藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ビッグデータの使い方

車両の運行とか、交通機関の利用履歴とか、消費者の購買行動とかを「匿名ながら大規模に遍(あまね)く収集するビッグデータ
「週末はビールと紙おむつが売れる」というようなマーケティングにこそ役立つのではないか、と思っていたが記事読んでいてもっと直截的な利用方法があることを知らされた。

いわゆる「生保・損保・与信(金融)」である。
自動車であれ、貨物であれ、火災保険であれ。
「もしなにかあれば」というための保険である。

また金融機関も「その人の将来」を恃(たの)んで融資をする。
いわゆる「将来のリスク商売」だが、ビジネスモデルとしては確立されている。
そうした業界では「将来のリスク」がある程度の不確かさの中にある、というのはこれまでは当然だった。
いくら健康な人でも事故や病気になる可能性はあるし、定収入がある人も、突然職を失うこともある。

そうした「一般的なカテゴリー&保険商品」というのがこれまでは当然だったが、それが「あなたの記録に応じた商品に切り替えます」というのが将来の保険なのである。

急ブレーキの多い人は危険。とか
走行距離の多い人は金額のアップ。とか

嗜好品や高級ブランドの購買の多い人は要注意。とか。

保険会社や金融機関から見れば、いちいち最もな着眼であるが、細かく把握するにはこれまでの技術では無理があった。
これからはネットを通じて消費者の行動がほぼ筒抜けになる時代である。
より細かな、そして消費者も納得できるような「密着サービス」がこうした金融分野で台頭してくるに違いない。
「リテールデータを綿密に収集しビッグデータを地図として使う」という非常に精度の高いIT利用法である。
こうした試行で、より保険や金利が安く、適切な方向に向かうのであれば何よりのIT利用である。

しかし、そうした「ビッグデータ・マップ」が整備されてくればどうなるか。
「30代、40代をこのように過ごした人の将来はこうなります」などという恐ろしい将来予測もデータが増えれば出来てくるのではないだろうか。
ちまたの占いや血液型診断なんかよりもよっぽど当たりそうである。
もっともその予測から上ブレするか下振れするかは自分次第なのだろうことはもちろんだけれど。

走行記録で保険料増減 ビッグデータが変える金融
2013/11/24 13:12ニュースソース日本経済新聞 電子版
 大量のデータを活用して事業に生かすビッグデータビジネス。先行する流通・サービス分野に続き、金融にも波及してきた。すでに新たな顧客サービスが現場から生まれている。海外の事例も手掛かりに新たな金融ビジネスの可能性を探る。
■車の走行データ収集 保険料に反映
 下手な運転だと保険料が高くなる――。そんな自動車保険が登場するかもしれない。損害保険会社で自動車の走行記録から集めたビッグデータを保険契約に生かす試みが始まった。
 NKSJホールディングス(証券コード 8630)の損害保険会社、損害保険ジャパンが7月に販売を始めた自動車保険の新商品「ドラログ」。保険契約者の走行データを収集、距離に応じて翌年の契約継続時の保険料が変わる仕組みだ。
 日産自動車(7201)の電気自動車「リーフ」が対象で、通信機能がついた情報システムを搭載し、走行情報を蓄積。日産を通じて日立製作所(6501)のデータセンターで情報を分析・加工し、損保ジャパンに配信する。
■契約者にもメリット
 ドラログは「ドライブ ログ(運転記録)」の略。買い物やレジャーなどの日常的な利用目的で自動車を使う場合、年換算の走行距離が約4600キロメートル未満であれば翌年の保険料を10%割り引く。約1万3000キロメートル以上なら、10%割り増しとなる。業務用で使う際は契約時に申請し、別の条件になる。
 収集した走行データは利用者が自ら閲覧できるよう専用サイトに表示。運転時間やアイドリングした時間、ガソリン車やディーゼル車の燃費に相当する「電費」などを把握できる。
 損保ジャパン自動車業務部の植松巧之氏は「細かな走行情報を把握してもらうことで、安全運転への意識が高まる効果が期待できる」と話す。自動車事故が減れば、結果として保険会社が支払う保険金も減少する。契約者にとっては、効率的な運転をすることで、保険料を安く抑えられる。
 電気自動車以外でも通信機能が搭載された車ならこうした保険が可能。現在は日産リーフだけが対象だが、損保ジャパンでは顧客の反応を見ながら、対象車種を広げるか検討するという。
 自動車の走行に関わるビッグデータは、欧米の保険会社では活発に使われている。米自動車保険プログレッシブは運転速度や急ブレーキの頻度など、より詳細な運転データの分析に踏み込む。数カ月間のデータ収集で契約者の事故リスクをはじきだし、最適な保険料を設定する。
 日本でもこうした商品は技術的には可能だ。急ブレーキを多く踏むほど保険料が高くなる、といった商品も検討対象になりうる。
 銀行でもビッグデータの活用が進む。岐阜県の大手地銀、大垣共立銀行(8361)のATM。利用者が預金の引き出しや振り込みなどで利用するたびに、ATM画面上の「掲示板」と呼ぶスペースに、お薦めの金融商品やキャンペーン情報が表示される。
 年齢や性別、預かり資産や取引情報を分析した上で、利用者にあった情報を提供する。過去に自動車ローンを使った実績のある客にローン金利引き下げキャンペーンを案内したり、時間外利用の多い客には手数料割引のサービスを案内したり、といった具合。顧客情報管理(CRM)システムとATMを連携することで可能になった。
 画面はカスタマイズでき、定期預金の店頭表示金利、個人向け国債の販売情報など知りたい情報を設定しておけばATMを使うたびに表示される。「『スマホ画面のようで親しみがもてる』とお客に好評」(同行)という。
 金融機関が顧客との接点として窓口やATMと並び重要視するのが、電話を受け付けるコールセンター。朝日生命保険はコールセンターでのやり取りをすべて文字データとして収集・分析し始めた。2月にみずほ情報総研のシステムを導入。通話内容をリアルタイムに文字化し、指導役が閲覧する。お客に発してはいけない語句を「NGワード」に設定すれば、発した時点ですぐに知らせる機能もある。
 「音声データだけより後から通話内容を確認しやすい。明細書の文書改善などに生かしている」と事務・システム統括部門の杉田芳実氏は語る。将来はデータを詳細に分析し、商品開発などに生かすことも視野に入れる。
■欧米は解約防止に活用
 データサービス企業、米テラデータの日本法人、日本テラデータ(東京・港)の一柳健太ビッグアナリティクス統括部長は「金融機関は収集したデータを活用しきれていない。うまく活用すれば生産性が大きく高まる可能性がある」と話す。欧米の金融機関は顧客がクレーム電話を何度かけたかなど解約に至るまでの行動パターンを詳細に把握、きめ細かく対応することで解約を防止する取り組みもあるという。
朝日生命はコールセンターのやり取りを収集・分析し、サービス向上に生かす
 さらに位置情報を使って、不正な取引を検知する試みも始まっている。お客の行動範囲から著しくかけ離れた場所で資金の引き出しなどの取引が相次げば、不正を疑うという仕組みだ。
 与信管理にも活用する動きがある。米グーグルの元最高情報責任者(CIO)、ダグラス・メリル氏が設立した米ゼストファイナンスは消費者の与信リスクを査定するモデルを構築。ネット上でどんな行動をしているかなども分析対象となるようだ。グーグル流の機械学習モデルを用いて、デフォルト(債務不履行)率を低く抑えることができると同社は主張している。
■株価・景気予測に威力発揮
 大量のデータを株式投資や景気予測に活用する動きも広がっている。
 月間で約580億ページの閲覧回数を誇る検索サイト大手の「Yahoo! JAPAN」。同サイトを運営するヤフー(4689)は今年4月、大量に検索される語句を分析して景気の動向を探る「Yahoo! JAPAN景気指数」の公表を始めた。同指数を使って内閣府が毎月発表する景気動向一致指数をいち早く予想するという。
 分析したのは、どんな語句の検索回数が増えると景気指数が上向くのかといった関連性だ。すると「年収1000万円」「ショートヘアカタログ」「国産車」といった語の検索数が増えれば景気動向指数も上昇。反対に「ろうきん」「帝国データバンク」「減損会計」といった語が増えれば景気指標は悪化するといった傾向が分かった。
 景気との相関性が示された語句の中には、ほとんど景気との関連性を想像できないものが圧倒的に多い。記号のような語句もあるという。ヤフーの安宅和人執行役員CSOは「人間の想像を超える語句を見つけ出せるのがビッグデータ活用の強み」という。
 改良を重ねた最新モデルによる予測結果では、内閣府景気動向一致指数との差は2005年6月以降の平均で0.5に収まっている。この最新モデルでは内閣府の数値が頻繁に改訂されるという課題にも対応した。12月6日に内閣府が発表予定の10月分の景気動向一致指数は9月(速報値)の108.2より0.4低くなると予測する。
 ブログの口コミ情報と株価の関係を分析し、投資に生かそうとする動きもある。ゴールドマン・サックス証券の秋葉茅麦氏の分析によると、企業に関する前向き・後ろ向きな表現がブログに登場した後の株価の動きには業種ごとに違いがあることが分かった。
 小売業では「改装・リニューアル」といったポジティブ(肯定的)な表現が出ると株価が上昇しやすく、自動車などの輸送用機器では「リコール」などのネガティブ(否定的)な表現が出ると株価が下落しやすい。機械や不動産業では相関関係があまりみられなかった。秋葉氏はリポートのなかで「ネガティブな表現の方が株価と連動しやすい」と指摘している。
21日のホンダ株の始値予測画面(21日午前8時55分ごろ)。始値は予想値と同じ4155円だった(カブドットコム証券提供)
 「今日のA社株の終値は現値より30円高い830円になりそうだから、現値で買って引け成り注文で売る取引をしよう」。ビッグデータを活用してはじき出した始値終値の予想をもとに売買する、こんな投資スタイルが個人投資家の間で広がり始めている。
 カブドットコム証券(8703)が昨年始めた「リアルタイム株価予測」は、株式市場での大量の注文データを把握・分析し、個別株の始値終値を予測する。それを見て投資家は注文を出すかどうか決めることができる。
 引け間際に大口の注文が取り消されたりすれば、実際の株価と異なる場合もあるが、「おおよその動きは把握できる」(同社)という。カブドットコム証券は斎藤正勝社長がシステムエンジニア出身。ビッグデータの活用に意欲的だ。営業推進部の茂木晋祐氏は「データ分析で得た情報を提供することで、個人と機関投資家情報格差を埋めていきたい」と話す。
 12月に上場を予定し、データ分析を手掛けるホットリンクは過去10分程度の約定情報を使い、短期的な株価指数先物の価格変動を予測するツールを開発した。データ分析で価格の動きに一定の規則性が見いだせるという。
 金融商品取引の高速売買が普及した結果、注文状況や取引成立の情報が大量に発生し、人間の処理能力をはるかに超えてしまった。これを瞬時に分析できれば高い情報価値を生み出す。
大量のデータを株式投資や景気予測に活用する動きも広がっている
 自ら株価データを分析して値動きを予測する個人投資家もいる。東京電機大学の研究員、石川慎也氏が扱うデータは国内の全上場銘柄の過去3カ月間の始値、高値、安値、終値と売買高。これに日経平均株価の動きとの乖離(かいり)や業種別日経平均の騰落率との乖離などを組み合わせて、2、3日後の株価の動きを予測する。
 2004年2月に300万円の元手で運用を開始して以降、昨年8月までに5000万円近くを稼いだ。それでも石川氏は「売買の判断をする際に心理的な要素が入り込み、データ分析の通り取引しないこともあった」と振り返る。ビッグデータをどう投資に生かすか、最後は個人の判断が問われることになる。
■金融・保険、情報蓄積これから
 動き始めた日本の金融機関のビッグデータ活用。多くのIT(情報技術)ビジネス関係者は「金融機関の多くはデータを集めている段階で、どう活用するか明確なビジョンを持つところは少ない」と口をそろえる。銀行や保険会社は規制のハードルが高い業種で、横並び意識も強く、データ活用に二の足を踏む傾向もあるという。
 過去を振り返っても、金融業界はデータをビジネスに生かす動きで他業界に後れを取ってきた。流通業では1980年代にPOS(販売時点情報管理)レジが普及し、店舗での販売データを使った商品発注が一般化した。最近ではポイントカードの購買履歴や位置情報の活用も盛んで、販売促進活動の精度を高めている。
 製造業では適正な在庫量を保つため、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の各段階で情報を共有。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は重機や医療機器に取り付けたセンサーから機器の稼働状況を把握し、メンテナンスなどに役立てようとしている。
 サーバーに蓄積するデータ量も他の業界と比べ多いとは言えない。総務省の推計によると、金融・保険業の2012年のデータ蓄積量は82万テラ(テラは1兆)バイトで、商業(321万テラバイト)の4分の1、サービス業(251万テラバイト)の3分の1にとどまる。1テラバイトは新聞約1300年分のデータ量にあたる。
 データを提供する消費者側の理解をどう得るかも課題だ。東日本旅客鉄道(9020)はICカード乗車券の利用状況データを十分な説明なしに他社に提供していたことが反発を招き、外部販売の見送りに追い込まれた。誰のデータか分からない匿名化された形での提供だったが、理解を得られなかった。野村総合研究所の鈴木良介主任コンサルタントは「利用者に気持ち悪いと思われない形でデータを活用することが重要」と指摘する。(菊地毅
日経ヴェリタス2013年11月24日付]