藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

成功はゴミの中に

*[ウェブ進化論]転移の科学。
日経より。
落谷は気づいた。がんは、自分の細胞から出るエクソソームに、転移を引き起こすマイクロRNAを入れ、血液に乗せて全身へ送っている。血液を調べればがんを検査できる――。
(中略)
治すのが難しい膵臓(すいぞう)がんも検出精度が95%を超えた。

 こういうニュースを聞くと「科学とはすごいものだ」とつい肩入れしてしまう。

一方、世界の医療全般をみると「病気か否か」「治すべきか否か」「コストは合うか」などと議論は絶えない。
「新しい病気やその原因を解明しては、治療方法を探す」という医学と「どんな生活をしてどう生き、死ぬか」という人生観の問題はせめぎ合っている。
けれど科学は進む。
科学の探求なくしては今の生活はないだろう。
軍需に使われたり、効果がなかったり、間違っていたりするけれど人の最大の能力に違いない。
どれ一つとってみても大変なテーマだと思うが「科学への憧れ」というのは未だに心の中にあるのです。
 
がんは克服できるか(3) 血液検査「ごみ」が突破口
2019年8月1日 2:00

 
落谷氏の研究が新たながん検査の道を開いた(6月、東京都内での講演)
「成果がもうすぐ世に出る」。国立がん研究センター研究所客員研究員の落谷孝広(62)は6月、シンポジウムでこう語った。血液から「早期のがん」を見つける世界初の手法が2020年にも始まる。血液から調べる検査は日本発の市場と期待される。はじまりは、ごみと言われた体内物質の評価が宝へと180度変わったことだった。
「信じられない」。落谷は2007年、英科学誌にくぎ付けになった。がん解明のヒントが書かれていたからだ。キーワードは「エクソソーム」。体内の老廃物と考えられていたが、その中に、がんの転移にかかわると落谷がにらむ物質、マイクロRNA(リボ核酸)が含まれる。論文はそう示唆していた。
落谷は気づいた。がんは、自分の細胞から出るエクソソームに、転移を引き起こすマイクロRNAを入れ、血液に乗せて全身へ送っている。血液を調べればがんを検査できる――。
「エクソソームはごみ同然」が常識のなかで、落谷は研究を転換。経済産業省に支援を申し出て、14年に企業と技術開発プロジェクトを発足させた。海外の研究動向や特許から世界の先頭にいると認められ、79億円の大型予算を得た。取り組んでみると乳がん、大腸がん、治すのが難しい膵臓(すいぞう)がんも検出精度が95%を超えた。
パラダイムシフトを起こせるかもしれない」。同センター中央病院医長、加藤健(50)は医療現場の立場から新手法に期待している。画像や組織の採取による現在の診断法は、がんがある程度大きくないと把握できない。いち早く診断できれば死亡リスクを抑えられ、国の財政を助けることにもつながる。
落谷のプロジェクトに参加していた東レは年内にも、がん検査キットを製造販売できるよう国に承認申請する。血液が1滴でもあれば分析できる。参加メンバーの東芝、アークレイ(京都市)も実用化する計画だ。「早期がんを発見する血液検査は実現していない」と加藤。日本は確かに先頭を走っている。
「深層学習で精度を高めたい」と話すのは、企業価値が10億ドル(約1千億円)を超すユニコーン、プリファード・ネットワークス(東京・千代田)社長の西川徹(36)。同社もプロジェクトに参加していた。人工知能(AI)で14種類のがんを早期発見する技術をディー・エヌ・エーと開発中だ。落谷から始まったイノベーションが、次々にかたちになろうとしている。
(敬称略)