藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

どこかにいるオオカミ。


日経「国債暴落はオオカミ少年だった」という記事。
「オリンピック二年前説」と言うのが語られている。
二年前のカウントダウンが始まるまでは、景気は上がり続けるというのだ。
そして、公共投資の先が見えだす二年前くらいから今度は下がりに転じるという。
何か破滅型で「その先」はともかく今だけは「いけいけどんどん」という熱気も確かにあたりに漂っているように思う。
前回のオリンピックは半世紀前のことだし状況もずい分違う。
もう高度成長期ではなく、正反対の人口減少の中だから前例がない。
結局一人の人間が生きる100年程度の時間の中では、なかなか「同じ再現性」を持った状況というのはないのだろう。
また今回も自分たちは「初めての経験」をすることになりそうだ。

日本の財務状況は程度のバラつきはあるけれど、着々と悪化している。
いつか、三年後くらいにはオオカミ少年の警告は事実になることを、みんな何となく分かっているけれど「まだ大丈夫」と言っている、という風に自分は思う。
自分はバブル景気の最後のあたりに社会人になったので、周囲の戸惑う様子を見た経験がある。
大多数の人の常識がひっくり返った時の混沌ぶりはまだ覚えている。

せめて、せめて次の機会までには「バブルによらないこと」に従事することがせめてもの経験値だと思っている。

金融ではない投資。
量よりも質。
バーチャルよりリアル。

そんなことを志向したいと思う。

どこに消えた、国債暴落のオオカミ少年
編集委員 滝田洋一2015/3/22 6:00日本経済新聞 電子版
 またしても日本国債暴落説はオオカミ少年に終わった。日銀が国債を買い上げているからばかりでない。ドイツなどユーロ圏の長期金利が軒並みマイナスになったことで、あぶり出された投資資金が日本国債に流れ込んでいるのだ。


 外国人投資家の対日債券投資を確認しよう。今年2月の買越額は中長期債が1.1兆円、短期債は1.0兆円。3月は前半だけで中長期債を0.9兆円、短期債を1.3兆円買い越している。
 外国勢の中長期債に対する買いが盛り上がったのは昨年後半からだ。2014年末の外国勢の日本国債保有額は前年比14%増の95兆円に拡大した。国債発行残高の9.3%つまり1割近くは、外国勢が保有している勘定だ。
 外国人投資家は日本国債に財政リスクに見合った利回りを求めるので、外国勢の保有比率が高まれば従来のような低金利は持続不能となる――。そんな解説をするエコノミストが多かったが、どっこい10年物国債の利回りは再び0.3%台に低下している。
 今回の金利低下は欧州発。ドイツを筆頭にユーロ圏の国債の約3分の1がマイナス利回りになっているからだ。しかも欧州中央銀行(ECB)がマイナス利回りでも構わないとして、ユーロ参加国の国債購入に踏み切った結果、国債は深刻な「品不足」に陥っている。
 ECBが16年9月まで、ECBへの出資比率に応じて各国の国債を買い入れた場合、例えばドイツ国債の購入額は2315億ユーロとなる。これはドイツ国債の発行残高の19.5%にのぼる。発行額に対する比率は112.8%と、ECBによる購入額が発行額を上回る勘定となる。
 ドイツは財政が黒字に転じ、15年から新発国債の発行をやめているためだ。それにしても、新規の国債が蒸発することで、債券市場の流動性が著しく低下するのは避けられない。

ECBの大量購入で「蒸発」するドイツ国債ケース(1)合計ドイツフランスイタリアスペインECBの購入額・億ユーロ90002315182415831137対発行残高・%14.519.513.69.615.7対発行額・%84.4112.88453.275
ケース(2)合計ドイツフランスイタリアスペインECBの購入額・億ユーロ150003858303926391895対発行残高・%24.232.422.716.126.1対発行額・%140.618814088.6125
(出所)野村総合研究所の井上哲也氏の試算
 ケース(1)はECBが2016年9月まで購入する場合、ケース(2)は17年9月までの場合
 仮にECBが国債購入を17年9月までさらに1年延長せざるを得なくなった場合、事態はもっと深刻になる。ECBによるドイツ国債購入額は3858億ユーロまで膨らむが、これは国債残高の32%、発行額の実に188%に達するのだ。
 フランス、イタリア、スペインなど他のユーロ圏諸国でも、大なり小なり国債の品不足が起こる。ドイツに比べて財政健全化が遅れているこれらの諸国は、国債の利回りが下がればもうけものだろう。だがグローバルな投資家たちにとっては、たまったものではない。
 そうしたマネーが向かう先は米国債であり、ドル相場がハネ上がっている。そしてもうひとつ、日本国債がユーロ建て運用からいぶり出された資金の受け皿になりつつある。
 もちろん、日本の財政状況が悪いことは知れ渡っている。それでも、アベノミクスのおかげで税収が思いのほか上向き、国債の発行額は減少気味となっている。15年度の新規発行額も36.9兆円と、前年度の当初予算比で11%減る。今すぐ財政破綻が起こるわけではないとあって、日本国債は格好の一時避難先なのだ。
 こうした見立ての変化を反映してのことだろう。一時0.4%台に乗せた10年物国債の利回りは再び0.3%台前半に低下した。国債の破綻リスクを映すクレジット・デフォルト・スワップCDS)のプレミアムも、消費再増税の見送り発表後の昨年12月に0.7%台に上昇した後、足元では0.3%台に低下している。
 今や債券市場を覆うのは中央銀行による金融抑圧。年80兆円にのぼる日銀の国債買い上げは債券市場の流動性低下という代償を払いつつも、長期金利の低め誘導に一段と効果を上げだしている。いったん退散した国債暴落のオオカミ少年たちは、どう巻き返すのだろう。