藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

技術の社会の中で

*[ウェブ進化論]犠牲の上の便利。
日経より。
交通事故死者を減らすベンチャーの記事より。
年間135万人。全世界で交通事故によって命を失う人の数だ。加えて、年間で2千万~5千万人が何らかの交通事故に遭遇している。
いろんな経済通に「今の社会は、法律的に「年間135万人(日本は3215人/19年)」が亡くなってもいいという前提で自動車を使用しているのですか?」と何度も質問しているが明確な答えは未だに得ていない。
思えば鉄道にしても、輸送以外のいろんな製造業にしても「間接的に犠牲者が出る」ということには責任を負っていない。
 
当たり前か。
鉄を使って銃器を作り、それで犠牲者が出ても鉄のメーカーは善意の第三者だ。
交通事故の現場は、加害者も被害者も「どちらも被害者」と言われるほど深刻なものである。
今でも毎年、今のコロナウィルス級に被害者を出し(3350人/4月5日)、それでも「車両を無くそう」という話は寡聞にして聞かない。
建築現場でも毎年一定の人が事故に遭う。
けれどビルの建設を止めようとは誰も言わない。
そういうことを「あえて分かって」進むのが社会というものなのだろう。
 
「歩きスマホ」でけが人や死者が出ても誰も「スマホを止めよう」とは言わない。
便利さが断然上回っているからだ。
そう思えば、技術や文明の浸透の陰ではいつも「見えない犠牲者」がいるのに違いない。
車でも電車でもスマホでも原発でも「技術の陰には犠牲あり」なのが現代の「技術の法則」なのである。 
便利で革新的な技術ほど、その開発やその利用で少数の犠牲者が出ることは宿命なのだと思う。
そういうことを知って、謙虚さを持ちながら「便利」に肖(あやか)りたいと思う。
 
 
みんなの目で事故減らす
 
年間135万人。全世界で交通事故によって命を失う人の数だ。加えて、年間で2千万~5千万人が何らかの交通事故に遭遇している。残念ながら悲惨な事故は、なかなか減っていない。特にスマートフォンが普及してからは「よそみ運転」が増加している。

 
1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立
 
交通事故による損失は世界の国内総生産GDP)の3%に上るともいわれ、ネガティブインパクトは甚大だ。各国がリポートしているが、インドは世界の死亡事故数の11%を占め、不名誉にも世界最大の数を持つ。人口が多いことも理由の一つだが、車の整備レベルや、道路コンディション、交通ルール順守レベルなどがそろって低いこともその要因である。インド政府は2019年に交通違反へのペナルティーを大幅に増額するなど一定の手を打っているが、まだまだその不名誉な地位を挽回するにはほど遠いのが現状だ。
 
この大きな課題に立ち向かう会社がデリーにあるナヤンテックだ。同社はクラウドソースと人工知能(AI)で交通違反を取り締まる技術を開発した。
 
まずタクシーや運送会社のドライバーのスマホに独自のカメラアプリをインストールしてもらう。ドライバーはスマホを車のダッシュボードに置き、カメラアプリを立ち上げたまま、いつもどおりに運転する。
 
そこから集まるクラウドソース化されたデータと、街中に存在する様々な監視カメラから収集されるデータを合わせる。そして独自の機械学習アルゴリズムパターン認識技術を使い、信号無視や急な車線変更、シートベルト無着用や違法駐車といった交通違反のデータだけをリアルタイムに抽出する。それを管理者がダッシュボードで閲覧できるようになっている。
 
もちろんプライバシーに関する情報はマスキングし、車のナンバープレート情報だけが蓄積される。みんなの力で交通違反を取り締まるソリューションを展開しているのだ。交通違反データだけでなく、道路の整備状況や安全状況も取得し、異常があれば自動的にそちらもリポートできるようになっている。
 
創業者のジャヤント氏は米ジョージア工科大学でロボット科学と人工知能の博士号をとり、米空軍などで勤務経験のある筋金入りの技術者だ。米国での悲惨な交通事故を目の当たりにして問題意識が芽生え、17年に母国であるインドに帰って同社を立ち上げた。
 
このシステムは、インドのいくつかの都市で実験的に採用が進んでいる。ドバイ警察でも今年初めから正式に技術が採用され、技術の運用が始まっている。
 
ナヤンとはヒンディー語で目を意味する。みんなの目をネットワーク化し、社会実装できるシステムを作り上げた同社。インドの新世代を代表するテクノロジー企業のソリューションが世界に広がっていく日も遠くないかもしれない。
 
日経産業新聞2020年3月23日付]