藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

メディアのこと。スマホのこと。(2)

*[ウェブ進化論]止まらないスマホ化。
FTより。
サウジ皇太子とamazonのベゾスとの間でハッキング疑惑があったという記事。
 
怖いことの二つめ、「スマホという結節点」。
世界トップ企業のCEOであれ、一国の国王であれ。
もう「携帯端末」から無縁ではいられないということ。
それほど「携帯」という便利さは上から下までを飲み込んでしまった。
銀行口座のない途上国の人には送金機能を。
世界のVIPには直接対話を。
一国の元首にはtwitterやインスタでの外交圧力を与えてしまった。 
諜報活動もスマホを抑えておけば、実にやり易いだろう。
つまりそれだけ自分たちの日常は「スマホ経由」でしかなくなっている。
これはしかも今後も加速するだろう。
「便利の津波」の勢いはまだこれからだ。
記事では「規制の枠組み作り」を訴えているが果たして「便利」を凌駕できるだろうか。
自分の予想では、今後のスマホは"ある程度の事故"を経験しつつ、さらに機能を集約して、まさに「スマホ(とかIDタグ)なしでは社会参加不能」な世界に突入していくと思う。
この世界は「デジタル疎外」の問題はあっても、それ自体で人が事故に遭ったりすることがないから、参入のハードルはずい分低い。
 
スマホに預けられないものは何か」を真剣に考えなければならないだろう。
 
[FT]サウジのハッキング疑惑はゴシップでは済まない(社説)
 
2020年1月23日 17:54
 

Financial Times

「ばかげている」――ムハンマドサウジアラビア皇太子の「ワッツアップ」のアカウントがアマゾン・ドット・コム創業者であるジェフ・ベゾス氏の携帯電話のハッキングに関わっていたとする報告書に対する同国のコメントだ。だが、信頼の置けるフォレンジック(鑑識)の専門家が「中程度から高程度の自信」をもつという報告の内容は極めて重大だ。事実であれば、少なくとも事実上の国家指導者である皇太子の取り巻きが世界的な実業家に対する違法な監視行為に関わっていたことになる。サウジ政府が自ら述べたように、徹底した調査が求められる。

 
サウジ皇太子(右)のワッツアップアカウントを使ってベゾス氏の個人情報がハッキングされたとの報告をサウジ政府は否定している=ロイター(日経コラージュ)
残念ながら、ベゾス氏の携帯に仕込まれたスパイウエアが自己破壊的なものであったとみられ、真実の究明は永遠に不可能である可能性がある。
 
今のところ、本紙フィナンシャル・タイムズが確認した分析の状況証拠は強力だ。筆頭著者のアンソニー・J・フェランテ氏は元米連邦捜査局(FBI)高官で、ホワイトハウスで米国家安全保障会議NSC)のメンバーも務めた人物だ。報告書によれば、ベゾス氏とムハンマド皇太子は2018年4月4日に携帯電話の番号を交換した。5月1日、ベゾス氏は対話アプリのワッツアップの皇太子のアカウントから予想外の動画ファイルを受け取った。それから数時間のうちに、ベゾス氏の「iPhone(アイフォーン)X(テン)」からの数カ月に及ぶデータ「大量無断流出」が始まった。携帯から送信されるデータ量はピーク時に、以前の水準の数百倍に達した。皇太子のワッツアップアカウントからベゾス氏に送られた2つのメッセージは、当時は未公表だった不倫関係を含め、ベゾス氏の会話と人間関係についての内部情報を示しているように見えた。
 
ベゾス氏の携帯が同じ頃に、今のところ検出されていない出所の異なるマルウエア(悪意のあるプログラム)に感染した可能性はある。皇太子のアカウントが無断で使われた可能性は排除できない。しかし、幹部側近以外の人物が皇太子のアカウントにアクセスできるという事態は現実的ではない。国連の人権専門家2人が22日に指摘したように、もしこれがサウジの仕業だったとすれば、敵対者と戦略的に重要な人物を監視するというサウジ当局の憂慮すべきパターンが浮かび上がる。
 
ワシントン・ポスト紙に寄稿していたサウジ人記者ジャマル・カショギ氏が2018年に殺害された身の毛もよだつような事件以降、サウジ政府とポスト紙オーナーのベゾス氏の関係は非常に敵対的なものだった。ベゾス氏のセキュリティーアドバイザーなどは、同氏に対する入念なソーシャルメディア攻撃と不倫情報のリークはサウジの仕業だと主張していた。カショギ氏の殺害がサウジ政府の指示だったことを示す説得力のある証拠をポスト紙が報じた後のことだった。
 

カショギ氏殺害の5カ月前から携帯監視

興味深いことに、ベゾス氏の携帯の監視はどうやら、カショギ氏殺害の5カ月前に始まっていたようだ。ハッキングに関する報告書によれば、カショギ氏が2017年秋にポスト紙の仕事を始めて以降、サウジ側は同氏のコラムに不満を抱くようになった。今にして思えば、サウジは外国の投資家を熱心に誘致する一方で、情報や影響力の確保を期待して一人のビジネスマンの電話をハッキングしていた可能性があるようにみえる。
 
一連の疑惑を受け、サウジの高官に会ったないし、会う計画がある銀行関係者や企業経営者は慎重に考え直すようになり、緒についたばかりの経済改革を深化させようとするサウジ政府の取り組みを難しくするだろう。同国のイメージは甚だしく傷ついており、その再構築は困難で長い時間を要する。サウジとしては、カショギ氏殺害を指揮した首謀者に責任を取らせるという自らの約束を果たすことが先決だ。事件に関与したサウジ人8人に先月下された有罪判決は、典型的なインチキ裁判の特徴を備えていた。
 
ベゾス氏の携帯に仕込まれたスパイウエアが具体的に何だったのかは特定されていない。米フェイスブックは、ワッツアップに見つかった脆弱性は解消したとしている。だが、今回の件は、サイバースパイツールの取引の危険性を改めて浮き彫りにした。その規制と輸出管理について多国間の枠組みを作ることが喫緊の課題だ。規則の採用・執行を拒む国には懲罰的な措置を盛り込む必要がある。
 
(2020年1月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/