book asahi.comより。
現行の婚姻制度は重すぎるため、「結婚に対して逃げ腰の男性も珍しくない」という。
事実婚は、広く先進国でも法律が認めつつある。
日本でも財産分与のもめ事に「事実婚問題」が関わってくるケースは年々増えてきている。
ただ、果たして「現行の婚姻制度は重い」のだろうか。
我われの多くが「婚姻制度」をあまり深く理解せずに、婚姻届を公式に出しているという気はする。
なので「婚姻とは何か」ということについて、法律的な問題と、また(これが大事)道徳・慣習的な"婚姻とは何か"ということについては、ぜひ中学生辺りの義務教育でカリキュラム化をお願いしたい。
また、そこから「男女が付き合うことの意味」とか「恋愛の責任」とか「恋愛と法律」「恋愛と道徳」とか、今の時代に一番欠落していると思われるような話を、ケーススタディを豊富に用いてぜひ若者に知らせてもらいたい。
恋愛や結婚は幸せの源でもあろうが、恐ろしく「かみ合わずに」摩擦を生むことも多い。
「四分の一の夫婦は破たんする」などと論(あげつら)っていないで、そもそも何が原因で、ゆえに何が出来るのか? を考えるのが大人の務めだろうと思う。
ともかく、先行するのは法律ではなく一般人のモラルである。
そこが崩壊しているのに、後から法律で縛ればいい、というのは官僚的に過ぎる。
渡辺さんの言いたいことも、畢竟その辺りにあるのだと思うのである。
欧州では一般的な事実婚は、実は日本ではどうなのか、という現実的な議論で「日本なり」の見解がだせればよいのではないだろうか。
事実婚 新しい愛の形 [著]渡辺淳一
[文]速水健朗(フリーライター) [掲載]2011年12月18日■愛の総量増やす「政策提言」
本書は事実婚の普及を促すもの。なぜそれをこの小説家が著す必要があったのか。著者が事実婚を推す理由は二つある。
ひとつは、若い世代を巡る問題である。急速に若い男女の未婚率が高まっている。現行の婚姻制度は重すぎるため、「結婚に対して逃げ腰の男性も珍しくない」と著者は主張する。重くない事実婚の普及は、若い世代の未婚率を押し下げ、少子化問題は解決するかもしれないと。
そしてもうひとつは、既婚の中高齢層を巡る問題。一度結婚した夫婦の離婚には、両者の同意という足かせがあり、簡単には離婚はできない。そのため、愛が冷めてからも婚姻関係を続ける夫婦は少なくない。著者は「アメリカのように、もっと、再婚、再々婚をしてほしい」と主張する。つまり、婚姻制度という呪縛からの解放のための事実婚の普及という目論見(もくろみ)だ。
つまり、著者は若い世代にも高齢世代にも、愛が欠けていることを憂えているのだ。あらゆる世代で愛の全体量を増やすための手法としての事実婚。それが本書の意図であろう。
数々の事例、福島瑞穂との対談などから事実婚のメリット、デメリットを洗い出していくという、まっとうに書
かれた本書の裏側に、この恋愛小説家らしい意図が貫かれている。ただし、これは著者も唱えるところであるが、事実婚は万能薬ではない。事実婚の導入で若い世代の未婚率は下がらないだろう。この世代に必要なのは愛よりもお金と職だ。また、再婚、再々婚と続けてメリットを享受できるのは稼ぎの多い人に限られるだろう。結局得するのは、裕福な中高年男性に限られるような気もしなくはない。
とはいえ、社会に愛(性?)の総量を増やそうという希代の性愛小説家の政策提言は、そのユニークさゆえに賛同したい。実効性はともかく。