[rakuten:book:12081832:detail]
その登場人物の豪華さと、
彼らのどぎつい振る舞い、
そしてそれらの赤裸々な描写、に一気読み。
ただし特に人に薦めたくなる内容、でもない。
読み物の読後感としては軽めだ。
そういう意味では「単に面白い」本、だったが。
最高裁判決に怯える著者
石橋産業事件で、懲役三年の「実刑判決」に上告中の著者、元特捜検事の田中森一(もりかず)氏。
昭和十八年、長崎平戸の貧しい漁村に生まれ、定時制高校から岡山大へ進み、昭和四十四年、司法試験合格。
その後検事になり、文字通り「たたき上げ」で、検事の花形「特捜」へ登りつめる。
そうして著者自身も「なぜだかわからない」という流れで弁護士へ転身。
著者の弁護士時代はまさに「バブル」と共にあった。
拓銀をつぶした男、といわれる中岡信栄が宿泊する
・ホテルオークラのインペリアルスイートでミルク風呂に浸かる安倍晋太郎や、
・フランスに日帰りする山口組元若頭、宅見勝組長
著者は検事の退職金800万円に比し、弁護士事務所開設の祝儀は6000万円を得たという。
会社の顧問料だけでも毎月1000万円超と。
まさにこの時、バブル経済はピークに。
著者は数々の「バブル紳士」と関係する。
「ヤミ社会」の守護神だ。
・アイチの森下安道
・イトマンの伊藤寿永光(すえみつ)
・大阪府民信組の南野洋
・アイワグループの種子田(たねだ)益夫
・大阪日日新聞の北村守
・仕手筋、コスモポリタン総帥の池田保次
・許永中(顧問契約はしていない)
・イ・アイ・イ・高橋治則ほか仕手筋の大物たち…
みながヘリを持ち、数千万のカネを持ち込んで、お互いのゴルフ場を渡り歩く様は「狂宴」ということばがぴったりだ。
(著者も七億のヘリを購入。一度しか乗っていないとのこと)
また一方には厳しい「社会の裏側」の記述もある。
世の中、「きれいごと」では片付かない、という当たり前だが、悩ましい現実。
同和問題、人種差別、建築業とヤクザのかかわり、など現実に起こったトラブルの当事者を語ることで、揉め事を収拾し、調整する「だれか」が必要だという指摘も認めざるを得ない、と思う。
自分たち一般人は普段「見なくても済んでいるところ」には、とんでもなく厳しい格差や貧困、という現実が潜むのだ、ということを見せられもした。
また「特捜にいた検事」の意見としてホリエモンの立件は
体制の一翼を担う放送局を、ホリエモンのようなうろんな(疑わしくあやしい、の意)輩に握らせるわけにはいかない、という検察上層部の判断があってこその立件だったのだろう。(後略)
と記述している。
立花隆が「ジェットコースター人生」と称するほどその浮き沈みは激しい、のだが。