藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

遺伝子治療の先。

*[次の世代に]そのまた先。
日経より。
がんが「がん遺伝子パネル検査」によって治るかもしれない。
技術のレベルが上がるにつれ、指数的に使える分野が増えていく。
技術のすごい一面だ。
>>がんの引き金は遺伝子変異。遺伝子が傷付いて細胞が激しく増殖し、免疫システムによる駆除が追い付かなくなることで発症する。
そこで、異常増殖の原因となった遺伝子変異を探して対応する薬を投与すれば、効果的にがんを抑えられる。
 
つまり「遺伝子変異」をさせなくする。
がんを発生させない。
けれど人類は、というか生物はこの「遺伝子変異」で進化してきたのだとも聞く。
変化に強いものこそが生き残ってきた、と。
 
がんという遺伝子のエラーを、どこまで防げば人は長生きするのか。
防ぐ行為は果たして生物としての人のためになっているのだろうか。
まだまだ技術の道のりは、先が長いに違いない。
 
遺伝子でわかる、がんの「最適解」 検査機関マップ
「がんゲノム医療」が動き始めた。個人の遺伝情報を基に最適な治療法や薬を決定するテーラーメード型医療だ。その中核となる「がん遺伝子パネル検査」の保険診療が今年からスタート。保険適用を受けない自由診療も含め、様々な医療機関や検査機器メーカーらが陣営を形成している。国内で年間100万人発生するがん患者にとっての道しるべとなるか。
「あなたのがんに効果が期待できる薬がありました」。東京都内で自営業を営む小林和明さん(67)は、通院先の大学病院の医師からこう告げられた。小林さんは肺がんを患っている。今回の受診は約1カ月前に受けたパネル検査の結果を受けたものだ。
医師が提案した薬は、中外製薬のアレセンサだった。「ALK」という遺伝子異常がある患者に効く。医師から「従来の抗がん剤に比べて副作用が少ない」といった説明を受けて、小林さんは治療を受け入れることを決断した。「確実に効く保証はないらしい。でも副作用が少ないのはありがたい」と話す。パネル検査の結果はアレセンサに続く2番手、3番手の薬を選ぶ際にも活用される見込みだ。
がんの引き金は遺伝子変異。遺伝子が傷付いて細胞が激しく増殖し、免疫システムによる駆除が追い付かなくなることで発症する。そこで、異常増殖の原因となった遺伝子変異を探して対応する薬を投与すれば、効果的にがんを抑えられる。その実現のために不可欠な技術がパネル検査。米国では広く活用されている手法だ。
日本ではこれまで保険診療の枠組みが決まっていなかったため、一般には普及していなかった。しかし2種類のパネル検査が昨年末に厚生労働省の承認を受けたことで、潮目が変わった。2019年度前半には2種類の保険診療が始まり、がんゲノム医療が国内でも本格的に立ち上がる。
1つは国立がん研究センターNCC)が開発し、シスメックスが取り扱う「NCCオンコパネル」。もう1つはスイスのロシュ子会社の米ファウンデーション・メディシンが開発し、中外製薬が取り扱う「ファウンデーション・ワン」だ。患者はこれらのパネル検査を、全国の中核拠点病院などで保険診療で受けられるようになる。
実際の流れはこうだ。パネル検査のサービス事業者は患者の検体を受け取り、米イルミナなどが開発した「シーケンサー」と呼ぶ分析機器で遺伝情報のデータを読み取る。そして米IBM三井情報といった事業者が提供する分析ツールを活用し、データから患者の遺伝子変異の情報などを抽出。学術論文などと照合してリポートを作成する。その結果を基に、医師が治療方針を決める。
パネル検査の保険診療で患者が負担する費用は未定だが、ファウンデーション・ワンは既に米国で3500ドル(約40万円)で実施されている。それに近い値段が設定された場合、患者の「3割負担」であれば費用は数万円以上だ。シスメックスの家次恒・会長兼社長は「いずれ安価にできるだろうが、今は先行投資がかさんでいる」と話す。
課題はある。保険診療を受けるには条件をクリアしなければならない。「標準治療を一通り受けたこと」「日常生活に支障のない体力が残っていること」などだ。保険財政の圧迫を考慮した結果だが、対象は全がん患者の1%程度にまで絞られてしまう。残り99%のがん患者は保険診療でパネル検査はできない。
また、検査終了までの期間は一般に4~6週間ともいわれるが、標準治療を一通り受けた患者にとっては、その日数は重みを持つ。
そこで注目されるのが、保険適用のない自由診療の枠組みだ。一部の病院では15年ごろから先進医療の一環として実施されていたが、保険診療の整備に合わせ、自由診療によるパネル検査のサービスも広がってきた。
自由診療によるがん遺伝パネル検査の特徴は、遺伝子数や費用、がんの種類、検査期間などの豊富なバリエーションだ。遺伝子数が多いほど情報量は増えるが、自治医科大学の萩原弘一教授は「薬の選択に直結するのは数十種程度」と指摘する。「研究に役立つ貴重な情報だが、患者の利益にすぐに結びつかない」ためだ。自治医大が開発したパネル検査は遺伝子の数を7つに絞った。がんの種類も肺がんに特化しており、最速1週間で検査する。費用も研究名目で大学研究費で賄う。
慶応義塾大学病院などが提供するパネル検査も、研究目的でのデータ活用に患者が同意すれば、無料で実施する。静岡がんセンターなどが7月以降に提供予定のパネル検査は、がんの種類を大腸がん、肺がん、乳がんの3種に特化。価格を20万円に抑えた。大阪大学タカラバイオ、米サーモフィッシャー・サイエンティフィックが参画する「オンコマイン」は米国で実績がある。現在は先進医療で実施しているが、保険診療の適用を目指す。
パネル検査により、患者が自分に合った薬や治療法を選ぶ時代が到来する。パネル検査を受けたからといって、最適な治療法が必ず見つかる訳ではないが、選択肢の数だけ、患者の進む道が広がる。
がんゲノム医療の裾野の広がりを受け、分析やITなど企業を巻き込んだ陣営づくりもさらに熱を帯びそうだ。
がん遺伝子パネル検査 がん患者の遺伝情報から最適な薬や治療薬を選ぶ「がんゲノム医療」で使われる。がん組織などから検体を採取して分析する。「パネル」とは複数の遺伝子を組み合わせたセットを指す。
 パネル検査を実際に手掛けるサービス事業者は複数あり、このうち2陣営の保険診療適用が19年度前半に決まる見通し。また医療機関を中心に、自由診療の枠組みでパネル検査を手掛ける動きも広がっている。
(野村和博)
日経産業新聞 2019年3月29日付]
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