藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

魚ベルト。

*[気候]いつも異常。
大衆魚の代表、サンマが過去最悪の不漁だという。
そういえば、昨年居酒屋の亭主がサンマの塩焼きを「泣きながら出してます」と言っていた。
さらに温暖化の影響で、日本中の漁場が北上しているという。カツオの漁場が北海道近くに上がってきているといった具合だ。
 
それはともかくサンマがこれほど「謎の魚」だとは知らなかった。
・世界に仲間は4種類。
・養殖なし。
・いつどこで生まれて日本近海に来るかわかっていない。
・寿命は2年未満らしい。
・サンマ漁はたった300年前に始まった。
・世界で一番サンマを食しているのは日本人だった(13年まで)。
世の中は知らないことだらけ。
いずれサンマも養殖される時代が来るだろうか。
 
サンマ1匹600円、史上最悪の不漁 遅すぎた資源管理
秋を代表する魚、サンマが史上最悪の不漁で、高騰している。全国の漁獲量は前年の2割以下。店頭では痩せた魚が1匹300~600円と高く、売れ行きは悪い。今年はサンマにとって重要な出来事があった。水産庁は漁を通年できるよう省令を改正。中国などとの国際的な漁獲制限も一歩前進した。ただこれも「もう、遅すぎたかもしれない」と疲弊した産地ではため息が漏れる。
 

1キロ700円、前年の3倍超

9月21日、サンマの水揚げ量日本一の花咲港がある北海道根室市で、毎年恒例の「根室さんま祭り」が開催された。来場者のお目当ては、サンマ塩焼きの食べ放題。1皿100円のトレーを購入すれば、焼きたてを何匹でも食べることができる。祭りの運営委員会は、1皿200円へ値上げすることも検討したが、"根室のプライド"と現状維持を決断。ただ、これまで魚は水産関係者から無料提供してもらっていたが「今年はいくらかお支払いしようと話し合っている」(根室市)。国内最大の産地、根室の卸売市場でもサンマは1キロ700円と、前年同時期の150~200円から大幅に上昇している。

 
今年のサンマは痩せていて値段も高め
さらに、今年は「小さく、脂がなく痩せた魚ばかり」(根室の卸業者)。刺し身や塩焼き用として出荷するには最低でも1匹110グラム以上は必要だ。それ未満の魚はマグロやブリなど養殖魚の飼料に向けられる。「競りで買い付けても出荷できるのは半分ほどしかない」
 
魚は空輸で国内最大の魚市場、豊洲市場(東京・江東)などに運ばれる。脂の少ない今年の魚に対する仲卸業者の目は厳しく、卸値は1キロ1000~1400円ほど。前年同時期の2倍以上の高値だが、輸送費などを含めると出荷する側の利益はない。「産地のために、本当はもっと高く売ってあげたいが、サンマは大衆魚だから価格にも限界がある」(卸大手)。安い魚ゆえ、クロマグロのように養殖もされていない。
 
そもそも、サンマは謎の多い魚だ。世界には4種類のサンマの仲間が確認されているが、いつ、どこで生まれ、どうやって日本の近海にやってくるのかよくわかっていない。寿命は1年数カ月から2年未満ということがわかってきた。日本の近海からアメリカの沖合まで、北太平洋をエサを求めて泳いでいる。しかし、メスがいつごろから卵を産むのか、稚魚がどのように育つかなど、その一生は謎に包まれている。ただ一つ言えることは、これまでの日本の海、漁業のやり方ではサンマは今ほど心配することなく、安定的にとれてきたということだ。
 
全国さんま棒受網漁業協同組合(東京・港)によると、日本でサンマ漁が始まったのは約300年前。熊野灘で始まり、紀州沿岸の主要漁業として発展した。江戸時代後期には伊豆半島沖にも広がった。大正、昭和と時代を重ねるごとに漁船は大きく、漁獲効率も向上。漁獲量は20万~30万トンで安定し、日本の秋を代表する大衆魚になっていった。ちなみにロシアが3万~10万トン、韓国が2万~4万トン程で、日本が世界で一番サンマを食べていた。
 

資源管理、「ちょっと遅すぎたかも」

しかし、2000年以降、状況は変わった。台湾が漁獲を伸ばし、13年には日本を上回った。12年からは中国もサンマ漁に参入した。9月中旬、台湾台北市を歩くと1匹300円ほどで塩焼きが売られていた。「和食人気もあり、刺し身や塩焼きが秋の味覚として好まれている」(台北市の日本料理「小馬」の江鎮佑料理長)。中国の水産加工場では、ロシア向けのサンマ缶が製造されている。東日本大震災後、ロシアが日本からの水産物の輸入を一時停止した際、中国がサンマの漁獲を増やし、ロシア向けの商圏を握った。一方、日本の漁獲量は反比例するように減っている。15年以降は4年連続で10万トン台が続く。17年には7万7千トンと半世紀ぶりの不漁となり、今年はそれをさらに下回る。
 
水産庁は3月、これまで8~12月に制限していた北太平洋のサンマ漁を通年できるよう省令を改正した。安定供給を目指したい考えだ。
 
7月には、日本や台湾、中国など8カ国・地域がサンマの資源管理について話し合い、漁獲量の上限を設けることで合意した。ただ、その上限は各国の漁獲実績を上回る枠となった。「水産庁が頑張っているのはわかるが、これだけ魚がいないのは異常。ちょっと遅すぎたかもしれないね」(根室市の加工大手)
 
100%天然物に頼るサンマ。脂がたっぷり乗り、皿からはみ出すほど大きなサンマが100円未満で買えた秋が懐かしい。
 
(商品部 佐々木たくみ)