藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

競争の中で。

nikkei.comより
中堅私立大が生き残りの岐路に立っている、という話。
ああ。
高校、大学と自分が受験生で"当事者"のころには分からなかったけれど、人生で最初に「自己目的化」にハマるのは受験というイベントからではないだろうか。(自分はそうだった)
幼児期に「挨拶をする」とか「片付けをする」とかいう躾は受けるし、習い事などをしても、それはそれ自身に意味もあることである。(と理解できた)
ところが義務教育を終わるあたりから「上位校に入るための勉強」が音も立てずに始まった。

本の学校制度、特に大学については世界でも珍しいらしく、やはり「ガラパゴス化」しているように思う。
海外の友人に話すと妙に不思議がっていたが、「その大学に入ること」がゴールになってブランド化し、それが社会人になっても付いて回る、というような"権威"は海外の大学にはみられないらしい。
日本人も、そのガラパゴスをよく分かっているのか、受験産業が目ざとく入り込んでいる。
東京だとJMARCH日東駒専、関西だと関関同立産近甲龍などとブランドを分けて受験生を追い立てる。
知っている人も多いと思うが、予備校の先生たちの「何が何でもJマーチィ〜!」というどなり声を聞いているとちょっとした狂気を感じるのである。

中でも近畿大はマグロの養殖で耳目を集め、受験者数全国トップの十万人超を集めたという。
記事の中では各大学の担当者が「坐してはいられぬ」「(受験の)科目増減や選抜方式の戦略を見直す」ということだが、もう少し「市場の声」を聞いてはどうだろうか。
(つづく)

めざせ第2の近大 マグロで脚光、志願者首位
龍谷大・ロゴ刷新、東洋大・入試に数学

2014/5/6 7:00
日本経済新聞 電子版
 中堅私立大学が浮沈の岐路に立っている。18歳人口の減少加速を前に、2013年は大学進学率が50%を割り込んだ。14年度の一般入試志願者数で全国トップに立った近畿大学は中堅私大の羨望の的。従来のイメージを一新し、中堅私大による生き残りをかけた学生獲得戦が本格化する。第2の近大はどこだ。


 早稲田は臙脂(えんじ)、明治は紫紺、慶応義塾は青・赤・青の三色。私立大学のスクールカラーは大学の印象と強くつながる重要なもの。伝統校ならば、卒業生の思い入れも強い。

 そんな大事なスクールカラーを一新した大学がある。「産近甲龍」と称される関西の中堅私大4校の一角を担う龍谷大学だ。従来の紫を13年度から全面的に明るい赤に変更。大学のロゴも現代的なものに変えた。

■進学率が低下

 従来のイメージを覆す“イメチェン”がなぜ必要だったのか。長期経営計画の策定を担った佐藤研司副学長は「大学のイメージはゼロという前提から始まった」と語る。

 龍谷大学は自らがどう見られているのか、イメージを探る調査を実施した。「仏教系、歴史、京都」。上がってきたのはこれだけ。要は印象が薄いのだ。「印象が残らないという歴史を断ち切りたい。リスクを取ってイメージを変えなければ」(佐藤副学長)と一部の反発をおさえてスクールカラーを刷新した。

 伝統校の決断は中堅大学を巡る外部環境が今後、深刻化することが背景にある。少子化が進展する一方で、上昇傾向にあった大学進学率が2011年の51.0%をピークに下り坂になり始めた。13年は50%を割り込んだほか、上昇が続いていた女子の進学率も低下に転じ、関係者に衝撃を与えた。大学淘汰の時代が迫るなか、中堅私大の危機感は強い。

近大は入試で10万人超を集めた(大阪府東大阪市
近大は入試で10万人超を集めた(大阪府東大阪市

 厳しさを増す環境下で他大学から「上手くイメージを転換した」と評されるのが近畿大学だ。

 ある近畿圏の大学幹部は声を潜めて言う。「かつての近大は『男の大学』という硬派なイメージの大学だった」。その幹部は羨ましそうに続けた。「だけど、マグロで変わっちゃったんだなあ」

 近畿大学水産研究所が人工ふ化したミナミマグロを育てることに成功したと発表したのは09年7月。近大はこの成果を大学のイメージ向上に最大限に活用した。首都圏などでも「近大マグロ」のラベルを貼ったマグロが流通。多くの人に、「近畿大学=マグロ」の印象をすり込んだ。

 女子学生の志願者も増え、近大は人気で産近甲龍から頭一つ抜けた格好だ。京都産業大学の藤岡一郎学長は「座視していれば大規模校の中に埋没する。ウチにとってのマグロは何なのか、早く考えないと」という。


 河合塾の調査によると、受験生が志望校を決める際に重視した項目のトップは知名度だ。入試の易化とともに、90年代にトップだった入試難易度との回答を上回るようになる。イメージ戦略の重要性は高まっている。

 さらに、「中堅私大クラスの大学では第一希望の受験生は10%あるかないか」(近藤治教育情報部長)。ほとんどの受験生が別の志望校の滑り止めとして受験する。だからこそ、知名度が高く印象に残る存在であり続けることが重要だ。人口減が首都圏より深刻で、危機感が早くに広がった近畿圏の私大からインターネット出願や受験料割引が普及しているのも、つなぎ留めへの危機感と無縁ではない。

箱根駅伝PR

 東洋と駒沢――。「日東駒専」と呼ばれる関東の中堅私大だが、多くの人はキャンパスより、箱根路を駆けるランナーを思い起こすはずだ。

 箱根駅伝は1月の入試出願の直前にテレビで大学名を連呼してくれるため、PR効果は絶大だ。駒大の14年度生向けのパンフレットでは紫のタスキを掛けたランナーがどの体育会より大きな写真で紹介されている。

 しかし駅伝頼みも最近では振るわない。今年箱根で優勝した東洋大学は、一般入試の志願者数が13年度比で13%減った。過去5年で最低だった。

 15年度の入試では、東洋大はさらに志願者を減らすかもしれない。受験科目に数学を必ず含める4科目型入試を拡大し、代わりに2科目入試を減らす。受験生の負担は増し、数学の苦手な文系の志願者が受験を避ける可能性もある。

 「科目を減らせば志願者は集まるが、それでいいのか。大学には志願者を増やすだけでなく、明確な将来像が必要ではないか」(加藤建二入試部長)。量より質重視にシフトする。

 大学にとって学生は「お客様」であるとともに、社会に出て将来のブランドをしょって立つ存在でもある。今の高校生だけでなく、社会から必要と選ばれる大学になるために、何をすべきか。各校の今の選択が、10年後のブランドを決することになるだろう。
(宇野沢晋一郎、岸本まりみ)
日経産業新聞 2014年5月2日付]