藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

まだまだ想像の先へ

これからのコンピューター端末については、ここ一年ほどで「眼鏡型」「腕時計型」「指輪型」など、今一番活発な試行錯誤がされている時期だが、いよいよ「繊維レベル」の話になってきた。
その名もスマートファブリック(繊維)。

何でもスマートがつくのは閉口するが、それしても「センサーが限りなく小型化する」ということのメリットは「まったく新しい技術の革新」とはまた違う大きなインパクトを日常にもたらす可能性がある。

技術屋は、とにかく「新素材」「新理論」に目が行きがちであるが、「既存技術の集積」の先にも利用するユーザーにとってはまったく新しい世界が訪れることも多いのである。

シャツや肌着にセンサーが埋め込まれることで、位置情報や、さまざまな生体情報を定量的にモニターすることもできるし、また小型化されたセンサーはいよいよスーパーのの支払いにも「最後の利便」をもたらすのではないだろうか。

リアルにスーパーで食料品を買う行為はなくならないが、今の「レジスター」は姿を消す可能性が高いと思う。
ユーザーは品物を持ってゲートを通過するだけになるだろう。
もう「お買いもの」というのはそういうスタイルになるのだと思う。
「総監視社会」との批判もあるだろうが、子供とか、老人とか、生徒とか、お客とか、そういう「管理業務」が伴うものには「小型センサー」はあらゆるメリットをもたらすだろう。

高齢者施設とか、病院とか医師とかが、モニターするコンピューターを使い、膨大な数のセンサーをコントロールできる時代はすぐそこに来ているように思う。
まだまだ応用できるアプリケーションはいくらでもあるだろう。
やはり、本当の進化はこれから始まるのではないだろうか。

ウエアラブルの本命か、健康状態モニターする「賢い衣服」
2013/12/27 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版
 「ポスト・スマートフォンスマホ)」との期待から、ここ数年、数多くの製品や試作品が登場しているウエアラブル(身に着ける)機器。メガネ型、時計型などさまざまなタイプがある中で、「これぞまさにウエアラブル」という製品が登場した。センサーを埋め込んだシャツやベビーウエア、ソックスなどの「スマートファブリック(ファブリックは織物や編み物)」である。着るだけで利用者の活動状態をモニターできるため、使っていることを全く意識させない点が大きな特徴だ。米シリコンバレーベンチャー企業を営み、先端技術動向に詳しいベンチャークレフ代表の宮本和明氏に、スマートファブリックの最新事情を解説してもらう。
 仕事でストレスがたまってくると、スマホのアプリが「深呼吸が必要」とアドバイスしてくれる(図1)――。
 心臓の鼓動をモニターし、健康状態を把握するアンダーシャツ、つまり「スマートシャツ」の著名人によるトライアルが始まった。
図1 ストレスの度合いを測定する「スマートシャツ」の利用イメージ(図:OMsignal)
■ストレスの度合いを計測
 これは、カナダ・モントリオールに拠点を置くOMsignalというベンチャー企業が開発している「OMsignal Shirt」である。利用者の心拍数、呼吸数、歩行数、カロリー消費量などを測定する。このほか「HRV(Heart Rate Variability)」、つまり心拍間隔の変位を測定することで、利用者がリラックスしているのか、緊張しているのか、ストレスの度合い(ストレスレベル)を算出する。
 センサーはシャツの胸の辺りに帯状に実装されている。センサーは2種類あり、それぞれ加速度計と心電計(ECG)である。加速度計で歩行数を測定し、消費カロリー量を算定する。一方、ECGは心拍数や心拍の間隔を測定する。これらのデータからHRVを算出し、ストレスの度合いを把握する。
■家族メンバーの健康管理に利用
 測定したデータはスマホに送信され、日々の生活のなかで、運動量や消費カロリー量を把握する(図2)。ストレスレベルが高い時には、アプリの指示に従って、呼吸法を調整し、緊張感を和らげる必要がある。
図2 「OMsignal Shirt」が測定した利用者の健康状態に関するデータは、スマホでチェックできる(図:OMsignal)
 OMsignalは、個人で利用するだけでなく、家族の健康管理を提唱している。妻のストレスレベルが高い時には、アラートが夫に届き、電話して様子を見守ることができる。両親の健康状態もモニターでき、心臓の異常を検知すると、すぐに病院に連れていくなどの措置が可能となる。
 衣服にセンサーを織り込むことで、わざわざ特定のデバイスを身に着けなくても、定常的に身体の状態をモニターできる。衣服は身体の表面を幅広く覆っているので、データの収集には適しているのだ。
 一方で、センサーを織り込んだシャツは、一般のシャツと同じように快適であることが必須条件で、おしゃれなデザインも求められる。OMsignalは、開発者がスマートシャツを基盤とするアプリを開発できるよう、プラットフォームを公開する予定である。
■赤ちゃんの状態を常時モニター
 衣服にセンサーを織り込むアイデアはベビーウエアでも採用されている。Rest Devicesは米マサチューセッツ州ボストンに拠点を置くベンチャー企業で、「Mimo Baby Monitor」というベビーウエアを開発している(図3)。
図3 Rest Devicesが開発したベビーウエア「Mimo Baby Monitor」を身に着けたところ。緑色のストライプの部分がセンサー。写真下の亀の形をした装置が送信機兼センサー(図:Rest Devices)
 ベビーウエアは「Kimono」という名前で、センサーがプリントされており、赤ちゃんの呼吸をモニターする。図3上の緑色のストライプの部分がセンサーになっており、収集したデータは、「Turtle」(写真下の亀の形をした装置)と呼ばれる送信機兼センサーの役割をするアクセスポイント「Lilypad」に無線で送信される。利用する無線通信規格は、低消費電力な「Bluetoothブルートゥース) Low Energy」である。そしてLilypadは、受信しデータをWi−Fiでスマホに送信する。
 赤ちゃんのデータを見る両親は、自分たちのスマホに専用アプリ「The Mimo」をインストールしておく(図4)。アプリは、赤ちゃんが起きているか眠っているのか、這っているか、立ち上がっているかなどの状態をリアルタイムに表示する。
図4 赤ちゃんが起きているか眠っているのか、這っているか、立ち上がっているかなどの状態をスマホでチェックできる(図:Rest Devices)
 呼吸の間隔はグラフとして表示され、赤ちゃんの呼吸に異変があると警告メッセージを送信する。赤ちゃんをここまで監視する必要があるのかという否定的な意見がある半面、お母さんに安心を与えるツールとして反響も大きい。Mimo Baby Monitorは2014年1月から販売が開始され、価格は約200ドルである。
■ランニングのコーチはソックス
 センサーが埋め込まれ、ジョギングのフォームを矯正するソックスも登場している。このソックスは米ワシントン州レドモンドに拠点を置くHeapsylonが開発した「Sensario Fitness」で、底部に圧力センサーを搭載している(図5)。
図5 Heapsylonが開発した「Sensario Fitness」。底部に圧力センサーを搭載し、歩数、速度、移動距離、カロリー消費量のほかに、走行ペース、接地方法、体重移動などの状態を測定する(図:Heapsylon)
 Sensario Fitnessは歩数、速度、移動距離、カロリー消費量のほかに、走行ペース、接地方法、体重移動などの状態を測定する。これらのデータを元に、ランニングのフォームについてリアルタイムにアドバイスする。将来はゴルフスイングにおける体重移動に関してアドバイスするサービスの提供も検討している。
 ウエアラブル型の健康管理機器としては、米Fitbitの「Fitbit」や米Nikeの「Nike FuelBand」などが既に定番になった感はあるが、センサーを埋め込んだ衣服、つまりスマートファブリックなら着るだけで、利用者が無意識の内に身体の状態をモニターできる。本当の意味でのウエアラブルである。こうした製品のアイデアは以前からあったが、ようやくさまざまな製品が登場するようになってきた。
宮本 和明(みやもと・かずあき)
ベンチャークレフ代表 1955年広島県生まれ。1985年、富士通より米国アムダールに赴任。北米でのスーパーコンピューター事業を推進。2003年、シリコンバレーベンチャークレフを設立。ベンチャー企業を中心とする、ソフトウエア先端技術の研究を行う。20年に及ぶシリコンバレーでのキャリアを背景に、ブログ「Emerging Technology Review」で技術トレンドをレポートしている。
(米ベンチャークレフ 宮本和明)
[ITPro 2013年12月10日付の記事を基に再構成]