のIoT一色の記事からはトーンがずれているが、「ようやくネットが到達した中国のネット市場」が、これからどんどん洗練されていくとしたら、確かに「中国ネットの爆発的な伸び」はこれからかもしれないと思う。

つまり、ネットが本当の「リアル市場」に同化する。
今の日本のネットマーケットが、10数倍になって起きるだろうということだ。

「いいもの」があればそれについての情報が「すぐに届き」、「翌日に配達される」時代。
新興国の"伸び代"は確かにまだまだこれからに違いない。

爆発する中国eコマース市場と日本の戦略

株式会社オレンジモール社長 内田信
 インターネットを使って商品を購入する電子商取引(eコマース:EC)市場が拡大の一途をたどっている。国内での取引にとどまらず、海外から商品を購入する「越境EC」と呼ばれる取引も注目を集めており、この「越境EC」市場で今、最も熱い視線を集めているのが中国だ。質の高い日用品を扱う日本企業にとっても、この市場は 垂涎 ( すいぜん ) の的といえる。では、日本企業が中国の「越境EC」で果実を得るにはどのようにしたらよいのだろうか? 日中「越境EC」を実際に手がけ、その事情に詳しい株式会社オレンジモールの内田信氏に、現状を伝えてもらった。
中国市場は今も拡大を続けている(著者撮影)
中国市場は今も拡大を続けている(著者撮影)
世界のBtoC電子商取引市場規模(経済産業省電子商取引に関する市場調査」報告書から)
世界のBtoC電子商取引市場規模(経済産業省電子商取引に関する市場調査」報告書から)
世界の各国別BtoC−EC市場規模(2014年)(経済産業省電子商取引に関する市場調査」報告書から)
世界の各国別BtoC−EC市場規模(2014年)(経済産業省電子商取引に関する市場調査」報告書から)
 皆さんの中にも「アマゾン・ジャパン」や「楽天」などで買い物をしたことのある方が多いでしょう。経済産業省の調査「電子商取引に関する市場調査」報告書によると、インターネットを使って商品やサービスの売買を行う電子商取引は、世界全体で1兆ドルをはるかに超えています。市場を国別に見ると、1位は中国、2位は米国、3位英国、4位日本となっていて、中国と米国が大きな割合を占めています。

越境EC、20年には1300億ドル規模にも

 このEC市場で近年、脚光を浴びているのが「越境EC」と呼ばれるものです。これはたとえば、「日本の消費者がインターネットを使って米国の事業者から購入する」というように国境を越えて海外の事業者から商品を購入するイメージです。

 経産省の調査によると、「越境EC」市場は13年に世界で約250億ドルでしたが、20年には約5倍のおよそ1300億ドルにまで伸びると推計されています。その背景には、多言語に対応したサイトが増えていることや、商品の物流、決済システムが進化していることなど「越境EC」関連のインフラ整備の進展があるのです。

 世界一の規模を誇るEC市場であり、世界中から最も熱い視線を集めているEC市場、それが中国です。この市場はいくつかの点から、日本企業にとっても大変魅力的といえます。

圧倒的な存在感のアリババ

 その中国で圧倒的な存在感を放っているのが、日本のソフトバンクも出資するネット通販最大手の「アリババグループ(以下アリババ)」です。米の小売り大手「ウォルマート・ストアーズ」を抜いて「世界最大の流通企業」になったとも伝えられ、その勢いは増すばかりです。

 アリババの売上の内訳は、ヤフーオークションのような個人間取引のショッピングサイト「タオバオマーケットプレイス(以下、タオバオ)」が約30兆円(商品の点数は8億以上ともいわれます)。企業が出店する「天猫Tmall(ユニクロ、P&Gなど国内外の約7万ブランドを扱うショッピングモール)」が約20兆円で、合計すると約50兆円となります。

ベビー用品店を開設したきっかけ

 私どもが「タオバオ」にベビー用品店を開設したのは、08年のことでした。私どもの事例は個人間取引とは少し異なり、従業員15名程度の中小企業をイメージしていただくと理解しやすいと思います。きっかけはその当時、たまたま第2子が上海で生まれたことでした。自分の子ども向けに日本からミルクなどのベビー商材を送ってもらっていたところ、妻の友人や知人から商品購入の代行を頼まれたのでした。

 08年秋、中国でベビー用粉ミルクに有害物質のメラミンが混入し、死亡者まで出すという事件がありました。それ以降、安全な粉ミルクに対する需要がいっそう増大しました。在日中国人らが日本の小売店で粉ミルクを購入しては中国に送り、それらが中国国内でネット販売されました。このことは当時、日本でも報道されました。

 11年に東日本大震災放射能問題が発生したことから、粉ミルクに対する需要は消えてしまいました。これに代わり日本から中国へ大量に流れるようになったのが、紙おむつでした。

 粉ミルクに代わるものがなぜ紙おむつだったのか? 明確な答えはわかりませんが、粉ミルクを中国向けに輸出していた日本の貿易会社の多くが、同じベビー向けの商材として紙おむつを積極的に売り込んだことが要因だと思います。ベビー向け商材は、子どもが小さい一定期間、継続的に購入する必要があるので、安定して売れる商材なのです。おそらくその当時も今も、中国の消費者にとって品質の高い日本の紙おむつは、大変に魅力的なのだと思います。

 紙おむつについて、日本から中国などへ輸出される総額を財務省の貿易統計からまとめてみました(ナプキンなど衛生用品を含む)。これによると、おむつ関連商品の中国向け輸出は11年から、わずか15年までで20倍にもなりました(棒グラフの水色が中国)。中国の紙おむつ市場の需要がいかに急激に増えているかがわかると思います。


2016年06月03日 13時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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株式会社オレンジモール社長 内田信
「越境EC」が脚光を浴びたきっかけは

中国の消費者は、買いたい商品を実店舗で確認して購入する傾向がある(著者撮影)
中国の消費者は、買いたい商品を実店舗で確認して購入する傾向がある(著者撮影)
 日中の「越境EC」がにわかに脚光を浴びたのは、13年のことです。中国側が「越境EC」を促進しようと「保税区スキーム」という仕組みを設けたことがきっかけです。このスキームは、上海自由貿易区、寧波保税区など、中国国内の複数の都市に「保税区」と呼ばれる区域(税関が監督管理し、税制などに様々な優位性がある)を設けて在庫を取り置き、売れた時点で課税するというものです。

 中国では従来、コンテナ単位でまとまった量の商品を日本から輸入していました。その場合は、通常の貿易業務として「関税」と、日本で言う消費税に相当する「増値税」という二つの税が課されました(紙おむつで合計25%程度)。

 これに対して、保税区内に在庫を保管し、消費者が「越境EC」サイトで購入した場合は、これを個人輸入扱いとして「行郵税」という税を課し、低い税率を適用することにしたのです(紙おむつで10%程度。行郵税が50元以下のものは免税。1元は約16円)。このスキームが、「越境EC」事業を活気づける大きな要因のひとつとなったことは間違いありません。

 日本ブランドのある紙おむつ(Mサイズ68枚入り)の価格を例にとると、中国に実店舗を出店しているそごう系百貨店「久光」などの一流店では230元、カルフールやベビーチェーンなどは170元がおよその相場です。また、「天猫Tmall」や「タオバオ」など、中国国内のECサイトでは130〜145元で販売されています。

 これに対して、保税区スキームを利用した「越境EC」サイトや、香港を拠点とする「天猫国際(Tmall・グローバル)」などのサイトは、100〜115元程度で取り扱われていて割安感があります。実店舗で販売される紙おむつの価格が高いのは、代理店や問屋などの中間流通コストが高いことなどによります。ECサイトが利益率を低く設定し、薄利多売で勝負をかけていることもあると思います。

課税制度に見直しが!

 ところが、保税区スキームについては16年4月8日に見直しがあり、制度が大幅に変更になりました。概略だけ言うと、従来あった免税枠がなくなり、税率も変更。化粧品、健康食品に関しては「中国政府の輸入許可を受けていないものは輸入を禁止する」というものでした。5月25日には、「税率変更と免税枠の撤廃は、予定通り新しい規定を適用。輸入許可に関しては、17年5月11日まで適用を延期」という通達が出されました。

 これによって、各保税区の取扱量は大幅に減少しつつあるのが現状です。中国側の関係者も混乱しているようです。関係者からは、免税枠の撤廃による影響の大きさを嘆く声が多く聞かれます。

 今回の見直しについて公には、保税区を活用した「越境EC」を認可したものの、「国家の税収獲得に貢献していない」、「リアル店舗で販売されている輸入商品に比べ課税額が低く不公平」なためと説明されています。

 保税区スキームについては、更なる変更も予想され、紆余曲折(うよきょくせつ)があるかもしれません。ですが中国人の人口と所得レベルを考えれば、中国の「越境EC」市場そのものは、まだまだ拡大する余地があると考えられます。

2016年06月03日 13時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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株式会社オレンジモール社長 内田信
どんな日本製品が買われているのか?

 さて、海外から商品を購入する中国人はどんな人たちなのでしょうか? iResearchの「2016年中国越境輸入小売りEC業研究報告」によれば、性別では男性が6割超を占め、26〜40歳が全体の7割超となっています。平均月収は、1万1千元(およそ18万円ほど)。高学歴、高収入のサラリーマンが多いといわれていますが、中国人にとって先進国の商品は比較的高価ですから当然だと思います。

越境ECユーザーが購入した国トップ8(iResearch「2016年中国越境輸入小売りEC業研究報告」から)
越境ECユーザーが購入した国トップ8(iResearch「2016年中国越境輸入小売りEC業研究報告」から)
 彼らが購入する国は、1位がアメリカ、2位は日本です。日本からどんな企業が出店しているのでしょうか? たとえば「天猫国際(Tmall・グローバル)」で私がこれまで把握していたのは、イオン、マツモトキヨシキリン堂爽快ドラッグケンコーコムアットコスメミキハウス、ポーラ、セシールなどでした。ところが、改めて確認してみると、ピジョンユニ・チャームカルビー日本郵政なども参入していました。

 人気の日本製品は、化粧品、日用品、ベビー用品、食品・菓子類、衣類などが上位を占め、花王「めぐりズム」、カルビーじゃがビー」、資生堂洗顔料「パーフェクトホイップ」などが挙がっています(時期などによって人気商品は変わります)。

 これを見て、みなさんはどう感じられるでしょうか? ピン!と来た人も多いかもしれません。これらの売れ筋商品は、もっぱら中国人観光客(さらには在日の中国人)が日本で“爆買い”する商品群と傾向が近いのです。

 中国人の消費者は、「商品を自分の目で確認してから購入したい」という気持ちが大変強いのです。そのため、日本で“爆買い”してよかった商品を「越境EC」で再購入するという流れが生まれているのだと思います。

実店舗も重視する「越境EC」

 中国国内には、「越境EC」の新しい流れも見られつつあります。それは、O2O型(Online to Offline=ネットからリアルへ)という店舗の出現です。O2O型店舗には二つの形態があります。一つは、重慶モデルと呼ばれるもの。もう一つは、上海で行われている店舗形態です。

 重慶モデルは、重慶保税区の商品を、同区が運営する「越境EC」体験館で売るものです。消費者は、この体験館で実際に商品を手に取って確認し、そのまま店頭で購入することができるのです(ECに比べ、おおむね5%ほど価格は高くなります)。

 一方、上海モデルは、実際の店舗に「越境EC」体験コーナーを設け、そこに商品を展示。消費者は商品を確認したら、その場に用意されたPCやモバイル端末でオーダーをするという購入方法になっています。

 中国人の消費者は、海外商品に関する知識をあまり持っていない人も多くいます。そんな人でも、リアルな店頭で実物を見たり、手に触れたりした上で商品を購入できるのであれば、これは理想的といえます。

2016年06月03日 13時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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株式会社オレンジモール社長 内田信
中越境ECから退散しないですむ方法

 さて、このような流れの中で、日本企業はどのように日中「越境EC」をとらえ、付き合っていけばよいのでしょうか?

 私が考えるのは、日本の各企業が本来の中国市場開拓を進める上での、あくまでも市場開発のツールのひとつであるということ。そして「越境EC」を通じて構築した販路は、中国が自由貿易化を進める流れにおいて、日本企業が進出するのに大きな役割を果たしてくれる、そんな位置づけだと思います。

 中国の消費者は、「偽物が怖い」「安全性に不安が……」「(同じ商品でも)日本で買った方が安い」などの理由から、「越境EC」を使って商品を購入します。その中でもっとも重視するのは「商品の信頼性」という観点です。彼らは、「いいな」と思った特定の商品を継続して購入する傾向が強く見られます。「ご指名買い」のような感じです。

 ですので、日本の企業が成功するためには、関連商材とどう絡めて売るか、ネットという限定された空間でいかに効果的に見せるか、さらにはO2O型の店舗をいかに有効活用するかなどを検討し、高い品質と安全性を伝えるブランディング戦略をしていくことが大切になります。

日本市場で成功していることも

 もう一つ、「越境EC」で成功するために大切なことは、その前段として日本市場で成功を収めていることです。化粧品や健康食品の売れ筋商品を見てみると、「楽天で1位」「アットコスメ(化粧品の口コミサイト)で1位」などと紹介され、日本でそれなりに販売数を伸ばしているものが多く見られます。

 近年、中国版SNSの「微信」を使って日本商品の「越境EC」に取り組む在日中国人が増えていますが、彼らもこの点を重視しているようです。彼らの目で「これは売れる」と感じられる商品は、彼ら自身が中国の消費者に広めてくれるというメリットがあるのです。

 一方で、10年頃に中国でECブームが起きた際、100社以上の日系企業が「天猫Tmall」などに出店しましたが、現在、事業を継続しているのは、おそらく10分の1程度ともいわれています。この事実にも目を向けるべきです。市場へ参加するには出店料がかかります。そして、薄利多売の過酷な競争が待っています。その競争に是が非でも勝ち残るという強い気持ちと行動力がなければ、退散の憂き目に遭うこともあり得ます。

長い目でゆっくりと取り組んで

「ゆっくりと付き合っていきたい」、そんな国が中国かもしれない(著者撮影)
「ゆっくりと付き合っていきたい」、そんな国が中国かもしれない(著者撮影)
 最後になりますが、私自身は昨年から、家族を上海においたまま、日本を拠点に活動しています。上海、松山、大阪、そして東京と飛び回る日々です。

 東京で勤務しているときはさほどではありませんが、地方を訪れると高齢化が進んでいることを、身をもって感じます。そして人が少ない……。福岡を含む4大都市圏を除いた地方都市は、消費市場としては年々、縮小していくだろうと感じます。

 これに対してアジア諸国を回ってみると、中国以外の国々も若くて活気があります。市場としては、香港、シンガポール、クアラルンプールやバンコクは魅力的ですが、マニラやホーチミンはまだ若干早いと感じています。そして各国を回ってみてわかることは、中国の存在が圧倒的であるということです。

 中国は、経済不安が取りざたされていることも事実です。上海の不動産は強烈なバブルです。長期的に見ると、中国経済も停滞や一時的な混乱が生じることもあるだろうと思います。そしてその時、中国経済に依存しているアジアの国々も大きな影響をこうむることでしょう。でも、日本は何とか耐え切ると信じています。

 私は、日本の商品を海外に販売したい、中国人に日本の質の高い商品を売りたい――そういう思いで8年間やってきました。年月が経過して思うのは、自動車や家電、ハイテクなどは世界市場を目指せるでしょうが、日用品関連商材は人種的に近いアジア諸国が最も取り組みやすい市場だということです。そしてその中では、中国しかないと思っています。

 経済的な交流が深まればもっと仲良くなれる。そう信じて中国に渡り、尖閣問題が起こったときには大きな挫折感も味わいました。しかし今、上海の街を実際に歩いてみれば、中国人の日本に対するイメージが良くなってきていることを実感します。簡単には引っ越せないお隣の国、そして市場として見れば、リスクはあっても圧倒的な魅力を秘めた国。それが中国。長い目でゆっくり取り組んでもいい国だと思います。

【出典と参考URL】
経済産業省電子商取引に関する市場調査」
ジェトロ「保税区と輸出加工区の優遇策:中国」
◆2016年中国越境EC顧客研究報告
◆2016年中国越境輸入小売りEC業研究報告

プロフィル
内田 信(うちだ・まこと)
(株)オレンジモール社長。
1960年生まれ。学習院大学法学部法学科卒業、UCLA Anderson School Executive Program修了。大成建設ジョンソン・エンド・ジョンソン・メディカル、トランスコスモス韓国法人社長、中国法人、香港法人取締役CFO。インデックスアジアパシフィックCFO、フリールCOO。08年から上海欧貝薩企業諮詢管理有限公司創業董事長、15年から株式会社オレンジモールを設立し社長に。
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2016年06月03日 13時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun