藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

資本主義の再定義

*[ウェブ進化論]価値観こそを変えよう。
以前も書きましたが、山口周氏の日経インタビューより。
科学のレベルを上げてもメリットの拡大は期待できない。むしろ文化的な価値の方が受け入れられる。

そんな時代の大波が、結構きている気がするのは自分だけではないだろう。

今の世の中の手間仕事(いずれは洗濯物を畳むのも)はどんどん消えてゆく。
すでに「情報の価値」は薄まり、「集合的なもの」は急速に受け入れられなくなっている。
SNSの使い方も変わってくるだろう。
『産業のファッション化』がカギだ。その人らしい人生を表現し、演出する商品やサービスをどこまで提供できるか。人の感性に訴えるから好き嫌いが増え、市場の規模は小さくなるが、刺さった時の市場は深い。そのうち顧客が100人いれば100通りのビジネスが成立する時代が来る。
 
著者の言う「問題解決の時代」から「問題設定・意味づけ」への大変化だ。
身にまとう「ファッションのような仕事」はすなわち「楽しくて気分が上がる仕事」のことだ。
ようやく「楽しいことばかり」の時代がくるだろう。

「役立つ」より「意味がある」 「ニュータイプの時代」著者 山口周氏

――新著の題名でもある「ニュータイプの時代」とはどういう時代ですか。

 
やまぐち・しゅう 電通、コーン・フェリー・ジャパンなどを経て独立。著書に「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」など。49歳。
「これまで望ましいとされてきた考え方、行動様式が急速に時代遅れなものになりつつある。企業でいえば、優秀だと考えられた社員とは従順で勤勉な人たちだったが、そういう人ばかりでは社会の閉塞感をぬぐい切れないことがわかった。ある種、正反対の考え方、行動様式を持った人が新しい価値を生み出すような社会にアップデートしていかないとだめなのではないか。それが私の問題意識だ」
 
――具体的にどういう人たちが「ニュー」でしょう。
 
「20世紀は解決すべき問題が多く、解決策が希少な世界だった。だから問題解決のために自動車や家電が次々と発明され、大量生産された。それには従順で勤勉な人が大量に必要だった。教育現場ではおのずとそういう人々の大量供給、すなわち正解を導き出す能力で偏差値の高い人を多産することに力が注がれた」
 
「だが、解決されるべき問題はだいぶ減少し、希少になってきたのが足元の世界だ。重要なのは問題解決能力より問題発掘能力に変わり『役に立つ』より『意味がある』事業を考える方が価値を生む時代になった。ニュータイプとはそれができる世代だ」
 
――意味がある、とは。
 
「音楽が好きな人が今、一番聴いているものは何か。LPレコードだ。同様に、エアコンよりまきストーブ、新車より戦前の中古車を選ぶ人も増えている」
 
「歴史的転換点を迎えた可能性がある。ルネサンス以降をみると、どの時代も便利なモノほど高く売れた時代だった。だが、我々が今みているのは不便なモノが高くなる世界。地理学者ジャレド・ダイヤモンド氏のいう『人間の知性、科学の力で不安、不便、不満を消すこと』を意味する文明化が飽和し、科学のレベルを上げてもメリットの拡大は期待できない。むしろ文化的な価値の方が受け入れられる。機能価値ではなく、感性価値の時代だ」
 
――資本主義が行き着くところまで行ったということですか。
 
「終わったということではないが、低成長の原因が問題解決型産業への依存にある以上、産業構造の転換が必要だ。新しい経済は新しい価値が生まれるところに生まれる」
 
「競争の激しいアパレル産業にもセレクトショップのように成長のペースが大きい分野もある。意味という点でいえば『産業のファッション化』がカギだ。その人らしい人生を表現し、演出する商品やサービスをどこまで提供できるか。人の感性に訴えるから好き嫌いが増え、市場の規模は小さくなるが、刺さった時の市場は深い。そのうち顧客が100人いれば100通りのビジネスが成立する時代が来る。10万人以上従業員がいる会社はまだ多いが、そういう時代は終わる気がする」
 
――「脱構築」という考え方を主張しています。
 
「仏思想家のジャック・デリダが唱えた考え方だ。ドイツでは資本家が悪、労働者が善という二項対立の流れでマルクス主義が生まれたが、フランスは資本主義を否定しなかった。残したままで内部にある定義に見直しを加え、資本主義がもたらす豊かさを回復させる、との考え方だ」
 
「例えば、アウトドア商品のパタゴニアという会社がある。似た商品との機能差はわかりにくいが、とにかく高い値段で売れる。環境保護に昔から力を入れ、サステナブル(持続可能)な企業イメージがあるからファンが多い」
 
「株主第一などとはいわない。会社が語るパーパス(存在意義)に共感した人を『同じ価値観を持って自分を表現したい』という気持ちにさせるだけだ。時に反資本主義とも受けとれる厳しい主張もするが、共感した人はお金を払う。『優れたパーパスを掲げているところにはお金が集まる』という資本主義の特性を利用しつつ、資本主義を再活性化しているということだ。だから脱構築だ」
 
「やり方は色々あるし、もちろん、日本の企業も活力を取り戻せる。カギを握るのがニュータイプな発想と構想力だと思う」