藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

三本の椅子。

*[ウェブ進化論]現場の鉄則

日経産業より。
 
一時は迷走中に見えたマックが復活しているという。
既存店の売上高は2月まで51カ月連続で前年実績を上回る。
サプライヤー、FC、従業員を「3本足のいす」と呼び、成長の基軸と位置づける。
記事中に詳しいが、それはもう"カイゼン"の積み重ねの連続であることがわかる。
レタスからパテやパンに揚げ物。
厨房のライン開発にお客の繁閑予報まで。
まさにこれぞサプライチェーンだ。
ここまで徹底してのファストフードにはジャンクなイメージも払拭されるだろう。
 
日本の多くの製造業が「似たような努力」をしていることも偲ばれる。
製造業の凋落が言われて久しいけれど、どうもこういう遺伝子はまだまだ日本人の中には根付いているのではないだろうか。
ほおっておいても「自然と工夫する」というのは自分にとっても楽しいことだ。
そういうことを「楽しみにできる」性質はちょっと誇りにしてもいいと思う。
コツコツ型ですが。
 
マクドナルド復活支えるサプライチェーン 三位一体の妙
 
 

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

日本マクドナルドが外食産業で独り勝ちを続けている。新型コロナウイルス問題の影響が広がるなか、既存店の売上高は2月まで51カ月連続で前年実績を上回る。2014~15年に起きた鶏肉偽装などの問題から復活した背景には、品質の要求水準を高めた調達網や客数増に備えた製造ラインがある。国内2900店で年15億人の来店客を迎えるカウンターの向こう側に迫った。

 
マクドナルドのバーガーに欠かせないレタス。ほぼ全量が国産で、季節にあわせて各産地で収穫されている。冬季の主産地の1つが長崎県南島原市にある。丘陵に沿うように広がるレタス畑で栽培する松尾青果(同市)は、週900ケースを出荷する。松尾博明社長は「マクドナルドの監査、品質の要求水準は極めて高い」と語る。
 
同社向け出荷には100項目を超す生産工程の管理ルールの順守が求められる。細かな区画ごとのハザードマップを作り、土地の高低など異物の混入リスクを年に1度更新しながら管理する。葉の詰まり具合などの品質要求もある。気候や温度にあわせて品種を選ぶなど長年の経験が安定供給を支えている。
 
松尾青果では現在、点検項目が2倍近くになる「グローバルギャッププラス」への対応が求められている。マクドナルドと松尾青果を結ぶ卸、サングローブフードの安斎良治社長は「安全、品質への対応に意欲的で安定的な供給能力を持つ生産者は貴重だ」と話す。
 
「3本足のいす」を成長の軸に
 
14~15年、日本マクドナルドは鶏肉偽装や異物混入などの品質問題が相次いだ。サプライチェーン本部で食品安全などを統括する矢野良マネージャーは「信頼を取り戻すため、より強固なシステムを模索した」と語る。従来のグローバルのルールに加えて、国内独自のサプライヤー会議などを開催。消費者への発信だけでなく、サプライヤーへの監査体制なども一段と強化してきた。
 
サプライヤーは現在、日本マクドナルドに商品を直接納入する「1次」だけで100社、250拠点を超える。同社は自社でセントラルキッチンを抱えず、店舗の多くをフランチャイズチェーン(FC)で展開している。サプライヤー、FC、従業員を「3本足のいす」と呼び、成長の基軸と位置づける。
 
厨房もカイゼンしている。日本マクドナルドの店舗数は売上高が最高だった10年から400店近く減ったものの、店舗全体の売上高は伸ばした。19年の1店舗あたりの日商は10年比で15%増だ。その分、1店舗あたりに来店客が押し寄せており、従来の厨房では対応できない。その中でも「ファストフード」たりえる速度を守ろうとしている。
 
厨房も改革、1秒を削り出す
 
19年12月上旬の日曜日、東京都大田区国道1号線沿いの店舗。冬の季節商品「グラコロ」の販売が同月に始まって初めての週末でもあり、30分あたりの売上高で過去最高を更新した。押し寄せる来店客を待たせないようにするため、全国の店舗で細かなカイゼンを積み重ねている。
 
同社の人気商品であるポテトや、揚げ物商品に使うフライヤーは生産能力のボトルネックになりがちだ。この解消のため卓上型フライヤーの導入を進めている。据え置き型の大型フライヤーと異なり、設置場所を選ばないのが強みだ。フィレオフィッシュなどポテト以外に揚げ調理が必要な料理は卓上型でつくり、大型フライヤーはすべてポテトの調理に充てる。

 
フライヤーも厨房のボトルネックの1つ
目玉焼きを作るリングも工夫する。素材と重さを変え、焼き上がった目玉焼きをリングから離すのに必要な時間は1個あたり30~60秒短くできる。焼き上がったパティを収納するケースは取っ手のプラ部分を大きくして、組み立てる従業員が一目で分かりやすくなっている。数秒の時短を積み重ねる。
 
カイゼンを主導するのは日本マクドナルドの下平篤雄副社長だ。1978年に同社に入社した生え抜き。一度はフランチャイズに出向、転籍していた。サラ・カサノバ氏が社長就任時に現場の立て直しのため呼び戻し15年に副社長に就いた。日本マクドナルドの創業者、故藤田田氏の薫陶を受け「ケチャップの血が流れている」(ベテラン店長)と称される下平氏。「マーケティングや商品で来店客を集めても現場が崩れてしまえばご破算だ」と力を込める。
 
足元では主力のバーガーを作るラインも刷新している。日本マクドナルドは05年、注文を受けてからハンバーガーを作るメイドフォーユーと呼ばれるラインを全店で導入した。I字型のラインの両側に従業員が立ち、店舗の奥からカウンターに向かってバンズの上に具材を重ねて作っていく形式だ。
 
19年末から新店で導入が始まった新ラインは、I字の上手、下手の両方から中央に向けて積み重ねたバーガーを滑らせていく。中央に集められたバーガーはベルトコンベヤーでカウンターまで運ばれる仕組みだ。ラインの面積をほぼ変えずに生産能力を純粋に2倍にできる。数年かけて全国の店舗で順次導入する。
 

こうした新型の厨房機器やシステムは、開発状況まで含めて全てフランチャイズチェーン(FC)オーナーに開示する。全2900店のうち7割近くがFC店。「オーナーが将来予測をし、キャッシュフローを見ながら投資ができる」(下平氏)体制になっている。
 
店舗運営のデジタル化の支援も進む。19年9月から始まったのは、同社の社内インフラ内で始まった「繁閑予報」だ。
 
これまで数年の実績に、新商品やプロモーションのカレンダーなどを事前に入力することで、当日の繁閑予測をカウンター、ラインなど部門ごとに1~5段階で予測をだす。その繁閑に合わせて、熟練従業員をあてるなどの管理ができる。19年までには、従業員のマニュアルも全てタブレット端末を使いデジタル化した。1人あたりのトレーニング時間を2割以上短縮できるだけでなく、店長は従業員ごとの習熟度をデータ上ですぐに把握できる。繁閑予測と合わせた出退勤の管理も射程に入る。
 
販売は堅調、コロナ対策進める
 
販売は堅調だ。2月の既存店売上高は前年同月比14.7%増で、51カ月連続で前年を上回る。新型コロナ問題が影を落とすなか、日常利用が多く、郊外店や持ち帰り比率が高いため客足は比較的堅調だ。休校中の子供向けの食事需要もあるようだ。だが感染が広がれば消費行動が変わる恐れがある。サプライヤーも、事務など工場外の従業員にもルールを設けたり、体温チェックの基準を厳しくしたりしている。
 
品質問題が来店客の減少に直結することは、日本マクドナルド自らが経験してきた。従業員、FC、サプライヤーの3者をどれだけ強くできるか。体験したことのない環境下でも、さらなる成長を模索する。
 
(企業報道部 江口良輔)