藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

機能不全。

中国が貯めた巨額の資金で、周辺国にインフラ投資を加速しているという。
アジアのノンバンクみたいな感じらしい。
いつの時代にも「貸す側と借りる側」では与信と利率が問題になるがそれがどうも危なっかしいという記事だ。

それにしてもこうした「国対国」の投融資とか、G7・G20などの「国別サークル」のやり取りを聞いていると、どうも時代遅れになっている気がする。
金融機関や企業が「国を跨いで普通に活動する」現代に「分野別合意」とか「種目別調整」とか「自主規制」なんかがどれほど機能するだろうか。
政治的には、中国のように「産業振興10分野」みたいなものは必要かもしれないが、先進国はほとんどが「国営企業」でもないし「一党支配」でもない。
欧米の国々が、今さら中国化するとも思えず、「パリクラブ(主要債権国会合)」や「鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置」みたいな手立てではこれからの課題は解決しないのではないだろうか。

各国の"業界別の代表者"が実務的に話し合わないと、ただの押し問答が続くばかりだ。

中国の無責任許すG7
アジア諸国が中国からの資金の援助に頼って港湾や鉄道などの社会インフラを整える計画を次々と軌道修正している。マレーシアは5月に首相に返り咲いたマハティール氏が約28兆円を超す政府債務への危機感を訴え、中国と大型案件の見直し交渉に入ると表明した。ミャンマーは1兆円規模をかける予定だった港湾づくりの計画を再検討していると英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が6月初めに伝えた。

高利の借金を膨らませて返済に行き詰まったあげく、肝心の社会インフラそのものが中国の国有企業へと実質的に売りわたされる。スリランカの港で2017年末に起きた出来事を目の当たりにした周辺国が、自分たちの返済能力について遅ればせながら自問し始めたようにも映る。

それでも、自国の経済規模に比べた対外債務の額や中国への依存ぶりが懸念される発展途上国はいくつもある。米シンクタンクの世界開発センターは18年3月にまとめたリポートで要注意の23カ国について分析し、ジブチモルディブラオスなど8カ国を名指しして警鐘を鳴らした。

新シルクロード経済圏構想「一帯一路」の掛け声でアジアやアフリカのインフラ事業に関わり、巨大な債権国になりつつある中国。取り組みの総額は1兆ドル(約110兆円)規模ともいわれている。危なっかしさを感じさせるのは、外国へ流す資金の全容を中国自身がきちんと把握し切れていないようにみえることだ。

国際金融筋によると「中国は政府の財政部、中央銀行である人民銀行、さらに政府系金融機関が外国への資金支援に絡むが、互いの連携はあまり無い」。中国の他の機関が外国にもつ債権の詳細を知らず、貸し先の国の財務や収益力について不安を漏らす中国側の関係者もいるという。

日米欧や新興債権国が集まって、貸し先の国々の情報を交換したり問題国の債務再編を相談したりする「パリクラブ(主要債権国会合)」が中国の不透明さをただす場になってもよさそうだが、そう簡単でない。中国は一部の議論だけに参加する暫定メンバーの地位にとどまり、対外債権の状況をメンバー間で共有する正規メンバーの義務を免れているためだ。

好きなときに会議に出て他国から情報を仕入れ、自らは義務を負わない。そんな気楽な立場に身を置き続ける中国へのいら立ちがパリクラブ参加者に募る。そして、中国の途上国向け支援の巨額ぶりとずさんさがわかるほど他の債権国の不満に拍車がかかる。

債権大国の責任の一歩として中国にパリクラブの正規メンバーになるよう促していくことは国際社会の当然の役割だろう。5月末〜6月上旬に日米欧の主要7カ国(G7)がカナダで相次いで開いた財務相中央銀行総裁会議と首脳会議(シャルルボワ・サミット)は、タイミングと顔ぶれの両面で中国にメッセージを発する絶好の機会だと見込まれた。

債務問題がつきまとう新興国も顔を出す20カ国・地域(G20)に比べて、伝統的な債権国だけが集まるG7はこの手のテーマを正面から扱いやすいはず。会議前の仕込みの段階である程度までは事務方の調整が進んでいた。

ところが、米国が鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置を欧州やカナダにも当てはめると表明したのを発端に、G7会議が内輪の応酬に明け暮れたのは周知の通り。サミットの首脳宣言には「より多くの新興債権国のパリクラブ加盟に向けた作業を支持する」と事務方の下交渉を反映した文言が盛り込まれたが、早退したトランプ米大統領が首脳宣言を承認しないと言い出した。パリクラブへの正規加盟を求めるG7の圧力など中国が感じ取ったわけがない。

国際社会と中国の神経戦という観点で、今回と似た構図だったのが16年初めのG20財務相会議。その直前、中国をはじめとする新興国からの資本流出が懸念されて、世界の金融マーケットが動揺した。中国は「厳しい規制は不要」と表向きには訴えていたものの、G20会議が打ち出した合意に促される形で資本規制へ動き、金融マーケットの動揺も収まった。

そのときの合意の舞台はG20会議だが、当時G7議長国として関係国の調整をリードしたのは中国経済との関係が深い日本だった。資本規制にやや消極的だった米国との擦り合わせも日本が請け負い、国際社会の総意という中国への外圧を演出していった。中国はG20会議で規制に動くきっかけを得た格好になり、日本政府関係者が「中国からも感謝された」と振り返るのを聞いたことがある。

膨らむ対外債権にまつわる不安が中国内部にも芽生え始めているとしたら、いまの中国は2年前と通じる面がある。だが、米国は中国との通商摩擦をエスカレートさせ、日本は貿易黒字が米国の標的にならないようきゅうきゅうとするばかり。中国の背を押す役者がいないのが国際社会にとっても中国にとっても不幸なのかもしれないと思う。

G7の首脳たちが通商政策で対立するさまはショッキングであり、いら立ちに包まれた異様な会議の光景に世界は目を奪われた。貿易戦争の懸念は間違いなくグローバル経済の一大事ではあるが、G7会議が混迷したあおりで向き合えなかった重いテーマもきっとたくさんある。債権大国になった中国の無責任ぶりを許しているのはそのひとつにすぎない。