パッケージの世界(2)

 
*[ウェブ進化論]学びを選択する時代。
世の中のハードやソフトやサービスまでもが「パッケージ化」している。
コンピュータもスマホもどんどん結果重視。
音声AIの発達でさらに加速するだろう。
 
トンと車に乗せれば電気自動車ができるものを持ってきてくれと言われる。
そんな時代の中で大事なことは何だろうか。
 
自分は「原点に戻るよりもマルチ化」することではないかと思う。
深く掘り下げ、一番細かいレベルまで知っている、という分野も一つは欲しい。
けれどそれをいくつもこなすには、時間がない。
 
「どんなテーマにどんな解像度で臨めばいいか」というのがこれからの若者のテーマではないだろうか。
「どんどん表層化し、上辺の便利を追求する世界」と「ものの原理に迫り、未知のイノベーションを追求する」ということを両立させるのだ。
 
そんなつもりで大学や企業での「学びの選択」をするべきではないだろうか。
二十歳前後の若者も、「ほんの三十年」くらいで方向が決まってしまうものだから。
 
 
 
 

日本電産永守会長「ソリューション型のビジネスに」

日本電産永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は16日、車載部品を製造するオムロン子会社を買収すると発表した。主なやりとりは以下の通り。
――オムロン子会社の魅力は。
「モーターを制御する技術は付加価値が高い。モーター全体で1万円だと、制御するための回路部分が6千円だ。ただ、エンジニアが不足している。このままでは(供給が滞り)顧客に迷惑がかかる。(自社製品に合う)制御技術を持つ会社は(自社がホンダから買収した)エレシスとオムロンぐらいしかない」
オムロンには600人程度のエンジニアがおり、これだけのものが手に入れば大きなシナジー(相乗効果)が生まれる。コスト競争力などを発揮できる。(生産や販売の)拠点も重なっていない」
――車載事業の位置づけは。
「大きな柱にしていこうと、非常に力を入れている。モーターは最近は部品売りではなくモジュール化が進んでいる。特に中国(の自動車)企業は技術がない。トンと車に乗せれば電気自動車ができるものを持ってきてくれと言われる。完成車をつくるつもりはまったくないが、そういう変化に対応する必要がある。一種のソリューションのビジネスに入っていく」
--21年3月期に車載事業の売上高を1兆円にする計画を掲げている。
「(1兆円を実現するには)まだ買わないといけないが、対象となる会社がない。まずは自力で売上高6000億円を目指していきたい」
――電動車や自動運転関連で、さらに強化したい分野は。
「安い車をつくらないといけない。EVは価格競争が待っている。カギとなる部品でどれだけ安いものを手に入れられるか。顧客が困っているところを提供したい」
――中国の景気停滞への懸念は。
「長い目で考えれば必ず伸びる。短期的には考えていない。中国マーケットをなめてはいけない。将来はとんでもないマーケットになると信じて投資している」
 

 

パッケージの世界(1)

*[ウェブ進化論]原理に返らない時代に。
日本電産の永守会長が"何かおかしい"と言えば、それは世の中の危険な兆候だという。
果たして今回はどうなのだろうか…
で、それはともかく。
 
モーターは最近は部品売りではなくモジュール化が進んでいる。
特に中国(の自動車)企業は技術がない。
トンと車に乗せれば電気自動車ができるものを持ってきてくれと言われる。
 
この傾向は、(ハードだけでなく)ソフトウェアの世界でも日に日に感じる。
ユーザーはどんどん「面倒くさがって」いる。
技術がどんどん進んで、扱えるデータの量も速度も上がってもう「細かいプロセスがどうのこうの」ということにみんなの目が向かなくなっているのだろう。
 
先日、化学と医学の両方を専門にする先輩に話を聞いたのだが、驚いたことに研究者の世界でもそうらしい。
他人の研究結果を借りながら「パッケージ的」に研究結果を導くので、「全く新しいイノベーション」が起こらない、と嘆いていた。
「もう、基礎研究が流行らない時代なんだよ。それではイカんのだがね」と。
(つづく)

日本電産永守会長「ソリューション型のビジネスに」

日本電産永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は16日、車載部品を製造するオムロン子会社を買収すると発表した。主なやりとりは以下の通り。
――オムロン子会社の魅力は。
「モーターを制御する技術は付加価値が高い。モーター全体で1万円だと、制御するための回路部分が6千円だ。ただ、エンジニアが不足している。このままでは(供給が滞り)顧客に迷惑がかかる。(自社製品に合う)制御技術を持つ会社は(自社がホンダから買収した)エレシスとオムロンぐらいしかない」
オムロンには600人程度のエンジニアがおり、これだけのものが手に入れば大きなシナジー(相乗効果)が生まれる。コスト競争力などを発揮できる。(生産や販売の)拠点も重なっていない」
――車載事業の位置づけは。
「大きな柱にしていこうと、非常に力を入れている。モーターは最近は部品売りではなくモジュール化が進んでいる。特に中国(の自動車)企業は技術がない。トンと車に乗せれば電気自動車ができるものを持ってきてくれと言われる。完成車をつくるつもりはまったくないが、そういう変化に対応する必要がある。一種のソリューションのビジネスに入っていく」
--21年3月期に車載事業の売上高を1兆円にする計画を掲げている。
「(1兆円を実現するには)まだ買わないといけないが、対象となる会社がない。まずは自力で売上高6000億円を目指していきたい」
――電動車や自動運転関連で、さらに強化したい分野は。
「安い車をつくらないといけない。EVは価格競争が待っている。カギとなる部品でどれだけ安いものを手に入れられるか。顧客が困っているところを提供したい」
――中国の景気停滞への懸念は。
「長い目で考えれば必ず伸びる。短期的には考えていない。中国マーケットをなめてはいけない。将来はとんでもないマーケットになると信じて投資している」
 

 

老化という課題。

*[医療技術]テロメアは救世主か。
俗に「ピンピンコロリ」などと言いますが、結局「老い方」の選択肢のは何しに相違ない。
自分は、これからの自分の「死に方」を妙に他人に頼るべきではないと思う。
自分の「終末期、看取り、その後」については「自分で言い遺しておく」というケジメのつけ方がこれからの"大人の身だしなみ"ではないだろうか。
 
しかしながら。
サイエンスで老化を定義しようにも、まだまだ分かっていないことが多い。サーチュイン遺伝子エピジェネティクス、糖化最終生成物(AGE)、活性酸素など、関連する遺伝子や分子の存在は色々と指摘されているが、細胞レベルの話にすぎない。臓器や個体のレベルで我々が老化と認識している症状を引き起こしているメカニズムはいまだ不明である。
これほど進んでもまだ、本当の「老いとの戦い」はまるで終わっていない。
老化に深く関わると目される物質の一つに「テロメア」というものがある。
遺伝子を格納している染色体の末端に存在する構造で、染色体を保護していると考えられている。
細胞分裂のたびに短くなり、やがて染色体の不安定化や細胞の老化を招くと考えられている。
ノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士は、テロメアが短くなることを抑えれば老化が防げると唱えている。
「ある種のタンパク質」の成長を阻害すれば、寿命はもっと伸びるらしい。
「PAI1」というたんぱく質を「持っていないこと」が長生きと関係しているとも判明しているという。
まだまだ最終決着は見えないが、それでも人の興味は「どんどん解決する方向」へと進んでいると思う。
 
そうした動きを応援しなければ、と思っている。
 
 
「老化防止」新市場生む
2019年4月14日 21:30
最近私も小さい文字を読むのが辛くなってきた。この原稿を執筆しているときもフォントのサイズは相当大きい。だが、年寄り呼ばわりされそうなので誰かに見られないようにひそかに書いている。
2000年エヌ・アイ・エフベンチャーズ(現・大和企業投資)に入社し、11年投資第一部副部長兼VC投資第四課長。14年5月、DCIパートナーズ社長就任。
頭では自分の身に起こることとわかっていても、どこかで信じていなかったこの老化現象。認知症、がん、脳梗塞心筋梗塞。これらの恐ろしい病気も、結局のところ老化の症状にすぎないという見方をする研究者も存在する。「生老病死」。人類に定められた苦悩の一角を占める老いとは一体何なのか。
 
サイエンスで老化を定義しようにも、まだまだ分かっていないことが多い。サーチュイン遺伝子エピジェネティクス、糖化最終生成物(AGE)、活性酸素など、関連する遺伝子や分子の存在は色々と指摘されているが、細胞レベルの話にすぎない。
 
臓器や個体のレベルで我々が老化と認識している症状を引き起こしているメカニズムはいまだ不明である。
 
老化に深く関わると目される物質の一つに「テロメア」というものがある。遺伝子を格納している染色体の末端に存在する構造で、染色体を保護していると考えられている。
 
細胞分裂のたびに短くなり、やがて染色体の不安定化や細胞の老化を招くと考えられている。ノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士は、テロメアが短くなることを抑えれば老化が防げると唱えている。
 
ただ、単純にいじってしまっていいのだろうか。実はがん細胞は自らテロメアを修復し、無限の増殖能を獲得していることが知られている。
 
正しいいじり方が重要な気がするが、テロメアの保護が寿命を延ばしているとみられる例が近年発見された。
 
200年以上前に渡米したドイツ系移民の宗教集団で、アーミッシュというコミュニティーがある。電気や自動車を使わず、他の米国人とは交接しない。
 
コミュニティーの中に血が固まりにくい女の子がおり、不思議に思った医師が177人のアーミッシュの血液を調べた。その結果、43人が「PAI1」というたんぱく質を作る遺伝子を持っていないことがわかった。
だが、驚くべきなのは正常な遺伝子を持つアーミッシュの人たちに比べて、PAI1を持っていない人たちの寿命が10年近く有意に長かったのである。
 
テロメアが長く、糖尿病や肥
満といった老化に伴う病気にかかる人が少ないこともわかった。
 
アーミッシュの一部の人達は先天的にPAI1を持っていなかったが、後天的に医薬品でPAI1を阻害することは可能である。その医薬候補品の特許を有する企業が日本に存在する。東
 
北大学発のスタートアップ、レナサイエンス(東京・中央)である。
人間が設けた薬事制度のために「寿命を延ばす薬」を直接開発することはできないが、同社は老化に関わる疾患一つ一つに落とし込んで医薬品の開発を進めている。
人間では認められていないが、ペットに対してはその辺は曖昧だ。寿命を延ばせるドッグフードができるなら、明日から私の主食にしたい。
日経産業新聞 2019年4月11日付]
 

 

隠せぬ時代。

*[ウェブ進化論]マネーがデジタル。
ドイツのメガバンクが「資金洗浄疑惑」で揺れている。
一市民としていつも思うのが「やっぱり資金洗浄って必要なんだ」という素朴な感想だ。
しかしながら武器を売ったり、架空の取引をしたりして「作ったお金」は金額が多いほどに「使いにくい」らしい。
これを大きな流れで見れば「健全化」に向かっているのではないだろうか。
半世紀も前なら、庶民の知らないところでもっと巨額の"洗浄"が行われていたのに違いない。
パナマ文書始め「悪事は隠しておけない時代」になってきていると思う。
逆に悪人の側からすれば「使い方」とか「資金移動」の仕方まで考えないと「ただ奪取した大金がある」というだけでは使えないわけだ。
自分はこの「悪人も商売で儲けて」、再び「日常の世界で使おうとする」という感覚が面白くて仕方ない。
「悪人マーケット」の世界の人は、「そちらのルール」で無法な行いをし、けれど必ず「こちらの日常の世界」で過ごそうとする。
どんな悪いヤツも「みんなと一緒の世界で楽しみたい」わけだ。
これから一層マネーが加速度的に電子化されていくと、今のようなロンダリングとか強奪みたいなことはできなくなると思う。
「すべての金にIDがつく」時代はもうそこまで来ている。
 
 
ドイツ銀、1億7500万ユーロを資金洗浄
2019年4月18日 7:45
ドイツ銀行は2011年から14年にかけて少なくとも1億7500万ユーロ(約221億円)をロシアの犯罪者のために資金洗浄していたとみられ、罰金や訴訟、関与した幹部の訴追に発展する恐れがある。
これは17年3月にジャーナリスト団体「組織犯罪と汚職報道プロジェクト」が暴露した「ロシアン・ローンドロマット」と呼ばれる200億ドル(約2兆2400億円)に上る資金洗浄の仕組みの一部だ。
ドイツ銀は既にデンマークのダンスケ銀行による資金洗浄疑惑への関与で米独当局による調査を受けている=ロイター
英紙ガーディアンが最初に報じた18年4月24日付の「極秘」資料によると、暴露から1年後、ドイツ銀の金融犯罪対策担当幹部2人が監査役会に対し、同行の関与に関する内部調査についての状況報告を行った。
ドイツ銀は資料が本物だと認めたがそれ以上のコメントは控えた。内部調査ではドイツ最大手である同行の新たな資金洗浄への関与が明らかになった。同行は現在、独コメルツ銀行と統合交渉を行っている。

租税回避地資金洗浄疑惑も

ドイツ銀は既にデンマークのダンスケ銀行による最大1600億ユーロの資金洗浄疑惑への関与で米独の金融規制当局による調査を受けている。資金の大半はロシアから送金されていた。
さらに顧客の租税回避地タックスヘイブン)での資金洗浄を手助けした疑惑でフランクフルト検察が刑事捜査している。
これらの行為は16年に富裕層や政治家の租税回避の実態を明らかにした「パナマ文書」に記載されていた。18年末には総勢170人の警察官や検察官が2日間にわたりドイツ銀の本社を捜索した。
17年1月に同行は、「ミラートレード」と呼ばれる仕組みを利用して、ロシアからの100億ドルを資金洗浄した疑惑に関する米英の捜査を終結させるため6億3000万ドルの支払いに同意した。
事情を知る人物によると、「ロシアン・ローンドロマット」はこれらの疑惑とは無関係だという。
スライド資料によると、報告を行った幹部は監査役会の会計検査委員会に対し、ドイツ銀が資金洗浄スキームで「金融犯罪に関する法律、規制を含む各種の義務」に違反した可能性があると警告した。また規制当局から「相当な懲戒処分」を受ける可能性も示唆した。
ドイツ銀は、モルドバの銀行と倒産したラトビアのトラスタ商業銀行との取引を通じて「ロシアン・ローンドロマット」に関与した。
2つの銀行はロシアの犯罪者の資金洗浄に利用された。英国で登記されたペーパーカンパニー間での架空の融資を使い、ロシア企業がユーロ圏へ資金を移動するという複雑な仕組みだった。

中継銀行の役割果たす

ダンスケ銀行の件と同様、ドイツ銀は中継銀行の役割を果たし、2行に代わって国境を超えた資金移動の手続きを行った。
報告資料によれば、ドイツ銀は12年と15年に「ロシアン・ローンドロマット」とは別の理由で両行との関係を打ち切った。
監査役会のメンバーは、同行が不正な仕組みに気付いたのは、17年3月にジャーナリストから「金融資産が同行の中継銀行ネットワークを通じて違法に移されている」との情報を得た時だったとの報告を受けた。
「この秘密情報を得て初めて、ドイツ銀行が世界規模での調査を開始できた」と報告資料は記している。
金融犯罪対策チームは「ロシアン・ローンドロマット」の文脈において、同行が2581の「高リスクの個人や団体」と取引し、うち30が同行の直接の顧客だったことを発見した。
これらの個人や団体に対し4種類の通貨で決済された金額は現在の為替レートで1億7500万ユーロに上る。これには4740万ドルの米国関連の支払いが含まれる。
ドイツ銀は17日、内部調査が予定どおり18年第4四半期に終了したかどうかは公表しない方針を明らかにした。
「進行中または今後行われる可能性のある調査についてはコメントできない。また規制当局が関係する問題についてもコメントできない。当行はあらゆる公式な捜査に対して適切な情報提供を続ける」と広報担当者は話した。
By Olaf Storbeck
(2019年4月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/
(c) The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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数学の時代。

*[ウェブ進化論]足りなかったもの
すごい時代だ。日経より。
(政府の有識者提案では)「数理・データサイエンス・AI」をデジタル社会における「読み・書き・そろばん」に当たる素養と規定。
(中略)
行列やベクトルの概念を知らない大学初年度の学生に、近年のAI関連イノベーションの中核である深層学習の原理をどう教えるか。あるいは深層学習の原理は教えずに、使い方だけを教えるのか。 
自分はシステム開発の現場にいる立場として思う。
「数学の知識」は確かに、圧倒的に足りていない。
だってほとんどの(ソフト開発の)人が、文科系出身者だ。
 
日本では理系学部の学生は、直ちにメーカーに吸い込まれていった歴史がある。
(自分も制御系の仕事で「ラプラス変換」とか「ベクトル解析」と言われてびっくりしたが、それを理解出来るエンジニアはごく僅かだった。)
今後は理科系の特に応用分野では「現場との融合」が進む時代になりそうだ。
同リポートが指す「数学」は、純粋数学応用数学統計学、確率論、さらには数学的な表現を必要とする量子論素粒子物理学、宇宙物理学なども含むとしている。AIなど専門領域のプログラマーの能力は数学により飛躍的に高まるとし、数学は破壊的なイノベーションを起こすための普遍的かつ強力なツールになるとうたう。
"数学こそ"が武器になる時代になるのがIoTなのかもしれない。
さらに
一方、日本は「コンピューターサイエンスが専門分野に閉じ過ぎている」と複数の大学関係者が指摘する。複数の分野を専攻するダブルメジャーなどを通じた、他の産業との連携にたけた人材の育成ができていないというわけだ。
確かに日本の研究者は「他分野との交流」も苦手だと感じる。
「サイエンティストはコミュニケーションやマネジメントが極めて難しい」というけれど、変わらねばならないのは当の研究者のマインドそのものだろう。
大流行りの「オープンイノベーション」が一番必要なのは研究者の世界ではないだろうか。
 
この東大のデータサイエンスのスライドは面白いです。
 
 
 

 

衝撃のAI人材25万人育成計画、裏に2つの「失策」

政府の統合イノベーション戦略推進会議は2019年3月29日、人工知能(AI)技術を活用できる人材を年間25万人育成する大胆な戦略案を取りまとめ、公表した。今夏に正式決定する。当のAI研究者にとっても衝撃的な内容だったようだ。
 
有識者提案として公表された今回のAI戦略案は、政府がAI関連領域で直ちに実行すべき政策を提言したものだ。
数理・データサイエンス・AIをデジタル社会における「読み・書き・そろばん」に当たる素養と規定。年間約50万人が卒業する大学生や高等専門学校高専)生全員に、文理を問わず初級レベルの数理・データサイエンス・AI教育を課す。このうち約25万人について、それぞれの専門分野でAIを応用できる人材に育成する。日本における大学・高専の理系学生のほぼ全てと文系の一部を「AI人材」に仕立てる考えだ。
 
■行列・ベクトル知らない大学生
AI研究の第一人者として知られる、はこだて未来大学の松原仁教授は、25万人育成という計画について「AI研究者にとっても驚きで、仲間の間で大いに話題になった」と話す。そのうえで「初学者向けカリキュラムの作成など、具体的な実装は容易ではなさそうだ」と述べた。
特に大学の教育現場で混乱を生みそうなのが、高校の学習指導要領との整合性だ。12年度入学以降は「データの分析」が必修になる一方、「行列」が削除された。22年度からは「ベクトル」が文系の必修から削られる予定だ。
行列やベクトルの概念を知らない大学初年度の学生に、近年のAI関連イノベーションの中核である深層学習の原理をどう教えるか。あるいは深層学習の原理は教えずに、使い方だけを教えるのか。大学の教育現場は悩ましい問題に向き合うことになりそうだ。
政府のAI戦略は、19年をめどに初級レベルの標準カリキュラム・教材の開発と全国展開を進めるとしている。外国の優良教材を含めたMOOC(大規模公開オンライン講義)の活用もうたっている。
 
■「数学」とIT戦略に隔たり
政府のAI戦略案がここまで挑戦的な内容になった背景には、日本の科学技術政策における2つの「失策」への反省がありそうだ。
1つは、これまで日本は産業におけるIT(情報技術)の重要性は訴えつつも、その基盤である数学と産業との連携がおろそかになっていた点だ。
経済産業省はこれまでITの重要性を喧伝(けんでん)する一方、工学系の研究者と交流するばかりで、数理系の研究者へのアクセスがほとんどなかった」。経産省情報技術利用促進課の中野剛志課長はこう率直に反省する。「今後は文部科学省と連携し、数理へのウエートを高めていく」(中野課長)。
IT産業の隆盛を誇る米国のコンピューターサイエンス(計算機科学)は伝統的に数理科学の研究との結びつきが強い。例えば米グーグルを創業したセルゲイ・ブリン氏は大学でコンピューターサイエンスと数学の双方を専攻している。
経産省はこの反省に立ち、文科省と共同で19年3月26日、「数理資本主義の時代~数学パワーが世界を変える~」というリポートを発表した。
同リポートが指す「数学」は、純粋数学応用数学統計学、確率論、さらには数学的な表現を必要とする量子論素粒子物理学、宇宙物理学なども含むとしている。AIなど専門領域のプログラマーの能力は数学により飛躍的に高まるとし、数学は破壊的なイノベーションを起こすための普遍的かつ強力なツールになるとうたう。
 
■既存産業との連携で出遅れ
科学技術政策におけるもう1つの失策は、AIやデータサイエンスといった研究領域と、製造業など既存産業との連携を図る施策で、海外に出遅れた点だ。
米政府は1980年ごろから、AIやデータ分析を含むコンピューターサイエンスの重要性を提唱。この結果、多くの米大学が電気工学科などを縮小し、コンピューターサイエンスの学部を立ち上げた。日本は遅れること10年、90年代後半からコンピューターサイエンスの拡充に乗り出した。
だが当の米政府は07年に方針を転換した。中国やインドの大学がコンピューターサイエンスの人材を大量に育成し、従来のままでは競争力は維持できないと分析。機械、法律、医療などと組み合わせ、複合領域で専門を持つ人材を育成すべきだと提言した。これが後に、あらゆるモノがネットにつながるIoTや自動運転、医療AIなど新たな産業領域を生み出すきっかけとなった。
 
一方、日本は「コンピューターサイエンスが専門分野に閉じ過ぎている」と複数の大学関係者が指摘する。複数の分野を専攻するダブルメジャーなどを通じた、他の産業との連携にたけた人材の育成ができていないというわけだ。
メルカリのAI戦略を担う木村俊也エンジニアリングディレクターは、世間が認識するAI人材と、現実に不足している人材にズレがあると指摘する。「AI技術そのものよりも、AIに学習させる実データがどこにあるか、AIをプロダクトにどう落とし込めるかを担える人材が実は不足している。そうした人材を積極的に採用したい」(木村氏)。
 
数理やデータサイエンスを強みとする人材を活用するうえで、日本の企業には人材の専門性を正当に評価するノウハウが不足しているとの指摘もある。
AIやデータサイエンスに強みを持つALBERTの創業者で社長退任後に産学連携支援ベンチャーを立ち上げた上村崇氏は「ALBERTで多くのサイエンティストを雇用したが、サイエンティストはコミュニケーションやマネジメントが極めて難しい」と率直に語る。「全ての社員を同じ軸で十把一絡げに評価するのではなく、専門人材としてそれぞれ異なる評価と待遇が必要になる」(上村氏)。
 
■戦略に魂を入れる作業を
「25万人育成」など大胆な数字をうたう今回のAI戦略案には、こうした過去の失策の反動という側面が透けて見える。インパクトのある数字を提示することで、固着した現状を動かそうとする気概を感じる。
ただし、戦略を実効性あるものにするには、学生の数理の素養に応じた多様なカリキュラムの検討や、産学連携を得意とする人材の発掘や育成など「魂を入れる」作業が不可欠だ。それなしにはAI戦略に基づく各省庁の施策も、ただの数合わせに終わる恐れがある。
(日経 xTECH/日経コンピュータ 浅川直輝)
[日経 xTECH 2019年4月3日付の記事を再構成]
 

 

まだまだこれからマイスター。

*[ウェブ進化論]人と技術。
日経より。
工作機械が効率よく稼働するように工具を調整、交換する作業は熟練技術者の経験と勘に頼る。
町工場の強みである一方で、技術者が退職すると失われてしまう危うい長所でもある。
田口紀成氏はAIの活用で「熟練職人に頼っていた仕事がアルバイトでも代替できる」と話す。
(中略)
これで1日あたりの停止時間が60分減り、50%だった製造ラインの稼働率が90%弱に跳ね上がった。
(中略)
180社ある導入先の8割が中小企業で、導入前は「原価の把握すらできていなかった企業がほとんど」(木村社長)という。
まだまだ、日本の中小企業の強みはありそうだ。
「職人技+IT」の本領発揮はこれからではないだろうか。
そのうち宮大工とか、土木作業とか、大学の基礎研究なんかにもどんどん浸透していくのだろう。
そう考えると「IT/AIと人間」の相性はまだまだ良さそうだ。
 
どんどん「人の技」を超えていくのが「テクノロジーという道具」だと思う。
ITが"人のはるか先"を行く時代はそう遠くないのではないだろうか。
人がそれだけ「道具」を使いこなしていくのだ、とも思う。
 
町工場の危機をAIが救う 新興企業が強力サポート
2019年4月11日 21:30
製造品のコストを正確につかむ「原価計算」や生産設備を最適に動かす調整はメーカーのコスト競争力を左右する重要な工程だ。しかし中小企業では作業を人手や熟練者の勘に頼り、効率が悪い。そんな現場の生産性改革にスタートアップ企業が動き出した。IT(情報技術)を活用した「コストテック」が日本のものづくりの足腰を支える中小工場を救う。
見た目とIT活用の実態がまるで異なる町工場が東京都青梅市にある。自動車用パイプ加工の武州工業の本社工場だ。一見するとパイプを曲げるプレス機が立ち並ぶ普通の作業現場だが、目をこらせばプレス機の可動部分には直径10センチほどの白い箱が付いている。

1時間単位で原価を把握

箱の正体はスタートアップのKOSKA(コスカ、東京・港)の加速度センサー。計測した加工時間や生産数量などを近くに設置した親機で計算し、ネット経由でコスカのサーバーに送る。
検査工程には重量センサーを置き、カゴに入った部品の重量の変化で検査済み数量や作業時間を算出する。これで製品や工程の実績原価をリアルタイム計算し、要因も分析する。結果はタブレットスマートフォンスマホ)で見られる。
「実績原価を素早く把握し、細かく管理できるのに驚く」(武州工業の林英夫社長)。タブレットの画面には工程ごとに実績原価や1時間単位の中断損失金額などがグラフで表示される。予算より原価が上がっている工程を見つけると林社長が現場に急行し、改善を指示する。「正確な原価も分からなかった以前とは様変わりだ」という。
同社は年商が16億円ほどの町工場。1年前に同業メーカーのタイ工場を視察すると、人件費は10分の1だった。「このままでは海外工場に顧客を奪われる」と危機感を抱き、新たなコスト管理の手法を模索し始めた。
そこで出会ったのがコスカの曽根健一朗社長。18年11月から同社のソフトを導入し、原価管理の自動化実験を始めた。
判明したのは意外な事実だった。低コストと思い込んでいた検査工程に想定以上の費用がかさんでいたのだ。正確な検査コストを上乗せして再計算すると「予想外に採算の悪い製品があった」
そこで人工知能(AI)の開発企業と組み、検査をAIで自動化するシステムづくりに動き出した。「1年後には日次決算のシステムに移行し、生産性を20%上げる」。林社長の意識はコスカとの出会いで一変した。
コスカの曽根社長は独学でプログラミングを学びながら一橋大学の大学院で原価計算を研究し、18年10月に起業した。システムは月額4万~5万円で提供し、まず約10社が導入する予定。町工場の強い味方だ。
18年版の中小企業白書によれば日本の中小企業の数は企業全体の99.7%を占める。そして中小工場の多くは様々な大手企業に部品を納入し、サプライチェーンを構成する。中小の収益改善は、日本の製造業全体の競争力向上に欠かせない。
工作機械が効率よく稼働するように工具を調整、交換する作業は熟練技術者の経験と勘に頼る。町工場の強みである一方で、技術者が退職すると失われてしまう危うい長所でもある。コアコンセプト・テクノロジー(CCT、東京・渋谷)はAIで交換すべき時期を正確に割り出し、コスト抑制を手助けする。
温度や振動を検知する50個前後のセンサーを工作機械のモーター部分などに取り付け、リアルタイムにデータを得る。熱の変化などから工具の摩耗具合やずれを推定し、AIが0コンマ1ミリメートル単位で縦横それぞれの工具の補正距離や交換時期を正確に指示する。

工具関連コストを2割削減

中堅切削加工会社が導入すると、工具関連のコストを2割以上も削減できた。以前は不良品の発生を避けるために実際の寿命より早く頻繁に工具を交換し、コストが膨らんでいたからだ。
金属の切削で不良が発生しないギリギリのタイミングまで工具を使い切ることは、コスト低減に直結する重要な課題。一般的な部品は製造コストのうち工具調達費だけで数%を占めるという。
コアコンセプト最高技術責任者(CTO)の田口紀成氏はAIの活用で「熟練職人に頼っていた仕事がアルバイトでも代替できる」と話す。中堅企業から大手まで約30社で導入が進んでいる。
自社の製造現場で培ったコスト管理ノウハウを普及させるのはiスマートテクノロジーズ(愛知県碧南市)。電気街で買える安価なセンサーや通信部品を使い、中小企業の原価改善を助ける。
建築用ねじを手がけるトーネジ(茨城県つくば市)は18年3月、3台の機械にiスマートの装置を導入した。それまでは生産量しか数えていなかったが、加工の待ち時間や機械の停止時間も把握できるようになった。不具合を見つけるとビデオカメラで詳しい状況を撮影し、改善する。これで1日あたりの停止時間が60分減り、50%だった製造ラインの稼働率が90%弱に跳ね上がった。
iスマートは自動車部品製造の旭鉄工(愛知県碧南市)が16年に子会社として設立した。旭鉄工のラインに技術を取り入れると生産性が34%上昇し、年間1億円以上の労務費を減らせた。「これは売れる」と直感し、外部への販売を始めた。
設備に付けるセンサーとデータの送受信機、クラウドシステムをまとめて月間約4万円で提供する。トヨタ自動車出身の木村哲也社長らが現場で指導するのも特徴だ。
180社ある導入先の8割が中小企業で、導入前は「原価の把握すらできていなかった企業がほとんど」(木村社長)という。それでも導入後は生産性が平均で約1割改善した。この1割が、低コストの海外工場に対抗する大きな武器になる。
(企業報道部 鈴木健二朗、京塚環)
日経産業新聞 4月9日付]

Who am I?

*[ウェブ進化論]自分を証明するもの。
泥棒や強盗などの犯罪がどんな手口で起きているか、ということについては自分たちは熱心に検討する。
一方ネットの世界では「そういう(安全性の)こと」は誰かが担っているのに違いない、と思い「ひたすらの便利さ」が追求される。
しかもその「便利の伸び具合」は半端ではない。
 
インターネットも生誕40年。
「最大の問題は、ほとんどのセキュリティーがアプリケーション層に集中していることだ。実際のハッキングのほとんどはネットワーク層で起きている。」
という一文を、自分たちはよく理解する必要があると思う。
 
いよいよネットで「公証」とか「登記」などもしていくらしい。
"ネットの手続きこそが本人"になる日も近そうだ。
「戸籍とは」「実印とは」「謄本とは」そして「私とは」を問い直す時代が来るだろう。
ネットで自分のIDを証明できなければ、アナログで自分を説明できない日がくると思う。
ブロックチェーンの台帳にしか「自分」が残らない時代がいよいよ現実になりそうだ。
 
 
 
ネットアクセスを安全に
2019年4月11日 21:30
ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の設計者であるティム・バーナーズ=リー氏が最近、「デジタル青年期からより成熟した、責任ある、包括的な未来への道のり」を確かにするため、より良いウェブを構築する重要な時期にさしかかっているとの認識を示した。
ジョアナ・ドレイク Current TVなどのメディア関連企業の幹部やDeNA WESTの最高執行責任者を経て、コア・ベンチャーズ・グループのジェネラルパートナー。スタンフォード修士、カリフォルニア大バークレー校卒。
この認識は、あらゆるものをつなげる方法として利用されているインターネットのインフラが直面する課題に当てはまる。40年前に作られたウェブの基盤プロトコルであるTCP/IPは当初よりもはるかに広い用途に使われており、デバイスのハッキングやセキュリティー全体の侵害といった報道を毎日のように目にする。
リモート・イットはシリコンバレーに拠点を置くスタートアップだ。そのサービスはソフトバンクによって企業顧客に安全なネットワークソリューションを提供している。日本国籍を持ち、最高経営責任者(CEO)で共同設立者のリョウ・コヤマ氏が、ネットワーキングの課題とそれらを克服するアプローチを語ってくれた。
――起業の経緯を教えてください。
「個人的なニーズからアイデアが生まれた。共同設立者のマイク・ジョンソン氏と私は、それぞれの自宅に監視機器を設置していた。ビデオカメラを使って遠隔から見る方法は複雑なだけでなく、セキュリティーの問題があることに気づいた」
「我々は以前のスタートアップでハードウェア内の『TCP/IPスタック』を開発した。その知識を駆使し、機器層でなくデバイスに直接、安全にアクセスする技術を開発した」
――リモート・イットの顧客層を教えてください。
「創業当初は新しいデバイスへの遠隔接続をする方法を必要とする顧客が多かった。たいていの場合はモバイルネットワークを介したものを含んでいた。今ではこのような顧客に加え、大規模なネットワーク機器のインストールベースを持ち、安全な遠隔アクセスを実現しようとする顧客が増えつつある」
――現在のネットワークの問題をどう捉えていますか。
「最大の問題は、ほとんどのセキュリティーがアプリケーション層に集中していることだ。実際のハッキングのほとんどはネットワーク層で起きている。企業はアプリケーションのセキュリティーに大金をはたいている。誰もネットワーク層の開発をしていないためだ」
――自身がセキュリティー担当の役員だとしたら、どのような行動を取りますか。
「機器のメーカーの担当者にはネットワークセキュリティーの専門家なのか、それともネットワークの担当者に任せているのかを尋ねる。攻撃の多くはセキュリティー上の脆弱性を見つけ、他のデータに『ジャンプ』した結果、起こってきた。メーカーは自社のデバイスが侵害されることだけでなく、その侵害によってユーザーに起こり得ることにも責任があると気づくべきだ」
日経産業新聞2019年4月9日付]
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高齢者の出口。

*[次の世代に]行政頼みを止められるか。
日経より。
グループホームと看多機サービス。そして飲食店と障害者就労継続支援事業所。これらを分散させて運営するより、一カ所に集約して注力する方がいいのではないか。これだけの土地があれば、職員の働きやすさの実現と多世代交流を可能にする保育園も併設できる。住まいは、グループホームではなく、もっとスケールアップしてサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)にしよう。
介護の仕事に接していると、日々「構造問題」に思いが及ばない日はない。
不思議なのは「医療保険」も同じ構図なのに介護ほど問題になっていないことだ。
(やはり「病気」について世間は寛容なのかもしれない)
 
国の財政がどこで破綻するかは分からないが、今高齢者が「年金+生活保護」でなんとか生きているのを考えると、絶対にどこかで「自力の生活」ができる方法を探さないと高齢者は野垂れ死にになるだろう。
だから「そうならないために行政に予算割く」のは本末転倒だ。
どれだけ「介護(医療)保険や行政の手間をかけない仕組みを作るか」がテーマになると思う。
そんな試みがいくつかの地域で始まっている。
記事にある仙台の「アンダンチ」もその一つの先進事例だ。
高齢者をどう支えるか。
高齢者は(自ら)どう生きるか。
を地域が考えていかなければ(行政まかせでは)多くの地域は廃れてしまうだろう。
「しかし、「アンダンチ」の高級サ高住の運営は、福井さんの最終目標ではありません。本当に実現したいのは、低所得でも安心して暮らせるサ高住の開設なのだと言います。」
ゴールはそこに違いないと思う。
 
 
 

介護を知らなかった30代元商社マンが11億円の融資を受け、複合福祉施設「アンダンチ」を開設できた理由

多世代交流複合施設アンダンチ。アンダンチとは仙台の方言で「あなたの家」のこと
介護のことも介護業界も、よく知らない。そんな30代の若者が介護業界に参入し、2億円の融資を受けて介護事業所を新規開設。その3年後には、さらに11億円の大型融資を受けて1000坪の土地を購入し、多世代交流複合施設を開設しました。
それが、2018年8月に開設した「アンダンチ」(宮城県仙台市)です。開設したのは、元商社マンの福井大輔さん(35歳)。なぜそんなことができたのでしょうか。まずは、福井さんが最初に開設した介護事業所の話から。

ホームページもない介護事業所の多さに衝撃

商社に勤めていた福井さんが介護業界に関わったきっかけは、開業医の親族から、「在宅患者を支えるための環境整備に力を貸してほしい」と求められたこと。いずれは独立したい、起業するなら国際協力分野で、と考えていた福井さん。数ヶ月悩みましたが、介護事業へのチャレンジを決めました。
2013年9月に商社を退社。介護職の入り口となる介護職員初任者研修を受講しながら、どの介護サービスに参入するかを検討します。しかし、情報を集めようとインターネットで仙台市内のデイサービスなどを検索しても、ホームページがない事業所が多く、あっても情報があまり更新されていません。生きた情報をスムーズに得られないことに、“情報が命”の世界で生きてきた元商社マンの福井さんは驚きました。
「介護業界の外から来た人間からすると、介護事業所でどんなことをやっているのかよくわからない。非常にクローズドな空間、というイメージです。インターネットでも情報を集められないのでは、ケアマネジャーに事業所を紹介されたご利用者やご家族は、自分で足を運んで見に行くしかありません。今後、高齢者がますます増えていくのに、このままでいいのかと感じました」
実際、介護事業、中でも中小事業者が多い訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスでは、ホームページの開設があまり進んでいません。というのも、在宅の介護サービスは、サービス提供エリアが限定されていて、広いエリアからの集客に向くインターネットより“口コミ”が重視されがちだからです。そのため、今も、ホームページ整備やインターネットでの情報発信へのモチベーションが低い事業者は少なくありません。
福井さんは、事業所を開設したらインターネットで積極的に情報発信しようと決めました。「顔がわかる写真の掲載OK」「名前の掲載OK」など、きめ細かい同意書を作成し、利用者の承諾を得る。そして、SNSでの情報発信を積極的に行っていく。こうした実践は、事業所開設後、大きな力を発揮していくことになるのです。
「福ちゃんの家」「アンダンチ」を運営する(株)未来企画の代表取締役・福井大輔さん(筆者撮影)

苦しんだ、事業所開設後の1年半

2015年7月、福井さんは小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能サービス)「福ちゃんの家」を開設しました。小規模多機能サービスは、住み慣れた地域で暮らし続けたい人を支える「地域包括ケア」の中核的な介護サービスとして、2006年に創設されました。事業者は、通い、訪問、泊まりのサービスを、利用者の心身の状態や家庭の事情に応じて組み合わせて提供し、要介護度ごとの月額定額制の介護報酬を受け取ります。
小規模多機能サービスは、在宅で暮らす認知症をもつ人を支えるのに、非常に有効なサービスです。しかし、訪問にも通いにも対応できる人材の確保や、収益性の問題などから、全国的に見ても、なかなか事業所数がふえていかない状況にありました。
当時、普及途上だったこのサービスに、バックに親族の医療法人があるとは言え、介護業界初心者である福井さんが初仕事として取り組むのは大きなチャレンジです。当初は、職員も最低基準を満たす人数をようやく確保してのスタートでした。
「開設から1年半ぐらいは本当に大変でした」と、福井さんは言います。
利用者は思うように増えない。増えても、介護報酬が少ない要介護度が低い人ばかり。その一方で職員の退職も続き、福井さんは足りない夜勤担当をカバーするために「ほぼ、事業所に住んでいた時期がありました」と笑います。
2015年7月に開設した「福ちゃんの家」(「福ちゃんの家」ホームページより)

情報発信が利用者も職員も引き寄せた

そんな中で、成果が見えてきたのが、前述のSNSでの情報発信でした。フェイスブックやブログに掲載した日々のケアや取り組みを見たケアマネジャーや家族から、感謝の言葉や好意的な評価のフィードバックを受けるようになったのです。
「画像を見てもらえるSNSでは、いかにいい表情の瞬間を捉え、それを発信するかが重要です。『顔の掲載OK』という同意を得て取り組んだ成果は、思った以上に早く出たと感じました」
SNSでの情報発信は、人材の確保にもつながりました。
「ホームページやSNSの情報を見た介護職の方から、『職員を募集していないか』と問い合わせが入るようになったのです。うちのケアに共感して連絡をくれる人ですから、採用すると、実際、いいケアを提供してくれます。開設から1年半かかって、ようやくご利用者も増え、いい人材も採用でき、運営全体がうまくいくようになりました」
利用者の女性の85歳の誕生祝いに、本人の希望で寿司屋でランチ(「福ちゃんの家」フェイスブックより)

「なぜ福井さんのところには人が集まるのか?」の問い

福井さん、そして「福ちゃんの家」は、町内会長のサポートもあり、地域住民との関係も深めていきました。
「地域のゴミ拾いにご利用者と一緒に参加したり、子ども会の廃品回収に協力したり。毎月、うちの栄養士や地域の方を講師役にした料理教室も開いています。昨年は、インターンで来た大学生が、地域の子どもたちを集めて、2週に1回、学習支援を行ったりしました」
そうした取り組みも、福井さんはすべてSNSで発信しています。それを見た他の事業所から、「なぜ福井さんのところは人が集まるのか」と聞かれ、情報発信の大切さを伝えたこともありました。
そうした他事業所との関わりから、福井さんは事業者同士の勉強会の開催を提案。月1回(現在は2ヶ月に1回)、小規模多機能サービスの管理者やケアマネジャーが集まり、利用状況についての情報交換や、抱えている課題について話し合う勉強会を開催するようになりました。
月1回開催されている「福ちゃんの家」の料理教室の様子。この日のメニューはピザ(「福ちゃんの家」フェイスブックより)

地域の事業所の連携による「分担営業」を提案

勉強会で見えてきたのが、病院との連携のあり方でした。病院は、小規模多機能サービスにとって、退院患者を紹介してくれる重要な連携先です。しかし、病院で退院支援を担う地域連携室やソーシャルワーカーには、まだ小規模多機能サービスをよく知らない人もいます。また、小規模多機能サービスを退院する患者に紹介しようと考えても、空きがある事業所を探す手間をかけられない場合もあります。
「そこで、ソーシャルワーカーの方の仕事を軽減しつつ、小規模多機能サービスに紹介してもらうためにどうしたらいいかを考え、事業所の状況一覧表をつくることを提案しました。事業所名、住所、連絡先、管理者名、ケアマネジャー名、定員数、利用者の状況、空き状況、受入れ可能な利用者のタイプなどを、エクセルの表にまとめたのです」
併せて、各事業所と病院の所在地をマッピングした地図も用意。空き状況表とセットで持参し、病院に営業することにしました。役立つ資料をつくって営業に結びつけるあたりは、さすが元商社マンです。
「営業と言っても、どこの事業所もマンパワー不足で人員は割けません。だから、それぞれの事業所が、この2つの資料を持って自事業所近くの病院や地域包括支援センター*に行き、地域の小規模多機能サービス全体の営業をすることにしました。いわば、分担営業です」
*地域の介護サービスや高齢者の生活支援などについての総合相談窓口
A事業所が近くのB病院に営業に行っても、時にはA事業所ではなくC事業所への患者の紹介があるかもしれません。しかし、C事業所が営業に行ったD病院からA事業所への患者の紹介が来る場合もあります。小規模多機能サービスの事業所同士で持ちつ持たれつ。これが功を奏しました。
「病院や地域包括支援センターからは、紹介しやすいと評価していただきました。事業所間でも、今は、『A病院から紹介が来たが、うちでは受けられないからお宅で受けてもらえないか』といった話ができるようになっています」
この勉強会の評判が仙台市に伝わり、3月には、市主導で市内の全小規模多機能サービスと全看護小規模多機能型居宅介護*(以下、看多機サービス)を合わせた、50事業所ほどの連絡会が開催されることになりました。
*小規模多機能サービスに訪問看護機能が加わったサービス。
「福ちゃんの家」では年末に地域住民も招いて餅つきを行う(「福ちゃんの家」フェイスブックより)

地域全体を全事業所で支える意識転換につながるか

さらに、福井さんの提案で、今、仙台市と一緒に、この連絡会で取り組もうとしているのは、各小規模多機能サービス事業所がどの地域まで訪問に行っているかをマッピングする作業です。
仙台市は、小規模多機能サービスの設置を中学校区に1事業所と定めています。しかし、実際に事業所からの訪問でカバーできる範囲は、中学校区より狭く、「空白地帯」があるのではないかと、福井さんは感じていました。
「空白地帯を『見える化』できれば、中学校区に1事業所ではなく、小学校区に1事業所必要だとわかるかもしれない。あるいは、空白地帯に開設しようと考える事業所が出てくるかもしれない。『見える化』でわかることがあるのはないかと提案したら、市もやってみようと言ってくれました」
病院への分担営業、空白地帯の「見える化」は、地域で暮らす要介護者を、個々の事業者が支えるのではなく地域の事業者がスクラムを組んで支えていくという、意識の転換につながる一歩になるかもしれません。情報の価値と使い方を熟知している福井さんが加わったことで、仙台市の小規模多機能サービスを取り巻く状況は、今、大きく変わってきているのです。
「アンダンチ」には、サ高住、飲食店「いろは」、企業主導型保育園、看多機サービス、障害者就労継続支援B型事業所がある(筆者撮影)

500坪のはずが1000坪の土地を購入することに

さて、ここからが複合福祉施設「アンダンチ」開設の話です。
福井さんは「福ちゃんの家」を開設した2015年時点で、実はすでに3年後には看多機サービスの事業所を開設することを計画していました。親類の開業医が運営するクリニックで、2014年から訪問診療を始めており、シームレスな医療・介護体制の整備を目指したいと考えていたからです。
小規模多機能サービスを手がける中で、福井さんは、利用者の家族から、在宅介護が厳しくなり、入居先を求める声をしばしば聴いていました。
「だから、住まいのことも考えなくてはと意識していました。それで、当初は、認知症グループホームに看多機サービスを併設させるイメージで、500坪くらいの土地はないかと、銀行に探してもらっていたのです」
同時に、福井さんは介護予防や疾病予防に貢献できる場づくりもしたいと考えていました。それも敷居を低くして、一般の人も足を運びやすい場――「食」から考える健康や予防、ライフスタイルの提案などができる飲食店の運営を考えました。
「経営収支を安定させるため、飲食店に障害者の就労支援事業所を併せたら、障害者の働く場にもなり、収支が安定するのではないかと考えて、こちらは駅の近くのテナントなどを探してもらっていました。ところが、銀行から紹介されたのが、1000坪の土地だったのです」
グループホームと看多機サービス。そして飲食店と障害者就労継続支援事業所。これらを分散させて運営するより、一カ所に集約して注力する方がいいのではないか。これだけの土地があれば、職員の働きやすさの実現と多世代交流を可能にする保育園も併設できる。住まいは、グループホームではなく、もっとスケールアップしてサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)にしよう。福井さんはそう考え、当初の計画の倍の土地の購入を決めました。
こうして、2018年7月、「アンダンチ 医食住と学びの多世代交流複合施設」は生まれたのです。
「アンダンチ」にある「いろは」は、ライフスタイル提案型飲食店。東京・台東区の「(株)結わえる」が、福井さんの理念に賛同し、初めて地方出店した(筆者撮影)

11億円を単独融資した銀行の本気の支援

当時、職員20数名の(株)未来企画(「福ちゃんの家」の運営会社)にとって、1000坪の土地での複合施設運営は、とてつもないチャレンジ。資金面の課題もありました。
「資金力はありませんでした。信用力も、医療法人がバックにあること、『福ちゃんの家』の運営実績があることぐらいです。それでも、この1000坪の土地購入の話は、銀行側から持ちかけてくれました。それはつまり、融資する用意がある、ということだと受け止めました」
(株)未来企画では、「福ちゃんの家」の開設に際し、銀行から2億円の融資を受けていました。さらに1000坪の土地を紹介してきた別の銀行から、役員決裁での11億円の融資。それは、周囲から「奇跡」と言われました。
サービス付き高齢者向け住宅「アンダンチ・レジデンス」のエントランス(筆者撮影)
特別養護老人ホームの新規開設への風向きは、人材不足や入所申込者の減少などを背景に、今、転換期にあります。
「銀行は今、従来型の施設建設への融資は、リスクが大きいと見ているらしいのです。一方、『アンダンチ』のような複合施設を、収支を補完し合える新しいモデルととらえ、成功事例にしたいと考えてくれているようです」
情報を活用し、人を惹きつけ、状況を変えていく福井さんの持つ力を、銀行が高く評価しているということでしょう。
「アンダンチ」を支えていこうという銀行の強い意志は、11億円を複数行による協調融資ではなく、単独融資として実行したことからも見て取れます。
福井さんはサ高住の設計等では、建築デザイン、ケアデザイン、運営スタイルなど様々な面で高い評価を受けているサ高住「銀木犀」シリーズを手がける(株)シルバーウッドと提携。仙台市内にこれまでなかった、ハイクラスのサ高住として開設しました。
無垢の木をふんだんに使い、シンプルな中にも温かみが感じられるサ高住「アンダンチ・レジデンス」(筆者撮影)
住宅内には、薪ストーブがしつらえられたコーナーもある(筆者撮影)
しかし、「アンダンチ」の高級サ高住の運営は、福井さんの最終目標ではありません。本当に実現したいのは、低所得でも安心して暮らせるサ高住の開設なのだと言います。
「系列の医療法人では、人工透析患者の在宅医療を担っています。当初から、そうした患者さんの中でも低所得で不安を感じている方に、安心して暮らせる環境を整備することが、僕が介護業界に転じた理由でした。ですから、どうすればそれを実現できるかを考え、ここまで事業を進めてきたのです。『アンダンチ』のサ高住でハイクラスのケアを提供し、そこで収益を上げる。そうすることで初めて、低所得の方を支える場づくりができると考えています」
2019年2月に「アンダンチ」で開催された介護業界勉強会「未来をつくるkaigoカフェ」で、福井さんと(株)シルバーウッド代表取締役下河原忠道さんが対談。全国から大勢の介護業界関係者が集まった。
高齢者が増え、介護人材不足が続く今、旧態依然とした介護業界の発想で高齢者介護を考え、支えていくことはすでに限界を迎えています。福井さんのような他業界の経験者が加わり、異なる視点から新しい介護業界のあり方を考え、構築していくことが、今、求められているのはないでしょうか。
<取材協力> 
 

 

未曾有の効率化の時代(2)

*[ウェブ進化論]技術の足るを知る。
(日本では働き方改革などと言っていますが)
「もっとスローで行こう」という政策が話題になることもない。
自給自足、なんて一部の活動家の特異な行動に見える。
「もっと便利になるらしいよ」「へぇ、いいね」という話はこれからもずっと続くのだろうか。
 
人工知能の需要予測や、センサー社会の情報収集のおかげで、スーパーで待たされることもなさそうだ。
天候の悪化で空港で足止めを食うことも無くなるかもしれない。
ひょっとしたら「この人と結婚したら苦労しますよ」とか「あなたの教育の仕方には問題があります」なんて助言もしてくれるだろう。
(これは近いうちに実現するのではないだろうか)
そんな風に、今の技術で「自分たちの暮らしの合理化」を究極まで進めて、ようやく「そろそろこのくらいでいいんじゃないの」という議論が始まる。
技術というのは「完璧に人を模倣」しようとすると、最後の部分でひどくお金がかかる。
例外にとことん対応しようとするとコスパが合わなくなるのだ。
 
エラく便利になってみて初めて「足るを知る」という段階に達するのだと思う。
何せ「足るを知る」というのは今の経済界で最大のテーマになりつつある。
社会資本主義がどう、と言われているがこのテの話題が数十年後には「技術の世界」にも波及していくのではないだろうか。
 
 
 

 

未曾有の効率化の時代(1)

*[ウェブ進化論]合理化至上主義。
地球温暖化と言われて数十年経つ。
未だ諸説あるらしいが、まあCO2の排出量を抑えることについては世界中で一致しているらしい。
けれど「排出量の削減」という中で「生産活動そのものを控えよう」という話は聞かない。
これほどの間隔(あるいは感覚)で電車や車や飛行機が必要なのか。
電車は1時間に数本ではダメなのか。
それほど速くなくてもいいのではないか。
そんな方向への議論は聞かれない。
 
一方「なんでもシェアして効率的にしよう」という話は盛んになった。
でも「もっと便利に」という方向にしか話は進まない。
AIが世の中の「需給予測」を正確にできるようになれば、いろんなムダは減る。
でもそのデータを使って「さらに先」のビジネスが始まる。
今後の数十年はそんな「効率化の究極」に向かっていくようだ。
スローガンは、より無駄なく・早く・需要に合わせて、だ。
(つづく)

 

苦労は人のためならず。

*[次の世代に]
典型的な現代病の精神疾患だが、実は「それこそが人類の進化の過程こそ」という説もあるらしい。
 
「人間の進化の過程が精神疾患を生み出した」というのも「逆境こそが進化を促す」ということなのかもしれない。
そうした「現状への抗い」こそが種の進化を促すというのももっともだ。
 
それにしても今の社会は複雑だ。
一方からの正義が、他方からは邪魔になる。
今でこそ「暴力対暴力」というのはビジネス界ではないが、その根っこはあまり変わっていないのではないだろうか。
 
「不愉快」は本当に人類の発達を促してきたのだろうか。
あるいは「一度失敗しただけで戦意喪失するのはもったいない」とか。
 
憂鬱こそが人類のストッパーなのだという気がするが、だからこそ「ある程度の分別」がないと社会への適応は難しそうだ。
 
 

なぜ精神疾患は進化の過程で取り除かれなかったのか?

 
うつ病双極性障害といった精神疾患は、発症したほとんどの人に多大な負担を強いるのものであり、時には命を脅かすこともあります。「そんな精神疾患がなぜ進化の過程で人間から取り除かれなかったのか?」という疑問について、アリゾナ大学の進化生物学者であるランドルフ・ネッセ氏が解説しています。
 
Susceptibility to Mental Illness May Have Helped Humans Adapt over the Millennia - Scientific American
 
記事作成時点ではアメリカ人の5人に1人が精神的な問題を抱えており、全アメリカ人のうち半数が一生の間に少なくとも一度は精神疾患に見舞われるとのこと。しかしネッセ氏はさまざまな精神疾患について、「遺伝上の欠陥や過去のトラウマ」だけが原因ではなく、「遺伝子が自然選択した結果」として発症しているものが少なくないと考えています。
 
ネッセ氏は「Good Reasons for Bad Feelings(不愉快には理由がある)」という著書の中で、「人間の進化の過程が精神疾患を生み出した」という考えを取り入れることが、患者と医師の双方にとって有益だと述べています。うつ病や強い不安といった感情は進化の過程で人間にとって有利に働いてきた感情であり、統合失調症双極性障害は有益な形質の発現に関わる遺伝子変異が関係しているかもしれないとのこと。
 
「Good Reasons for Bad Feelings」の中で、ネッセ氏は精神疾患が進化の過程で人間にとって有益なものであったことから、今日の人間にも除外されず引き継がれていると考えています。しかし、人間の社会はここ数千年で大きく変化しており、長い期間を経て培われてきた感情の反応が、現代社会においても常に人間の利益になるとは限りません。
 
たとえばネッセ氏は「気分が落ち込んでやる気を喪失してしまう」という精神的な問題について、人間にとって有益となる2つのパターンを示しています。1つは「うまくいかないことを諦め、無駄なエネルギーを消費しないようにする」ということです。人間を含む有機体にとって、達成不可能な目標を目指してエネルギーを消費することは大きな無駄となります。そこで、やることがうまくいかない際に気分が落ち込んでやる気を失うことで、無駄なエネルギー消費を抑えられるというのです。
もう1つのパターンは、「うまくいかない方法を諦め、戦略の変更を検討させる」ということ。これも結果的には無駄なエネルギー消費を抑えることにつながるため、限られたエネルギーでより長く生存するためには重要なものとなります。しかし、現代社会においては人間が生き抜くためにナッツやフルーツ、獲物といった食料を探し求めることはほとんどありません。そのため、エネルギー消費を抑えるためにやる気を失うことは、現代社会においてそれほど生存に役立たないとネッセ氏は指摘しています。
 
食料獲得の代わりとして、人間は社会的成功などを追い求めるようになっており、数万年、数千年前よりもより複雑な社会を生きています。憂うつな気分はうまくいかないことを諦め、うまくいくことに焦点を向けさせようとしてきます。ネッセ氏は「必ずしも『今やっていることは無駄だから諦めろ』という内なる声に従う必要はありませんが、少しだけ耳を傾けて、今やっていることについてじっくり考え直してみるということには意味があります」と述べました。
 
ネッセ氏は精神疾患が進化の過程で取り除かれなかった理由が、少なくともある面では人間の進化と生存に有利だったからだと考えています。しかし、だからといって「抗うつ剤などで精神疾患を治療しようとするのは自然に逆らうものだ」と主張しているわけではありません。通常の医療ではセキや熱、吐き気といった体の防御反応を薬で抑えるべきか、体の防御反応に任せるべきかについて、反応を無理矢理押さえつけた際のコストと症状緩和による利益をてんびんにかけて考えます。これと同じように、精神疾患も薬によって抑えた方が結果として利益が大きい場合は、積極的に薬で治療するべきだとネッセ氏は考えているとのこと。
 
「私が著作などで『憂うつな気分が人間にとって有益だった』と述べていることを知って、『ネッセ氏は薬剤などを用いた精神疾患の治療に反対しているのだ』と考える人がいます。しかし、私はこれと正反対の考えを持っています」とネッセ氏は述べています。憂うつな気分がその人自身にとって助けとならないのであれば、薬を用いて気分を改善させることが大事だとネッセ氏は主張しました。
 
統合失調症自閉症双極性障害などの精神疾患は遺伝的な要因が大きいとされており、この遺伝子が受け継がれてきたのは何かしらのメリットが人間にあるからだと考えられます。重度の精神疾患は子孫を残す可能性を狭めてしまいますが、たとえば双極性障害の場合はそれほど子孫の数に悪影響を及ぼしません。そこでネッセ氏は、「双極性障害の人がある時点で多くの子孫を残したとしたら、双極性障害に関する遺伝子を持つ人々は多くなります」と指摘し、過去に双極性障害が子孫の数を増やす結果につながった事例があるのでは、と推測しています。
 
つまり、「大きな野望を抱く一方で気分が低迷することも多い」という双極性障害に近い感情の動きを見せる人が大きな成功を収め、子孫数の増加につながった可能性があるとネッセ氏は考えているわけです。
 
「多くの患者は『あなたはうつ病です』『不安障害があります』といった診断を受けると、自分は正常ではないのだと感じてしまいがちです。しかし、それらの精神疾患は人間の生存にとって意味があり、精神疾患を発症したのはあなたの心の中で何かが壊れかけているのではなく、感情が何かを訴えかけようとしているだけかもしれません」とネッセ氏は述べました。
 

 

必要な相続。

*[次の世代に]遺す側の責任。
プレジデントの「死後の手続き」の特集が人気になっているという。
ついには法廷闘争になった。
さらに
結論は、自分の死後、兄弟姉妹、親族間で揉めてほしくなければ、やることは1つだということである。遺言書を書いておくこと、これに尽きる。
という記事の下りは分かるけれど、大事な「何か」を欠いていないだろうか。
亡くなる当人の(生前の)目的は「死」ではない。
「そこに至る経過そのもの」がその人の人生である。
死後の財産の整理、というのは「本人の死亡という"点"」の後の出来事でしかない。
 
その後の手続きを円滑に進めるのは、残された家族には大事なことだが、もっと大事なのは「そこに至るまでの本人の意思」に他ならない。
だから、「死にゆく側」もしっかりと考え、意思を表明しなくてはならないと思う。
「いつまで」「どんな自分の状態で(自立歩行とか意識があるとか)」「そして遺産はどうして欲しいか」ということを意思表示する責任があるだろう。
自分のこと」と「その後のこと」についてきちんと道筋をつけておく。
楢山節考は、そんなことの暗喩なのではないだろうか。
手続きも大事だが、「重要なのは意思そのもの」だということを忘れてはならない、と現場を見ていて強く思う。
 
 

知らないと大損する「相続大改正」の勘所

3/29(金) 9:15配信
 
 
■「死後の手続きはこんなに大変です」がベストセラーに
 
相続ブームである。
 
きっかけは40年ぶりに相続法が大改正されたことだった。旧相続法が、高齢化社会や社会環境の変化に対応できなくなったためである。
 
いち早く相続法改正の特集を組んだのは『週刊現代』だった。だが、私を含む多くの出版関係者は、相続が読者増につながるとは、正直思っていなかった。それでも『現代』は、意固地に見えるほど相続にこだわった特集を毎週のように続けた。
 
今年の正月明けには「老親とあなたに降りかかる面倒な『現実』死ぬ前に用意しておくこと」(1/19・26号)という大特集を組んだ。それが対前年比130%増という“快挙”を成し遂げ、業界の話題をさらった。
 
これに驚いたライバル誌も遅れてはならじと追随した。『』『』『週刊朝日』『サンデー毎日』、テレビのワイドショーも参入して、相続が大きな社会的関心事になったのである。
 
さらに相続問題の元祖『週刊現代』は、2月15日に『週刊現代別冊 死後の手続きはこんなに大変です』(980円)として発売したのである。3月16日の朝刊の広告で、「たちまち重版!  22万部! 」と謳っているから、これも大成功といえるだろう。
 
団塊ジュニアにとって「自分の取り分」は重大な関心事
 
この相続ブームはまだまだ続くはずである。なぜなら、この背景には今の日本が抱えている根深い“病根”があるからだ。
 
敗戦後に起きたベビーブームが産み落とした団塊世代も全員が高齢者になり、第2次ベビーブームで生まれてきた団塊ジュニアたちも中高年になって、定年、年金生活が目前に迫ってきている。
 
社畜といわれながらも、高度成長期からバブル崩壊まで会社に尽くし、色・カネ・出世を人生の目標として生きてきた団塊世代は、定年後も年金をもらって悠々自適とはいかないまでも、生きていける「勝ち逃げ世代」といわれる。
 
だが、団塊ジュニアたちは、バブル崩壊ソ連崩壊による「就職氷河期」に遭遇し、「不運の世代」とも呼ばれ、何とか就職できても、年功序列、終身雇用は崩壊していて、定年後に不安を抱える人たちが少なくない。
 
なかには、育児と親の介護をしなくてはいけないダブルケアに苦しむ者、介護離職する者もいる。彼ら、彼女たちにとって、親がどれぐらい財産を残してくれるのか、自分の取り分はどれぐらいあるのかは重大な関心事である。
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3/29(金) 9:15配信
■相続で揉めるのは「遺産5000万円以下」が多い
 
老親の死を待ちながら、ベットの横で現代の相続特集を貪り読む息子や娘たち。彼らの妻や亭主たちも一緒になり、「親父の貸金庫の暗証番号を聞いておかなくては」「生命保険には入っていたかな。あれは時効が3年だそうだから、探さなくては」などと、死後のカネを漏らさず手に入れる算段をしているのである。
 
私事で恐縮だが、私の両親はすでに亡くなっている。母親が先に逝ったため、相続手続きは親父が亡くなった時だけだった。
 
私は2人兄弟である。親父が亡くなる半年ぐらい前に公証人の面前で「家は長男に譲る」と言ってもらって、遺言書を作成した。家は私が譲り受け、現金は弟に渡すということで落着した。
 
煩雑な手続きは、私の友人の司法書士に依頼した。したがって、現代が特集しているようなことはやらなかったが、銀行預金や生命保険がどうなっていたかについては、記憶が定かではない。もしかすると見落としていたかもしれないと思わないでもないが、今更悔やんでも仕方ないと思っている。
 
相続で揉めるのは、遺産が1000万円から5000万円程度のケースが多いといわれる。
 
■同じ敷地内に別々に家を新築し、まったく話をしない姉弟
 
私の知人でも、こういうケースがあった。都内に母屋と離れのような形で、母屋に母親と長女夫婦、その子供たちが住み、離れには長男夫婦。連れ合いを早く亡くした母親は元気な人だったが、90歳を過ぎるころから認知症が始まったようだ。
 
たしか93歳ぐらいで亡くなったと思うが、死後、姉から、母親の遺言で、この家は私がもらうから、あなたたちはここから出ていってほしいと通告された。弟がいるが、彼は遺産を放棄することを承諾していた。ただ、長男は「そうですか」と出ていけるわけはない。
 
それに、亡くなる間際に書かせたという公正証書遺言はあったが、認知症が進んでいたため、そうした判断はできないはずだと主張し、ついには法廷闘争になった。
 
結局、長男の申し立てが一部認められ、遺留分以外に、今住んでいる土地の相続権を勝ち取ったのである。
 
同じ敷地内に別々に家を新築したが、一切行き来もしなければ話もしない。姉弟は他人の始まりである。仲の良かった兄弟姉妹が、相続をめぐり仲たがいしてしまうというのは、決してまれな話ではない。
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3/29(金) 9:15配信
■連続特集を通読した結論は「遺言書を書いておけ」
 
今回、この原稿を書くために、現代の新年合併号から連続特集している相続問題をじっくり読んでみたが、その手続きの煩雑さに頭が混乱してきた。繰り返しも多い。
 
結論は、自分の死後、兄弟姉妹、親族間で揉めてほしくなければ、やることは1つだということである。遺言書を書いておくこと、これに尽きる。
 
一方で、相続人のいない「おひとりさま」なら死後の準備は不要だと考えるのは大きな間違いだという。
 
独居の人が亡くなった場合、警察は住民票や戸籍をたどって6親等までの親戚に連絡をしてくれるそうだ。ここで、「長い間会っていないから」と断れば、役所が近隣住民や地域の民生委員に連絡をしたり、賃貸に住んでいた場合は大家さんに依頼したりすることになる。
 
では引き受けた場合どうなるのか。故人の死亡届や火葬許可証を提出して火葬するのだが、この費用だけでも20万円かかるという。
 
さらなる問題は故人の遺品の整理だ。親戚やアパートの大家などの利害関係者が、家庭裁判所に申し立て手続きをして、相続財産管理人として弁護士や司法書士を選任することになるが、監理・整理された遺産は、特段のことがない限り、国庫へ納められてしまう。しかも、遺産が少なければ管理人に報酬を数十万から100万円ぐらい前払いしなくてはいけないという。
 
■独身で、カネもない、親しい知人もいない場合
 
したがって、埋葬まではやっても、遺品整理はやらないことが多い。賃貸の場合は、大家が独断で遺産を処分してしまえるが、当然費用がかかるため、高齢者には家を貸さない大家も多いそうだ。
 
では、誰にも迷惑をかけないためにはどうするのか。遺産の整理を代行してもらう家族信託と、死後の手続きを代行してもらう死後事務委任契約を、司法書士などに依頼して契約を締結するのだが、費用がそれぞれ100万円、少なくとも200万円はかかるという。
 
それほどおカネがない場合は、親しい知人を遺言執行者に決め、死後の手続きを依頼できる。これだとお礼を含めて50万円程だが、知人が先に死んでしまうこともある。
 
『現代』が読まれているのは、ここで終わらないところだと思う。カネもない、親しい知人もいないときはどうするのか。
 
死後手続きを代行してくれるNPO法人がある。それでも50万円程度はかかるが、遺言書を作って、「遺産をNPOに寄贈する」としておけば、後払いできるという。
 
ここまでは、去っていく人がやっておくべきことだが、ここからは、残された人たちが知っておかなくてはいけない「間違いだらけの死後の手続き」について見ていこう。
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3/29(金) 9:15配信
■「葬儀の手配を病院に任せると大損する」
 
『現代』(3/2号)は、「葬儀の手配を病院に任せると大損する」と警鐘を鳴らす。葬儀社が病院に仲介料を支払い、霊安室にスタッフを待機させているところもあるから、葬儀費用を高く設定しているところが多いからだという。
 
亡くなる前に複数の葬儀社を当たって、いちばん良心的な葬儀社に決めておく。それができないときは、搬送と遺体の保全処置までを病院が紹介してくれた葬儀社に頼み、葬儀は別のところに頼むのがいいという。
 
私の場合は、近所にある葬儀社にすべてを依頼し、お寺も紹介してもらった。ただし、お坊さんは、私の家の墓があるお寺から来てもらった。
 
私の母は、突然家で亡くなってしまった。主治医に来てもらったが、その後、警察が来て、殺された可能性も含めて検視をした。もちろんそんなことはないのだが、なんとなく嫌なものだった。
 
医者に死亡診断書を書いてもらって、死後7日以内に役所に提出し、火葬許可書をもらう。ここで『現代』が口を酸っぱくして言っているのは、提出する前に死亡診断書のコピーを必ず取っておけということだ。一度提出すると戻ってこないので、10通ぐらいコピーを手元に置いておけというのである。
 
■受給停止と遺族年金の請求は同時にやると効率がいい
 
私の場合、葬儀で難しかったのは、お寺のどの広さの部屋を使えばいいのかということだった。私は現役のサラリーマンだったが、母親の友人、近所の人たちがどれぐらい来てくれるかがわからない。ようやく決まったのは、お寺から聞いた花輪の数が大体わかったときだったから、ギリギリであった。
 
お坊さんに渡すお布施の相場は40万円から50万円ぐらい。これには、通夜と葬儀2日間の読経料と戒名料が含まれている。
 
葬儀が終われば、14日以内と定められている健康保険と介護保険の資格喪失手続きと、保険証の返納がある。健康保険や介護保険は、払い過ぎれば後に再計算されて銀行口座に還付されるそうだ。
 
年金受給の停止をするには、役所→年金事務所→銀行の順がいいそうだ。年金事務所には予約が必要。役所は故人の住所地、戸籍謄本は故人の本籍地で取る。年金事務所では、受給停止だけならば年金手帳と死亡診断書でできるが、未支給年金や遺族年金の請求も同時にやったほうが効率がいいそうだ。
 
次に、私はやらなかったと記憶しているが、生命保険金の請求は早く済ませたほうがいいという。保険証書が見つからなくても、銀行通帳で確かめ、保険会社に問い合わせればいい。
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3/29(金) 9:15配信
■故人の郵便物は「1年間」は廃棄してはいけない
 
受け取るカネの算段が付いたら、次は故人が払っていたクレジットカードの明細から確認して、カードでの引き落としを止め、その後、個別に連絡して解除手続きをする。
 
これもやった記憶は、私にはない。両親ともに銀行カードは使っていたが、クレジットカードはほとんど持っていなかったからだが、大変な手間がかかる煩雑な仕事であろう。
 
携帯電話は、そこにしか連絡先が入っていない知人もいるから、1カ月程度は残しておいてもいいそうだ。たしかに、亡くなったことを知らない知人から電話がかかってくるというのは、よくある。
 
また故人の郵便物も、1年間は廃棄してはいけないそうである。証券会社からの残高報告や、固定資産税の納税通知書などが届くからである。
 
これからがいよいよ大仕事である。遺言書があれば比較的簡単に済むが、ない場合は、資産の合計を出さなくてはいけない。
 
■「準確定申告」の期限である4カ月などあっという間
 
まず自宅の土地や家屋。送られてきている固定資産税納付書で家屋、土地についてはインターネットで路線価を調べ、それに面積をかけて出すことができる。
 
証券口座は「死亡日の株価」を基に計算する。妻が生きていれば、家にそのまま住み続けられるし、配偶者の税額控除で相続税は無税になる。
 
だが、現金や株なども妻が相続すると、彼女が亡くなったときの「二次相続」では、優遇措置がなくなり、基礎控除も減るため、相続税額が高くなることもあるので要注意だ。
 
その後、遺産分割協議書にめいめいが署名押印しておく。
 
証券口座は、同じ証券会社に相続人が口座を開設して移す。不動産を名義変更する場合は、自宅に来ていた固定資産税納付書に掲載されていた所在地を確認したうえで、固定資産評価証明書と登記事項証明書を取得して、登記申請書を作成する。提出は不動産の所在地の法務局だそうだ。
 
遺産分割した後で遺言書が出てきた場合は、新たに分割協議をしなくてはならないが、分割協議のままでいいと相続人全員が同意すれば、そのままでいいそうである。
 
これだけ故人の死後手続きで忙殺されていると、被相続人の確定申告と納税を相続人が代わりに行う「準確定申告」の期限である4カ月などあっという間だ。
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3/29(金) 9:15配信
■最後の取引から10年以上経過した預金は移されてしまう
 
1月1日から死亡した日までの所得金額や税額を計算して申告するのだ。故人が確定申告していた場合は当然だが、高額な医療費を払っていれば、還付金が返ってくる。
 
そして、10カ月以内に相続税の申告をすることになる。相続する人間への3年以内の贈与はないかなど、故人の3年以内の通帳をチェックすることが大切だという。税務署はこうした動きを見逃さない。
 
基礎控除額は4800万円。これを超えれば相続税を納付する。相続税の申告書は全員で1通。細かい部分は税務署で無料相談することができるそうだ。
 
『現代』によると、ここに落とし穴があるという。相続税の申告と納付は別で、納付は現金一括。期限の10カ月を過ぎると延滞金が発生する。それに、誰かが相続税を払えない場合、連帯納付義務があり、他の相続人に支払い請求が来るそうである。
 
生命保険は3年が期限、ゆうちょ銀行以外の金融機関は最後の取引から10年以上経過した預金は休眠預金とされ、預金保険機構に移管されてしまう。だが、生保などは遅れても対応してくれるそうだから、諦めることはないようだ。
 
また、相続税の申告後、新たにマイナスの遺産が見つかった場合は、相続開始から5年10カ月以内に税務署に申告をし直すことができる。
 
ざっと見てきたが、突然死は別にして、まだ逝くのも、見送るのも余裕がある人は、『週刊現代』の別冊でも買って、じっくり勉強しておいたほうがいいと思う。
 
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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)などがある。
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ジャーナリスト 元木 昌彦 撮影=プレジデントオンライン編集部
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職業個性の時代。

*[次の世代に]若者とサシで話せるか
口コミサイトの台頭で、企業の職場環境の声が透明になるのは当たり前。
そんなところに「お化粧」して学生を呼び込もう、というのがそもそも時代錯誤だったと思う。
それはともかく。
 
今の就活生の人気企業は「日本企業は野村総合研究所三菱商事伊藤忠商事三井物産の4社だけ。残りはボストン・コンサルティング・グループなど米国系のコンサル会社が占める。という。
メガバンクや航空会社がないのはさておいて。
"コンサル企業""投資銀行"が人気トップの社会は果たして健全なのだろうか。
三菱商事は配属時に丁寧に学生と面談するという。
また「就職してからの学び」に関心のある学生も多いらしい。
さらに外資が人気なのは「評価の指標がわかりやすい」ことも大きいと思う。
若者は「ぼんやりと抽象化された組織の業績評価」に納得していないと見るべきだろう。
 
ギスギスと「個人業績至上」でもなく「チーム目標」だけでもなく。
「上昇志向」や「安定志向」の若者を柔軟に取り込めるかどうか。
つまりそんな個性に合わせた「職場のプログラム」を編み出せるかどうか、がこれからの課題になるのだと思う。
若者には、もう"十羽一絡げの時代は完全に終わった"という覚悟で接する必要があるだろう。
 
透明化する仕事選び 社員の意欲を高めるカギは 編集委員 西條都夫
2019年3月20日 21:30
2020年春入社の就職活動が1日に本格解禁された。「平成最後の就活」が幕開けしたわけだが、就活口コミサイトを運営するワンキャリアの北野唯我執行役員は、今年の特徴を「透明化される仕事選び」と定義する。言い換えれば、会社側が職場のお粗末な内実を隠して、うわべを化粧しても、嘘を就活生に見透かされる。そんな時代が到来したという。

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日本経済新聞編集委員が注目のニュースをピックアップ。経済、政治、経営など様々な出来事の読み方を分かりやすく解説します。随時掲載
これまで就職市場は情報の非対称性が顕著だった。採用する側の企業には過去のデータに基づいた学生や大学についての情報が豊富にあるが、学生側は会社の実情についてのリアルな情報に乏しい。
入社して初めて勤務実態や職場のカルチャーを目のあたりにして「こんなはずではなかった」と嘆く新入社員も少なくなかった。
ところが、口コミサイトの台頭が事態を変えた。「食べログ」などの口コミランキングが「ぼったくり」の居酒屋を淘汰したように、ワンキャリアや転職口コミサイトの「ヴォーカーズ」に寄せられた情報が会社の内実をさらけ出す。学生サイドも職場の実態について、かなり信ぴょう性の高い情報を入手できるようになった。
学生は企業の本当の情報を集めやすくなっている
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ワンキャリア調べによる昨年12月末時点の東大生と京大生の就職人気ランキングのベスト10をみると、日本企業は野村総合研究所三菱商事伊藤忠商事三井物産の4社だけ。残りはボストン・コンサルティング・グループなど米国系のコンサル会社が占める。
上位20社をみても外資優位は変わらず、日本経済の屋台骨を支える国内メーカーやメガバンクは1社もランクインしていない。
ヴォーカーズの総合評価ランキングでも、トップのグーグル合同会社をはじめ上位10社中、米国系外資が6社を占める。日本勢で上位に食い込んだのはリクルートマネジメントソリューションズや三井不動産で、やはり自動車などの基幹製造業や金融機関は見当たらない。
なぜこんな結果になるのだろうか。ヴォーカーズの増井慎二郎社長は「総合職採用が日本の社員のやる気を低くする元凶ではないか」と指摘する。総合職で採用されると、どんな拠点のどんな部門に配属されるか、基本的に会社の一存で決まる。運良く希望の部門にいけた人はいいが、多くの人は組織から与えられた仕事をするしかない。だから「やらされ感」が募るのだ。
ヴォーカーズの口コミでは30代のメガバンク元社員が「キャリアを自分で設計できないことが大きなリスク。(自分の希望や適正に関係なく)人事部が人事権を掌握して中央集権的に運営するのは組織にとっては必要かもしれないが、個人としては受け入れがたい」と書いていた。これが働く側にとっての総合職入社のリスクであろう。
一方で米系のゴールドマン・サックス証券投資銀行、エンジニアリング、投資調査、アセット・マネジメント、証券など部門別の採用だ。キャリアの自己決定感は邦銀に比べると、大幅に高そうだ。
日本企業のなかで例外的に社員のモチベーションが高い代表が総合商社だ。例えば三菱商事は総合職採用を実施しているが、配属については本人の声に耳を傾け、およそ8割の新入社員は希望どおりの部門に配属されるという。今年からは「成長対話」と称する上司との面談の機会を設け、傘下の事業会社を率いていける経営人材の育成をめざすという。
「個々の社員のキャリアデザインを会社がしっかり支える。それが社員のエンゲージメント(意欲)を高めるカギではないか」と同社の杉村隆之人事部長代行は語る。
もう一つ、やや変わり種だが、働く人の評価が高いのが特許庁だ。ヴォーカーズの評価ランキングでは官公庁部門で経済産業省財務省を抑えて首位だった。
口コミを見ると「充実した研修プログラムとマンツーマンの熱心な指導で短期間で成長できる」「学会に参加するなどして、継続的に学ぶ体制が整っている」とある。ここでも特許庁で働くことで自分自身の専門性やスキルが向上する、という実感が高評価につながっているようだ。
特許庁職員は公務員でそれほど給料が高いと思えず、働く人の満足度と報酬の多寡が必ずしも連動していないことも分かるだろう。総じて点数の低い日本の大企業は商社と特許庁に学ぶべき点が多いのではないか。
西條都夫(さいじょう・くにお)
 1987年日本経済新聞社入社。産業部、米州編集総局(ニューヨーク)などを経て経済解説部編集委員論説委員。専門分野は自動車・電機・企業経営全般・産業政策など。
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経営の極意。

*[次の世代に]選択のタイプ
多くのビジネスリーダーと会ってきましたが、彼らは楽天的か現実的かの2タイプに分かれます。
さてさて。
この短い一文がなかなか悩ましい。
"比較的"楽天的か、現実的か。
というだけで4タイプだ。
さらに"場合によっては"という接頭語を加えれば✖︎2で8タイプになる。
天の運・地の運・人の運などともいう。
じゃあさらに✖︎3で24通りだ。
 
何についても「選択」には迷いがつきまとう。
不安と期待。
確かなものと不確定なもの。
お金や人。
そして顧客。
考えれば正解などあろうはずもなく。
何千通りも道はある。
その。
「何千通り」からどれを選びつつ進んでいくか、が経営そのものだと思う。
そして経営は会社だけではなく。
自分の生き方もこれぞ経営だ。
知らずに流されていくのはもったいない。
楽天的か現実的か」から始まって、自分の生き方をよく分析して見るのは案外面白いものだ。
 
自分の場合は"楽天的✖︎人の運"、あとはたまたま"時の運"という感じがする。
世の中には「発想はよかったが早すぎた(遅すぎた)」という話はたくさんある。
難しいけれど「時流」を読むのも大事な選択だと思う。
 
 
ライブドア社長の経験で得た教訓
2019年3月20日 21:30
 29歳でライブドアの社長に就任し、多くの経験を得る。
経営には計算、経験、勘の「3K」が必要と言われますが、私には経営者としての経験が不足していました。英語のことわざには「Fake it till you make it.(できるまで、できるふりをしろ)」という表現があります。プロジェクトマネジメントをどう進めるか。チームマネジメントをどう構成するか。私は決断を迫られたときには、尊敬する経営者、本田宗一郎氏だったらどう判断するか、あこがれだった電通の元上司だったらどう決めるのかをよくイメージして参考にしていました。
ライブドア社長時代には経営者として新サービスを常に考え続けた(エンパイア・エンターテインメント・ジャパン提供)
多くのビジネスリーダーと会ってきましたが、彼らは楽天的か現実的かの2タイプに分かれます。客観的にみるととても困難な状況にあるのに楽天的に乗り越える経営者もいますが、私は現実的で慎重な「石橋をたたいて渡る」タイプなので、ギャンブラーのように大きなリスクに賭けることはしません。多くの楽観的経営者がビジネスチャンスとみるときも、私は常にリスクを計算して許容範囲内に抑え、問題点を早期発見する努力をしてきました。
しかし、ライブドア社長就任から1年たった2001年ごろからブロードバンド接続が急速に普及し始め、経営環境も急速に変化しました。ライブドアは赤字続きで黒字転換が難しく、完全に道を変えない限り繁栄も生き残りもなかったのです。しかし、変革を起こすにも十分な手元資金はなく前途は明るくありませんでした。私は危機を訴えましたが、楽天的経営陣との共通認識を築くのは難しいと痛感し、01年末に代表取締役から非常勤の取締役顧問に退きました。
 退任して約1年後にライブドアが破綻。自分が現実主義者であることを自覚した。
私の退任後ではありますが、ライブドアは新たな時代の波に乗りきれず02年に経営破綻しました。03年に民事再生法の適用を受け、その後に堀江貴文氏のオンザ・エッヂにのれんを売却。社名がライブドアに変更されて、世間にその名が知れ渡ることになります。
この経験で得た教訓について常々考えます。私が手にしたカードは最初から勝てないものだったのか。私が他にできることはなかったのか。この疑問に答えを出すことは簡単ではありませんが、その後に経営者として数々の決断を下す際に、自身が現実主義者であり慎重なやり方が強みであることを自覚するきっかけになったと思います。
29歳でライブドアの社長になってから2年たったころ、社会人生活も8年目ということでいったん自分の人生を見つめ直したいと考えました。休みなく走り続けてきたので、仕事から離れてこれまでやりたくてもできなかったこと、興味があることにチャレンジしてみたくなったのです。幸い日本ゲートウェイ時代に取得したストックオプションがあったので生活に余裕はありました。
(流合研士郎)
日経産業新聞2019年3月20日付]
 

 

オリジナルな人生。

*[次の世代に]熟す人生観。

セコムの18年12月の「日本人の不安に関する意識調査」では、どの世代よりも20代女性の不安が強く、8割超が将来に不安を感じていました。

 そして二十代の男性は圧倒的に「やりたいことが見つからない」だという。

一体どういうことなのか。
 
自分には「ちゃんと時代とともに熟してきている証」と思えた。
不安上等! である。
俗に「成功者は異常なほどに臆病だ」ともいう。
不安や孤独を恐れぬ人には、むしろ「危険がいっぱい」だという気がする。
 
世の中、全体的に豊かになり社会が成熟してきていると思う。
平成の時代を挟んで、均質に学校を卒業して第2次・3次産業に従事し、終身雇用という人生のモデルがいよいよ変わりだしたのだ。
まず学校に行くのも自由。
学びたいことがないのに行く必要などないだろう。
職業も千差万別。
自分がやりたいことなんてそうそう簡単に見つかるものではない。
忙しくバイトをしてみたり、ともかくボランティア活動をしてみたりして、感じてみたらいい。
海外を見るのも価値観が変わるいい機会になることもある。
 
考えて、それを選択すればgoだ。
自分が納得して進めれば、後に後悔は残らない。
周囲の噂は気にしない、気にしない。
 
 

25歳までに結婚したい人、なぜ急増? (スグ効くニュース解説) 大岩佐和子編集委員

結婚は20代前半でしたいという人が、男女ともに増えていると聞きました。なぜでしょうか。
回答者:大岩佐和子編集委員 結婚相手紹介サービスの楽天オーネットが2019年に成人式を迎える人に調査したところ、「21~25歳のうちに結婚したい」という男女の割合が47%と、18年より約10ポイントも増えました。積極的に異性と交際したいと考える人の割合も上昇し、5割を超えました。

平成が終わろうとしている今、結婚観に変化がうかぶ
結婚相談所に入会する20代も増えています。「35歳までに子どもが3人欲しい」と、26歳で入会し結婚した女性もいたそうです。
昭和末期から平成期にかけては、キャリア形成を優先して結婚を後回しにする人が少なくありませんでした。仕事を覚えて波に乗ってきた時期に結婚や出産をするのは、キャリアの階段を駆け上りたい意欲的な人の目に「回り道」と映っていたからです。
女性の経済的な自立も進み、あえて結婚を急ぐ理由は薄らいでいました。このため平成に入ってからは、一生を通して独身でいる生涯未婚率が上昇し、20代で結婚すると早いと言われるほど晩婚化が進みました。
ここにきて結婚観が変わったのは、先輩たちの後ろ姿を見て、それとは違う将来の設計図を描いているからでしょう。年齢が高くなるほど結婚や妊娠が難しくなるという現実を感じ取っているのかもしれません。
多感な時期にリーマンショック東日本大震災を経験しているだけに社会の不安に敏感です。セコムの18年12月の「日本人の不安に関する意識調査」では、どの世代よりも20代女性の不安が強く、8割超が将来に不安を感じていました。
孤独死や非正規で働く単身女性の貧困……。「おひとりさま社会」で孤立のリスクが高まっています。会社組織や地域コミュティーで絆をつくりにくいからこそ、信頼の基本単位である家族の価値が、再び評価されています。
結婚観も多様化し、別居婚週末婚同性婚事実婚など、結婚の形と暮らし方は大きく広がりました。特に大都市では固定化した結婚の観念は消えつつあります。成熟社会の証でしょう。
おひとりさま社会の危うさが高まり、家族を持つことによる「安心感」を積極的に求めるようになりました。結婚の形態も多様になり、結婚に飛び込みやすくなったともいえそうです。
次回は大阪都構想の行方を考えます。

大岩佐和子(おおいわ・さわこ)
1996年日本経済新聞社入社。流通経済部(現・企業報道部)、横浜支局、地方部、日経MJデスクを経て2018年4月から編集委員論説委員。子供2人の母。専門は消費。