藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

止まらない流れ。


新しいテクノロジーに、常に時代や社会は「後追い」でついていくものだ。
そういう場面には、何度遭遇してもちょっと間の抜けた感じがしてしまうものである。
ちょっと悪知恵が働くとか、とんちの効いている人たちは、どんどん新しい技術を膨らませてサービスを作ったり、製品にしたりしてしまうものだ。

「個人情報保護」という言葉もそんなテイストがする。
これだけ通信やデータベースが進化している中で「実はこれとこれは個人情報でして…」というとどうも「今更ねぇ」という気がしてしまうけれど、まあ法律を作ったり実施していく方たちは大変だろうと思う。

今までは個人情報といえば「個人を特定するに足るもの」だったところに、ようやく「顔の画像」が仲間入り。
もともと「個人情報の最たるもの」だったはずだが、技術の進化とともに現実化してきた。

リアル世界ではさして問題にならない戸籍とか住所録とかだが、こと「デジタル世界で時間と空間と量を超えるレベル」では大問題になっている。

つまり

リアル社会で収集された情報の「デジタル世界への持ち込みについて」はこれからが本格化のとば口に違いない。

もうすでに老人ホームなどの施設では「顔認証で出入り口の施錠」が実用化されているし、特に安全とか治安の優先される場面(入国とか対テロとか)では普及がどんどん進むに違いない。

街中の公共の場では、すべてのゲートが顔認証され、手ぶらで外出したり(あるいは監視されたり)する時代は、もうすぐそこに来ているのではないだろうか。

法律や国家権力の問題は確かにあるけれど、「安全と利便の原理」はどんどん勢いを増していくと思う。
もう視点を変えて、そういう「認識されざるを得ない社会」での生活をどのようにしたいか、を議論する方が近道なのに違いない。

「顔は個人情報」対応急ぐ 改正法来年に施行 客に告知/匿名化、自主ルール

 カメラで撮影した顔の画像から抽出した「顔認識データ」を個人情報と定義することなどを盛り込んだ改正個人情報保護法の施行が来年に迫り、産業界がガイドライン策定などを進めている。改正法は小規模事業者にも適用されるため、消費者の理解を得る対応は急務だ。一方、第三者へのデータ提供の環境が整うことで、ビジネスへの活用の広がりも期待される。

顔認識データのビジネス活用は広がる(年齢・性別を推測して「おすすめ商品」を提案するJR東日本ウォータービジネスの飲料自販機)

 防犯カメラが万引き常習者を自動検知――。書店大手、丸善ジュンク堂書店がこんなシステムの導入を進めている。過去の万引き犯の顔の特徴を電子化したデータを蓄積。似た人物が入店すると保安員のスマートフォンに顔画像を送り、注意を促す仕組みだ。

 店内に「監視カメラ作動中」と掲示して客に告知しており、同社は「防犯目的以外には利用していない」と説明する。しかし改正法施行後は、一層の対応が必要になる可能性がある。

 顔データが個人情報に当たるかはこれまで曖昧だったが、改正法は、顔や指紋など身体的特徴を電子化し、個人を識別できる情報を「個人識別符号」と定め、氏名や生年月日などと同じ個人情報と位置付けた。

 具体的には、政府の個人情報保護委員会が今月公表した政令案では「顔の骨格及び皮膚の色並びに目、鼻、口その他の顔の部位の位置及び形状によって定まる容貌」のデータとしている。

 個人情報を取り扱う事業者は、利用目的を事前に公表したり、本人に通知したりする必要がある。改正法は来年9月までに施行予定で、同法に詳しい影島広泰弁護士は「防犯カメラで収集したデータの利用目的を店頭で告知するなどの対応が求められる」と話す。

 顔データの収集には市民の不安も根強い。情報通信研究機構が2014年、JR大阪駅で監視カメラ映像から通行人の顔を識別し、防災に役立てる実験を計画したところ、利用客の反発を受け、エキストラによる深夜の実験に切り替えた。

 こうした経緯もあり、業界団体は自主ルール作りを進めている。顔認証カメラメーカーなどで構成する「日本万引防止システム協会」は今年10月をめどに、漏洩防止の徹底などを盛り込んだ指針を作る。「万引き常習犯以外のデータは登録しない」「データ保管を厳重にする」などをシステム導入企業に求める。

 指針作りに携わる防犯システム会社、三宅(広島市)の三宅正光社長は「消費者の不安の声に対し、企業は説明責任を果たす必要がある」と狙いを説明する。

 改正法では、取り扱う情報が5千人以下の小規模事業者も新たに規制対象になる。より多くの企業で対応が課題となる。

 顔データの利用は広がっている。JR東日本ウォータービジネス(東京・渋谷)は、客の顔の特徴を判別して性別や年齢を推測し、「おすすめ商品」を提案する飲料自販機の設置を進めている。

 現状では「購入客のデータは蓄積していない」(同社企画部)が、改正法では、個人を識別できないように加工した大量のデータを「匿名加工情報」として第三者に提供できるようになる。ビッグデータを活用したビジネス機会が拡大する。

 匿名化の詳細な方法は業界団体の自主ルールに委ねられる。個人情報保護に詳しい中崎尚弁護士は「年齢など必要最小限のデータだけを残し、他の要素を消去するなど慎重な加工が求められる」と話す。
青木茂晴)