米有力誌が選んだ"世界の変革者50人"のトップにアマゾンCEOのベゾスを選出したという。
日経の記事は「アップル以外の周囲」が「アップル化している」と指摘しているが、その「アップル化とは何か」に驚いた。
アマゾンは子会社のLab126というR&Dの拠点での機能を
「ハード、OS(基本ソフト)、アプリ、サービスを統合するのがビジョン。素材、ディスプレー、デザイン、エレクトロニクスなどの専門家が垣根を越えてコミュニケーションしている」
という。
「ハード、OS、アプリ、業務、サービス」そして「お客」を統合する・・・
ちょっと前まではそうした者たちの分業、というのがテーマだった。
今ふたたび、ネットワークと端末が極限にまで普及し、昔とは違う「ユーザー単位で」の"小さな世界の時代"に突入したようである。
まるで個人のスマホやタブレットにあるコンピュータだけが「唯一のホストマシン」のようになり、自分の半径50センチの世界ですべてが完結するのである。
必要な膨大なデータは実はクラウドにあるし、またリアルな商品が必要な物流網は敷かれている。
ただユーザーの触れあう直接の相手は、もう身近な端末一つでこと足り、その外の世界のことを意識することはない。
ひと昔前の「エンドユーザーコンピューティング」とはま反対の感じがするけれど、進化とはこういうものなのだろう。
いよいよネットワークが個人のものになってくる時代が来る。
本家よりアップルらしくなってきたアマゾン 編集委員 村山恵一
これまで6勝6敗。さて次は? そんな思いで、米アップルが22日開いたiPad発表会に注目していた。2007年1月から先月まで、iPhone、iPadの新製品お披露目は12回。発表当日に同社株の終値が前日を上回ったのが6回、下回ったのが6回だ。事前の報道合戦で情報が出尽くすことが多く、株価上昇を誘うサプライズを発表会で示すのは難しい会社ではある。それでも最近の物足りなさは否めない。1年前のiPadミニ発表日は3.2%、9月のiPhone5s、5c発表時も2.2%株価が下落した。そして22日。結果は0.3%安だった。「アップルにしかできないイノベーションだ」。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は胸を張ったが、先行き懸念のもやもやが消えたとは言えない。株価上昇の最高記録は07年の初代iPhone発表日の8.3%のままだ。
■アップルの外側にも広がるジョブズ氏の経営手法
創業者スティーブ・ジョブズ前CEOの死去から2年。その思想が社内で薄まり失速しているのか。そうは思えない。例えば高級ファッションブランド、英バーバリーのCEOを上級副社長に迎える人事。ジョブズ氏が重視した小売部門を託す人材として納得感は高い。クック氏はジョブズ流を忠実に踏襲しているようにみえる。むしろ変化しているのは社外。アップルにとってのプレッシャーはジョブズ氏の経営手法がアップルの外側にも広がり、強力なライバルになっていることではないか。
米有力誌ヴァニティ・フェア11月号は経済や政治、文化に影響力を持つ変革者50人ランキングの1位に米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEOを選んだ(昨年3位)。2位は米グーグルの創業者ふたり。昨年トップだったアップルのクック氏とジョニー・アイブ上級副社長(デザイン担当)のコンビは3位になった。
同誌によると、ベゾス氏はこの夏、米カリフォルニア州にある子会社Lab126で長い時間を過ごした。アップル本社から車で3分の場所にある研究開発拠点だ。今月半ば、Labに所属しアマゾン独自の端末キンドルを担当するハーベー・リターナー氏(プリンシパル・プロダクト・マネジャー)に日本で話を聞く機会があった。
――アマゾン社員でも関係者以外はなかなか近づけない。Labのようすは。
「ハード、OS(基本ソフト)、アプリ、サービスを統合するのがビジョン。素材、ディスプレー、デザイン、エレクトロニクスなどの専門家が垣根を越えてコミュニケーションしている」
――テレビ電話のように専門家を呼び出し技術相談できる機能を新型タブレットに盛り込んだ。
「これにとても熱心なのがベゾスCEOだ。顧客中心主義のあらわれと言っていた」
ジョブズ氏は生前、アイブ氏がいるデザイン部門に頻繁に顔を出し対話によってアイデアを磨いた。端末づくりの前線基地であるLabの開発チームを鼓舞するベゾス氏の姿はそんなジョブズ氏とダブる。インタビューでは豪快な笑い方が印象的なベゾス氏も社員のミスや怠慢は見逃さず、辛らつな言葉を浴びせるという。ぴりぴりした緊張感で社員を追い込み、能力を引き出したジョブズ氏に通じるところだ。
もちろんジョブズ流をなぞるだけならつまらない。ベゾス氏の場合、新聞、宇宙、ロボットなど関心の幅は広い。クラウドコンピューティングや物流網などネットとリアルにまたがるインフラも築いている。次は何をしかけてくるのか。かつてジョブズ氏に集まったような世間の期待がベゾス氏に向かい、変革者ランキングの順位を押し上げる。
■どんな面白さ、驚きを埋め込めるか
今週はじめ、地下鉄に乗ってつり革につかまると、スマートフォン用ゲームアプリの紹介とともに、「スマホをかざすと、この場で買えます。」との一文が目に入った。近距離無線のNFCタグがつり革に仕込まれ、即刻ダウンロードできるしくみだった。グーグルのアプリ配信サービスのPR活動で、改めて車内を見渡すと中づり広告までグーグル一色。アプリエコノミーもジョブズ氏が先駆者だが、グーグル率いるアンドロイドOS陣営が台頭し、エコシステムの拡大へユニークな策を繰り出す。
米マイクロソフトさえ自社端末を売る時代だ。ハード、ソフト、サービスを一体開発するジョブズ氏の手法はもはや「業界標準」といえる。「軽くて薄くて使いやすい」は当たり前で、そこにどんな面白さ、驚きを埋め込めるかがこれからの勝負どころだろう。過去の延長線的な経営を続けていてはイノベーション銘柄の本家アップルの名が廃る。