藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

衰退ではなく。

まことしやかにフィンテック、と言われているが、その本命は「銀行の淘汰」にあるとすれば、かなりドラスティックな話である。
ここ100年でいわゆる「マンモス」が解体されてきた例はたくさんあるが、今回は「最大の業界の淘汰」になるのかもしれない。

無理もない。
「通信」とか「データ処理」とか「トランザクション」の処理が本命だった時代が「銀行の時代」だった。

そのどれもが「一対一」でできるようになれば、固定費の大きい「取引所」は必要なくなる。

「お金の流通」という近代の最大の役割を担ってきた銀行が、その役割を終えようとしているように見える。

これからは、融資とか、投資とか、出資とか、社債とか、そして国債とか地域債とか、そんなものが「取引所なし」にやり取りされるのだろう。
面白い時代だが、だから自分はどこで生きていくのか?を考える思案どころでもある。

自分が今二十代だったら、とワクワクするけれど、実は五十代でも同じことだ。
「既存の枠組みに乗った世界」に身を置くのか。
それとも「未知の海に出て行くのか」はよく考えたほうがいい。

断然「未知の航海」が面白いと思う。
今が一番楽しい時代ではないだろうか。

現場報告 銀行員がどんどん辞めている
4/16(月) 7:00配信
「約100人の同期のうち、すでに50人ほどが銀行を去りました」
こう語るのは有力地銀で入行8年目のA氏30歳。有名国立大を出て支店での個人・法人営業も経験、企画セクションで社長直轄の戦略立案を担ったこともある。

金融商品のノルマに嫌気がさした人も多かったのですが、結局、安定していると思っていた銀行の将来が見えないことに不安を感じた人が退職したのだと思います。それが証拠に転職先は地元の県庁や市役所など公務員が圧倒的に多いです。もはや銀行は安全志向の人のための職場ではなくなりました」

かつて就職市場で銀行の人気は抜群に高かった。その背景には、給与の高さに加え、その「安定性」があった。つまり高給で「潰れない会社」だと思われてきたのだ。

しかし、それもすっかり過去の話だ。銀行は、今、大転換期を迎えている。

銀行は「安定性」を演出

 預金者から資金を集め、企業に融資する銀行融資は、「お金を借りる人(企業)」と「お金を貸す人(預金者)」の間に第三者(銀行)が存在するという意味で「間接金融」と呼ばれ、高度成長期にはうまく機能し、銀行と企業は「長期に安定的な関係」を築いた。だが、一見「安定的」に見える間接金融も、実は、決してリスクの低いビジネスとは言えない。自己資金の何倍ものお金を企業に貸し出す以上、企業からの返済が滞れば、とたんに屋台骨が揺らぐからだ。貸出債権の価値も、企業の返済余力に左右されるので外側からは見えにくい。だからこそ銀行は、「安定性がある」「信用がある」と顧客や市場や世間に思いこませる必要がある。

事実、メガバンクは、巨額の貸し出し資産、数万の行員を擁し、大手町や丸の内の一等地に巨大な本部ビルを構える。多くの銀行員は高学歴で、スーツを生真面目に着込む。これらはいわば銀行の「安定性」と「信頼性」を演出する舞台装置だ。

しかし、だからと言って銀行の経営が実際に安定しているとは限らない。最近でも日本のバブル崩壊後の不良債権問題や米リーマンショックなどで金融は危機にさらされた。

ただ、こうした金融危機に際しても、多くの銀行は、「経済を安定化させる」という大義名分の下に投入される公的資金によって救済された。「だから、銀行が潰れることはあるまい。最後は政府が公的資金で救ってくれる」――おそらくこんな見方も「銀行は潰れない」という神話の根拠になっているのだろう。だが、今後も通用するとは限らない。

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来店する人の数は、ここ10年で2割〜3割減

 しかし、そのことよりも銀行にとってより重大な問題がある。それは、これまでの銀行のあり方が、そもそもビジネスとして限界を迎えているのかもしれないということだ。

試しに駅前の銀行の支店をのぞいてみれば気づくだろう。そこに、かつてのにぎわいはない。あるメガバンクの幹部はこう嘆く。

「ネットやスマホの利便性が高まり店舗に来店する人の数は、ここ10年で2割〜3割は減りました」

銀行を取り巻くビジネス環境の激変に危機感を抱くメガバンクは、人員削減計画を相次いで発表している。

たとえばみずほフィナンシャルグループ(FG)は、2017年11月、組織構造を大幅に見直す計画を発表した。7.9万人の行員のうち1.9万人を2026年度末までに削減、約500店ある店舗も24年度末までに約100店舗減らすという。三菱UFJフィナンシャル・グループ三井住友フィナンシャルグループも、これに追随し、3メガバンク合計で、3.2万人超の人員が削減されることになった。

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貸出先がない膨大な銀行預金

「このままでは銀行はスマートフォンのアプリの一つになりますよ」

こう指摘するのは、三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長で、コンサルティング会社PwCインターナショナルのシニア・グローバル・アドバイザーである田中正明氏だ。

「巨額の資金が、ほとんどリターンもないまま銀行に眠っています。預金を集めて融資するデット・チェーン(負債の連鎖)を断ち切り、預金を投資商品にシフトさせ、企業に株式などの形でリスクマネーを供給するインベストメント・チェーン(投資の連鎖)の仕組みに切り替えないと日本の金融に未来はありません。資本市場の厚みがないことが日本の成長を鈍化させています。メガバンクや地銀といった従来型の単純商業銀行モデルは、もはや陳腐化してしまいました」

日銀の金融システムレポートによると、2012年12月から2017年8月の約5年で、銀行に持ち込まれた預金や譲渡性預金(NCD)は131兆円も増え、日銀当座預金を中心とする現金・預け金は191兆円も積み上がった。つまり預金はこれだけ膨大に積み上がっているのに、銀行はこうした資金をほとんど有効活用できていないのだ。

個人は、余剰資金をほとんど金利が付かない銀行に預金している。融資先を見つけられない銀行は、集まり過ぎた預金に手を焼き、だぶついた資金を銀行同士でやり取りするためだけの日銀の口座で眠らせている。

銀行としては、元本保証で集めた資金はリスクにはさらすことはできないから、有望なビジネスでも、担保を持たないベンチャーには簡単には融資できない。こうした銀行のあり方は、企業が思い切った資金調達で果敢な経営に挑まず、低収益の経営に胡坐をかいていることや個人がリスクの高い資産運用に躊躇していることと裏腹な関係にある。

つまり、預金という元本保証の仕組みでお金を集め、企業に貸し出す間接金融の仕組みがもはや機能していないのだ。田中氏の言う「デット・チェーン」が資金の流れを滞らせ、日本経済を停滞へと導いている。

実際に企業向け融資は、稼ぐ力を失いつつある。みずほFGの2017年第3四半期の国内大企業向けの貸出スプレッド(利ザヤ)は、わずか0.49%。1億円を融資しても、49万円しか稼げていない。他のメガバンクでもほぼ同水準だ。

「収益も資産も健全な大企業だと、利ザヤが0.07%〜0.08%というケースもあります。とても商売になりません」(メガバンク幹部)

増えすぎた預金によって銀行間の貸し出し競争が激化し、金利の値下げ圧力が強まっているのだ。メガバンクの幹部は、苦しい現状を明かす。

「情報や戦略など付加価値が提供できなければ、法人のお客様との取引は続きません。わずかな利ザヤですが、それすらコンサルタント料の対価だと考えています」

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デフレ要因の一つは、デッド・チェーンの存在

 しばしば「日銀のマイナス金利政策が銀行の利ザヤを圧迫している」と指摘される。しかし、それは表面的な説明で、原因と結果を取り違えているのではないか。むしろ根本の問題は、デット・チェーンのくびきがイノベーションの生成や生産性の向上を妨げていることだ。日本を物価が持続的に下落するデフレに陥らせた要因の一つは、デット・チェーンの存在だ。マイナス金利は、根強いデフレへの処方箋として日銀が採用に追い込まれた金融政策であって、デット・チェーンこそがマイナス金利を生み出した魔物なのである。このなかでとくに銀行が、デット・チェーンの温存に大きく寄与している。優秀な人材をフル稼働させて、すでに時代にそぐわない間接金融の仕組みを温存させているからだ。

経営共創基盤代表取締役マネージングディレクターで金融庁参与の村岡隆史氏は言う。

「銀行は、人員、資産(店舗・システム)、預金という三つの過剰の膿出しが、まだ終わっていません。負の遺産を一掃すると同時に、稼ぐ力を付けなければいけません。ただこれは、従来型のビジネスモデルの効率化だけでは不十分です。銀行業を中抜きする産業や資金の流れは加速します。従来の銀行業の枠組みを超えて、顧客との新たな共創事業モデルを創らないといけません。そのためには組織のあり方、人材育成方法も抜本的に見直すことが問われています。安易な低金利競争をしている時間的猶予はありません」

かつては信頼感で結ばれた銀行と企業の関係も、今日ではすっかり冷え込んでいる。前述した地銀のA氏は言う。

「法人の取引先に、うちの銀行を『他のお客様に紹介したいですか』とアンケートで質問をしたところ否定が約半分、やや否定的も加えると8割を超えました。銀行は、お客様に信頼されていないんです。社長もショックを受けていました。バブル崩壊後の不良債権処理の過程で、貸しはがし貸し渋りをしたことで『いざという時に頼りにならない』と企業に思われているんです」

銀行と個人との関係も歪み始めている。当面の収益目標達成のため、投資信託などの厳しい販売ノルマを現場に課している銀行が多い。メガバンクの若手行員B氏は言う。

「銀行の営業マンから金融商品を購入するのは『銀行なら安心だろう』と考えている高齢者が多い。そのため値が下がって損失が出るとトラブルになるケースも稀ではありません。ノルマもきついですが、銀行の信用を悪用しているかのような罪悪感も現場を苦しめています」

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投資家が企業に効率的な経営を求めていく必要がある

 銀行と企業や個人との信頼関係は崩れ、どちらにも利益を生み出していない。銀行を中心としたデット・チェーンが日本経済の負のサイクルを加速させている。

では、どうすれば、この負のサイクルを断ち切れるのか。そのためには、日本の経済構造全体を間接金融中心から直接金融中心に移行させるしかないだろう。

まず機関投資家が、株主総会での議決権行使などを通じて、企業に効率的な経営を求めていく必要がある。投資家からの監視と圧力で企業の稼ぐ力が高まれば、株価の持続的な上昇が期待できる。株式市場の魅力が高まれば、資金は預金から株式市場に流れ出す。そして株式で調達された資金が、起業への挑戦、企業がイノベーションを現実化するための潤滑油の役割を担う。

こうなれば、デット・チェーンは緩み、新たにインベストメント・チェーンが生まれ、日本経済は活力を取り戻すことができるだろう。

 では、こうした流れの中で銀行はどんな役割を担えばよいのか。

田中氏は、既存の投資信託だけでなく、銀行が取り扱いやすく、個人顧客のニーズにも合った新たな金融商品の普及を提言する。

三菱UFJの副社長時代に『市場性商品総合口座』の導入を検討しました。国債や格付けの高い社債投資信託など、安全性が比較的高い金融商品を組み込むとともに、それらを担保にした随時の借り入れを可能にすることにより、流動性も提供する、という商品です。担保掛け目は7〜8割のイメージでしょうか。1000万円の商品なら700〜800万円までは通常の預金のように引き出せる。お客様にとっては、預金よりは高いリターンが期待できるとともに、流動性があるので金融商品の長期保有にも資すると考えました。預金からシフトする分については、銀行が預金保険料や資本規制から解放されます。こうした商品があれば預金を投資商品に移せると考えました。しかし担当のリテール部門から『システム投資が莫大になります』などと反対されて頓挫しました。国民の資産形成のため、こうした商品が必要だという考えは今も変わりません。例えば、政府がかつてのマル優のような優遇税制を作って、こうした口座を普及させ、インベストメント・チェーンへの転換を後押ししてはどうかと考えています」

こうした提言は、今後の銀行改革の方向の一つを示すものだろう。だが、銀行が抱えている難題は間接金融の限界だけではないのだ。

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銀行業務を代替する技術革新

 銀行を襲うもう一つの脅威は、技術革新の波だ。

銀行は、貸し手と借り手を仲介する「金融仲介機能」、手元の資金の何倍もの融資を実行する「信用創造機能」、口座振替、送金を担う「決済機能」という三つの機能を果たしてきたが、これらの機能は、いずれも「豊富な情報力を使って貸出先の信用を見極められる」という銀行自体の「信用」によって支えられてきた。しかしフィンテックは、従来の銀行が果たしてきたこうした機能を一挙に代替してしまう可能性があるのだ。

フィンテックの進展によって、個人や法人の信用力を測る方法はすでに多様化している。例えば中国では、個人の信用力を点数で評価する「芝麻信用」が広がっている。

芝麻信用は、中国で利用者が5億人を超える電子マネーアリペイを運営するアリババ系列の信用調査会社だ。クレジットカードの支払い遅延の有無、買い物や金融商品の購入履歴、資産、学歴、職歴、交友関係まで幅広い観点から個人の信用力が点検される。デジタルな取引で蓄積されたビッグデータが活用され、個人の信用力は、350〜950点のスコアで点数化されるという。スコアが高いと、借り入れ金利が優遇されるだけでなく、ホテルで宿泊する際のデポジットが不要になるなど、さまざまな優遇措置を享受できる。さらに海外渡航のためのビザの発給手続きが迅速化されるなど国からもメリットが与えられる。

「中国ではプロポーズする際に、相手の両親にスコアを見せるケースも多いそうです。国家ともデータ共有しているので万引き、信号無視でもスコアが下がると言われています」(メガバンク幹部)

ミスが許されない減点主義の企業文化

 こうしたフィンテックの波及力は、社会を根こそぎ変化させつつある。ビッグデータやAI(人工知能)を活用した資産運用への助言、株式のトレード戦術の改善、虹彩や指紋などの生体認証を活用したスマホでの決済、送金……。シリコンバレーの最先端の技術が、金融の世界に押し寄せている。

こうしたイノベーションの創出と活用には、素早い意思決定と失敗を恐れないチャレンジ精神が必要だ。しかし間接金融の担い手であった「安定第一」の日本の銀行には、年功序列とミスが許されない減点主義の企業文化が根付いている。メガバンクの幹部の一人は言う。

メガバンクは、成功したフィンテック企業を買収する方向に舵を切りました。ただ、フィンテックは、多くの人が使って社会のプラットフォーム(基盤)となることで一気に利益が上がるので、有力なフィンテック企業は一つの企業に囲い込まれることを嫌います。銀行はフィンテックが生み出す利益をうまく吸収できないのではと懸念しています」

しかし、メガバンクも指をくわえて傍観しているわけではない。

みずほFGは、昨年6月、ベンチャー投資ファンドの「ウィル(WiL)グループ」と共同でフィンテックを担う「ブルー・ラボ(Blue Lab)」を設立した。出資比率は、ウィルグループが過半数で、傘下のみずほ銀行の出資は14.9%に抑えた。その一方、代表取締役社長の山田大介氏はみずほ銀行の常務執行役員で、取締役の阿部展久氏もみずほFGのデジタルイノベーション部・部長であり、ブルー・ラボは、「みずほのデジタル部隊」でもある。阿部氏は言う。

「みずほ銀の出資比率を抑え、通常の銀行の意思決定の枠外で動けるように工夫されています。いわば『出島』です。みずほのデジタルイノベーション部のメンバーは、ブルー・ラボを兼務していますが、約半分は中途採用されたテクノロジー、ビジネス開発などの専門家です。出資企業等、外部から多くのスペシャリストを受け入れており、トップも、みずほでフィンテックを専門に担当する常務です。社長のOKが出れば、みずほでの採用如何に拘らず、素早く意思決定できる仕組みです」

みずほは、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の3行が経営統合して設立されたグループだ。旧行同士の対立が続き、たすき掛け人事の慣行からも、なかなか脱しきれず、そのことによる意思決定の遅れが他のメガバンクに利益面で引き離される要因になったとの指摘も多い。それだけに、従来の銀行の意思決定の慣行を打ち破りデジタル時代に対応できる組織づくりを目指したのだろう。

またみずほは、ソフトバンクと提携して、「Jスコア」を設立し、中国の芝麻信用とよく似たサービスを開始した。顧客が自ら年収や勤続年数等を入力し、みずほやソフトバンクとの取引情報を提供することも可能で、千点満点のスコアが示される仕組みだが、「個人情報に敏感な日本で広がるか」という疑問をよそに利用者は順調に増加している。

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