藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ダダ漏れ

*[ウェブ進化論]便利な丸裸。
FTより。
ネットに接続するテレビから情報が吸い上げられているという話。
アマゾン、グーグル、アカマイ・テクノロジーズ、マイクロソフトはユーザー情報を最も頻繁に受け取っていた。研究者によれば、その理由はこうした企業がスマートデバイス向けのクラウドやネットワーキングのサービスを提供しているからだ。
(中略)
「実験では、ほぼ半数のデバイスがアマゾンにデータを送っていた」

 アメリカではネットTVの普及率が68%だというから、かなりのシェアである。

日本でもスマホの普及率は85%を超えたという。
つまりもう、何をするにしてもデジタル網の追跡から逃れることは難しい。
というか考えることも面倒になっている。
 
数年前は「ダウンロードの時代」と言われたがすでに「アップロード(吸い上げ)の時代」に入ってしまった。
「何の情報でも吸い上げてください。その代わり便利にしてね」という現実はどんどん進む。
「家の鍵をかけずに手ぶらで街中に出かけ、電車に乗り、食事や買い物をして帰宅する」ような世の中とは縁が切れそうもないと思う。
 
 
[FT]茶の間のテレビからネットで漏れ出る個人情報
 
2019年9月19日 14:44
 

Financial Times

家庭にあるスマートテレビから、ネットフリックス、グーグル、フェイスブックといった企業へ、慎重な扱いが求められる利用者の個人情報が漏れる。しかも、これは機器が使用状態になくても起こる――。そんな状況を示す大規模な調査結果が2件発表された。

 
ネットフリックスにはスマートテレビから多くの個人情報が送られている(8月、ドイツで開かれたゲーム関連イベントの同社ブース)=ロイター
ノースイースタン大学と英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者が調査したところ、韓国のサムスン電子LG電子の製品など多くのスマートテレビに加え、米ロク(Roku)やアマゾン・ドット・コムのファイアTVのようなドングル型ストリーミング端末が、位置やIPアドレスといったユーザー情報を、ネットフリックスなどの動画配信会社や動画に広告を出している企業に送っていることが分かった。
 
データはユーザーがネットフリックスと契約していなくても送られている。スマートスピーカーやスマートカメラなどその他のスマートデバイスが、音楽配信大手スポティファイやマイクロソフトなど何十ものサードパーティー企業へユーザー情報を送っていることも判明した。
 
調査結果は、スマートテレビなどのスマートデバイスが急速に普及しつつある現在、インターネットに接続された機器を使うことでプライバシーが侵害されるとの懸念を強めることになりそうだ。
 
プリンストン大学による別の調査では、ロクとファイアTVで使用できるアプリの一部が、特定ユーザー識別子のような情報をグーグルを含むサードパーティー企業へ送っていることが分かった。
 
調査会社ニールセンが3月に発表した報告書によると、ロクやアップルTVといった外部端末を含めたインターネット接続テレビデバイス保有している米国世帯の割合は、2018年末現在でほぼ68%だった。何千万にも達するこうしたデバイスは、視聴者に最も有効な広告を流すために、視聴者が見るもの全てを追跡するコンテンツ認識技術を搭載する。ネット接続テレビで流される広告は、今やデジタル広告の半分近くを占める。
 
ノースイースタン大が英国と米国で81の異なるデバイスについて行った調査は、発表された同種の実験としては最大規模で、「情報露出の注目すべき例」が見つかった。アマゾン、グーグル、アカマイ・テクノロジーズ、マイクロソフトはユーザー情報を最も頻繁に受け取っていた。研究者によれば、その理由はこうした企業がスマートデバイス向けのクラウドやネットワーキングのサービスを提供しているからだ。
 

半数のデバイス、アマゾンにデータ送信

「実験では、ほぼ半数のデバイスがアマゾンにデータを送っていた」とノースイースタン大のコンピューター専門家で同調査についての論文の著者の一人であるデビッド・チョフネス氏は言う。「これは、アマゾンが作っていないものも含め家庭にある様々なデバイスをユーザーがどのように使って何をしているかアマゾンが多くを推測できる(ということを意味する)という点で、注目に値する」と同氏は解説する。「アマゾンはライバルがしていることについても、かなりうかがい知ることができる」
 
ネットワーク上のデータの動きを分析したノースイースタン大のチームは、サードパーティー企業は最低、ユーザーの使用デバイスや位置、そしておそらくデバイスを使う時刻に関する情報も得ていたと結論づけた。「つまり、彼らはユーザーがいつ在宅し、いつ不在なのかを知っている可能性がある」とチョフネス教授は指摘する。
 
バイスメーカーが送り出すデータの大部分は暗号化されており、研究者はそれ以外の送信データの具体的内容は分からなかった。「なんらか(の視聴)が行われていることは確かに分かるが、具体的にどこまで分かるかは、メーカーがどのような情報を発信するように設計しているかによる。それを分解・解析して確かめようとまではしていない」とインペリアル・カレッジのコンピューター専門家で論文のもう一人の著者であるハメド・ハダディ氏は言う。

 
ネット機能がついたスマートテレビを購入する世帯が増えている(17日、中国・小米の製品発売をインド・バンガロールで発表する同社幹部)=AP
(こうした調査に対して)ネットフリックスはこう説明する。「ネットフリックスが、サインインされていないスマートテレビから受け取る情報は、当社のサービスの状態とスクリーンに映像がどう映るかということに限られる。スマートテレビで使用されるその他のアプリやデバイスの利用状況については何ら情報を受け取っていない」
 
フェイスブックはこう回答した。「デバイスやアプリがそこに組み込まれたサードパーティーのサービスに向けてデータを送ることは一般的だ。例えば、アプリがログイン・インターフェースの作成や"いいね"ボタンの提供に必要なデータをフェイスブックに送るような場合だ」
 
グーグルの説明はこうだ。「その他のウェブパブリッシャーと同じく、スマートテレビアプリ開発企業は、グーグルの広告サービスを使って、自社のコンテンツに広告を挿入したり、広告の効果を測ったりすることができる。デバイス上のユーザーの設定状況や同意事項の内容によっては、パブリッシャーは、アプリやウェブ上の広告で使われるのと同様のデータをグーグルと共有できる」
 
そしてこう付け加えた。「デバイスメーカーやアプリの開発者によっては、グーグルに送られるデータにユーザーの位置、デバイスのタイプ、特定のアプリ内でユーザーが何を視聴しているかなどが含まれることもある。こうしたデータは各ユーザーに合わせた広告を表示するのに使える」
 
スマートデバイスが個人情報の保存・共有方法については最小限の監視しか存在していないと専門家は警告する。「こうしたデバイスの利用時間はどんどん増えており、しかも自宅の重要な場所に置かれている。だから、その責任を問う必要がある」とオックスフォード大学のコンピューター専門家マックス・バン・クリーク氏は言う。同氏はスマートデバイスの研究者だが、どちらの論文にも関わっていない。「状況は深刻だ」
 
By Madhumita Murgia
 
(2019年9月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/