藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

時代のツケ。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。

何度も書いたことがある内容だけれど、自分たちはしばしば「自分の知っている範囲」で周囲の物事を解釈しようとする。
例えば、自分の知識や経験の及ぶ範囲で、「今の為替レートは」とか「不況の原因は」とか「新興国と先進国の成長関係は」とか、色んな解釈をする。
自分は趣味で二十年ほど前から、経済の見通しを予測する解説本などを貯蔵しているが、大概の説は見事に外れている。
(ただこの"結果の当たり外れ"を後から論じることは実にせん無いことである、ということも最近知ったが)
それはともかく。

「千日かかって登った山を半日で転がり落ちる」というのは相場師の表現だが、そんな類の話。
アメリカの株式は、金融緩和が決まっても下がり続けている。
EUの信用不安もまったく改善の道筋が見えてこない。
がまん強い、というか決断しない日本企業も、ついに未曾有の円高でガクガクになりそうである。
新興国では、中国を含め政情不安がますます広がる。(中でも規模的には中国はトップ)
そして日本もアメリカも、「ちょっとムリか」という規模まで債務が増えている。

どうも国際的には「日本国際は購入者は日本人ばかりだから勝手に話し合って」ということらしいが、欧米はそうはいかない、ということのようでもある。

経験にはないかもしれないということ。

結局、「今まで起きたことと、その原因分析」をいくら組み合わせても、"後付けの部分説明"にはなっても、けっして「未来を照らすトーチ」にはならない。
それは、今くらい世界の政治が安定し、成熟し、部分的に戦争が起き、でも
経済が成熟(というか暴走)し、そして行き詰まり、
資源・エネルギー問題が耳目を集め、

それらの情報がインターネットで駆け巡る。

という時代は、多分自分たちが初めてである。


もっと卑近な話だと、戦争に完敗し、遮二無に経済成長した国も日本とドイツだけ。

結局自分たちの生きている時代も、過去に似た部分は多々あれど"初体験"と捉えねばならないと思う。

過去の論説や、過去の経済理論を持ってきて「日本の債務は大丈夫か」とか「格付けはどうか」とかを言い始めてもせん無いこと。
今の1140兆を超える債務残高と、その国債の購入先が日本内部、ということは「余程の改善が見込めないと」貸した金は返ってこない、ということを示しているだろうし、また債務がなくとも、未曾有の高齢化社会の先頭を走っている身だから、これからは「生活費の世代間負担」の問題をも跳ね返していかねばならない。


他の先進諸国を見て「我が振り」を決めるのではなく、(有り難くはない)トップランナーならば、いよいよ問題の先送りは止めるべきである。
「ツケの後回し」は、想像以上に若者のやる気を削ぐ。

そのためには年長者は、あえて火中に身を投じねばならないのではないだろうか。

「姑息根性」まで次世代に継承するのは、絶対に止めるべき。
それが唯一、後進に示せる自分たちの姿勢だと思うのである。
いくら自分が不安でも、若者を前にして逃げてはならない。

Q.財政赤字はどこまで大丈夫?
A.世界的な基準はなし

ギリシャアメリカの財政危機が問題になっています。

ギリシャは2009年、前政権が財政赤字を過少計上していたことが発覚して、国債発行による市場資金の調達が難しくなり、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が支援を決めました。

EU統計局によれば、ギリシャ財政赤字は2009年が国内総生産(GDP)比で15.4%、2010年が同10.5%でした。一方、アメリカは今年5月に連邦政府の債務残高が法律で定められた上限の14兆2940億ドルに達し、新たに国債を発行できなくなりました。


財政赤字の比率や債務残高は政府財政の健全度を見るうえで重要な指標ですが、世界的な基準はありません。アメリカの連邦政府債務の上限は必要に応じて何度も引き上げられており、上限設定の基準は見あたりません。


一方、EUは共通通貨ユーロの導入国には年間の財政赤字GDPの3%以下、政府債務残高を同60%以下とするよう求めることにしました。放漫財政に走る国が出ると、ユーロの信認が揺らぎ、他の国も迷惑を受けかねないためです。


この数字の理論的な根拠は公式には示されていませんが、ユーロの創設に長期にわたってかかわったハンス・ティートマイヤー元ドイツ連邦銀行総裁は、回想録「ユーロへの挑戦」の中で次のように説明しています。

1990年代当時、ユーロの前身的な制度だった欧州通貨制度に参加していた国の政府債務残高の平均的水準はGDPの60%程度でした。成長率が名目で年5%、金利も年5%という標準的な経済状況で財政赤字が同3%以下なら、60%という政府債務残高の対GDP比は上昇しません。経済規模の拡大を上回るペースで政府の借金が増えることはないというわけです。


この基準は、ユーロ圏以外でも健全財政の目安と見られた時期がありました。しかし、実際にはユーロ圏でもこの基準から外れる国が相次ぎ、基準が形骸化していきました。とくに、2007年以降の金融危機では、財政赤字比率が10%程度に上昇する国が多く出ました。


ちなみに日本の場合、国際通貨基金(IMF)によると、2009年の財政赤字GDPの10.1%でしたが、それ以上に深刻なのが債務残高です。地方なども含めた一般政府の債務残高はGDPの217.4%となっており、ギリシャに次いで財政危機の懸念されるイタリアの116.0%の約2倍の高水準です。
(調査研究本部主任研究員 丸山康之)

(2011年7月29日 読売新聞)