藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

車の着崩し。

*[次の世代に]独自の価値観で
ただ高価な車ではなく「着こなすクルマ」が人気だという。
戦後75年。
ひたすら高級車志向が自分たちの若い頃にもあった。
が、それが確かになくなっていると感じる。
もう「そういうこと」がかっこいいことではなくなっているのだ。
ある意味成熟していると思う。
 
例えばクルマなら、本当に気取らず「楽しめる付き合い方」がようやく根付き始めたのだろう。
同様に生活のスタイルでも「消費していることそのもの」がかっこいい時代が去って行った。

 そんな過渡期が「平成」という時代だったのかもしれない。(後から思えば)

今一度、自分が「本当にしたいこと」を整理し、考え直す時代に入っているような感じがする。
楽しそうだ。
今の二十代に接すると、やりたいこと、大事なことの感覚がまるで違う。
「見栄」がまるでないのだ。
 
それに気づいてしまえば、もう若者のものである。
老人たちには縛られずに「自分たちのこれから」を真剣に考えればいい。
何を言っても史上もっとも豊かな時代だ。
悲観することなど何もない。
 
高級車、おしゃれに着崩しチープアップ(日経MJ
2019年7月14日 4:30
クルマ離れ世代とされてきた30~40歳代の消費者が高級輸入車のハンドルを握っている。中古車に商用車風のホイールやゴツゴツとしたタイヤを装着するなどドレスダウンし、高級車とのギャップを楽しむ「チープアップ」が人気だ。ファッションと同様、あえて着崩して「ギラギラ感」を抑え、気取らずに乗れる。キャンプブームでクルマにこだわる動きも追い風となっている。
ドレスダウンさせたアウディA6(左)とフォルクスワーゲントゥアレグ(大阪市大正区のゼロカートラブル)
ハイブランド感ないが、こなれたオシャレな印象
「汚れていてもカワイイ。サーフィンに行くと駐車場でもウケがイイんですよ」。兵庫県伊丹市に住む沢田健太さん(30)の愛車は1999年式のアウディA6。新車で500万~600万円程度だが、外観はちょっと違う。
商用車のようにバンパーやモールは樹脂風に黒く、武骨なスチールホイールを装着する。高級輸入車がまとうハイブランド感はないが、こなれたオシャレな印象を醸し出す。沢田さんは「今後のクルマ選びでもチープアップは選択肢に入る」。
高級輸入車をどこか安っぽいスタイルにする「チープアップ」は大阪市の自動車販売店、ゼロカートラブルの三上直記代表の造語だ。元アパレル店の経営者で「古着のように、高級車を鈍臭い印象にして気軽に楽しむ」とのコンセプトで2010年ごろから始めた。欧州で見かけた「メルセデス・ベンツにルーフキャリアを付けて乗り回す、現地の生活感のある使い方」が原点だ。
アウトドア向けのタイヤに交換する(東京都葛飾区の「カードローブ!」)
実は田島氏もアパレル出身。ビームスの販売員だった。「日々ファッションセンスの高い人々と接していたが、クルマに気を配らない人が多かった」。自身ではホイールやバンパーに色を塗るなどして自分のスタイルに合うよう「着こなし」ており、こうした提案をする自動車販売店がないと、12年に起業した。
田島氏は高級感が強いメルセデス・ベンツでも、ためらいなくチープアップする。スチールホイールを装着、タイヤも泥道をこなすゴツゴツしたものにもする。京都から駆けつける顧客もいる。「車をカスタムする店だと勘違いされるが、基本は自動車販売店」とブームに苦笑いする。
東京、大阪の両店でチープアップを求める消費者の大半が30~40歳代だ。平均的な所得の人が多く、ファッション業界や美容師といった職業が目立つ。「不人気車種なら軽自動車の新車よりも手ごろ。それでいてデザインにヌケ感がある」(田島氏)。高収入でもわざわざチープアップを希望する顧客もいるという。
中古車雑誌「カーセンサー」編集長の西村泰宏氏は「この世代はメルカリなどで中古品に対する抵抗感がない」と分析。そのうえで「ファッションで1980~90年代のスタイルが流行しているように、クルマでも古っぽいスタイルが人気になっている」と話す。
さらに追い風となっているのがキャンプブームだ。おしゃれなキャンプサイトや道具にこだわり、「他人から見られる」ことやインスタ映えを意識する人が増えている。同様に、クルマも見せる道具としての位置づけになっているようだ。兵庫県の男性会社員(35)は「どんなにオシャレなグッズをそろえたサイトでも、クルマが生活感ありすぎると雰囲気が台無し」とボルボXC70にチープアップを施す。
実際、東西の両店ではアウトドア雑誌で特集が組まれた17年ごろから急激に受注が増えたという。カードローブ!では荷物の積載量を増やせるルーフラックを早くからチープアップのアイテムとして活用していた。田島氏は「キャンプ愛好者がインスタグラムでルーフラックを検索し、チープアップを知るきっかけになっている」と話す。
記者(35)はクルマ離れ世代だが、クルマは大好き。話が通じる友人が長くいなかったが、最近周囲にクルマ好きが増えてきた。ある主婦(36)は「デザインはカクカクした方が格好いい。今欲しいのはジープのチェロキー」と話す。自動車メーカーさん、クルマ離れ世代は年を重ねて戻ってきてますよ。
若者のクルマ離れというのは、本当なのか。中古車雑誌「カーセンサー」の西村泰宏編集長に現状、若者をひき付けるクルマの条件などを聞いた。
カーセンサー編集長 西村泰宏氏
■「完璧なモノより、不便さが愛着生む」
――新車の販売台数は緩やかに増えています。中古車はいかがですか。
「2018年の市場規模は3兆4396億円と17年比4千億円増えました。機能の充実で新車価格が上昇する一方、中古車でも十分に安全性能を備えたものが多い。予算と性能の両面から中古車を選んでいるようです。今はリユースの時代、中古車への抵抗がなくなっています」
――若者のクルマ離れって、本当ですか。
「クルマを嫌いになったわけではありません。『好き』の尺度が変わっただけ。昔は皆が憧れるクルマを誰もが欲しい、という大きな山がありました。次にプリウスのような環境に配慮したクルマを求める山。今後はクルマへ求めることが多様化し、小さな山々が増えていくでしょう。その1つがチープアップです」
「バブル期に自動車雑誌を眺めていた人の熱量と、今、インスタグラムのハッシュタグにタッチする愛好者の熱量は変わらない。ただ、かつてのような大きな山は現れないでしょう」
――新車には乗りたいクルマがないという声も多いです。
「空力や安全性、燃費を追究すると、どうしてもツルッとしたデザインになる。コスト削減のためにプラットホーム(車台)は同じ。だから新車は個性を打ち出しにくくなっています。デザインで個性を出すには、代わりに何かを捨てない限り難しいでしょう」
「昔のクルマをカスタムして楽しむ動きは、今のクルマにはない魅力があります。ボルボの『240』は新車にはまずないカクカクとしたデザインで、積載量が多く頑丈。トヨタ自動車の『ランドクルーザー』の古いモデルも人気が高い。日産自動車『キューブ』やスズキ『エブリイワゴン』は色を塗り替えたりタイヤを替えたりして楽しまれています」
――魅力あるクルマの条件は何でしょうか。
「何百回と消費者にインタビューして気づいたのが、人は完璧なモノには愛着を持ちにくいということ。不便が愛情を生むんです。メーカーは何かが欠けることを恐れずに個性を出せるか。失敗を許容した挑戦ができる企業こそ勝負ができる」
「最近では三菱自動車の『eKワゴン』が好例です。車体色を2トーンカラーの指定ができるデザインが多いなか、デザイナーが色の組み合わせを指定するという、攻めた姿勢を打ち出した。売れないリスクを許容してまで消費者へ提案したことは意義深いです」
チープアップなクルマを好む若者が増えている。いまどきの若者にとってクルマの魅力とは何か。クルマ好きで知られるお笑いコンビ「ジャルジャル」の後藤淳平さんに聞いた。
お笑いコンビ「ジャルジャル」の後藤淳平さん
■「誰が乗るねん!」に乗りたい
――クルマは昔から好きだったのですか。
「それが好きではなかったんです。26歳くらいの時に東京の仕事で不満なことがあって、鬱憤を晴らしたくて新大阪駅に着いた時に『車買うぞ』と。そこで初めてジープ『パトリオット』を新車で買いました」
「今ではクルマ大好きですね。新車も中古車も全部。もっともっと知りたいし乗りたい。スタイリングや乗り味、コストパフォーマンスを総合的に考えて中古車を選びます。新車では他の国産車が見劣りするくらいマツダがカッコイイ。新型『マツダ3』もよかった」
――愛車のボルボは「240」「245」と2台乗り継いでいるそうですね。
「新車には無いスタイルです。作家さんに教えてもらい『めっちゃかっこええ!』とグッときました。カクカクしていますが、実は緩やかに丸くカーブしていて。ベージュの内装も好きです。1970年代の設計でも中身は意外と新しくて初心者にぴったり。最近やたら街で見ますね。芸人仲間や作家さんも乗っています」
――中古車は故障するイメージもあります。
「エンジンがかからなくなったことはありましたが、原因は大したことないんですよ。消耗品が寿命を迎えただけ。止まった話だけ聞くと大変そうですけど、信頼できるお店を見つけて、メンテナンスしていれば大丈夫です。維持は楽ですよ」
――旧車より新しい輸入車をドレスダウンして楽しむ人も増えてます。
「誰も見向きもしなかったクルマを安っぽくして価値を高めるってすごいですよね。ドレスダウンする前と後では印象がガラリと変わって、すごく魅力的になる。しかも50万円台なんて頑張れば買える。クルマ好きの裾野を広げると思います」
――後藤さんは35歳、クルマ離れ世代ですね。
「昔の世代を知らないですが、あまりピンとこないですね。売れてないんやろうなとは思いますけど。ただ、昔のクルマの方がキャラクターがしっかり分かれていて魅力的です。今のクルマも10年たてば魅力的に見えるようになるのかな。でもどれも(キャラが)ぼやけています。その点ではマツダはすごいですね」
「クルマ『離れ』世代と言いますが興味がないのではなく、ただ知らないだけじゃないですか。ミニバンでもいいから、クルマを知ったうえで(好きかどうか)判断してみてほしい。興味を持ったなら大いに足を踏み出してみれば、想像しているより全然楽ですよ」
――今後の新車に求めることはありますか。
「大企業ほど攻めることは難しいでしょうけど、『これ誰が乗るねん!』というクルマを出してほしい。例えばトヨタ自動車は『センチュリー』の最新型で『和』のテイストの最高級車を作りました。すごくかっこいいですよね。あのテイストで小型車を作っても面白いんじゃないかな」
「最近はギラギラした外見のクルマが多いですが、そんなデザインばかりでなくてもいいのでは。銀メッキを多用したギラギラは逆に安っぽいですから」
(宮住達朗)
[日経MJ2019年7月5日付掲載]