藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

マクロ経済の威力。

これも学校では教えてくれない法則の一つ。
ユーロという通貨、ひいては経済圏の統合の仕組みは、すでに通貨という観点では融合が進んでいて、各国のお金は中央銀行を通じてユーロ国全体に浸潤しており、簡単には引き返せないようである。

簡単に言えば、ドイツのお金が中央銀行に供給されて、債務超過国への貸付の形になっている。ということである。

つまり「借金を返さないのなら出て行ってくれ」と言えば、「貸主さんの資産の大部分は欠損しますよ」という具合である。
一つの村に暮らす者同士の柵(しがらみ)と言えば人ごとのようだが、日本も事情はさして変わらない。

それにしても、マクロ経済と言うのはこうした観点かな眺めれば実に面白い。
"それまで"の経済ルールやシステムでは考えられなかった仕組みが、いつの間にか考案され、経済が大きく「そちら」へ向けて流れを変えてゆくのである。

そして、もっと長いレンジで見てみるなら、ネットワークが世界中に張り巡らされ、グローバル経済が本格化した、と言えるのはまあまだ、せいぜいここ100年くらいのものである。
ユーロにしろ、TPPにしろ、まだまだ我われは"まったく初めての経済モデル"を色々と試しているに過ぎないような気がする。
だからこれほど「失敗!」という話ばかりが耳に入ってくるのである。

ここ100年、まだまだ失敗は続くのであろう。

欧州債務不安国のユーロ離脱が困難な理由
ロンドン・松崎雄典

国際通貨基金IMF)は13日、ギリシャの2012年の成長率見通しをマイナス2.75%から同3%に下方修正した。緊縮財政が景気悪化を深める構図が続く。「ユーロ圏を離脱して通貨ドラクマを復活し、安い通貨で経済を立て直すべきだ」。こんな声も多いが、ユーロ離脱はおそらくドイツが許さない。

 「TARGET2」。欧州中央銀行(ECB)が管理するユーロ圏の決済システムが市場関係者の間で注目されている。ドイツの中央銀行である独連邦銀行から南欧中央銀行への資金シフトが急増していることが鮮明になっているからだ。

 例えば独A社が生産する自動車をギリシャのディーラーB社が10億ユーロで輸入したとする。この場合、独銀行のA社の口座にギリシャの銀行のB社口座から10億ユーロが振り込まれることになるが、資金は各国の中央銀行を通じてやり取りされる。この仕組みがTARGET2だ。ドイツの投資家がギリシャ国債を売却し、ギリシャの投資家が買い受けた場合も同様の決済が起きる。

 TARGET2の資金バランスは08年まではユーロ圏各国でほぼ均衡していた。ギリシャがドイツから自動車を買って、ギリシャからドイツにお金が流れても、ドイツからギリシャに投資という形でお金が戻ってきていたからだ。

 ところが、金融危機以降、ドイツは投資を引き上げるようになり、ギリシャの資金不足が膨張した。この不足を埋めたのがECBで、ギリシャの銀行に大量に資金供給している。TARGET2のうえでは、ユーロが余剰な中央銀行が資金をECBに供給する仕組みになっており、経常収支の黒字を背景にユーロを多く抱える独連銀の余剰資金はECBを通じてギリシャ中央銀行にシフトした形になる。結果的に独連銀がギリシャ中央銀行に大量に資金を貸し込んでいるわけだ。

 資金不足はギリシャだけではなく、アイルランドポルトガルでも同じ。今年半ばからイタリアやスペインにも広がった。TARGET2における独連銀の貸出額は10月時点で4500億ユーロ強と、この5カ国の中央銀行の借入額とほぼ同じ。ドイツが5カ国の資金不足を補っている構図だ。

 ユーロ圏内の経常収支の不均衡をTARGET2が調整しているとも言え、資金の不均衡自体が新たな危機を起こすわけではない。ただ、「ユーロ圏を離脱する国が出てきた時に深刻なリスクに発展する」(米ゴールドマン・サックス調査部)。

 もしギリシャが通貨をドラクマに戻せば、ドラクマの価値はユーロに比べ大幅に低下する可能性が高い。その場合、ギリシャ中央銀行がユーロ建ての巨額の債務を弱いドラクマで返済するのは難しく、独連銀の貸出債権が大幅に削減される公算が大きい。「独連銀のバランスシートは危機にさらされている」(クレディ・スイス調査部)のだ。

 ドイツが債務不安国をユーロ圏から追い出すには相当なコストを払う必要がある。一方、ユーロ共同債の導入など思い切った救済に踏み込んでも負担が増える。このジレンマをどう解くのか、メルケル首相の判断が2012年の最大のテーマだ。