藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

祭りのあと

*[経済]宴は終わる。

日経より。

コロナ騒動であっという間に三ヶ月が経ち、給付金やら協力金や追加対策が発表される様子をボーッと見ていた。

世界中で「兆単位」で繰り出されるマネーの様子は過去二回のバブル崩壊とそっくりだということに気づく。

いくら鈍い私でもそのくらいは感じる。

 

92年の崩壊前夜はコロナと違い好景気に浮かれて、大手銀行が「すぐに値上がりする土地がありますが買いませんか? 全額融資付きです。」というような変な話をしていたのだ。変な話があるものだな、と思っていた社会人ルーキーの自分が翌年見たのは日本中の土地の暴落と倒産の嵐だった。

IT業界では「全ての開発予算は凍結する」という事態になり、エンジニアたちは自宅待機を強いられたのだ。

 

08年の時は、サブプライムローンだった。「アメリカの劣後債?」と遠くの景色を見ているようだったが、リーマンが潰れてやはりバブルは弾けた。特徴的だったのは90年代のときは「企業の財テク」がキャッチコピーで、リーマンの時には個人で多額の金融投資をする人が多かったように思う。

 

そして今。

コロナで超不景気がしばらく続きそうな陰気なムードだが、市場に流れ込むお金の様子は以前の二回とそっくりではないか。

というか世界同時的にお金がジャブジャブだから過去一番酷いのではないか。

日銀は間もなく上場企業の筆頭株主になるというし、記事ではついにFRBがジャンク債を買うという。

少しづつ構図は違うけれど、今の株高が泡沫(うたかた)なのはまず間違いないだろう。

「ドルだ、円だ、いや両方だ」「いや金だ、いや銀だ、それに国債だ」などという声が賑やかだが、同じ場所で三回も転びたくはない。

この後の不景気に何をするか、今が思案のしどころである。

 

 株式相場偽りの夜明け バブル崩壊に備えるとき 編集委員 前田昌孝
現在の株式相場の主要プレーヤーはヘッジファンドなど他人のお金で勝負する人たちだ。株高が株高を呼ぶ状況は、企業の財テクマネーがはびこった1980年代後半の東京市場とよく似ている。リーマン・ショック前は証券化商品、今回は実体経済と株高の「裏付け資産」には危うさがつきまとい、超金融緩和が演出するバブルはいつ崩れてもおかしくない。混乱に乗じた世界のリーダーの無謀な策動と不毛な対立も、市場のリスクを倍加させる。
投資信託の問題点を指摘する別の原稿を用意していたが、止まらない株高を前に急きょ、差し替えた。「FOMO(Fear Of Missing Out=取り残される恐れ)ラリーだ」「二番底シナリオは消えた」などと証券会社が株高をあおるのは、いつものことだ。他人のお金の運用者はいちかばちかの勝負を賭け、優雅な引退をもくろむ。バブル相場の最終局面は経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)もチャート上の警戒シグナルも無視し、いくところまで行く可能性がある。
 
香港の民主主義の危機も、世界に広がる反人種差別デモも、悪材料はとりあえず大歓迎だ。世界の中央銀行が市場心理の悪化を防ぐため、無尽蔵の金融緩和をしてくれる。どこかの自動車メーカーの経営破綻を心待ちにしている人もいるのではないか。協力会社を含め、連鎖倒産と深刻な雇用不安を招くから、マネーはどんどん出てきて株価を支えるだろう。
金融政策のブレーキは壊れた。米連邦準備理事会(FRB)が4月7日に決めた最大2兆3000億ドルの緊急資金供給策は、信用格付けが投機的水準のダブルBまで低下した社債(堕天使債)を買い入れる。日銀社債コマーシャルペーパー(CP)の購入額を増額し、欧州中央銀行(ECB)は社債の買い入れ対象を投機的格付けまで広げる検討をしている。
投機的格付けの社債とはつまりジャンク(くず)債だ。日銀は上場投信(ETF)を通じ、東証1部に上場していればどんな企業だろうが、株式を買い上げている。世界の中央銀行がゴミ箱と化して、本来ならば市場から退出すべき企業の延命に力を貸しているのだ。平時ならば資産バブルの過度な膨張をけん制するが、今は下手に動けば、バブル崩壊を招きかねないため、口先介入すら控えている。
筆者の試算では3月16日に約3兆4000億円の含み損を抱えていた日銀のETF投資が、6月9日には約5兆6000億円の含み益に転じた。1~3月期に四半期としては過去最大の約17兆円の運用損を出した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、4月に5兆円弱、5月に5兆円強、6月に8日までで約5兆4000億円の運用益を出し、1~3月期の損失の約9割を埋めた。白昼夢ではないだろうか。
 
投信の買い手にも恩恵があった。3月中旬には株式も債券も売られ、定期預金代わりのはずだったバランス型投信は驚くほどの損失を抱えた。純資産総額上位100本の年初来リターン(分配金込み)は3月19日に平均でマイナス13.9%になった。それが6月8日にはマイナス2.3%まで回復し、「投資のソムリエ」や「リスク抑制世界8資産バランスファンド」など13本はプラス圏に浮上した。
しかし、個人投資家がバブル相場につぎ込んでいいのは、失ってもいいお金だけだ。バブルが最高潮に向かう局面での投資は、温暖地に住む日曜ドライバーが冬の北海道でドライブをするのに似ている。天気に恵まれ、無事故で済めば楽しいだろうが、悪天で事故を起こしても、無鉄砲さを軽蔑されるのが落ちだろう。期待リターンに比べて取るリスクが大きすぎるから、賢い人は危ない選択をしない。
証券会社は冬でも車を貸さなければ生きていけないレンタカー会社のようなものだ。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」ということわざでも持ち出して、チャンスに挑むように勧誘してきたら、「君子危うきに近寄らず」と切り返せばいい。虎に食い殺されるかもしれない。最も慎重な人が強気転換したら相場は天井、今買っている人が諦めて全部投げたところが二番底というのが、相場に長年携わってきた人の基本観である。
 
バブル相場が証券増税を招くことも、歴史が教えるところだ。日本で株式譲渡益(キャピタルゲイン)への税制が原則非課税から原則課税になったのは、1989年4月のことだった。今回は1人10万円の特別定額給付金の財源を補填する必要があるから、譲渡益や配当への税率が20%から25%に上がるのは必至だろう。世界的にはすべての投機取引に広く薄く課税するトービン税の導入論が高まるかもしれない。
米国には「FRBに逆らうな」という相場格言もあり、FRBを信じて株式を買う投資家もいるようだが、日本の個人投資家はそもそも日銀を信用していない。個人は「日銀が支える株価は偽り」と考えているから、2011年1月から20年5月までの9年5カ月間はもっぱら売り越しだった。累計売越額は31兆4100億円と、10年12月以降の日銀のETFの累計購入額である32兆5900億円(元本ベース)に迫る。
国内の機関投資家株価指数に負けられないから、日銀の動きに乗じて日本株を買っている。年金資金を管理する信託銀行の買越額はこの9年5カ月間で6兆2800億円に達した。日銀は金利を下げ、株価を下支えすれば、お金が「貯蓄から投資へ」動くと予想したが、実際は資金調達が容易になった企業が自社株買いに走っただけだ。米企業は社債を発行してでも自社株を買った。中央銀行は金融政策の波及経路に対する洞察を欠いている。
 
89年末にかけての株式バブルにも個人投資家は冷ややかだった。87~89年の3年間の投資部門別売買動向を振り返ると、個人は7兆3200億円、外国人は8兆8000億円の各売り越しで、買い越したのはもっぱら企業の財テク資金を特定金銭信託やファンドトラスト(指定金外信託)として管理していた信託銀行だ。当時は信託銀行だけの数字は集計していなかったが、銀行(投信を除く)の買越額は3年累計で15兆1700億円に達した。
世界のリーダーの策動で地政学は激動している。中国市場で稼ぎたい産業界に押され、日本政府は中国のご機嫌を取っているが、したたかな米中外交のはざまで、稼ぎの場が保証されるほど世界は甘くないだろう。21年の東京オリンピックの開催も風前のともしびではないか。野村証券は9日、20年度の企業業績が0.2%の経常増益になるとの見通しを発表したが、需要増を見越した投資が空振りに終わり、減損ラッシュに襲われる恐れもある。偽りの夜明けには要注意だ。