*[ウェブ進化論]オープン化の幕開け。
i-Pod、i-Phone、i-Padでアップルからは三盾を食らわされたような日本の通信家電。
そんなソニーの巻き返しなるか。
まるでライブ会場の真ん中にいるみたい――。ソニーはボーカルや楽器などの音源に位置情報を与えることで、聴いている人を包み込むような音を届ける技術を開発した。
聞く音それぞれに「位置情報を与える」という概念は、これまでの「チャンネル」という発想とはかなり違う。
「生の位置情報」が再現できるとしたら、いくらの多チャンネル化よりも精度は高いに違いない。
外耳の形や頭の形によって音の届き方は人によって異なる。
ということで、人の耳の形にあったヘッドホンが提供されるという。
そしてそのあとのこと。
いよいよ家電業界もオープンイノベーション。
コンピュータのOS市場ではもう常識だが、製造やソフトウェアの世界ではまだまだだ。
規格の統一、などだけではなく「基本技術のオープン化」が進めばさらに画期的な製品が開発されるに違いない。
何よりベンチャーの発想が生かされるようになれば、オープン化の真骨頂はまだまだこれからではないだろうか。
ソニー、ヘッドホンで360度音楽 あなたの耳専用
2019年2月15日 21:30
まるでライブ会場の真ん中にいるみたい――。ソニーはボーカルや楽器などの音源に位置情報を与えることで、聴いている人を包み込むような音を届ける技術を開発した。一人ひとりの頭や耳の形に合わせて音を調整し、ヘッドホンでも360度からの音楽を体験できる。定額配信サービスなどを活用し、スマートフォン(スマホ)で音楽を楽しむ現代に合った技術として普及を目指す。
ソフトは直感的に操作できるよう工夫されている。音が発する位置を設定すると、画面に表示される音を示す球状のアイコンも合わせて動く。中心にいる人からみた距離や位置をわかりやすく示し、簡単に位置情報や音量を調整できる。複数のスピーカーを使ってサラウンドで音楽を楽しむ愛好者は多いが、ソニーのターゲットはそういう人たちだけではない。ソニービデオ&サウンドプロダクツの岡崎真治担当部長は「新しい音楽体験をスマホで実現する」と強調する。そのために、ヘッドホンでスピーカーと同じ体験を実現する。
頭と耳の形を撮影
肝となるのが人間の頭や耳の形の解析だ。外耳の形や頭の形によって音の届き方は人によって異なる。同じ人の左右でも違う。ソニーは画像から音の届き方を分析する技術を開発中。アルゴリズムを構築し、その耳を持つ聴取者に合った最適な音声処理を施す。つまり、この技術を使ってヘッドホンから流れる音楽は、その人だけにカスタマイズした聞こえ方をするわけだ。専用のヘッドホンなども必要ない。利用者はスマホで撮影した自分の頭や耳の写真を送るだけでいい。
事業化に進み出したのは3年ほど前から。ライブなどリアルな体験が盛り上がりを見せるなか、その感動や喜びをどう届けるか。そこで注目したのが10年近く温めてきた知念氏の「音場」の技術だった。
ソニーはこの技術を「自社で囲い込むつもりはない」(ソニービデオ&サウンドプロダクツの片岡大担当部長)。レコード会社などに広くソフトウエアを提供。制作した対応コンテンツは既存の音楽配信サービスで提供する。他社も自由に使えるプラットフォームとしていきたい考え。本格的なサービスの開始時期は未定だが、そう遠くない時期に動き出すとみられる。片岡氏は「ブランドイメージが高まれば、ヘッドホン販売にも好影響がでてくる」と期待する。
(企業報道部 岩戸寿)
[日経産業新聞 2018年2月15日付]
本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。