藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

やるかやらないか

*[次の世代に]どちらで考えるか。
世の中の人は大きく二つに分かれる。
とかいうと「うるさい」「偉そうに言うな」と批判が来るがそれはともかく。
震災の復興支援についての小さな記事より。
行政の手続きが壁になって苦労したという話を聞いて、つくづく思う。
「やるのかやらないのか」をギリギリまで考えること。
「もし失敗してでもやる」というのなら、そのための方法を考える。
その失敗が許容できないのならやめる。 
事前に検討を尽くして、制約もいろいろあって、でも何とかしてやろうと考える。
頭の中が「やらないための理屈」を考えているのならそもそも、ことは進まない。
 
世の中では新しいことをしようとすると、まず協力を得られないことも多い。
リスクを考え、できない理由もいろいろ考えてから勇気を持って決断する。
何でもそんな風にさばいて行きたいものである。
 
「復興支援」かけ声の実態 
  2019年7月13日 4:30
東日本大震災の復興に向けた国の金融支援のあり方に対して怒りに震えたことがある。
富士市産業支援センター(f-Biz、エフビズ)のノウハウを震災復興に生かせないかと考え、2012年冬に仙台で出張相談会を開きました。その最中に地元の新聞記者が「被災して富士市で生活している人がいます。相談にのってくれませんか」と電話してきました。「いつでもお待ちしていますと伝えて下さい」と返事をした数日後、ご夫婦がエフビズにいらっしゃいました。

 
    堀川さん夫婦は学習塾の立ち上げについてエフビズを訪れた 
堀川文夫さんと貴子さんは福島県浪江町で学習塾を営んでいたのですが、原発事故で避難生活を余儀なくされ、縁もゆかりもない富士市で生活していました。浪江町に帰るメドが立たないので、富士市で改めて学習塾を始めようとしたところ、なかなか思うように話が進まないようでした。
中古住宅を購入して塾向けに改装しようと、生活再建ハンドブックなどを参考に復興支援に積極的な政府系を含む複数の金融機関に融資を申し入れたところ、すべて断られました。「罹災証明書がない」「現在は無職で収入がない」という理由だったそうです。
これには本当に怒りがこみ上げてきました。浪江町の自宅周辺は立ち入りが厳しく禁じられていて、罹災証明書が取れない。震災で無職になったのであって、浪江町で20年にわたる塾経営の実績があることには目もくれていません。こうして八方ふさがりになっていた時にエフビズを訪ねて来られたのでした。
落胆しているご夫婦を早く安心させたかったので、エフビズの取り組みをいち早く認めてくれた地元の富士宮信用金庫の幹部に電話で事情説明です。経営判断になるので時間がかかると思ったのですが、たった1週間で融資がおりました。本当に助かりました。
地元メディアにも塾の立ち上げに向けて奮闘しているご夫婦を紹介してもらい、短期間に生徒を集めることができました。
政府系金融機関の対応には怒りが収まらなかった。
このご夫婦だけの問題ではないと思いました。調べていけば同じような事例があるはず。そうなると支店の問題ではないと考え、中小企業庁の幹部に状況を説明しました。
「あれだけ支援、支援といいながら対応がひどすぎます」。すると、「そんな対応が行われているのですか」と大変驚き、「すぐに対処します」と言ってくれました。中小企業庁の人たちは私の怒りを真摯に受け止めてくれ、政府系金融機関へ柔軟に対応するように指示したようでした。
これをきっかけに政府系金融機関の人たちとも情報交換の機会が増え、今ではエフビズの業務にも大変役立っています。
さて、ご夫婦で始めた学習塾の経営は順調に進み、富士宮信金の返済も早期に終わりました。お力になれて本当によかったと思っています。
編集委員 田中陽)
  [日経産業新聞2019年7月12日付]