藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

時代と貧富と肥満。

いつ次の獲物にありつけるか、が分からない狩猟民族にとって「餓死の危険」から身を守るために体内に脂肪を蓄える必要があった。
という。

この説は、特に「糖分カット」をするダイエッターの間では有名で、まあそもそも日本人だってそのルーツは狩猟民族だったけれど、ともかく農耕を主にするようになってからは「飢餓の恐怖」から抜け出たということになっている。
(実際には戦後しばらく経つまで、飢餓はあったと思うが)
また所得格差がよけいにカロリーばかり高くて価格の安い「ジャンク」に向かわせているというのも皮肉なことである。

2年前アメリカにいったとき、確かに肥満している人が、特に三十代前後の若い人に多いのに驚いたことを思い出した。
ディズニーランドでは特に目立った感じがして、日本の相撲取りでも典型的な「あんこ型」の力士のような人が多かった。

ビジネスシーンでは太った人は管理職に登用されない、とずい分前から言われているけれど、こうした「種族の遺伝的な背景」に注目し、手術をしないまでも脳の飢餓中枢
を抑制する研究はこれから進むに違いない。
またいわゆる健康ビジネスも、これから伸びてゆく分野に違いないと思う。 

アメリカ人を太らせたあの政策 外国人の不思議(1)
2014/1/10 6:00ニュースソース日本経済新聞 電子版
 日本を訪れる外国人旅行者数は昨年、初めて1000万人を超えた。都会や観光地では珍しくなくなった外国人の姿だが、体つきも文化も異なる日本人からすると、不思議に思うことがまだまだある。欧米人はなぜあんなに太っているのか、なぜ寒いのにTシャツ姿で平気なのか……。謎の数々に迫ってみた。
 ■沈むアトラクションのボート
 おそらく日本人にとって一番びっくりなのは、欧米人の肥満ぶりだろう。とくに際立つのは米国人。最近は日本でもお腹の出たメタボな人が増えているが、米国人の肥満ぶりは質量ともに異次元だ。
 例えて言うなら、体重150キロぐらいの相撲取りや、巨大な洋梨のような体型の人が普通に歩いている。日本では見かけなくても、米国旅行、あるいはテレビで米国のニュース映像を見たとき、思い当たる節のある人は多いだろう。
 こんなエピソードをご存じだろうか。ディズニーランドの本家、米国カリフォルニア・ディズニーランドは2009年、老舗の人気アトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」を1年かけて大改装した。
ミシェル・オバマ米大統領夫人(右)は子供の肥満防止のキャンペーンに取り組んでいる(ゲッティ=共同)
 表向きの理由は、設備の老朽化。だが真相は、肥満客のせいで客を乗せたボートが沈み、船底が引っ掛かってボートが立ち往生する事態が頻発したためと言われている。
 大改装の狙いは、水路を深くし、かつボートの浮力を強化し、肥満客が大勢乗り込んでも滞りなくアトラクションを運営することにあったという。
 他にも米国では、航空会社が肥満客の搭乗を拒否してニュースになったり、サンフランシスコ市が体重による雇用差別を禁止する条例を制定したりするなど、肥満が深刻な社会問題となっている。
 ミシェル・オバマ大統領夫人は就任以降、子供の肥満撲滅のため、「Let’s Move」と銘打った大々的なキャンペーンを展開している。
1980年代以降の食生活の変化が米国人の肥満に拍車をかけたという
 米国人の肥満ぶりはデータからも明らかだ。一般に肥満度は、体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったBMI(Body Mass Index)値で測る。世界保健機関(WHO)は、BMI値が30以上を「肥満(obese)」、25以上30未満を「太り気味(overweight)」と分類している。例えば、身長170センチの人なら、86.7キロ以上で肥満とみなされる。
■脂肪を蓄え飢えに備えた狩猟民族
 経済協力開発機構OECD)の最新データによれば、米国の成人の肥満率(全成人人口に占める肥満人口の割合)は、33.8%と世界一。「太り気味」も人口の約3割いるので、普通の体型の人は3人に1人しかいない。ちなみに日本人の肥満率は3.9%だ。
 では、米国人はなぜそんなに太っているのか。肥満問題に詳しい東京女子医科大学糖尿病センターの内潟安子センター長は、「人類学的要因に加え、社会的背景が大きい」と話す。
 内潟氏の言う人類学的要因とはこうだ。欧米の白人はもともと狩猟民族だった。狩りは成功する日もあれば失敗する日もある。だから、獲物にありつけない日に備え、体内に脂肪を蓄える必要があった。そうしないと餓死の危険性が高まるからだ。結果、白人は自然と太り気味の体型になった。
 それに対し日本人など農耕民族は、田畑で育てた食物を保管し必要に応じて食べる術を身につけたため、余分な栄養素を体内に蓄える必要がなかった。それで白人に比べてスリムな体型になったという。
 だが、それにつけても米国人の肥満ぶりは異常に映る。実際、肥満が原因の心疾患や脳梗塞、がんなどによる死者数が米国では急増している。生存のための体の反応が度を越して暴走しているのだ。背景にあるのが社会的要因だ。
 米国人は昔から今のように激しく太っていたわけではない。米政府の統計などを分析すると、米国人が異常に太り出したのは1980年代。いったい何が起きたのか。
アメリカの肥満は貧困と同義語
 第1に、ファストフードを中心とする外食産業の発展と競争激化で、安くて高カロリーの食べ物が世の中にあふれた。日本の外食業界で最近流行の「メガ盛り」や「ガッツリ飯」の源流となる「アメリカン・サイズ」が生まれたのも、この時期。米国人が日常食べる量は、この20〜30年で明らかに増えているのだ。
 第2に、政府による農家への補助金ばら撒き政策によって、甘味料の原料や家畜の飼料となるトウモロコシが大量生産されるようになった。その結果、高カロリーの炭酸飲料やジャンクフードの価格が一段と下落。カロリーの過剰摂取に拍車がかかった。
 第3に、レーガン政権以降に進められた「小さな政府」を目指す経済政策によって、国民の間の貧富の差が拡大。低所得層は日々の食事を安価なジャンクフードに依存するようになった。
 実際、米国では所得の低い層ほど肥満率が高いという現象が起きている。肥満はもはや贅沢病ではなく、貧困と同義語なのである。このあたりの事情について、拙著『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ)で追究してみた。
 しかし本当の問題はここからだ。今、この米国発の肥満が、経済のグローバル化の流れに乗って、世界中に感染しつつある。例えば、中国では1980年に1%未満だった成人の糖尿病有病率が今や11%を超えた。クウェートでは肥満治療手術を受ける人が過去10年で10倍に増えたという。
 日本にとっても対岸の火事ではない。東京女子医科大学の内潟氏は「日本人も食生活の変化などの影響で肥満が増えている」と警鐘を鳴らす。(ジャーナリスト 猪瀬聖)