藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

経済の翻弄から逃れて

サウジのジャーナリスト殺害について、日経の記事。
こういう国際政治のからむ事件について、一体真実はどうだったのかを解き明かす知識はないけれど。

100年前に比べればずい分ましになったとはいえ、未だに戦争している人はいる。
内戦とか鎮圧とかで、毎日何百人もの人が犠牲になっている。

この度は著名とはいえ、一人のジャーナリスト殺人の事件がひょっとしたら世界の大国を巻き込む事件になるかもしれないという。
つくづく政治とは恐ろしい、と思う。
人の上で行なわれている「まつりごと」ゆえだ。

米露中のトップという「ただ一人の人」が地球を揺るがしかねない事態を作るというシステム。
こうしたシステムは、太古の世界からあまり変わっていなさそうだ。

これからの情報化社会になれば、ようやく「リーダーの暴走」は多少抑止されそうな気もするけれど、今も昔も「リーダーによる政治」というのは実に危ういものだと思う。
けれどその「リーダーシップ」がなければ国は動かない。

今の時代に(日本は別としても)米露中、フィリビンなど東南アジア、中東、そしてアフリカに独裁的なリーダーが同時に出てきたのは、次の時代の前触れのような気がする。

いよいよ「世界の政治の方向性が定まる素地」ができそうだ、という予感は楽観的過ぎるだろうか。

結局人類は「そこまでアホ」ではないと信じたい。
軍備拡張の前に、まずは貧困の撲滅ではないだろうか。

殺害疑惑 サウジの誤算 特任編集委員 脇 祐三

米国頼みも批判厳しく
 サウジアラビアの著名なジャーナリストが殺された疑惑が、国際政治の焦点になっている。サウジ政府は20日、記者の死亡を認め、関連する政府高官の更迭を発表したが、説明には不自然な点が多い。絶大な権力を握るムハンマド・ビン・サルマン皇太子の政治姿勢への疑念も強まり、サウジは国際的な信用を失いかねない。同皇太子を重要なパートナーとして親密な関係を築いてきた米国のトランプ政権も、深刻な打撃を受ける。


 10月2日にイスタンブールのサウジ総領事館内で死亡したジャマル・カショギ氏は、筆者の知人である。
 アブドルアジズ初代サウジ国王の侍医だった人が祖父にあたるという。米国の兵器メーカーの代理人を務め、世界的な富豪として知られたアドナン・カショギ氏も親戚にいる。王家とつながりが深い有名なファミリーの一員であるジャマル・カショギ氏は、王制を否定する反体制派ではない。とても温厚な紳士で、ジャーナリストとしては「自由」にこだわるリベラル派だ。
 2000年代の初めには、社会生活を取り締まる宗教警察の行きすぎなどを批判、超保守的な宗教界と対立した。しかし、本国に居づらくなると、駐英、駐米大使を歴任した有力者のトルキ王子が、それぞれの大使館でカショギ氏のポストを用意してくれた。
 本国に戻っていたカショギ氏が、逮捕されそうだと言ってサウジを去り、米国に事実上の亡命をしたのは17年秋。皇太子が主導した17年6月のカタールとの断交を批判したら、「カタールの手先」扱いされて弾圧が強まった。国を去る直前には、「当局から、トランプ批判をすぐにやめろと迫られている」という情報も発信していた。
 ムハンマド皇太子は、イランの脅威を強調するトランプ米大統領をうまく取り込む外交に力を入れてきた。自国の著名記者がトランプ批判を続けるのは目障りだという空気が、サウジの上層部にあるらしい。今のサウジでは言論の自由の許容度の幅は狭い。
 以前は、多数の王族がいる王家が巨大な政権政党のようなものだった。保守派もリベラル派もいて、それぞれ意見を言っていた。ジャーナリストもある程度は、自分の意見を言うことができた。
 ところが今は、複数の意見の存在を許容しない政治体制になりつつある。カショギ氏がワシントン・ポスト紙のコラムで書いてきた論点の一つはこれだった。本人は「非難ではなく助言」のつもりだったが、改革の助言役としてサウジに戻って来いという誘いは断り続けてきた。逮捕、投獄を恐れたからだ。
 10月2日に総領事館内で何が起きたのか。トルコ当局は当日の館内の音声情報を握っているらしい。エルドアン政権に近いメディアは、政府当局者の情報として殺害疑惑を詳細に報じている。小型ジェット機2機に分乗、サウジの外交官パスポートを使ってトルコに入国し、総領事館に滞在した後、同日に出国した15人。名前と顔写真、インターネットから割り出した肩書などが、すぐに広まった。
 米国のメディアも、皇太子のボディーガードや法医学者が含まれていると、連日、続報を伝えている。
 サウジとの緊密な関係を保ち、巨額の兵器輸出も契約通り実行したいトランプ大統領は当初、サウジ批判をためらったが、状況は次第に不利になった。館内で口論が起きて殴り合いになり、偶発的にカショギ氏が亡くなったというサウジの幕引き用のシナリオは、通用しなくなっている。
 米議会では「サウジの説明は信用しがたい」という声が超党派で噴き出し、サウジ制裁の立法化に向かい始めている。トランプ大統領20日夜に「明らかなごまかしや嘘があった」とサウジ側への不満を示した。政権としても、サウジに対する何らかの制裁措置を考えざるを得なくなる。
 米国が制裁を発動すれば、サウジはどう出るのか。一部の政府系メディアは14日、原油を減産し、価格を急騰させることもできるという意味合いのコメントを流した。中間選挙を前にガソリン価格上昇を抑えたいトランプ政権が、サウジに増産を求めていることを踏まえた警告だろう。
 原油価格を急騰させた1973年の第1次石油危機の後、サウジは「政治的理由を石油供給にからめることは、もうしない。われわれは最も信頼できる供給者だ」と強調してきた。制裁に対抗して石油市場を混乱させるというようなメッセージは、原則に反する。最高権力者の考えかと市場にも緊張が走り、ファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は火消しに追われた。
 経済構造改革を進めたいサウジが求めるのは、国内の産業多角化につながる先進国からの直接投資だ。投資する側は当然、政治の安定を望む。当面の政治情勢では、王位継承が円滑に進むかが、最大の注目点だ。これについてムハンマド皇太子は、王位継承に向けてあらゆる異論を封じることが政治の安定だと思い込んでいるようにもみえる。
 一方でサウジは、米国などのハイテク企業への投資を拡大し、投資を通じた世界への影響力も強めたい。そこに、今回の事件が起きた。サウジ自体が深刻な信用失墜のリスクを解消できないと、サウジへの投資もサウジからの投資も、世界の企業は二の足を踏む。経済改革が危うくなりかねない状況だ。今週、投資セミナーを主催する皇太子は、まず説明責任を問われる。