藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

税金と国とIT。

パナマ文書インパクトは大きいが、その内容の精査には色んな意見がありそうだ。
何となくマスコミの論調は「税金逃れはけしからん」という気配だが、個別に見るとそれだけでもない。
記事にあるように

法人税をどれだけ課すか、課さないかは各国の主権に属する問題だ。

という通りでもあり、今一度「情報の開示と秘匿」について再検討する時期に差しかかっていると思えてならない。
そして、結局はこれらも「世界(の財務)を一つにする」というグローバル経済の管理面ではごく当たり前のことなのだと思う。

「国によって違う税制」→「適法になる要件」→「節税対策」というのは、今の資本主義では自然な流れに違いない。

かつてないネット時代、いよいよ税金の徴収方法や配布について、世界レベルでの取り組みが始まる予感がする。
税金も各国で徴収し、配るのではなくグローバルレベルでやれればずい分と省力化できる。
(その際には「為替」の問題だけは未だ未解決かもしれないが)

富の偏在はここ数百年の課題だが、いよいよITがそれに対する「解決策」を提示できる可能性も感じる。
金の流れを誰もが一見し、使い方を目の当たりにできればそれは立派なIT活用に違いない。

むしろ注意すべきは「納税回避」よりも「徴収」とか「配分」についてではないだろうか。
「納税されたお金が世界中をどのようなルールで還元されるのか」というテーマは「世界を一つにする」ということに先駆けて考えねばならない問題だ。
むしろそれが"ある解"を見つけられれば、国際的な紛争とか、国連のシステムにも光明が射すような気がする。

情報が世界を一つにするかもしれない、というのは明るいテーマだと思っていいのではないだろうか。

「オフショア・リークス・データベース」

税回避、危うい利用 パナマ文書、日本企業・個人は 会社購入、香港業者が助言

2016年4月27日05時00分

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 闇の中だった「タックスヘイブン」の利用実態を明らかにしたパナマ文書。日本関連データからは、海外でのビジネスや資産運用など様々な利用例が見つかった。転売されるペーパー会社を使う日本人も目立つが、過度な「節税」には落とし穴も待ち受けている。▼1面参照

 タックスヘイブンの会社を、中国ビジネスで利用すログイン前の続きるのはなぜか。

 英領バージン諸島に会社を所有する貿易会社の社長(44)は「中国に進出しやすく、撤退しやすいためだ」と説明する。中国本土に投資しようとすると、「地域ごとに会社を設立しなければならず、会計基準や税制も日本とは違う。雇用法制も複雑ですぐに撤退できない」。このため、タックスヘイブンの会社を購入して使う手法が普及。「香港の会計士や弁護士もそう助言する」

 香港には、登記済みのペーパー会社を転売する業者が多数あり、日本語でのやり取りも可能だ。

 家具を輸入販売していた西日本の男性(62)は2011年、バージン諸島にある会社を十数万円で購入した。中国の取引先から、送金先の銀行口座を香港に作ってほしいと頼まれたからだ。ネットで大手銀行の口座付きのペーパー会社をあっせんする業者を検索。複数の社名が並ぶリストから選んで決めた。男性は「送金窓口として会社を購入しただけ。香港に法人を作るとお金がかかることもあり、安く済むタックスヘイブンにした」と話した。

 関西の自営業の男性(64)は5年前、中国のある国営企業幹部から輸入代理会社の仕事を持ちかけられた。男性によると、幹部はロシアから重油を買い付ける際、輸入代理会社に仲介料を落として自分の懐に入れる計画だったという。

 男性は、バージン諸島のペーパー会社をネットを通じて約10万円で購入。ペーパー会社にためた金は「幹部が直接香港に取りに来る」との約束だったが、中国景気の減速もあり、輸入話そのものが立ち消えになったという。

 都内に本社がある美容グループは15年10月、カリブ海アンギラ島に会社の法人を登記した。ちょうど北京で中国1号店の開店を準備していた頃で「日本の店であることがわかると、日本たたきが起きた際に標的になると懸念した」(担当者)。ただ、社内で反対意見が出て最終的に投資をやめた。今は「法人の登記だけが残った状態」という。

 海外の税制に詳しい税理士は「バブル崩壊後、日本の富裕層がタックスヘイブンに資産保全の会社を作るようになった。ただ、最近はOECD加盟国が外国人の口座情報の共有に乗り出すなど監視の目は厳しくなり、利点は少なくなっている」と指摘する。(沢伸也)

 ■調査受け2億円追徴課税

 節税目的で、タックスヘイブンに会社を設立する事業主や個人は多い。ただ、思わぬ落とし穴もある。

 「もうタックスヘイブンに会社は作らない」とこぼすのは、関西でアパレル会社を父から継いだ男性(56)。

 08年、商社などとの取引を管理するペーパー会社をインド洋のセーシェルに家族らと共同で設立した。上海のコンサルタント会社に「国外取引は非課税」と勧められ「利用しない手はないと思った」。ペーパー会社には毎年約10億円の取引があった。当初、たまった利益は家族らに配当金で還元する計画だった。

 仲介業者からセーシェルの会社の口座が近く凍結されると伝えられ、4年前、会社を香港に移転。その直後、日本で国税局の税務調査が入った。売り上げや仕入れ高の数字の矛盾から申告漏れを指摘されて、約2億円の追徴課税処分となった。

 都内でアパレル業を営む男性(60)は朝日新聞の取材に「中国人の会社に名義を貸した」と打ち明けた。

 バージン諸島に08年に設立された会社の役員になった。「知り合いの中国人から『香港に貿易会社を設立するので名前を貸してほしい』と言われて貸した」と話す。書類に署名はしたが、株主登録に必要なパスポートなどを提出した記憶はないという。男性は「中国人がドルを貯金するために、海外に会社を作ることは多い。この会社もそのためだったのでは」と推測する。

 都内で外国為替証拠金取引(FX)の仲介業を営む男性(50)は「無断で名義を使われた」と憤る。

 06年にバージン諸島で設立されたペーパー会社の役員に名前があった。資料には署名もあるが、「私の署名ではない」と否定した。

 犯人の心当たりがないわけではない。約10年前、シンガポール在住の中国人から「一緒にビジネスをやろう」と持ちかけられて、合意書に署名もした。だが数カ月後に関係を清算した。

 ところが、昨年暮れ、「別の業者のウェブサイトにあなたの会社の登録番号が載っている」と関東財務局から指摘された。また、ペーパー会社と同じ業者名を使って欧州のキプロスで集客しているともいう。男性はその業者に警告書を送ったが、まだ返事はない。(五十嵐聖士郎)

 ■データ40年分、今はない企業の名も

 パナマ文書のデータは、1977年から2015年までに作られたものだ。個人を取材したところ、40年弱の間に転居などで連絡がつかない人も多かった。

 企業では、今はなくなっている名前も見つかった。通信大手のソフトバンクグループでADSL事業などをてがけていた「ソフトバンクBB」(SBB)。ソフトバンクに吸収された同社は、07年にバージン諸島に合弁会社を設立。ソフトバンク広報によると、当時、中国の大手IT企業がネット事業を始めるにあたって協力を要請された。SBBの出資割合は35%で役員も出した。事業は軌道に乗らず、11年に全株を譲渡して撤退した。

 数々の合併で話題を集めた「ライブドア」もバージン諸島に会社を持っていた。元執行役員の説明によると、中南米向けのサイトを運営しており、05年に約12億円で買収した。直後の06年、東京地検の摘発を受けてライブドア上場廃止になり、清算された。バージン諸島の会社は07年に売却したという。

 株主として個人名があったのは楽天の創業者、三木谷浩史会長兼社長。日本興業銀行を退職した直後の1996年、バージン諸島の会社に出資していた。朝日新聞社楽天の広報担当者を通じて三木谷氏に伝えたところ、「20年前の話で、最初は会社名も覚えていないようだった」。パーティーか知人の紹介で、知り合った外国人から投資を持ちかけられ、約80万円を出資した。事業はうまくいかず、出資金の一部が戻ってきただけ。「利益を得たわけでも節税や脱税を目的としたわけでもない」という。(大谷聡、錦光山雅子)

 ■情報公開「秘密」に風穴

 パナマ文書の報道を主導する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、世界の政治家や富裕層、大企業がタックスヘイブンを利用して租税を逃れている実態を暴く調査報道を以前から重ねてきた。

 2012年6月にICIJと提携した朝日新聞も当初からこの取材に参加。13年4月と14年1月に、ロシア副首相の妻、中国の習近平(シーチンピン)国家主席の姉の夫らとタックスヘイブンの関わりを報じた。さらに、大手会計事務所PwCのルクセンブルク法人から流出した内部文書を分析。これを基に、14年11月、国境を越える出資や融資にルクセンブルクの法人を介在させる高度に複雑な租税回避の手口を世界で一斉に報じた。

 国境を越えた租税回避は、古くて新しい問題だ。個人や企業がタックスヘイブンを利用して「過度な節税」を図ると、各国は対抗して新たな国際課税ルールをつくる。すると、新たな「抜け穴」探しが始まる。そんな「いたちごっこ」が続いてきた。

 日本は1978年にタックスヘイブン対策税制を創設。2年前には、国外に5千万円超の資産を持つ者が「国外財産調書」を提出する制度を導入してきた。

 ただ、法人税をどれだけ課すか、課さないかは各国の主権に属する問題だ。外資を呼び込むために税率を低くするタックスヘイブンを完全になくすことは難しい。ある税理士は「税の抜け穴を全て塞ぐのは、世界が一つにならない限り不可能だ」と指摘する。

 ICIJは、タックスヘイブンに関する報道を始めて3カ月後の13年6月、「オフショア・リークス・データベース」をネット上で公開した。タックスヘイブンにある法人とその役員、株主の名前、住所が無料で検索できる。

 日本や米国の多くの州では、法人と代表者名、住所などの情報が公開されているが、タックスヘイブンでは情報の入手が困難。脱税や資金洗浄がはびこる一因となっている。

 ICIJは公開データベースで「秘密の壁」に穴を開けることが、公益に資すると考えている。すでにデータベースには、日本の企業や個人の複数の名前が登録されている。これに、パナマ文書にある21万余の法人の名前などの情報を5月10日に追加登録して公開する。ICIJや朝日新聞は新情報が一般の人から寄せられることを期待している。(編集委員・奥山俊宏)