藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

困難を越えて。

世の中ほとんどのことに「白か黒」は一色ではないから「ちょっと黒い」「大分黒い」にせよ悩まねばならないことは多い。
自分の住むマンションでも「民泊禁止」とか「民泊が発覚したら賃貸契約解除です」「所有者も告発します」とかなり物々しい。

ファミリーの住人たちは「知らない外国人が出入りするなんて」というトーン一色。
一方「小遣い稼ぎができて助かる」とか「利回りが上がるので推奨すべし」という声もある。

また犯罪とか「テロの基地に使われたらどうするのだ?」という声もあったりして調整は難航している。

特に不動産投資という観点で見ると、今は平均3-6%と言われている利回りは、家賃収入が倍にでもなれば非常な経済効果でもある。

この「経済的な力」ってかなり強くて、多分「何とか規則を定めつつも、民泊は必ずや増え続ける」ことになると思う。
「経済原理」という言葉はどこか銭儲け臭がしてあまり好きではないが、世の中だいたい「この流れ」に乗せられてしまうことが多い。

どうせなら「日数制限」とか「広さの規制」とか「特区制度」とかではなく「予約資格の認証」とか「安全確認」の整備に力を注げば普及は安全で速やかに進むのじゃなかろうか。

ともかく規制、ともかく抵抗、というやり方はもう時代遅れだと思うのだ。

民泊解禁 どんなことに気をつけたらいい?

相談者 M.Kさん

イラストレーション・橋本真貴子
イラストレーション・橋本真貴子
 私は30歳のインテリアデザイナー。都内の事務所で働いています。私の場合、忙しい時は徹夜も当たり前なのですが、仕事と仕事の合間には結構まとまった休みがとれます。学生のころから旅行が好きで、こつこつお金を貯(た)めては、長期休暇のたびに海外へ出かけてきました。いろんな地域に出かけて、さまざまな国の人と交流するのが楽しみなので、滞在先はもっぱらゲストハウスやユースホステル。ホテルに泊まることはほとんどありません。

 今年2月にもアメリカ・ニューヨークに行き、2週間滞在しました。その際、最近話題になっているインターネットのサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」を初めて利用してみました。貸したい部屋と借りたい旅行客を仲介する、アメリカ発の民泊サービスのことで、旅行好きの友人のほとんどが利用した経験があったため、思い切って民泊をしてみることにしたのです。

 滞在した場所はマンハッタンから少し離れていましたが、緑豊かで治安も問題ありません。アメリカでデザインの勉強をした学生時代に戻ったかのような気分でニューヨークを満喫しました。「子どもはみんな独立したので、若いお客は大歓迎だよ」という50代後半の家主さんとも仲良くなり、一緒にお酒を飲みに行ったり、おすすめの観光スポットを教えてもらったりと、楽しい時間を過ごすことができました。ニューヨークはホテルの宿泊料が高いことで有名ですが、個人宅を利用したことで料金もずいぶん安く抑えることができました。

 帰国からしばらくたちますが、あのときの楽しかった経験が忘れられません。そこで最近、ホストとして都内にある自宅マンションの一室を旅行客に貸し出せないかと考え始めました。実は、2年前に株で利益が出たため3LDKのマンションを購入して住んでいるのですが、一人暮らしの私には広すぎて部屋の一つはほとんど使っていません。その部屋を旅行客に貸し出すことができれば、国際交流ができる上に、ちょっとした副収入にもなります。

 ところが、ネットでいろいろ調べている中で、民泊を行うためには、実は旅館業法の許可が必要なことを知りました。どうやら、許可を得ずに行って摘発されたケースもあるようですし、騒音やゴミ出しなどで近隣の住民とトラブルになっているケースもあると報道されています。私一人の手に余るのではないかとだんだん不安になってきました。

 政府は、2020年の東京五輪パラリンピックに向けて、外国人観光客の増加で不足する宿泊施設を確保するため、民泊の規制を緩和しつつあるようです。今年に入って、東京都大田区大阪府で、国家戦略特区の規制緩和を活用した民泊が始まっているほか、旅館業法の枠組みでの民泊を行いやすくするために、制度見直しの検討も進められていると報道されていました。

 そもそも、民泊を始める上で、法律上どんな問題をクリアしなければならないのでしょうか。政府の規制緩和に向けた取り組みの現状や、民泊を始める上で気をつけるべきことについても教えてください(最近の事例をもとに創作したフィクションです)。

(回答)

民泊サービスの広がり

 自宅やマンションの空き部屋などの一般住宅を、宿泊施設として貸し出し、旅行客を有料で泊める「民泊サービス」が広がりを見せ始めています。背景には、モノやサービスを個人間でやりとりしたり、共有したりする「シェアリングエコノミー」という新たなビジネスモデルの登場があります。その一つが、アメリカで08年に誕生した、Airbnbに代表される、自宅の空き部屋を貸したい人と宿泊先を探す旅行者とを仲介するサービスです。

 これによって、ホテルや旅館ではなく「他人の家」に泊まるという、新しい選択肢が生まれました。質問者も指摘しているように、部屋を提供する側は空いている部屋を有効活用できます。一方、旅行者の側には宿泊料を安く抑えられ、その国の地元の人々の暮らしを体験できるというメリットがあります。

 シェアリングエコノミーの広がりとそこに潜む問題点については、「民泊ビジネスの是非 ネットの新事業で失敗しない法律武装とは?」(15年8月26日掲載)において、エアビーアンドビーだけでなく、タクシーやハイヤーの配車サービスとして知られるUber(ウーバー)も取りあげて解説しています。興味がある方はそちらも参考にしてください。

 当時は、エアビーアンドビーもウーバーも、法律の問題もあって、普及するのは当分、難しいだろうと思われていました。ウーバーがタクシー事業者などの根強い抵抗に遭い、いまだに苦戦しているのに対して、エアビーアンドビーが実施している民泊は、着実な広がりを見せています。類似のサービスを行う企業は次々と登場しており、戸数の絶対数が多い東京だけではなく、全国で民泊ビジネスが注目され、民泊専用に部屋を購入・貸借する例も出てきているようです。

 他方、法制度の整備が追いつかない状況下で、許可などを受けないまま民泊を営業しているケースが多く見受けられ、問題となっています。例えば、京都市が行った調査によれば、インターネット上に公開されている市内2702の民泊施設について、その施設の情報と京都市が管理する旅館業の登録情報を照合したところ、少なくとも68.4%が無許可だったとのことです。

2016年05月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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訪日客増で規制緩和

 日本政府観光局(JNTO)の統計によると、15年の訪日外国人観光客数は、前年比47%増の1973万人に上り、東京五輪パラリンピックが開催される20年の達成を目指していた「年間2000万人」に迫りました。13年には1036万人だったので、2年間で訪日客は2倍近くに伸びたことになります。円安基調やビザの発給要件緩和、免税制度の拡充などが奏功し、中国人を中心に訪日客が急増したのが要因と考えられています。

 ここで課題となってくるのが受け入れ態勢の整備です。観光庁の宿泊旅行統計調査(速報値)によれば、15年の宿泊施設の客室稼働率は国内全体では60.5%ですが、大阪府の85.2%を筆頭に、東京都82.3%、京都府71.4%となっています。これらの地域では週末となればほとんど部屋を取れない状況です。ビジネスマンが出張に使うホテルも、外国人観光客に埋め尽くされており、「ホテルの予約が取れない」「宿泊費が高くて会社の旅費規定をオーバーしてしまう」といった悲鳴も聞こえてきます。

 先日、私のクライアント企業の社員の方と話をしていたら、「大阪に出張し、打ち合わせ終了後、現地の社員の方々と懇親会をしている最中に、電話で宿を取ろうとしたが、どこからも断られた。懇親会の後半は、参加者全員で手分けして空いているホテル探しをした」という、ほとんど冗談とも言えるような出来事を説明してくれました(結局、その人は、唯一空いていた、割高なスイートルームに宿泊したということです)。

 東京オリンピックを控え、インバウンド市場の拡大は今後も続くと見込まれています。政府は今年3月、訪日外国人数を20年に現在の2倍の4000万人、30年には3倍の6000万人にまで増やすとの新たな目標を決めました。そんな中、宿泊施設不足の打開策として期待されているのが民泊サービスです。

 楽天をはじめとするインターネット関連の企業群が参加する「新経済連盟」は、15年10月、「シェアリングエコノミー活性化に必要な法的措置に係る具体的提案」を発表しました。民泊解禁による訪日客の増加により、インバウンド消費を含む経済効果は10兆円台、受け入れ可能な外国人旅行者数は約2500万人に上ると試算し、民泊推進が、「『戦後最大の経済、GDP600兆円』の実現」に貢献するとしています。そして、政府も、特区の設置や政令改正、さらには法改正で規制緩和をすすめ、民泊の普及を後押ししています。

 政府が進めている規制緩和の内容については後ほど説明するとして、まずは、このような新しいビジネスに立ちはだかる「業法」である旅館業法において、民泊がどのように扱われるのかについて述べたいと思います。先に取りあげた「民泊ビジネスの是非 ネットの新事業で失敗しない法律武装とは?」の内容と一部重複しますが、以下確認したいと思います。

旅館業法の適用基準

 旅館業法では、旅館業には「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」(ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業及び下宿営業)が該当すると規定されています。そして、この旅館業を行う場合は、都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市区長)の許可を受けなければならないと規定されています。

 また、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」と規定されています。たとえば、友達をただで泊めてあげる、といったことなら「旅館業」にはなりませんが、有料で(=宿泊料を受けて)、社会性を持って継続反復している(=営業)、つまり繰り返しビジネスとして運営する場合には、許可が必要になるわけです。

 仮に宿泊料を、体験料、室内清掃費などの名目で徴収したとしても、実質的に部屋の使用料とみなされるものは「宿泊料」にあたります。社会性の有無は、「不特定多数」を宿泊させる、広く一般に宿泊者を募集しているなどの事情で判断されます。また、「土日限定」「夏季限定」などとして宿泊サービスを提供しても、継続性があるとみなされます。

 ただし、厚生労働省の通達では「年1回(2〜3日程度)のイベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いもの」は、「イベント民泊」とされ、旅館業法の適用は受けずに住宅を貸し出すことができます。また、農林漁業者の運営する施設に宿泊する「農家民泊」については、旅館業法の適用は受けるものの、面積基準の要件が緩和され、後述する建築基準法や消防法でも特例扱いがなされています。

 旅館業がアパートなどの貸室業と違う点は、(1)施設の「衛生上の維持管理責任」が営業者にある(2)宿泊者が「生活の本拠」を有さないこと――と示されています。ここでいう「生活の本拠」の判断目安は1か月とされているため、ウィークリーマンションは旅館業にあたりますが、マンスリーマンションやサービスアパートメントなどは貸室業となり、旅館業法の対象外となっています。

 なお、旅館業の許可は、「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の四つに分類されています。そして、それぞれのカテゴリーごとに、客室の床面積、客室数、玄関帳場(フロント設備)など、施設の満たすべき基準が旅館業法施行令や各地域の条例によって細かく定められています。この許可を受けずに行った場合は、「6月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処する」とされています。

 実際に、こうした無許可の民泊の摘発が近年相次いでおり、14年5月に東京都足立区で自宅の一部を旅行客に提供していた英国籍の男性が旅館業法違反の疑いで逮捕されたほか、15年12月には京都で、16年4月には大阪で、摘発事例が出ています。

 また、宿泊者がゴミ出しや騒音などを巡り、近隣住民とトラブルになるケースや、知らない人が出入りすることで、マンション内のセキュリティーに不安を覚える住民も出てきました。各地のマンションで、管理規約に民泊を禁止する条文を盛り込む動きが出てきたほか、売り出し当初から、民泊を禁止する規定を盛り込んだ新築分譲マンションも現れ、顧客からの中には「安心できる」と肯定的に評価する人もいるようです。

 他にも、無許可民泊を野放しにしておくと、不十分な衛生管理による感染症のリスク、防火対策の不徹底による火災の危険性、テロや薬物犯罪などの拠点に悪用されるなどといった懸念もあります。

 こうしたことから、まさに今、早急な民泊のルール作りの必要性が主張されているわけです。

2016年05月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun