藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

思考する力。

カッパネンさんは「フィンランドと日本で一番違うのは大人。日本は親や先生がすぐ正解に導いてしまう」と話す。世界のトップに近づくには、まず大人の変化が求められているようだ。

教育というのはよく「刷り込み」ともいわれるが、幼時にしつけられ、その後の自分の「思考方法」についても影響を与える効果がある。
さらに、背景として時代時代にいろんな価値観があり、例えば時の政治家や権力者が「大衆をどの様に誘導したいか」というようなこととも係わってくる。

先日、中国の友人と話していたら、「中国はまだ”情報統制という共産党の呪縛”から逃れておらず、ようやくネットワークの恩恵を受け出したところ」という表現をしていた。

日本人の呪縛

同様のことを日本で考えてみれば、明治維新以降、軍国主義の台頭があり、そして一気に「一億層中流」という価値観へとシフトした。
実は自由資本主義を標榜した「高度な共産主義」とも言えるのだが、そうした価値観を作って、国を挙げてGDPの創出へと導いた戦略は、経済的には正しかったのだろう。
個人のオリジナリティ云々、と理屈や権利を主張する前に、滅私奉公でともかく頑張ろう、というのはなかなか高度なリーダーシップだと思う。

そして。
そして、時代はそれから一段落した。
「皆と同一の価値観」を共有し、同質な目標を追いかけること、が続く時代ではなくなりつつある。

自分なりの価値観、とか自分の指向とか、自分の人生観、といったものを第1に持っていないと、もう周りの集団と同じような生活様式では、個人の満足がなくなる時代に入ろうとしている。

つまり国とか、経済圏とかが、もう「全員の満足を大きく維持できる時代」ではなくなったのだ。

「正解は何か」ではなく「何を正解とするか」を自分で考えて、導いて、実現していかねばならない時代。
それは一見難しいことのようだが、実はとても自由な選択肢でもある。

いままで人生を一人で運転したことのない自分たちだが、そろそろ本当の独り立ちを考える時代を迎えているのだろう。
今の十代の人には、そんな時代の価値観の変遷をぜひ知って貰いたい。
自分たちが「戦中、戦後の世代から価値観を伝え聞いた」ように、今度は伝えていかねばならない。
そこには、また新しい時代の展望が開けてくるのに違いないと思う。

(3)手本なし 自分で考え表現
「どうすればいい? 劇をしながら考えましょう」
 東京都大田区の民家で、フィンランドの元小学校教諭、マリ・カッパネンさん(33)が4歳〜小3の子ども6人に英語で語りかけた。日本語の通訳を交えて行われるフィンランド式教育の体験教室。この日は、同国で一般的なドラマワークでの学習だった。
 訪れたウサギやオオカミを家の中に招き入れたリスが、クマを怖がって拒むという設定。ウサギ役が「狭くて入れないの」とリスの気持ちを推し量って取りなそうとすると、クマ役は「ウソを言うな」とやり返し、煙突から押し入る。オオカミ役がリスたちを守ろうと立ちはだかったところで、カッパネンさんは劇を止めた。
 行動の理由を問われ、「家の中で一番強いのは僕だから」と、オオカミ役の子は照れくさそうに話した。「すてきでした」とカッパネンさん。ドラマワークの狙いは、各自が他人の気持ちを想像し、考えて、行動する子を育てることだからだ。

 国際学力調査(PISA)で上位のフィンランドの教育。知識や解き方を教え込むのではなく、小学校段階から「自分で考え、表現」を重視し、作文や物語の創作、討論といった授業が取り入れられている。教師は子どもたちが自分の考えをまとめる手助けをする。
 そうした現場に教諭として身を置き、夫の転勤に伴って来日したカッパネンさんが週1回、自宅で幼児〜小学生向け教室を開くようになったのは昨秋。フィンランド流教育を心掛ける。
 例えば、自己紹介では「あなたらしい物を三つ持ってきて」と指示。子どもがお気に入りの髪飾りやお菓子を手に「ピンクが好きだから」「お母さんにもらった大事な物」などと選んだ理由を説明する。
 絵や工作をする時も、手本は示さない。マストが数本もある風変わりなヨットを描いた子には、「なぜ?」と問う。「この方が風がたくさんあたって速く進めると思うんだ」と自ら考えを表現させるためだ。
 手本がないことに戸惑いを見せていた子が、やがてのびのびと意見を発言し始める。長男(4)を通わせる田中ゆり子さん(41)は、「全員で一緒に行動するのが苦手で、幼稚園では周囲を気にして萎縮していることが多いのに。ここでは違う」と喜ぶ。
 カッパネンさんは「フィンランドと日本で一番違うのは大人。日本は親や先生がすぐ正解に導いてしまう」と話す。世界のトップに近づくには、まず大人の変化が求められているようだ。(大広悠子)
 PISA 経済協力開発機構OECD)が3年ごとに15歳の生徒を対象に実施する国際学習到達度調査。課題を解決する思考力や判断力、表現力が試される。2009年調査では65の国と地域が参加し、フィンランドは読解力3位(日本は8位)、数学的応用力6位(同9位)、科学的応用力2位(同5位)だった。
(2013年8月31日 読売新聞)