藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

相続税のない国より。

中国の所得分配改革案が発表された。
税制だけでなく社会保障などについても計画されているという。
富の格差が問題の焦点との拓大・藤村教授の指摘だが、読んでいてふと思う。
(所得分配、という呼び名がいかにも共産主義国らしいが)

国の政治とは。

まず所謂「経済発展」を目指して国民を鼓舞し、これも所謂「国を豊かに」するためにはどんどんビジネスや投資を促進する。

そうした志向の制度やシステムを作ると、それに向かって多くの人が動き出す。
いつしか「行き過ぎた状態」にまで過熱し、基本のシステムそのものが世相に合わなくなってくるのである。

もうすでに「国は経済発展を目指すもの」とか「豊かになる」ということがデフォルトの目標のようになっているけれど、こうしたまあ「国家とか政治としては当然」とも思われることが、今の先進国の格差問題とか、環境汚染とか、内戦とか国際紛争とか民族の対立など、あるゆる問題を結果引き起こしている。

殆どの国が陥るこうした政治の蹉跌を防ぐ手立てはあるだろうか。
例えば、政治はは結局はどこかで社会主義にもどり、富が偏在しないシステムを導入するしかないのだろうか。
自分はこうした「成長の魅惑」に取り憑かれぬ手段は、"文化"でしかあり得ないと思う。教養と言ってもいい。

以前中国の友人と話したときも「今の中国人にはそうした議論は無理」と嘆いていたが、確かに「もの欲しいばかり」の心理状態の人にいくら「その先」を説いても共感してはもらえない。

そうした時に明確なビジョンを提示し、構成員(国民)が盲従状態にならないような政治姿勢を取るリーダーシップが必要になる。
リーダーシップとはまさにそんな「強力な志向性」なのである。
(つづく)

金持ちはますます金持ちに 相続税も固定資産税もなし 富豪に好都合な中国のシステム
2013.2.13 11:02
 中国政府が昨年末までに提出すると約束していた所得分配改革案がようやく発表された。この改革案に盛り込まれた諸項目がすべて実施に移されれば、所得格差の問題は間違いなく解決に向かうだろう。とりわけ注目されるのが、相続税(中国語では遺産税)の導入について初めて言及したことだ。だが高所得者の反対を押し切って実現にこぎつけられるだろうか。(フジサンケイビジネスアイ
 所得改革案は税制から賃金制、社会保障など実に多岐にわたっている。所得格差の拡大がさまざまな制度や政策のゆがみから生じていることを、改めて浮き彫りにしていよう。
 だが、改革案の中で目標年次などをはっきりと定めている項目は意外と少ない。多くは項目を列記しただけで、実施時期や目標数字などはほとんど入っていない。中には単に「研究する」とのみ書かれた項目もある。どこまで実現できるかは極めて不透明といえよう。
 その典型的な例が相続税である。改革案では単に、「適当な時期に問題を研究する」とのみ書かれている。
 中国では従来、相続税や固定資産税のような資産税は一部を除いて導入されてこなかった。富裕層にとっては、こんなに好都合なことはない。中国の富豪ランキングをみると、創業者の財産を子息がそっくりそのまま引き継いでいるケースが少なくない。相続税がないからだ。また、富豪の多くは不動産分野に投資し、巨額の利益を得ている。これは住宅取得税や固定資産税といった資産税がないからであろう。
 このうち個人住宅に対する住宅取得税(中国語では不動産税)については、昨年から上海市重慶市で試験的に行われている。今回の改革案では「改革テストの範囲を徐々に拡大していく」となっているが、全国に普及するまでにはかなりの時間がかかりそうだ。
 それ以上に難しいのは相続税である。実際に導入されれば、所得格差是正の切り札になるのは間違いないが、とにかく改革案では「研究する」と書かれているだけだ。いつになったら実現するのか、皆目見当がつかない。高所得者からの反発は必至なので、よほどの覚悟がない限り、導入は難しい。
 今回の改革案は、今年3月で首相の座を降りる温家宝氏が、自分の任期中には実現できなかった諸課題を、習近平新政権への宿題として課したものといえよう。新政権は厄介な宿題を残されてしまった。(拓殖大学国際学部教授・藤村幸義)