藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ヤンキーの再生。

*[次の世代に]自分の声を聞く。

ヤンキーが象徴するアウトサイダーを集めて就業を斡旋している会社があるという。

過去は変えられないけど、未来は変えられる――。

全くその通り。

けれど一体「いつ自分を変えればいいのか」が分からない。

今の大学のシステムとか、就職の手はずに乗っていると、そのまま就職することになる。

そして働きながら「自分はこの道でいいのだろうか」と思いながら。

そのまま三十年も経てば定年が見えてくるわけだ。

時間はとても貴重なものだ。

現在、20代後半の年齢層にいる人々のうち、最終学歴が大卒・大学院卒なのは48%と半分を切る。

 多くの二十代は大卒と思いきや、半分以下だという。

それだけもう「多様性の時代」は始まっているのだろう。

自分の知る限りでも、大学を出たからといって「納得のない就職はしない」という若者は非常に多い。

もう昔のように「流された就職」をよしとする時代ではなくなった。

儲かろうが、苦労しようが、自分で納得しながら生きていく、ということができる時代になってきた。

若者にとっては「本当にやりたいこと」を探しながら働ける時代になってきている。

白けずに「直(ひた)向きにやりたいこと」を探してもらいたい。

元ギャング、サイバーエージェントへ ヤンキー再生道場 ヤンキー再生道場(1)

地方の不良少年・少女や不登校だった若者たちを集めて企業が欲しがる人材に育てあげるスタートアップがある。2015年に創業したハッシャダイ(東京・渋谷)だ。再教育プログラム「ヤンキーインターン」の卒業生はすでに300を超え、サイバーエージェントソフトバンクなどで実戦力として活躍する。名だたる企業に引く手あまたの、知られざる「ヤンキー再生道場」の実態を紹介しよう。
■「変わらないかん」
2017年10月末の朝、地元の福岡市を後にした後藤竜之介(20、当時)は渋谷駅前の雑踏をかき分けるように歩き出した。初めての東京。待ち合わせに指定されたハチ公の銅像にたどりつくまでに何人もの人に道をたずねた。不安はなかった。強い思いを胸に故郷を離れたからだ。「変わりたい。いや、変わらないかん」
後藤を待っていたのはハッシャダイの「メンター」を名乗る男だった。オフィスに連れて行かれるとそのまま授業が始まった。ハッシャダイが提供する「ヤンキーインターン」だ。「ヤンキーインターン」は比喩ではなく、正式名称だ。
■参加費は無料
資格は18歳から24歳の非・大卒者。非行に走った少年少女の中で、人生を変えたいと思う者が集う。研修期間は営業が6カ月、ハッカーは1カ月だ。参加費は無料で、1日1000円の食費を提供する。ハッシャダイが用意するシェアハウスで共同生活を送って再生の道をともにする。
「ヤンキー」とはもともと米国の南北戦争当時、北軍兵士への蔑称として生まれた言葉だ。日本で不良をさす言葉として使われ始めたのは1970~80年代で、大阪が発祥と言われる。歌手、嘉門タツオの「ヤンキーの兄ちゃんの歌」がヒットして全国に広まったといわれる。
■福岡の有力ギャング集団
後藤もヤンキーだった。そろいの派手な色の服装で統一する、いわゆる「カラーギャング」の一員。福岡には4つの有力グループがあったが、後藤が属したのはレッドのグループ。他の色を町で見かければすぐにケンカが始まる。どちらかが立ち上がれなくなるまで殴り合う。繁華街に近い公園で30人対30人ほどのケンカになったこともある。後藤は凶器を使わず素手に徹したが、ケンカ相手のバイクにはねられて骨折したこともあった。
卒業して父親が経営する会社や、地元の営業会社で働き始めた。だが、すぐに思い始めた。「このままでいいのか」
何かしたいけど、何をしていいのか分からない。モヤモヤが募っていた時に耳にしたのがヤンキーインターンだった。
■サイバー子会社でマーケティング
その特徴は徹底した実践主義だ。座学はそこそこにチームに分かれて研修を受け、通信機器の訪問営業などをする。アポなしの飛び込み営業だ。成績に応じて給与も支払われる。一日に回るのは一人800軒。夜は各グループで反省会。シェアハウスに帰ると営業のロールプレイングが始まる。眠りにつくのはいつも深夜だ。
「みんなで料理を作ったり洗濯したり、たまに夜更かししたり」。高校時代とは全く雰囲気の違う仲間ができた。
それから2年――。後藤は今、サイバーエージェントの子会社で動画広告を運営するサイバーブル(東京・渋谷)で働いている。ベージュのスーツに、はやりの銀フレームの丸い眼鏡。ギャング時代の面影は全くない。仕事は動画広告のマーケティング。広告の効果があったかどうか、毎日報告される数字を見てSNSに流す広告の配信量やタイミングを決めていく。
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■大卒より熱量
「最初はどんな特攻服のヤンキーが来るのかと思いましたよ」。採用を決めたサイバーブル社長の中田大樹(30)はこう振り返る。ハッシャダイ主催の企業説明会で後藤から「なんとかはい上がりたいんです」と詰め寄られた。「こいつは熱量が違う」と思い、面接をへて採用が決まった。中田は「大卒だけを採用基準にしていると、優秀な人材を見つけるチャンスを失うことになる」と言う。
ソフトバンクの採用・人材開発統括部長の源田泰之(45)もハッシャダイに期待する一人だ。「今後、(インターン生達の)スキルを数値などで可視化できるようになれば、他の企業も受け入れやすくなるだろう」と言う。
ヤンキーインターンの卒業生は300人を超えた。サイバーやソフトバンクなどの大企業のほか、スタートアップにも多くの人材を輩出し、コンサルタントに転じた者もいる。
■募集はツイッター
ハッシャダイを立ち上げた社長の久世大亮さん
ハッシャダイを創業したのは、社長の久世大亮(25)だ。「中卒、高卒にはどうしてもネガティブなイメージがある。就職と進学以外の第3の選択肢を提供したい」と話す。
現在の年間売上高は3~4億円。インターン生が企業から受託する仕事や、卒業後の企業への紹介手数料が主な収益源だ。「全然もうかりませんよ」(久世)。実際、収支はほぼトントンだという。
そのため広告はほとんどなし。インターン生の募集はほぼツィッターなどSNS(交流サイト)経由だ。それを一手に引き受けていたのが最高執行責任者(COO)の橋本茂人(27)だ。SNSアカウントを50個以上操る橋本は日々、10代の女子高生やヤンキーたちのつぶやきを研究し情報発信する。今では毎月10人ほどがヤンキーインターンの門をたたく。
■デジタル人材、今年から減少へ
日本のIT業界は実は深刻な人手不足に陥っている。みずほ情報総研の調べでは2019年にも日本のデジタル人材は減少に転じる見通しだ。今後10年で79万人が不足するとの試算もある。
一方で、非大卒者たちがIT業界に就職する道は開かれていない。高校には就職先は生徒1人につき学校側が紹介する1社だけという風習が残る。選択肢が少ないためミスマッチも多く、高卒者の4割が3年以内に離職する。IT企業の多くは東京にあるため、地方の若者の選択肢にはなりにくいのが現状だ。
新潟県でキャバクラに勤めていたJURIさん
久世たちはそんなIT業界の窮状を逆手に取った。2018年、営業の研修が主体だったヤンキーインターンにデジタル人材育成コースの「ヤンキーハッカー」を新設した。
■キャバクラからハッカー
新潟県燕三条駅前の雑居ビルに入るキャバクラで働いていたJURI(22)は、9人いたハッカー第1期生のひとりだ。
夜9時から午前4時までキャバクラ嬢として働いた。仕事が嫌いだったわけではない。店はアットホームで居心地が良かった。「緑茶ハイ一杯くださーい!」。酒は強くないJURIを気づかい、店員は内緒でアルコール抜きの冷茶を出してくれた。
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「このままでも楽しい。でも、ずるずるとキャバ嬢を続けていいのだろうか」。そう考えるようになったJURIがツイッターで見つけたのがヤンキーインターンだった。
連絡を取ってみるとデジタル人材の養成コースが始まるという。でも、いかにも怪しいネーミングだ。「私、ヘタしたら売り飛ばされるかも……」。半ば本気でそう思ったと言うが、人生を変えたいという思いが、不安を上回った。キャバクラを飛び出し、ハッシャダイが運営する女性専用のシェアハウスに入った。
■官公庁のシステム支える
朝起きるとハッシャダイのメンターにLINEで連絡。すると、インターネットで公開されている教材をこなすよう指示が来る。分からないことがあればメンバーに質問する。
飛び込み営業で契約を取って回り、利益を生みだす営業コースとは違い、ハッカーコースは学校的な色彩が強い。ただ、企業側からのニーズは強い。
JURIは今、都内の中堅IT会社で働く。官公庁や大手機器メーカーのシステムを支える仕事だ。時には客先に常駐し、トラブルが起きれば昼夜問わずかかりっきりになる。今一番楽しいと思う瞬間は、自分で書いたプログラムが動いた時だ。「よっしゃー、すっきりって感じ!」。それは夜の世界にはなかった満足感なのだという。
■共同生活の実態
ヤンキーインターンの最大の特徴が共同生活だ。都内に3カ所あるシェアハウスのうち東京・狛江のシェアハウスは男性専用。今も7人のインターン生がいる。
夜11時。スーツを着たインターン生が続々と帰宅する。半年以上放置された炊飯器からは異臭が漂ってくる。「忙しくて料理をするヒマはないんですよね」。ここに来て8カ月の伊藤光隆(22)はこう話す。和歌山県の高校を出た伊藤は大工を辞めてヤンキーインターンに参加した。スタートアップへの就職も決まり、いまはインターン生を指導する立場だ。
毎日の営業成績は絶対だという。「契約が取れないからと言って怒られるわけではない。ただ、ここではどんなに悪ぶっていても契約が取れない奴は『ダセぇ』になるんですよ」。伊藤もシャワーを浴びながら毎日1時間、営業文句の練習を繰り返したという。
同じ屋根の下で生まれる強い絆が脱落を防ぐ。地元のコミュニティーから強制的に引き離し、再び「ワル仲間」に戻ることを防ぐ狙いもある。
■忘れられた「多数派」
日本社会に広がる深刻な人手不足。厚生労働省の就業構造基本調査によれば、現在、20代後半の年齢層にいる人々のうち、最終学歴が大卒・大学院卒なのは48%と半分を切る。
経済産業省出身で社団法人スクール・トゥ・ワークの代表理事を務める古屋星斗(32)は「現役世代の過半を占める非大卒者の力をどう生かすかは、日本の経済界全体が直面すべき課題だ」と指摘する。
女性の社会進出、外国人材の活用――。さまざまな対策がとられてきた中で、非大卒という光が当たりにくい「多数派」の存在は忘れられがちだった。
■創業メンバー5人の物語
ハッシャダイの創業メンバー5人がそこに目をつけたのは、彼ら自身がヤンキーだったからだ。
中心人物の久世は高校時代はヤンキー仲間と毎晩のように遊び歩いた。だが地元から大阪に出ると、努力次第で結果が出る携帯販売の面白さにのめり込んだ。
地元の京都・山科に帰るとヤンキー仲間4人を強引に一軒家に住まわせた。「おまえらを変えたる」。
この5人が東京に出てきて立ち上げたのがハッシャダイだ。自分たちと同じようにヤンキーたちを再生し、企業にも貢献できるビジネスにできるはずだ。その発想がヤンキーインターンを生んだ。
過去は変えられないけど、未来は変えられる――。そう信じる若者たちが今も、ちょっとむさ苦しいシェアハウスの部屋から明日へと飛び出す日を待ちわびている。
=敬称略、つづく
(大西綾、杉本貴司)