藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自分なりの仮説を。

今やガンよりも深刻な病気になりそうな認知症
症状の出方が様々で、特効薬もない状態が続いている。

脳内での(インスリンによる)「糖の吸収」がうまく進まないことが分かってきたという。

まさに現代病という様相の認知症が、実は生活習慣病と言われる糖尿病の相似形だとしたら、理解はしやすい。
先進国のビジネスマンは「糖質との戦い」を取りざたされているが、それがシニアの「脳」についても同様だとしたら予防する方法もありそうだ。

激増する病気について、自分なりに予防の情報を集めて「自分の生活習慣に取り入れる」ことはこれからの高齢化社会で必要なことだと思う。
健康管理は人に頼らない方がいいだろう。

アルツハイマー認知症は「脳の糖尿病」だった 治療の最前線
根本治療が見えてきた「アルツハイマー」(1/2)
 人の名前が出てこない度に心配になるが、健康診断で発症リスクが分かるわけではない。アルツハイマー認知症は身近なようで身近でない病だ。9月21日は「世界アルツハイマーデー」。今、治療の最前線では何が起こっているのか。そこにこそ自衛のヒントがある。

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 認知症を扱った有吉佐和子の小説『』には、こんな場面がある。

〈痴呆。幻覚。徘徊。人格欠損。ネタキリ。/茂造は部屋の隅で躰を縮め、虚ろに宙を眺めている。人生の行くてには、こういう絶望が待ちかまえているのか。昭子は茫然としながら薄気味の悪い思いで、改めて舅を見詰めた〉

1972年にこの小説が世に出てから46年。あらゆることを忘れてしまい、自分で自分がコントロールできなくなってしまう哀しさ。それを支える周囲の人の苦労は今も昔も変わらない。しかし、認知症そのものを巡る状況はこの46年間で大きく変化した。そもそも、『恍惚の人』には、医療行為によって〈痴呆〉の進行を遅らせようとする場面は出てこない。無論、現在は検査によって脳の状態を詳しく調べた上で、投薬治療など、様々な医療行為が施されることになる。果たして、その最前線では何が起こっているのか――。

2025年には患者数が700万人を超えると言われている認知症には、脳血管性認知症レビー小体型認知症などもあるが、全体の8割を占めるのが、アルツハイマー認知症だ。

「おくむらクリニック」院長で『ねころんで読める認知症診療』の著者・奥村歩氏が言う。

たんぱく質の老廃物であるアミロイドβが脳内に溜まることによって起こる認知症アルツハイマー認知症と言います。1906年、ドイツのアルツハイマー博士が世界で最初に報告したのでその名が付けられました」

実は、アルツハイマーの発症メカニズムはいまだ解明されていない。

「脳は極めて複雑な部位なので、なかなか他の病気のように創薬や治療が上手くいかない。今使われているアルツハイマーの薬は、脳の残った神経細胞の働きを応援してあげるような種類のものばかりです」(同)

「脳の糖尿病」
 そんな中、十数年前から注目を集めているのが、「アルツハイマーは脳の糖尿病」という考え方である。九州大学生体防御医学研究所教授の中別府雄作氏はこう語る。

アメリカのブラウン大学のスーザン・デラモンテ教授は、アルツハイマーを3型糖尿病と表現しました。ただ、そのネーミングが1型2型の糖尿病と似た3番目の糖尿病のように誤解されてしまったので、最近は『脳の糖尿病』という言葉が使われています」

糖尿病がアルツハイマーのリスク因子であることは以前から分かっていた。糖尿病患者がアルツハイマーを発症するリスクはそうでない人の2倍以上にもなる。

「最近分かったのは、糖尿病と深い関係のあるインスリンアルツハイマーの発症と密接に関わっているという事実です」(広島大学名誉教授の鬼頭昭三氏)

インスリンは血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれたり、エネルギーとして消費されたり、蓄えられたりするのを促す重要な橋渡し役で、その結果として血糖値を下げる作用を持っている。そのインスリン作用に障害があることで、血糖値が上昇するのが糖尿病だ。

インスリンの量に見合ったインスリン作用が発揮できない状態のことをインスリン抵抗性と言います。インスリンを出しても効かない状態になると、大量のインスリンが分泌され、高インスリン血症になります。この高インスリン血症が、アルツハイマーの大きなリスクとなっている」

と、鬼頭氏は語る。

「健康な状態では、膵臓で作られたインスリンは、血液脳関門という、脳にある“関所”を通過して脳で作用する。ところが、インスリン抵抗性の状態だと、インスリン血液脳関門を越えられず、脳まで届かない。インスリンは記憶を司る海馬などにブドウ糖を取り込む働きがありますが、インスリンが届かなければそれが出来ず、記憶力が低下する。また、脳の神経伝達物質であるアセチルコリンブドウ糖で作られるため、インスリンが脳で上手く作用しないと、アセチルコリンの機能低下にも繋がるのです」
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“最善の治療薬”
 鬼頭氏が話を続ける。

「糖尿病になると、インスリン分解酵素の活性が低下します。インスリン分解酵素インスリンだけではなく、アミロイドβも分解する。が、高インスリン血症の状態では、インスリン分解酵素は、インスリン分解のために大量に消費されるので、アミロイドβの分解が出来なくなる。これがアルツハイマー病の発症に拍車をかけるのです」

目下、鬼頭氏が“最善のアルツハイマー治療薬”と考えているのは、

「経鼻インスリン吸入薬。鼻から吸入すると、鼻静脈叢、嗅皮質を介して脳内にインスリンを効率良く取り込める。アメリカでは、経鼻インスリン吸入薬はすでにアルツハイマーの治療薬として発売されています」

ちなみに、経鼻インスリン吸入薬の日本での使用は認められていない。

脳とインスリンを巡る最新の研究は他にもあり、東北大学脳科学センター教授の福永浩司氏は、

「私たちは、11年に認可されたアルツハイマー治療薬のメマンチンが、脳インスリンシグナルを改善することを発見しました」

と、語る。

「メマンチンには、インスリンを増やす糖尿病治療薬と同じ作用があり、それが脳に働いてアルツハイマーが改善していたことが分かったのです。この研究により、アルツハイマーが脳の糖尿病であるという説が実証されました」

実際、メマンチンを投与したマウスの実験では、アルツハイマーと糖尿病の両方が改善したという。

「今ある糖尿病の薬も、アルツハイマーに生かせないかどうかを今後見ていくべきです。脳に選択的に行く糖尿病の薬を誰かが作り、糖尿病ではないアルツハイマーの患者さんに投与して症状の改善が見られれば大きな業績になる」(同)

先の中別府氏も言う。

「私たちが福岡県の久山町で亡くなった88人の脳の遺伝子発現を調査したところ、アルツハイマーの患者の脳では、脳内のインスリンに関わる遺伝子の発現が低下していました。人だけではなく、アルツハイマー型のマウスを作って検証したところ、やはり同様にインスリンに関わる遺伝子の発現に低下が見られました。アルツハイマーの患者は脳内でインスリンがうまく働いていない。まさに脳の糖尿病なのです」

週刊新潮」2018年9月27日号 掲載