藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

問題は身近に。

割と普通に「バタバタバタ…と音を立てながら」空飛ぶタクシーが行き交う時代はそう遠くなさそうだ。

根本的な課題は、ジェットエンジンと同等のパワーを常時要求される厳しい使用条件に耐えられる、高出力でしかも軽量の航空機用バッテリーを開発することだ。
具体的には、1回の充電で最大移動距離約40キロのフライトを10回まで可能で、しかも10分未満で再充電できる性能が求められる。

こうした問題が明確に見え出したら、ゴールは近い。
宇宙旅行のプラン実現よりは早く、「道路の少し上」の空間は商業利用されると思う。
管制のシステムなども程なく開発されるだろう。

「テーマが何かが分からない時期が最も辛い」というのはその通りだと思う。
「何が問題なのかが分からない」という局面が一番の勝負どころなのだ。

これからも「そういうテーマ」を相手にしていきたいと思う。

都会の空を「空飛ぶタクシー」が行き交う日は近い

<ウーバーが空中送迎サービスの試験運用を20年に始めると発表――>
15年7月10日、流線形の小さな飛行機がフランスから英仏海峡を越え、イギリスに飛んだ。見た目は普通のジェット機だが、搭載した2基のエンジンはほとんど騒音を出さない。

外国人旅行者を魅了する世界最高の航空会社は...

この飛行は106年前のもの――1909年7月のルイ・ブレリオによる初の英仏海峡横断飛行――と同じくらい重要になる可能性がある。小型飛行機はE-Fanと呼ばれるエアバスの試作機。エンジンの動力は全てバッテリーから供給されていた。

航空業界は今、ジェットエンジンから電動エンジンに主役が変わる新時代の到来を迎えている。国際線などの主要な航空路線はともかく、都市交通や都市間輸送は劇的に変わりそうだ。

大都市の大通りは交通渋滞が恒常化しているが、そのすぐ上の空間は大抵すいている。ここに自動車とほぼ同サイズの乗り物を飛ばしたら?

そんなアイデアを提唱しているのが、配車サービスの分野で既成概念を打破した・テクノロジーズだ。都市部の地面から1000〜2000フィート(305〜610メートル)の空間は、いずれ数百万人に利用されるスペースになると、同社は考えている。

ウーバーは今年5月、「空飛ぶタクシー」による空中送迎サービスの計画を世界に向けて発表した。試験飛行は既に始まっており、この夢のカギを握るのが電動航空機だ。例えばドイツの新興企業リリウムは、スカイプの共同創業者ニクラス・センストロムなどの民間ベンチャーグループから、1億ドル以上の資金を調達している。

リリウムの試作機を含め、開発中の電動航空機はeVTOL(電動垂直離着陸)と呼ばれる技術を使用している。

ヘリコプターのように垂直離陸が可能で、その後は従来の小型飛行機のように高速で水平飛行する。

試験飛行中のリリウムの試作機は無人だが、完成形の航空機にはパイロットが搭乗する。最終的にはタクシーと同じくらいの運賃で「誰でもどこでもいつでも」利用可能になるという。例えば、4人の乗客をロンドンからパリまで1時間で運べるそうだ。

ウーバーは25年までに、世界でeVTOL機のネットワークを構築することを目指す。最初の試験サービスは、テキサス州ダラス・フォートワースとロサンゼルスで20年に実施予定。専用の発着場「スカイポート」を各地に設置し、乗客の乗り降りに使うという。

根本的な課題は、ジェットエンジンと同等のパワーを常時要求される厳しい使用条件に耐えられる、高出力でしかも軽量の航空機用バッテリーを開発することだ。具体的には、1回の充電で最大移動距離約40キロのフライトを10回まで可能で、しかも10分未満で再充電できる性能が求められる。

だが真の問題は、都市の低空域が過密状態になった場合、果たして安全に管理できるかどうかだ。ウーバーの空飛ぶタクシーはヘリコプター(緊急搬送用ヘリも含む)や、アマゾン・ドットコムなどが使用予定の配達用ドローンと、この空域を共用することになる。

ウーバーはこの問題を解決するため、NASAと提携して(AI)を使用した新しい航空管制技術の開発に取り組んでいる。この新システムでは、人間ではなくロボットによる航空管制が想定されており、無人自動運転車と同じ認識技術が使用されるという。
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車で11時間の移動を2時間に
一方、地域航空での使用が想定される新世代の電動小型コミューター機(Eコミューター)は、都市低空域の管制問題とは無縁だ。これらの電動航空機は既存の空港と、いま日常的に使われている巡航高度の空域を利用することになる。

想定されるライバルは、渋滞する高速道路だ。Eコミューターは最大約1100キロのルートを時速550キロ前後で飛行する性能を持ち、車で11時間かかる移動を約2時間に短縮できる。

Eコミューターの1号機は、米新興企業ズーナム・エアロの手で開発が進められている。最初のモデルは12人までの乗客を運べるという。エンジンは電力だが、通常のジェット燃料を使うバックアップ用の小さな発電機を備え、バッテリーをフル充電状態に保つ。

これでも燃料使用効率はジェットエンジンより50%ほど高い。加えて排気ガスはゼロで、騒音もほとんどない。もっと強力なエンジンが開発できれば、将来は今よりずっと大きな電動航空機が登場するはずだ。

ズーナムは既にボーイングと米格安航空会社ジェットブルー・エアウェイズの出資と協力を取り付けた。ボーイングはズーナムとの協業を通じ、電動エンジン技術の強化を図っている。ジェットブルーにはEコミューターを使用した短距離都市間ネットワークを新たに構築し、もっと距離の長い国内・国際線の既存ネットワークと連結する構想がある。

電動エンジンはコスト面のメリットも大きい。ジェット燃料の座席当たり平均コストは6.9セント/キロ。ズーナムのEコミューターなら、この費用を5セントに減らせるという。

ズーナムは来年中の初フライトと、22年の商用飛行開始を目指している。

一方、エアバスのE-Fanは既に試作機としての役目を終えて引退した。次のステップは、ズーナムより大きい座席数100のハイブリッド機の開発だ。エンジンはロールスロイス社製で、現行の電動エンジンの8倍の出力があるという。

E-Fanの機体は博物館行きとなりそうだ。いずれは航空史を飾る重要な飛行機として、ライト兄弟のフライヤー号や初の商用ジェット機と並び称される日が来る可能性は十分にある。

<本誌2018年10月02日号「特集:エアライン大革命」より転載>