藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

靖国の行方。

靖国の参拝問題は、日本のニュースとしては珍しくBBCワシントンポスト、FTなどでも大きくトップで取り上げられていた。
で大体は「よろしくない」「いたずらに隣国を刺激するな」「右傾化か」というトーンだけれど、(中国だけは"condemn"と最上級の非難だったが)こうした問題は当事者たちの思惑どおりに進む、とは全然限らない。

関係者が国内だけでも非常に多い。
さらに東アジアは当事者としてもとより中西アジアEUアメリカ、新興国が「アジアを見る目」もまちまちである。
さらには世界の四大宗教、というフィルターまでかかってくるのだから、およそ「靖国参拝再軍備→TPP」とか言う風に物事がスーっと進んでいくとは到底思えない。
動きが動きを誘発し、また違う他者を刺激し、さらに影響が広がるだろう。

大筋で言えばオバマが「全体的に平和に」リードしているのが今の世界の流れで、爆発的な戦争需要などを期待する新興国はともかく、先進国はこの流れにはもう逆行しないのではないかと自分は感じている。

日本の政策も、米の完全従属からは少し距離を置くことを考えつつ、そんな世界の流れに乗ればよいのではないだろうか。
ちょっと「どこの国からも距離を置く」という姿勢を見せる意味では、靖国参拝はそれほどの愚策ではなかった、と数年後に云われる気がするのだがどうだろう。

ぜひ検証してみたいと思う。
(なーんの影響もなかったりして)

「米の失望」首相の誤算 靖国参拝、国際社会で孤立感
安倍晋三首相の突然の靖国神社参拝から一夜明け、批判や懸念の声が世界に広がった。「失望」を表明した米国、「遺憾の念」を示したロシア、「慎重な外交」を求めた欧州連合(EU)――。日本への逆風は中国、韓国にとどまらず、国際社会で孤立感が深まっている。

* トピックス:安倍首相が靖国神社参拝

 「日本包囲網」が瞬く間に形成された背景には、首相が靖国参拝をごく限られた側近だけと決めたことがある。「参拝を歓迎する人たちの旭日(きょくじつ)旗に囲まれるわけにはいかない」(政権幹部)と事前の情報漏れを防ぐことを優先させたため、外交当局を交えて関係国の反応を十分吟味しなかった。首相秘書官の一人は26日の参拝直前、「官邸で首相がモーニングを着ていたので驚いた」と明かした。
■日米防衛相の電話協議中止
 安倍政権が外交の柱に掲げた日米同盟の強化は参拝を境に暗雲が立ちこめた。27日、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古埋め立ての知事承認に絡み、小野寺五典防衛相と米国のヘーゲル国防長官が電話協議をする方向で調整が進んでいたが、都合が合わないとして急きょ中止になった。
 関係者は「靖国参拝が影響したかわからない」と歯切れが悪い。
 首相の参拝を機に対応に追われる外務、防衛両省内に無力感が広がっている。
 両省内に参拝するとの情報が伝わったのは当日朝。参拝から約1時間後、小野寺氏が外務省に駆け込み、岸田文雄外相と対応を協議する慌てぶりだった。外交ルートで中韓に参拝を伝えるのも直前になり、ほかの国々の多くには参拝後、首相の談話を紹介し、理解を求めるのが精いっぱいだった。
 参拝への批判に対し、有効な手立てを講じる動きは鈍い。首相周辺は米国の批判を当初、「在日米国大使館レベルの報道発表だ」。その後、国務省が同様の談話を発すると、政府高官は「別の言葉から『失望』に弱めたと聞いている」と語った。官邸から外務省には「参拝で外交に悪影響が出ると記者に漏らすな」と伝えられたという。
 27日、首相官邸で記者団の取材に応じた首相自身もこう語るだけだった。「戦場で散った方々のご冥福を祈って手を合わせる。世界のリーダーの共通の姿勢だ。そのことを理解してもらうよう努力したい」
■米とすきま風、外務省懸念
 説明を尽くせば、靖国参拝を米国は理解してくれる――。安倍晋三首相はそう思っていた節がある。
 「靖国参拝の問題は、米国人の立場に置き換えて考えてもらえればと思う」
 5月、首相は外交評論誌「フォーリン・アフェアーズ」のインタビューを受けた。首相はそこで、米大統領戦没者を追悼するアーリントン国立墓地を引き合いに、現職首相が靖国に参拝する正当性を主張した。南北戦争の南軍の兵士も埋葬されている同墓地への追悼が奴隷制度の肯定に当たらないとする米大学教授の指摘を引用し、「靖国参拝も同様の議論ができる」とも訴えた。
 だが、首相の主張は米側に受け入れられなかった。
 10月に訪日したケリー国務長官ヘーゲル国防長官は靖国神社ではなく東京都千代田区千鳥ケ淵戦没者墓苑に足を運んだ。外務省内には「靖国神社はアーリントン墓地ではないというメッセージだ」との受け止めが広がった。
 そんな米国の「真意」を、首相は最後まで読み誤った。26日の参拝直後、首相は記者団に「靖国参拝はいわゆる戦犯を崇拝する行為だという誤解に基づく批判がある」。7カ月前のインタビューと同じ立場を示した。
 「誤解」との表現で自らの参拝の正当性を訴えた首相に対し、米国の反応は「失望」だったが、首相周辺の危機感は薄い。政権幹部は「米国はクリスマス休暇中だし、言葉を練れていなかったのでは」と分析。側近の一人は「米国は同盟国なのにどうかしている。中国がいい気になるだけだ」と不満を漏らした。
 ただ、政権の足元では、懸念の声が強まり始めている。外務省幹部は「『失望』という表現はショックだ。米国との間にすきま風が吹くと中国、韓国、北朝鮮が日本に強く出てくる」。公明党山口那津男代表は27日、「国立追悼施設を造るという選択肢を真剣に検討する必要がある」と指摘した。
 日米のきしみは、安倍政権が年末にショーアップを狙った普天間問題にも影を落とした。参拝翌日の27日、仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事が移設先の名護市辺野古の埋め立てを認めた。停滞してきた普天間移設を進める節目で、米政府の評価は高い。
 だが、靖国参拝で効果は相殺される結果になった。政府関係者は27日、こう嘆いた。「靖国参拝のおかげで沖縄がかすんでしまった。歴史的な進展なのに」
■米、変化の裏 中国を意識
 【ワシントン=大島隆】一方の米国。靖国参拝を巡り表向き中立の立場を取ってきたが、今回、反対を鮮明にしたことで、日本の孤立感が一気に深まった。なぜ、対応が変わったのか。
 最大の要因は、日本を取り囲む東アジアの安全保障環境の変化だ。
 「日米韓が関係を改善すれば、地域はより安定する」。バイデン米副大統領は12月初旬、訪問先の韓国での講演で訴えた。
 小泉首相が参拝した2000年代と比べると、米国と中国の国力の差は縮まっている。アジア重視を掲げるオバマ政権は、中国の台頭に対処するためにも、同盟国との関係強化を模索する。同盟国同士のこれ以上の関係悪化は、何としても避けたかったのが本音だ。米国防総省高官は27日、「『失望した』という声明がすべて。参拝は地域での摩擦を増幅させる。我々にとっても、日本が近隣諸国と良好な関係を持つことが重要だ」と釘を刺した。
 尖閣諸島を巡る日中の対立も、小泉政権時代との違いだ。偶発的な衝突が米国をも巻き込んだ軍事紛争に発展することを強く懸念するオバマ政権は、これ以上緊張を高めないよう両国に求めていた。それが今回、声明に「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取った」とある通り、米政府は日本側が緊張を高める行動をとった、とみなした。
 もう一つの違いはオバマ政権とブッシュ前政権の外交方針だ。トルーマン国家安全保障プロジェクトのアリ・ラトナー研究員は「オバマ政権はブッシュ政権より対中政策で建設的な関与を重視する。中東ではイラン、アジアでは中国が代表的だ」と話す。こうした対中姿勢の違いが、中国が強く反発する靖国神社参拝問題への態度に影響した可能性がある。
 保守色の強い安倍首相と、民主党内でもリベラル系とみられてきたオバマ大統領の「相性」もある。2月の日米首脳会談後、安倍首相は「オバマ大統領とケミストリー(相性)が合った」と語ったが、米国側にはこうした見方はない。
 カーネギー国際平和財団のジム・ショフ上級研究員は「米国は昔よりも北東アジアと自国の安全保障上の国益を結びつけて考えているし、地域の緊張も高まっている。首脳同士の関係もブッシュ・小泉時代と同じではない」と語る。複数の要因が重なり、今回の厳しい対応につながったという分析だ。
■「戦後秩序に挑戦」ロシア同調
 「国際的な歴史観、価値観から言って、安倍氏は異端だ。米国を含む国際社会が、彼という人間の信頼性に疑問を持ったはずだ」。26日、中国外務省幹部は朝日新聞記者にこう話した。
 中国は靖国参拝を「戦後国際秩序への挑戦」(秦剛外務省報道局長)と位置づけて批判することで、安倍政権を孤立させる戦略を鮮明にしている。
 中国の言う「戦後国際秩序」とは、第2次世界大戦で、日本やナチス・ドイツを破った米ソや中国(中華民国)などの連合国が主導して築いた世界秩序のことだ。戦争犯罪人への厳罰や領土の返還など、日本の降伏条件を定めた「ポツダム宣言」もその礎とされる。
 ロシアが今回、安倍首相の参拝を「遺憾だ」と批判したのは、「第2次大戦の結果の見直しは認めない」とのシグナルを改めて送る意図があったとみられる。
 第2次大戦をめぐり、ロシアは前身のソ連の役割をファシスト国家のナチス・ドイツと日本から、欧州とアジアを解放した立役者と位置づける。こうした立場は対外的なものだけでなく、戦後のソ連・ロシアの国民の価値観や愛国心の基礎にもなっている。
 安倍首相がどのように弁解しても、ロシアは靖国神社軍国主義の象徴と受け止める。そこに日本の首相が参拝することは、大戦の歴史的評価に対する挑戦にほかならない。
 北方領土問題でも、ロシアは「日本は第2次大戦の結果を認めた上で交渉すべきだ」との立場だ。日本との関係強化を目指すプーチン大統領は、今年だけで安倍首相と4回会談した。ただ、今回の首相参拝に対して、ロシアは異例の外務省声明で「遺憾の念」を示しただけに、領土交渉や経済協力の機運が再び冷え込む可能性もある。