藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

道は果てなく


産経新聞のよさは、報道でもなく、評論でもなく、「芸術家へのアプローチと取材」にあるのではないか、と自分は思う。


日本人は(多分、歌とか、鍵盤とかに比して)弦楽器が得意だとはよくいうけれど。
また現れた天才少女の進化の過程。

「ドイツではどこか緩やかに時間が流れ、ゆっくりと音楽に向き合っていると、自分という体を通してバイオリンで奏で、手元から出てくる音楽が作曲家の思いとどうつながっているかをより深く考えるようになりました」

ドイツでの時間の流れ方。(あー行ってみたい)
染み出てくるような言葉に、音楽というものの何とも言えない深みを感じる。

「イタリアの青い空を思わせるようなおおらかさがあります。
弾き込むほどに力強さとしなやかさを増し、壮大な世界を描くときも、繊細きわまりない情感をたたえていて魅了されます」

とは、今使っているヴァイオリン至高の名器、ガダニーニを評して。
ヴァイオリンの名器は、まちがいなく保存され、改修され、世界中の才能あふれる若手に還元されている。
非常に高度なシステムである。(買えば数億円は下らないものばかりだし)

「ラベルの楽譜には、ラベルがどんな世界を感じ、音楽につづっていったかが明快に示されています。
博識でスタイリッシュで、とても視野が広く、揺るぎない世界を築いています。
インスピレーションにあふれて情熱的で、それと同時にあまりにも精巧で透徹した精神に驚かされます。
名人芸的な技巧も内面的な世界をより深く表現するために欠かせないものになっています」

ラヴェルが感じ、綴った世界。
・博識でスタイリッシュ。
・視野が広い。
・揺るぎない(独自の)世界。
・インスピレーションにあふれて情熱的で、それと同時にあまりにも精巧で透徹した精神。
・名人芸的な技巧も内面的な世界をより深く表現するために欠かせないものになっています。


一見、ポロロンと弾く音楽の世界は、その深淵を見てみれば、斯様にディープである。
一度その深みに踏み込めば、容易に抜け出すことはできないほどに。
「名人芸的な技巧」も「技巧のための技巧」ではなく、あくまで「内面を、「より深く」表現するためのもの」。


だから、そんな世界にいる人たちは仏門、僧門にいる人ほどに、峻厳な道を行く求道者と重なって見える。
その道を行く後姿はどこまでも美しく厳しく、神々しさする感じる。


恐れ多いような、でも声をかけてみたいような、そして応援したいような気分になるのである。




<産経webより>

■若手バイオリニストの松田理奈がリサイタル

ドイツ南部の古都、ニュルンベルクに居を構える新進バイオリニスト、松田理奈が22日、東京・四谷の紀尾井ホールでリサイタルを開催する。
美しいバイオリンの音色に凛(りん)とした精神性をのぞかせる松田だが、「自然体で向かいあって、今の自分を最も表現できる作曲家」というラベルの名作を柱に据えて気を吐いている。

 昭和60年、横浜生まれの松田は14歳でデビューリサイタルを開催し、平成13年の日本モーツァルトコンクールで最年少優勝を果たすなどして早くから注目を集めた。
しかし、「自分自身が求める音楽とは何か、少しでも明確な姿に捕らえたい」と、技術と精神の両面での深化に取り組んできた。

 ニュルンベルク音楽大では若くしてウィーン・フィルコンサートマスターを務めた名手、ダニエル・ゲーデに師事し、生来の伸びやかさに堅牢(けんろう)な構築力が備わった。24歳の大学院生だが、師のアシスタントとして後進の指導を託されるまでに成長を示している。



 「ドイツではどこか緩やかに時間が流れ、ゆっくりと音楽に向き合っていると、自分という体を通してバイオリンで奏で、手元から出てくる音楽が作曲家の思いとどうつながっているかをより深く考えるようになりました」

 そう話すかたわらには、名古屋のNPO法人から貸与された名器、ガダニーニがある。松田の進境を支えるかけがえのない存在となっている。

 「イタリアの青い空を思わせるようなおおらかさがあります。
弾き込むほどに力強さとしなやかさを増し、壮大な世界を描くときも、繊細きわまりない情感をたたえていて魅了されます」とぞっこんだ。

 「こんなに素晴らしい楽器を手にしていることが、うれしくてうれしくて仕方がありません。
本当に寝るのも食べるのも忘れて弾き続けていました」と松田。あまりの没頭に体力的にオーバーペースになったとも。

 「夢中になりすぎる性分ですが、少し自重をして静かに自分を見つめ、周囲をゆっくりと眺めて、考え、感じたことを自分自身の中に取り込むことの大切さも、この楽器と出合って教えられました」


 そんな折に向き合ったのが、ラベルの作品だった。
今回のリサイタルでは名人芸を聞かせる「ツィガーヌ」、最高傑作ともされるバイオリン・ソナタに、生前は出版されなかったもう一つのソナタも取り上げる。
充実のプログラムに外柔内剛の松田の真骨頂を見ることができる。

 「ラベルの楽譜には、ラベルがどんな世界を感じ、音楽につづっていったかが明快に示されています。
博識でスタイリッシュで、とても視野が広く、揺るぎない世界を築いています。
インスピレーションにあふれて情熱的で、それと同時にあまりにも精巧で透徹した精神に驚かされます。
名人芸的な技巧も内面的な世界をより深く表現するために欠かせないものになっています」


 さらにイザイの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番「バラード」も披露する。
ルーマニアの歴史的バイオリニストで大作曲家のエネスクにささげられた難曲だ。

 「26歳までに6曲あるイザイの無伴奏バイオリン・ソナタを全曲演奏したいと考えてきました。
今回のリサイタルのずっと抱いてきた思いの第一歩ともなっています」(谷口康雄)