藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

連続性の証明書。

最新のテクノロジーについての面白い記事。
新しい技術はこうして報道されながら、次第にわかりやすく説明されてゆく。
これまでもそういうプロセスは同様だと思う。

第一は「連続性」。

第1は、インターネットのような仮想世界に現実世界と同様の「連続性」を実現させることで、参加者間の信頼を「自律的」「分散的」に構築し、全体を管理する中央集権的機能を不要にする点だ。

 また、「信用」という概念や契約そのものも「連続性」をよりどころとしている。契約の前提となっているのはアイデンティティ、財産、取引、そして信用である。署名、パスポート、印鑑、運転免許証などは、すべて現実世界の「連続性」を拡張するものである。

デジタル世界にはその「連続」はないと説く。

 ところが、インターネットのような仮想世界には、現実世界のような「連続性」が存在しない。仮想世界では、そこにあるデータがコピーではなくオリジナルであるという保証はなく、ネットの先にいるヒトもモノもアイデンティティを持たない(インターネットではあなたが犬であることを誰も知らない、という有名なジョークがある)。連続性がないということは、アイデンティティや所有権、取引、信用、契約が有効なものであるとお互いに確認するための土台がないということだ。

 仮想世界における取引の当事者間に、事前に現実世界での接点があれば、仮想世界でも暗号を使って直接的に関係を築ける。そうでない場合は、仲介者を立てることになる。

「仮想世界における「連続性」欠如の問題を解決するのがブロックチェーンの技術である。」

この技術により、デジタルな連続性が担保できるため、お互いを信用する根拠を持たない多数の当事者を結びつけられるようになる。結果として、仮想世界のあらゆる仲介者に破壊的な影響を与えるポテンシャルを持つと言える。

要するにデジタル世界での「アナログ証明書」として「紐付け保証」ができるのがブロックチェーンということだ。

突然現れ、出自の分からない人のレファレンスを「いろんなひも付き」から証明してゆく、というのはなんともアナログ的な手法だと思う。
(つづく)

ブロックチェーン、下克上の武器ボストン コンサルティング グループ
 ボストン コンサルティング グループ(BCG)のエースコンサルタントが2018年に着目するテーマの戦略を紹介するシリーズ。第2回目は産業界の勢力図に破壊的なインパクトをもたらす可能性を秘めるブロックチェーンについてシニア・パートナーの佐々木靖氏が論考する。昨年、投機的な盛り上がりをみせた仮想通貨ビットコインのベースとなる技術は、金融以外にどう波及するのか。

契約の根拠「連続性」をネットでも担保

ささき・やすし 慶應義塾大学経済学部卒業、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士MSc)、欧州経営大学院(INSEAD経営学修士MBA)。株式会社日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)を経て現在に至る。

 幅広い産業に大きな影響を与えると言われるブロックチェーン。その破壊的な技術特性には、2つの側面がある。第1は、インターネットのような仮想世界に現実世界と同様の「連続性」を実現させることで、参加者間の信頼を「自律的」「分散的」に構築し、全体を管理する中央集権的機能を不要にする点だ。

 「連続性」は現実世界では当たり前に認識できる。誰かが右手に持ったボールを背中の後ろで左手に持ち替えたら、正面からそれを見ていた人は、左手にあるボールと右手から消えたボールは同じものだと合理的に確信できるだろう。
この「連続性」は、ヒトやモノの同一性を確認する基盤であり、資本主義システムの前提であるともいえる。「連続性」によって財産権の存在を認めることができ、財産取引、すなわち財産の移転を認めることができるのだ。

 また、「信用」という概念や契約そのものも「連続性」をよりどころとしている。契約の前提となっているのはアイデンティティ、財産、取引、そして信用である。署名、パスポート、印鑑、運転免許証などは、すべて現実世界の「連続性」を拡張するものである。

 ところが、インターネットのような仮想世界には、現実世界のような「連続性」が存在しない。仮想世界では、そこにあるデータがコピーではなくオリジナルであるという保証はなく、ネットの先にいるヒトもモノもアイデンティティを持たない(インターネットではあなたが犬であることを誰も知らない、という有名なジョークがある)。連続性がないということは、アイデンティティや所有権、取引、信用、契約が有効なものであるとお互いに確認するための土台がないということだ。

 仮想世界における取引の当事者間に、事前に現実世界での接点があれば、仮想世界でも暗号を使って直接的に関係を築ける。そうでない場合は、仲介者を立てることになる。

 筆者は現実世界で銀行との接点を持っている。読者も現実世界で銀行との接点を持っている。銀行同士も現実世界で接点を持っている。そして全体として、銀行という仲介者が、筆者と読者の仮想世界におけるアイデンティティを保証し、私たちの取引を仲介してくれる。このように、銀行などの現実世界の仲介者を介在させることによって仮想世界での連続性を実現するのが、これまでのやり方である。

 仮想世界における「連続性」欠如の問題を解決するのがブロックチェーンの技術である。この技術により、デジタルな連続性が担保できるため、お互いを信用する根拠を持たない多数の当事者を結びつけられるようになる。結果として、仮想世界のあらゆる仲介者に破壊的な影響を与えるポテンシャルを持つと言える。

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2018/01/29

ボストン コンサルティング グループ

仲介者不要の取引プラットフォーム

 第2の特性は、ブロックチェーンが「スタック(階層)構造」を有し、それにより技術を様々な形で応用する可能性が広がっている点だ(図表1)。

 スタック構造とは、相互に連携して運用される複数のモジュールが層(レイヤー)になって重なっている構造を言う。最下層の汎用的インフラ機能を基盤に、いくつかのレイヤーを経て、よりユーザーに近い最上層に至る。上層の機能は下層の機能をベースに設計され、システムは全体として下層の効率性と、上層の適応性をあわせ持つことになる。下層にあたるブロックチェーンが堅牢かつ安定的な仕組みである一方で、上層部分はイノベーションにより絶えず変化し、多彩で革新的なアプリケーションやサービスが創出されている。

 実際、ビットコインで実証されたブロックチェーン技術は、Ethereum(イーサリアム)やRootstock(ルートストック)など、仮想通貨の枠を超えて幅広い領域で活用可能な、新たなプラットフォームを生んでいる。 これらのプラットフォームは、仲介者の介在なしに取引を成立させることを可能にし、新しい経済価値を生み出している。ウーバーを例に考えれば、ブロックチェーン技術を活用することで、中央で統制するウーバーそのものをなくし、運転手が直接仕事を取れるようにできるかもしれない。

 デジタルな連続性を担保することで、インターネットの世界で中央の管理を不要にし、スタック構造により広範なアプリケーションの活用が見込めるブロックチェーン。仮想通貨はブロックチェーン技術応用のアプリケーションの1つにすぎず、その活用可能性の広がりは大きい。

 仮想通貨を除く金融領域でブロックチェーン技術の研究が最も進んでいるのが、証券取引のクリアリング(清算)・セトルメント(決済)業務である。ブローカー、カストディアン(保管機関)、規制当局、受託者などがからむ複雑なプロセスで、送金1回につき10回以上の仲介取引が必要なこともある。取引完了までは一般的に3営業日かかり、処理の20%でミスが発生するといわれる。

 だが、ブロックチェーン技術を活用すれば、取引の両当事者が、信用度が高く正確な共通データベースを参照できる。取引は法律用語とコンピュータコードの両方で記録できるため、データの交換自体がセトルメントの執行になる。さらに、規制当局は取引の内容を確認できるが、他者の目に触れることはない。

 これは、証券取引という1分野の話である。だが、仲介者なしに取引を成立させるブロックチェーンのポテンシャルはすべての金融取引に応用できる。ブロックチェーン技術を基盤とするスタック構造では、銀行はプラットフォーム上の1プレーヤーにすぎない。

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2018/01/29

ボストン コンサルティング グループ

証券取引、土地登記、IoT...幅広く応用

 金融ビジネスは、これまで情報を非開示にし、中央集権的な仕組みを維持することで、システム全体としての信頼を構築してきた。だが、ブロックチェーン技術は、この仕組みを打ち壊し、取引仲介者を不要にする。これにより従来の金融プレーヤーのビジネスモデルを根本から組み替える可能性を秘めているともいえる。

 ブロックチェーンの持つ破壊的影響力は金融領域を越えて広がっていくといわれ、2018年以降、非金融分野における活用がさらに活発化することが予想される。

 図表2は活用可能性のある領域を「トレーサビリティ」「真正性」「自動化」「仲介機能の排除」という4つの側面からまとめたものだ。土地登記等の公的書類の管理から、食品流通や小売などサプライチェーン、ピア・ツー・ピアのシェアリング・エコノミーなど、幅広い領域での活用可能性が考えられる。

 特に注目を集めているのが、IoTとの組み合わせである。現時点でのIoT活用例では同じ主体が所有する機器同士を接続することが多いため、各機器は情報や指示を交換するだけでよい。しかし機器の所有者が異なる場合は、何らかの取引が必要になる。現状では、機器の所有者の間に共通の仲介者が存在せず、扱われる金額の総額も少ないため、取引を行うことに経済的な価値はない。だが、プログラム化して自動的に実行できる契約をブロックチェーンに組み込んだ「スマートコントラクト」を使えば、機器同士が直接取引できるようになる。

インターネット同様に、ブロックチェーンは、企業経営に革命をもたらす可能性がある。以下、企業の経営者が備えておくべき5つのポイントを示す。

?技術について学ぶ姿勢を保つ(技術は圧倒的スピードで進化する)

 経営者は、自らが(ブロックチェーン技術に限らず)デジタル技術全般に対する理解を深める努力を続けなければならない。ブロックチェーン技術がビジネスにどのような影響を与えるかはまだ不明確なため、部下や周囲の専門家に判断を委ねてしまいがちだが、先が見えないからこそ、生の情報に触れ、自身の嗅覚を研ぎ澄ませて意思決定に活かすべきである。

 他のデジタル技術同様、ブロックチェーン技術は圧倒的なスピードで進展し、突然局面が変わることもある。オープンなブロックチェーンが、業界コンソーシアムによるクローズドな取り組みの魅力を奪うかもしれない。一方、遠く離れた国の政府が支援する取り組みが、キラーアプリケーションを生むきっかけになるかもしれない。暗号技術が飛躍的に向上してセキュリティや拡張性に変革をもたらすかもしれない。パソコンやインターネットの登場によって、すべての産業が丸ごとそれらのアプリケーション同様になったように、他業界における革新が自社の業界に押し寄せてくるかもしれない。

急速に技術進展、顧客視点で対応を

?中長期のシナリオで考える(幅で捉える、点で考えない)

技術進化が著しく、ブロックチェーン技術を活用した様々なビジネスモデルが勃興する可能性が高い状況では、将来を完全に予見することは不可能である。経営の心構えとして、想定される状況を一定の幅のシナリオの中で捉えて、戦略的な方向性を打ち出していくことが肝要となる。

経営者は想定されるシナリオを幅で捉え、どのシナリオであっても対応できる構えを常に持っておくべきである。仮に、想定が外れた場合であっても、幅で捉えておくことで、対応力を増すことができる。

?政府を信じない、市場を信じる(もはやコントロールできない、最後は顧客視点で変化の潮目を見極める)

 現在のところ、政府や当局はブロックチェーンに対して好意的だ。大半の国・地域の法制度においてビットコインは合法であり、金融商品としてではなくコモディティとして規制されている。

 規制対象は主にスタックの最上層(特に取引所)であり、下層(ブロックチェーン自体)ではない。むしろ、ブロックチェーンには政府による取引の規制・監督を支援する側面がある。ブロックチェーンはカウンターパーティ・リスクを抑制し、マネーロンダリングに対抗するためには有効だからだ。

 しかし、当然、規制環境は突然変化する可能性がある。特にセキュリティ面の脆弱性が判明すればなおさらである。さらに、ブロックチェーン技術の影響は国境を越えて広がるものだ。既存の規制のあり方は一定であると捉えるのではなく、顧客視点で、常に変化の潮目を見定めるスタンスが経営者に求められる。

ボストン コンサルティング グループ編 『BCGが読む経営の論点2018』(日本経済新聞出版社、2017年)「4 破壊的技術、ブロックチェーンにどう備えるか」から

BCGが読む経営の論点2018

ボストン コンサルティング グループ編
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