藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

意図の逆。

Book asahi.com より。
「管理しない方が人はよく働く」。
このセンテンスに込められた意味は、多くの経営論者を震撼さしめるだろう。
またこの本に書評を寄せた勝見明さんにも敬意を表したい。

未来工業という実在の会社が手本とはいえ、その理念と実践はあらゆる経営者の夢であると思う。
だれが好き好んで就業規則を作り、経費を削り、評価制度を導入して従業員を採点するだろうか。

しかし、それをせねば「空気が緩みに緩んでしまう」というのが経営者の言い分である。
それはある意味正しい。
だが、そこにもし日本独特のマネジメントのスタイルが見いだせるのなら、それこそ我が国固有の「すてきな何か」ではないかと思う。
そんな「何か」を見つけたくて、実は日本人は諸外国にあまり牙剥かずに、いつかは「表舞台」にでることを思ってきたような気もする。

性善説と同様、もし「自発的に動ける組織」ができたなら、それが最強、最善の集団だと思う。
明治維新、戦中戦後には、そうした組織が「狭義」には存在したのではないかと思う。
ただ、そうした集団がまた別のイデオロギーに影響を受けるとややこしい。

こと、企業経営について言えば、こうした「自発のエネルギー」は、大切にしたいものである。
定年とか、就業規定とか、評価制度とか、みんな「最低限のルール」ばかりを明文化したものである。
「その線」で権利関係を主張したり、争ったりする人はいるけれど、実は本当の物づくりやサービスなどは「そんな線上」にはない。
もっともっと高いレベルにあるのだと思う。
職種はアルバイトなのか、責任者なのかを問わない。

ルールや規則をガチガチにマニュアル化し、結果「お客様に全然響かない接客」になっている例は枚挙にいとまがない。
どうすれば、本来の「接客の心」が、若い人の一人一人に根付くのか、そうしたことを日本の経営者は真剣に考えねばならないと思う。
結局その辺りが一番のポイントなのである。

ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる [著]山田昭男

■管理しない方が人はよく働く

 岐阜にある未来工業といえば、年間休日140日、残業禁止、定年70歳で給与は年功、育児休暇3年、社員800人全員が正社員……と、「夢のような会社」とマスコミで称賛される。
 それには社員が「常に考える」という、並の会社以上に、努力と創意工夫が求められることを創業者で現相談役が打ち明ける。実際、指示待ち社員はここでは通用しないだろう。
 原点は徹底した差別化戦略だ。電気設備資材という規格が法律で決まった業種でも、必ず他社と違う製品をつくる。そのため、他社と同じことはしない。
 ホウレンソウ(報告・連絡・相談)を禁止するのは、社員に権限と責任を委譲し、すべてを自分で考えさせるためだ。営業ノルマなしも自ら目標を設定させ、達成法を考えさせる。社員からの提案はまず実行し、失敗したら元に戻す。違う失敗なら100回でもOK。本社にコピー機1台と「ドケチ」も徹底するが、社員は1台で済む仕事の仕方を自分たちで工夫した。
 「管理しない方が人はよく働く」。欧米流の上からの管理をせずとも、信頼をベースにすると勤勉性と創造性を発揮する日本人の特性を思い出させる。
 圧倒的シェアの商品が多く、経常利益率は平均15%。利益の生み出し方が“仕事の作法”として血肉化した会社は超強い。
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東洋経済新報社・1575円